賢さは悲劇 8KB
合成餡子、という技術がある。
文字通り、ゆっくりの餡子に混ぜ物をする技術のことだ。
これによって様々なバリエーションのゆっくりが生み出されている。
混ぜる養分や材料、飼育方法によって特徴は千差万別であり、市場に出回るのは厳しいトライアルをクリアしたごくわずかな種類だけだ。
中枢餡だけになっても生きている”リバイバゆ”や元から半液状の”ゲゆ(ゲルゆっくり)”、繁殖用の”苗ゆ(苗木ゆっくり)”等々、ヒット商品となったものはいまや数え切れない。
その裏でその何百倍も失敗作がいて、悲惨な最期をたどったことは想像に難くないが、それを考えて心を痛めるる程、俺は出来た人間じゃあない。
知的好奇心からすれば見てみたい気もするが。
所変わってバイト先のショップ。
今日は新種の合成餡ゆっくりが入荷した。
頭脳強化型のゆっくり、商品名”ジーニアゆ”だ。
ジーニアス(天才)のゆっくり?
生意気な名前だ。
「ゆっくりしていってね!」
いるのはまりさ種、れいむ種、ぱちゅりー種の三種類か。
見た目は通常のゆっくりと変わらないな。
「おにーさん、まりさたち、とってもかしこいんだよ!
おにーさんのいえでゆっくりさせてね!」
何だ、俺に向っていっているのか。
いきなり要求とは、随分と厚かましい奴らだな。
頭脳強化型ってんなら人間との立場の違いくらい理解できても良さそうなもんだが。
失敗作じゃねえの?
「おー。早速気に入られたのか。餌もやってないのになぁ」
「店長。コイツら、ちょっと生意気過ぎませんか?賢いってのも自称であまりそれっぽく見えないし…」
「いや、実際賢いらしいよ。ちょっと待っててね、見せてあげるから」
そういって、若い店長はメモ帳にひらがなを書いた。
ま、ん、じゅ、う。
この腐れ饅頭共に読めるのか?
いや、まんじゅうとは読めるけどさ。
「そこのれいむ、これを読んでみなさい」
「ま、ん、じゅ、う!」
読めた。
馬鹿な。
「おまんじゅうくれるの!?おまんじゅうはあまあまでとってもゆっくりできるよ!はやくだしてね!」
いや、やっぱり馬鹿だこいつら。
「店長、もしかして、こいつら字が読めるだけですか」
「いや、平仮名くらいなら書けるらしいよ。知能も、他のゆっくりよりは高いんだってさ」
「へえ…」
「といっても」
「やっぱり、ゆっくりはゆっくりですねぇ」
「だねぇ…」
結局の所。
知能はあがった。
平仮名なら読み書きも出来る。
だが、自己中心的なゆっくりそのものの本能や、馬鹿さ加減は全く直っていないようだ。
「新型だからそこそこ入れてみたけど、この様子じゃあまり売れそうにないね」
「そうですね…。ぶっちゃけウザさが増しただけですし」
「まぁ、早めに今回入れた分捌いちゃってよ。もう発注はしないからさ」
「あーい」
それから一月がたった。
「店長、ジーニアゆのまりさ。あいつ一匹だけ売れ残ってますよ。さっさと捌かないと新しいの売れませんし…」
「買い手がつかないんだよねぇ。ウザがられて野良になるパターンも多いらしいし。それがまたタチ悪いんらしいんだわー」
「もういっそ処分しちまった方が良いんじゃないですか?プライドばっかりやたら高くて、媚を売るどころかお客に上から目線ですよ」
「んー…そうだねぇ。君、持って帰らない?タダで良いからさ。ショップで殺しや保健所行きが出るのはさ、評判的にちょっと、ね」
「俺ですか!?嫌ですよこんなの…」
何度も何度も拒否したが、日頃何かと世話を焼いてくれる店長だ。
結局折れざるを得なくてこいつを持ち帰ることになってしまった。
「ゆ?ここがまりさのあたらしいゆっくりぷれいすなんだぜ?きにいったよ!ゆっくりしていってね!」
家に着くと即座に占有宣言。
うぜぇ。
「にんげんさんははやくかしこいまりさのためにあまあまをもってきてね!」
うぜぇ。
生ゴミを与える。
「ゆゆ!?こんなのたべれるわけないんだぜ!にんげんさんはまだじぶんのたちばをりかいしてないんだね!」
そういってまりさは脹れた。
生まれた頃から賢いゆっくりとして扱われてきたため、プライドが普通のゆっくりとは桁違いだ。
「じゃあ、どうするっていうんだ?頭の悪い俺に立場ってもんを理解させてくれよ」
「おしえられなきゃなにもできないくずはさっさとしね!いいからはやくあまあまをもってくるんだぜ!」
おおう。
ゆっくりのくせに見事な返し方しやがる。
言ってる事に中身まったく無いけど。
「良いか?賢い賢いまりさちゃん。俺が、お前の、ご主人様だ。お前の飯も何も、俺が用意してやる。逆らえば当然お仕置きする。わかったか?」
「そんなのでかしこいまりさがゆっくりできるわけないんだぜ。ばかなこといってないでさっさとあまあまよういしてね!」
うむ。
早めに立場を理解させておいた方が良さそうだ。
俺は無言で生ゴミをゴミ袋に入れ、台所へ向った。
後ろでは俺が屈服したと思っているのか、まりさが満足げに笑っていた。
それから数十分、俺は自分のために、夕食を用意した。
さらに盛り付け、テーブルの上に置く。
匂いをかぎつけてまりさがノコノコやってきた。
「おそいんだぜ!くずなにんげんさんはほんとうにだめだね!まりさはおこってるんだぜ!!」
声を荒げるが、俺は無視。
「きこえないの?まりさはおなかがへったっていってるんだぜ!はやくあまあまくわせろくそじじい!!」
結局、俺は一言も答えることなく完食。
満足の行く味だ。
腹をすかして青筋立てているまりさを見てさらに満足。
わめき続けるまりさを尻目に風呂に入って床に就いた。
事件が起こったのはその晩だった。
ばたん、という大きな音で目を覚ます。
なんだ、まりさが暴れているのか?
近所迷惑だから縛り付けておかないと。
そう思った俺は音がした方へと向った。
場所はどうやら台所。
「むしゃっむしゃむしゃはふっ…!」
きったならしい音が聞こえるなぁ。
大体予想つくけどさぁ。
「うめっ!これめっちゃうめっ!!」
案の定、冷蔵庫を開き、中の食材を貪るまりさ。
冷蔵庫の淡い光で照らされた床には、食べかすが散らかって生ゴミだらけだ。
「ゆふぅっ。にんげんさんはほんとうにばかだぜ。おとなしくあまあまくれていればこんなことにならなかったのに」
「そんなに俺は馬鹿か?」
「そうだぜ!まりさにさからうおおばかものだぜ…ゆゆ!?」
俺は台所の電気をつけた。
想像以上の惨状を呈している。
しかし、それだけではない。
戸棚の食器はすべて砕かれて床に散らばり、電子レンジや炊飯器は扉と蓋がヘシ折られている。
大きな音がしなかったのは、一度床に下ろしてから圧し掛かって破壊したのだろう。
賢い、というのも強ち嘘じゃ無いらしいな。
「なるほど?一仕事おえりゃあそりゃあ腹がすくよなぁ」
「ゆ!あたりまえだぜ!ここにあるだけじゃぜんぜんたりないんだぜ。ばかなにんげんさんははやくまりさのごはんをかってきてね!」
ああ。
「で、どうしてこんなことしたんだ?」
「そんなこともわからないんだぜ?にんげんさんはほんとうにかわいそうだね…」
本当に。
「いいから教えてくれよ」
「しかたがないからおしえてあげるんだぜ。これは、まりさにごはんをくれなかったばつだよ。にんげんさんがいたいおもいしなかっただけましとおもうんだぜ」
本当に。
「これはけいこくだからね!つぎはにんげんさんのばんだよ!こうなりたくなかったらはやくごはんかってきてね!」
本当に、良い度胸だ。
「そうかぁ。まりさ、ごめんな、俺が間違ってたよ」
「わかればいいんだぜ」
そういって胸を張るまりさの頭をつかみ、俺はまな板の上に載せた。
包丁を取り出す。
「そこで待ってろよ、まりさ。今とっておきのあまあまをやるからな」
「かくしていたんだぜ!?ほんとうにゆっくりできないにんげんさんだね!まりさはかなしいよ!」
言ってろ。
俺は包丁を振りかぶり、まりさの脚めがけて振り下ろした。
「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!?????」
響く悲鳴がうるさいので、コンロに火をつけて顔を焼いた。
口だけ溶かすつもりだったが、右目も潰れてしまったらしい。
ごめん。
とりあえず、足を網に載せて焦げ目がつくかつかないかまで炙り、包丁を入れる。
ゆっくり足のタタキだ。
「お待たせ、まりさ、出来たぞー?ん?声が出ないほど嬉しいか、そうかそうか。遠慮はするなよ」
そう言って、とけてくっついた口に包丁を入れる。
これで食えるだろ?
「いだいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!にんげんさんのばがああああああ!しね!ゆっくりしね!!!!」
「まりさ、汚い言葉を使ってはいけないよ」
先ほどまで火にかけていた網を口に突っ込む。
「ゆぎゃああばばばばばっばばば!!!!!?」
っと、またしてもごめん。
足のたたきじゃなくて網食わせちゃった。
「うぼべっぎゅっぎゅぢぢぇぎばびいいいいい」
声が大分小さくなった。
口内大やけどで言葉を上手く発せないみたいだ。
「ごめんな、まりさ。今のはわざとじゃないんだ。それより、お前足はどうしたんだ。急いで手当てしないと餡子出ちまうな」
我ながら白々しい。
水で小麦粉を練って足のあった場所に貼る。
そこにオレンジジュースを塗って、火で炙った。
翌朝。
すっかり従順になったまりさがそこにはいた。
「おはよう、まりさ」
「ぼ……ぼばびょうぼばいばぶ」
「ははは。何言ってるかわかんねーや」
口の中を大やけどしてしまい、言葉を満足に発せない。
「まりさの顔は本当に気持ち悪いなぁ。帽子で隠してろよ」
顔面を火に焼かれ、右目は溶けてなくなり、口もいびつな形に。
「さ、飯にするぞ。どうした?ついてこないのか?」
一度足を切り落とされ、治療されたあとさらに火で焼かれ、二度と歩くことが出来ない。
まぁ、知能と文字の読み書きするくらいの能力は残ってるんだろう。
それなりに遊ぶ方法はある。
殺しはしないさ、たっぷり遊ぼうな、まりさ。
【終】
by原あき
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 賢いって・・・野良でも教えれば平仮名読めるのに・・・
ぱちゅりー種みたいに賢者(笑)になっただけじゃんww -- 2018-01-19 06:22:04
- ゲスは服従するまでひたすら躾ける、死ぬか服従しか無いのだから・・・
この兄さんが売れ残り持って帰って処分すれば、ショップから直接処分した訳じゃないから良いんじゃないだろうか?
と屁理屈をこねてみる -- 2012-12-13 05:57:17
- 罵詈雑言の果てに見えるものは虐待しかないのだよ! -- 2011-09-14 00:37:17
- どれだけ賢くてもゲスはゲスやっぱりゆっくりだなwww -- 2011-05-02 23:43:26
- たしかにゆっくり基準じゃ賢いけど
悲劇の引き金は自身のゲスさだよなw -- 2010-10-03 05:03:23
- 頭が良いと言うよりタダのゲスじゃねぇかぁ~!
でも虐待用としては秀逸な出来だと思う -- 2010-08-02 00:58:22
最終更新:2009年10月18日 13:17