ふたば系ゆっくりいじめ 616 理由

理由 30KB


虐待-凄惨 理不尽 現代 ノーマル




※テンプレです
※善良で素直なゆっくりが悲惨な目に遭います
※登場人物は『ゆっくりを します』









ある晴れた日。
僕はまだ日が昇る前に起床した。
少し遠出をするためだ。
家を出て、電車とバスを乗り継ぎ、降り立ったのはトタンで作られた祠のようなバス停。
鎮守の森から抜け出た細い道の向こうに、目指す山があった。

小さなリュックサック1つという軽装で頂上付近に辿り着いたときには、腕時計の針は正午を回っていた。
木立の中の適当な場所にごろりと横たわり、雲ひとつ無い空を見上げる。
冬の始まりの日差しはまだ暖かく、秋の終わりの風は少し冷たく、そのどちらもが心地好い。
そんな12月の初旬。

都会の喧騒から離れて、思いっきり羽を伸ばす時間のなんと穏やかなことか。
ここ最近は毎週のようにどこかの山や森に行っていた。

特に何かをする訳でもなく、ただのんびりと過ごす。
ここは行楽地ではない。
人気の無い森。
遠くで鳥の鳴く声が聞こえる。
まどろみかけたとき、気配を感じて僕は眼を開けた。
下生えがさわさわと揺れる音がする。

起き上がり振り向くと、そこにいたのは、ゆっくり。
赤いカチューシャと金色の髪が特徴のゆっくりありすである。
成体になりかけだろうか、バスケットボールより一回り小さいくらいの大きさだった。
ゆっくり特有の、にこにことした顔で僕を見つめている。
声をかけようとしたら、先に向こうから挨拶してきた。

「ゆっくりしていってね!」
元気な、よく通る澄んだ声。
それを合図に、ありすの後ろからぴょこんと小さいゆっくりが2匹飛び出してきた。
テニスボールくらいのサイズの、子ゆっくり。
黒い帽子と金髪のゆっくりまりさに、赤いリボンと黒髪のゆっくりれいむだ。

「にんげんしゃん! ゆっくちしていっちぇね!」
「おにーしゃんは ゆっきゅりできりゅひと?」
ちょっぴり恥ずかしそうな、けれども期待に満ち溢れた顔で訊ねてくる。
恐らく、僕が寝転んでいる姿をしばらく前から見ていたのだろう。
そんなキラキラした目で見つめられたら、応えてやらないわけにはいかない。

「ああ、ゆっくりしているよ。君たちは……親子なのかい?」
笑顔で返事をすると、ありすたちの顔はパアァッとより一層明るさを増した。
しかし、僕の見立ては間違っていたらしい。

「ゆゆっ? ちがうわよ!」
「ありしゅおねえしゃんは まりしゃたちの おねえしゃんにゃんだじぇ!」

「ということは、姉妹なのかな?」
僕の問いかけに、ありすは首を傾げる様なポーズをとる。

「ゆ~ん。れいむとまりさは いもうとみたいにかわいいけど そうじゃないわよ!」
「ありしゅおねーしゃんは みんにゃのおねーしゃんにゃんだよ!」

成る程、このありすは近所の子供たちの憧れのお姉さん、といったところか。
よくよく考えてみれば、3種のゆっくりが親子や姉妹なんていうのは滅多に無い組み合わせだ。

「ありす、みんなを連れてお散歩かい? 他のお友達や家族は?」
「そうよ! もうすぐ えっとうをしなくちゃいけないから きょうは さいごのおさんぽなのよ!」
「れいみゅのおかーしゃんたちは おうちで ゆっきゅりしちぇりゅよ!」

『えっとう』というのは所謂冬篭りのことだ。
自然界はゆっくりに対して非常に厳しく、冬を越せないで死んでいくゆっくりは数え切れないほどいる。
それでも何とか生き延びようと、ゆっくりたちは一生懸命に冬への対策を練るという。
その一つとして出生数の制限が知られている。
この時期の子ゆっくりは1家族に多くても3匹くらいで、1人っ子というのも珍しくは無いそうだ。
そんな大事な子供たちの世話を任されるほど、このありすは信頼されているらしい。

「面倒見が良いんだなぁ。偉いね、ありす」
僕の言葉に、ありすは柔らかそうな頬を桜色に染めて照れる。

「あ、ありすは おねえさんなのよ! だから とうぜんよ!」
ゆっへん、と胸?を張るお姉さんありすに「しゅーり しゅーり」と擦り寄るチビれいむとチビまりさ。
ありす以上の柔肌をふにふにと変形させながら、キリッとして自慢げに言う。

「ありしゅおねえしゃんは すっごく ものしりにゃんだじぇ!」
「それに とっちぇも やしゃしいんだよ!」
「「だーいしゅき!!」」
子ゆっくり2匹が恥かしげもなく親愛の情を表現すると、ありすはいよいよ真っ赤になった。
そんな3匹の様子を見て、僕はくすくすと笑う。

可愛いなぁ。

僕はゆっくりが好きだった。
その表情、仕草、声に至るまで、ゆっくりの全てが大好きだった。
とある評論家はゆっくりのことを『饅頭の妖精』と言っていたが、その通りだと思う。

「本当の家族みたいに仲良しなんだね。羨ましいなぁ」
その台詞を待ってましたと言わんばかりに、3匹が僕を誘う。

「ゆっ! おにいさんも いっしょにゆっくりしましょうよ!」
「まりしゃ にんげんしゃんと あしょびちゃいよ!」
「ゆっきゅり! ゆっきゅり!」

時計を見ると、時刻は1時少し前。
最終のバスが出るまでには充分に余裕があった。
もとより、断るなんていう選択肢は無いのだけれど。

「ありがとう。それじゃあ、皆で遊ぼうか!」

ありすたちは太陽のように輝く笑顔で歓迎してくれた。


     *         *         *


ゆっくりと遊ぶ、と言っても、万事においてのんびりとしたゆっくりはあまり激しい運動が得意ではない。
必然的に僕がありすたち、特に小さなチビまりさたちに合わせることになる。
まず最初にやったのは『すーりすーり』だ。

「おにーしゃんのおてて あっちゃかいよ! ゆっきゅり~♪」
「くちゅぐったいんだじぇ~♪」
子ゆっくりの肌は温かく、同時にぷにぷにとした張りのある弾力性を備えていた。
ちょんと押すと指に吸い付きそうなほど柔らかい。
試しにチビまりさの頬を引っ張るとまるでお餅のようにびよーんと伸張する。
どれくらい伸びるんだろう?

「ゆひぇ~。おひーひゃん いひゃい。やめひぇ~」
チビまりさに抗議され慌てて手を離す。
いけない、つい夢中になってしまった。

「まりしゃ まだ のーびのーびは できにゃいんだじぇ! ぴゅんぴゅん!」
ぷきゅうっ、と膨れて拗ねるチビまりさ。
ちょっぴり涙目になっているのが愛らしいと思いつつも、僕は素直に謝る。

「ごめんよまりさ。あんまり気持ち良かったからつい」
「ゆぅ~? ……まりしゃのほっぺ しょんなに きもちいいんだじぇ?」
「そりゃもう。とてもゆっくり出来たよ」
「ゆふぅ~ん♪ それじゃあ ゆっくちゆるしゅんだじぇ!」
あっという間にご機嫌になるチビまりさ。
『今泣いた烏がもう笑う』とはこの事だ。
僕はそんなチビまりさを右手で優しく包むと、『たかいたかい』をしてあげた。

「ほぅら、どうだいまりさ?」
「ゆっゆーん♪ まりしゃ おしょらをとんでりゅんだじぇ♪」
キャッキャと満面の笑みを浮かべて喜ぶチビまりさを見て、チビれいむが僕の足下でぴょんぴょんと跳ねる。

「れいみゅもっ!! れいみゅも たかいたかいしちぇねっ!!」
「いいとも。そーれ、高いたかーい」
右手にチビまりさ、左手にチビれいむを持ち、僕は両腕を翼のように広げてくるくると回る。

「しゅごいんだじぇ~♪」
「れいみゅ とりしゃんに なっちぇりゅよぉ~♪」
この高さからの眺めは生まれて初めての経験だろう。
チビまりさたちは歓声を上げ続ける。
その喜び様が嬉しくて、僕も張り切って回る。
しばらくして2匹を地面に下ろすと、

「ゆっくっち まっわって りゅんだっじぇ~……♪」
「れいみゅ ぐーりゅぐーりゅ しゅりゅよ~……♪」
その場でフラフラと独楽のように踊り始めた。
やがてポテンと転がり「「ふにゃあっ……」」となるチビまりさたち。

ちょっと張り切りすぎたかな。
動けそうにないチビまりさたちの具合を診る僕に、ありすが声を掛けてくる。

「ふたりとも だいじょうぶ?」
「少し目を回しているだけだよ。心配ないさ」
2匹の状態を確かめると、僕はおもむろにありすを両手で持ち上げた。

「ゆゆっ?! ど、どうしたの おにいさん?」
「ん? 『たかいたかい』だよ」
このくらいの大きさにまで成長すると、もう親ゆっくりから『たかいたかい』なんてしては貰えないだろう。
親離れという意味でも、体重という物理的な意味でも。
それでも、空を飛んでいるかのような浮遊感はそうそう忘れられるものではない。
事実、ありすはチビまりさたちのことを羨ましそうに見ていた。

「ゆゆぅ。ありすは いいわよぉ……はずかしいよぉ……」
顔を赤らめて遠慮するありす。
ひょっとすると自分を尊敬する2匹の手前、子供っぽくはしゃぐ訳にもいかないのだろうか?

「おちびちゃんたちなら気にしなくていいよ。折角のチャンスなんだ。そーれ、高いたかーい」
「ゆゆぅっ?! ゆひゃっ! ……ゆわ~い♪ おそらをとんでるみたい~♪」
久しぶりであろう『たかいたかい』に、強張っていた顔もすぐに弛緩し蕩けるような笑顔になった。
そうそう、遠慮なんて似合わない。
君たちはゆっくりなんだから。



チビまりさたちが回復すると、次に始めた遊びは『かくれんぼ』。
しかし、僕が鬼になるとまるで勝負にならない。
何故ならありすたちは隠れる度に声を出してしまうからだ。

「ゆっくりかくれるわよ! そろーり そろーり……」
「「しょりょーり しょりょーり!!」」
声がした方を見れば、太い幹の陰からチビれいむの赤いリボンとチビまりさの小さなお尻がはみ出している。

「……見ーつけた」
「「「ゆわぁあぁぁぁあああっ!!」」」
3匹一緒だなんて本当に仲良しだ。

反対に僕が隠れると、ありすたちには中々見つけられなかった。

「ゆわぁ~ん! おにーしゃん どきょにいるにょお?!」
「ゆっくちしにゃいで でてくるんだじぇ~!」
「ふたりとも なかないで! ゆぅう……!」
チビれいむたちが泣き出し、宥めるありすも涙目になってしまう。
そんな光景を黙って見ていることなど出来なかった。
わざと大きな音を立てて居場所を教えてやる。

「ゆゆっ?! ……ゆーっ!! みちゅけちゃよっ!!」
「まりしゃたち しゃいきょー にゃんだじぇ!!」
「ふたりとも すごいわよっ!」
「いやぁ、参ったなぁ。こんなにあっさり見つかるとは思わなかったよ」
わざとらしいかなとは思いつつも調子を合わせる。
すると、盛り上がるチビれいむとチビまりさに気付かれないように、ありすはそっと僕に目配せした。
その目は、
(ありがとう。おにいさん)
と言っているようだった。

(……いいさ。僕も楽しいしね)
笑顔を返してやるとありすはポッと赤くなった。
それを見てチビれいむたちが心配そうに声を掛ける。

「ゆぅぅ~? ありしゅおねーしゃん どうしたにょ?」
「おねつが あるにょかじぇ?」
「な、ななな、なんでもないわよっ!!」
「本当にそうかな?」
「おおおおおにいさんっ?!」

小春日和の陽光が照らす森の中に、僕たちの賑やかな声だけが響いていた。


     *         *         *


「れいみゅ おにゃかちゅいた!」
「まりしゃも!」
『だるまさんがころんだ』をしている最中に、チビれいむたちが空腹を訴えた。
時刻は3時ピッタリ。
これはちょっと凄いんじゃないだろうか。
改めてゆっくりの神秘のようなものに触れた気がする。
感心するのもそこそこに、僕はお菓子を食べようか、と提案した。

「あみゃあみゃしゃん?! ゆっくちたべちゃいのじぇ!」
「はやきゅ たべちゃいよぉ~!」
『お菓子』という単語を聞いただけで子ゆっくり2匹の口からは涎が溢れてきた。
それを嗜めるお姉さんありす。

「ふたりとも おぎょうぎが わるいわよっ!」
そう言うありすの口元も、ちょっぴり緩んでいる。

「さて、何が出るかな?」
「わくわく!」と声に出して待ってくれるチビまりさたちが微笑ましい。
僕がリュックサックの中から取り出したのは、チョコレートにマシュマロ、そしてキャラメル。
これらは全部、僕が山に登る際の必需品だ。

積み重なったお菓子を前にして、3匹は全身で嬉しさを表現する。

「こんなに たくさんのおかし みたことないわ……!!」
「こりぇ じぇんぶ たべちぇいいにょ?!」
「まりしゃ このしろいの たべりゅのじぇ!!」
人間からしてみればちょっとの量のお菓子でも、ゆっくりにとっては御馳走の山だ。
チビまりさたちは辛抱出来ずに飛び付こうとする。

「ちょっと待った。食べやすい大きさにしてあげるから」
板チョコをチビれいむの口のサイズに合わせて小さく砕いてやる。
ありすもチョコレートがいいらしい。
マシュマロは……面白そうなのでそのままチビまりさに与える。
僕が持って来たマシュマロは結構大きめのものだった。

「さぁ、お食べ」
「「「ゆわぁ~い♪」」」
チョコレートの欠片をパクッと頬張ると、ありすとチビれいむはその甘さに顔を綻ばせた。

「ゆぅ~♪ とってもおいしいわ!」
「むーしゃ むーしゃ しあわしぇ~♪」

チビまりさはというと、自分の体の半分くらいはあるマシュマロを小さな舌でつんつんと突っついて、その感触に驚いている。

「ふわふわしゃんは ゆっくちしてるんだじぇ!」
目を輝かせてマシュマロに肌を擦り合わせ始めた。

「まりさ、ゆっくりしているのは良いけど、早く食べないと他のお菓子が無くなっちゃうよ?」
「ゆゆゆゆっ?! じゅるいんだじぇっ?!」
チビまりさは慌ててマシュマロを平らげようとする。
しかし小さい口で一飲みにしようとするものだから、悪戦苦闘する事になった。

「ふわふわしゃん! ゆっくち まりしゃに たべられりゅのじぇ!」
マシュマロと取っ組み合うチビまりさ。
お互いにふにょふにょとして、上になったり下になったりの大騒ぎ。
優勢なのはマシュマロのようだ。

「ゆわぁぁぁん! ふわふわしゃんは いじわりゅなのじぇ~!!」
これ以上の放置は流石に可哀相なので、僕はマシュマロを一口サイズに千切ってやる。

「ほら、まりさ」
「むーちゃ むーちゃ……。! ち、ち、ちあわちぇ~♪」
やっと食べることの出来たふわふわに大満足。
全身を震わせて幸せを表現するチビまりさ。

「おにいしゃん ありがとうなんだじぇ!」

どういたしまして。
こちらこそ素敵な笑顔をありがとう。


お菓子を食べながら、ありすたちは色々な話を聞かせてくれた。

3匹とも人間と遊ぶのは初めてで、僕に声をかける時はとても緊張したということ。
ありすたちのおうちは森の奥にあり、今日のお散歩は遠出なのだということ。
この山には捕食種がおらず、とても平和なゆっくりプレイスだということ。
どんなお花が甘くて、どんな芋虫が危険なのかということ。
チビまりさはいつか蝶々を捕まえられるようになりたいということ。
『えっとう』が始まったらあんな事やこんな事をして過ごすつもりだということ。
チビれいむとチビまりさは幼馴染で、将来はずっと一緒にゆっくりしたいと思っているということ。

他にもたくさんの、ゆっくりしていること。

とかく世知辛い世の中で暮らす僕にとっては、どこか遠い世界での出来事を聞かされているようだ。
ゆっくりした日常を送るありすたちは、この世の全ての醜いものの対極にあるかのように思えた。



トクン



僕の心の中で変化が起こる。
いや、正確に言うなら臨界点を超えただけだ。

でも後ちょっと待って欲しい。

もう少しこの子たちと一緒に……。



「ゆんやぁ~! あまあまひゃんが くっひゅいひゃのひぇ~?!」
突然の悲鳴に何事かとチビまりさの方を見れば、キャラメルが前歯と上唇にくっ付いて取れなくなっていた。
噛んではいけないよ、と言ったのに思い切り齧り付いたらしい。

「どれ。取ってあげるからおいで」
僕はぴょんこぴょんこと近寄って来たチビまりさを右手で持ち上げる。

「ゆひゅ~! はやふひょっひぇえ~!」
あーん、と口を開けるチビまりさ。
小さくて真っ白な歯が綺麗に並んでいる。

ゆっくりにとって『口』は、ただ単に食物を取り入れたりするためだけのものではない。
人間で言うところの『手』の役割も果たす重要な部位だ。
それを無防備に晒すという事は、僕を完全に信頼し切っているという何よりの証。

「はやひゅ~!」
チビまりさは体をふりふりさせる。
その動作の一つ一つが愛くるしい。









あぁ。

そんな事されたら。

もう我慢出来ないじゃないか。

「まりひゃ もういっひゃい ふわふわひゃんを ひゃべるんひゃひぇ!!」
もう一度マシュマロを食べたいと言うチビまりさ。

ごめんね。
それは無理だよ。

僕はチビまりさの口の中、キャラメルがくっ付いた『前歯』を親指と人差し指でつまんだ。
そのまま無造作に捻り、引き抜く。



ミチリ

ズグシュ



「びゅ……?!」
穴が開いた歯茎からダラダラと餡子が漏れ出す。

あぁ、やってしまった。
ここから先は一方通行だ。

僕は手の平の上にある小さな歯を見つめる。
まだ子供だった頃、乳歯が抜けた時の事を思い出した。
上の歯は下に投げるんだったっけ?
キャラメルごと茂みの中に放り込んだら、もう何処にいったのか分からなくなった。

「い……いぎゃあぁあぁぁぁあああぁあああああっ!! いぢゃいぃいぃいぃぃぃいいいっ!!」
チビまりさはやっと悲鳴を上げた。
ゆっくりしすぎだよ、まりさ。

出会ってから初めて見せてくれた表情。
何がなにやら分からず、ただ混乱している。

「ど……どうしたのっ?!」
「まりしゃっ? おにーしゃん? にゃにが あっちゃにょ?」
悲鳴を聞いてありすたちが僕の足下にやって来る。

「ゆぎゅうぅぅぅううう……!」
激痛に悶え苦しみ、チビまりさは目をギュッと瞑った。
目じりから一雫の涙が流れ落ちる。
僕はチビまりさの左の瞼を抉じ開け、小さくて愛嬌のある瞳を抉り出した。
淡い栗色の眼球は陽の光を反射して輝いていた。

「ゆぎゅぅぴぃぃいい! いぢゃい! いぢゃいよぉお! ……ぴぎゅっ?!」
少量の餡子に塗れてプルプルと震える眼球を、チビまりさに見せ付けながらゆっくりと潰す。
寒天のように柔らかい眼球は、ほんの少し力を入れるだけで呆気なく崩壊した。
ブチュリという音の後に、握り締めた指の間から透明で水っぽい残骸がボタボタと落ちていく。

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ?! お゙めめがっ!! まりじゃのお゙めめがあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ!!」
泣き叫ぶチビまりさの右目からは砂糖水が流れ落ち、左の頬には餡子が混じって濁った涙が伝っていく。
とても歪な、けれども美しいシンメトリー。

「お、おにいさんっ! なにが……ああああああ!! まりさのおめめがぁあぁぁぁあああ!!」
「まりしゃぁあぁあぁあぁあああっ!!」
ようやく事態を理解した2匹の叫び声が加わり、美しい三重奏が奏でられる。

さぁ、まりさ。
次はそのマシュマロみたいなほっぺだ。
右の頬をしっかりと掴み、力を込めて真横に引き伸ばす。

「やべでえ゙え゙え゙……え゙え゙え゙ぇえ゙ぇっ!! あ゙ゔぇ……え゙……お゙い゙い゙ゃんあ゙ゔ」

先ほどの遊びの時には途中で止めたけど、今度は限界まで挑戦するよ。
ゆっくりと、少しずつ引っ張り続ける。
そして10センチも伸びたところで手応えが変わり、


プチュッ……ブチブチブチッ!


「え゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っぁあ゙ぁあ゙あ゙あ゙ぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
もちもちの肌は呆気無く千切れてしまった。
おや、本当だ。
まだ『のーびのーび』は出来なかったね。

「い゙っ! い゙だい゙よお゙ぉお゙ぉっ! い゙ぢゃあ゙い゙ぃっ!! もお゙やぢゃっ、んぐびゅっ……?!」
右側の歯茎が剥き出しになったチビまりさの顔面に拳を叩き込む。
一撃で残りの歯がバラバラに砕け散る。

まだいけるかな?
何度も殴りつける。

「がひゅっ!! ひゃべっ! ひゃぶぁ、ひゃふ……びゃぐぶっ!!」
殴られているのに喋ろうとするから、可愛らしい舌までグチャリと潰れた。
残っていた右目も、ギュポンと押し出されて破裂した。

チビまりさの顔は餡子が薄く滲んで膨れ上がり、まるで内出血しているみたいだ。
だらしなく開いた口からは餡子混じりの涎が垂れていた。
足下の2匹は、さっきから「まりさ まりさ」と言うだけで、僕に体当たりすらしようとしない。

ここまで僕は一切表情を変えていない。
ずっと同じ微笑を浮かべている。
その事がありすたちを余計に混乱させる。

ほんの少し前までゆっくりしていたお兄さんが暴力を振るう理由が分からなくて、オロオロするしかないありすたち。
呼びかけている相手が『お兄さん』なのかどうかも怪しい。
チビまりさの悲鳴は確実に精神を苛み、ありすたちの顔は焦りや恐怖でぐちゃぐちゃだ。
目の前の現実を信じられない、信じたくないという気持ちでいっぱいなのだろう。

その顔の愛くるしさといったら。

僕も信じられないよ。
ほんのちょっと手を加えるだけで、君たちはますます可愛くなるのだから。

ほんの数分で、僕はチビまりさから多くのものを奪い取った。
真っ白な歯、まだ満足に動かせない舌、綺麗な瞳、柔らかな肌、そして僕と過ごした時間に感じたであろう幸せ。
でもまだ一番大事なものを貰っていない。

「おねがいっ! おねがいっ! まりさをはなしてぇっ!!」
「もうやめちぇえぇぇぇえええっ!! まりしゃがっ! まりしゃがしんじゃうよぉぉぉおおおっ!!」
喉も裂けんばかりの叫び声。
僕は右手の中で痙攣するチビまりさからありすたちの方へと視線を移す。

「そうだね。確かにこのままだと死んじゃうね。でも、『ぺーろぺーろ』してあげたら治るんじゃないかな?」
そう言って僕は、ボロ雑巾のようになったチビまりさをありすたちの前にそっと置いてやる。

「ぉ……ぉぅぇ……ぃぁぃ……」
光と移動能力を失い、言葉と餡子も零れ落ちていく有り様だ。
仮に助かったとしても、その先にあるのは辛く苦しいゆん生だけだろう。
そんなゆん生を強いるほど僕は残酷ではない。
ずっと見守ってあげる事は出来ないからね。

「ゅぅ……ゅぅ……ぇぃゅ……ぉぇ……ゃ……ぃゃぃ……ぃゃぃょぉ……」
「まりさっ! まりさぁああぁぁぁあああっ! もう だいじょうぶだからね! ぺーろ ぺーろ! ぺーろ ぺーろ!」
「ゆっきゅりしちぇね! ぺーりょ ぺーりょ! ぺーりょ ぺーりょ!」
虫の息のチビまりさに擦り寄り、必死にその体を舐めるありすとチビれいむ。

急がないとまりさが死んじゃう。
けれども皮を破かないように優しく、慎重に……!

……とでも思っているのかな?
健気な2匹の姿に感動しつつ、僕はチビまりさの後頭部に右足のつま先をトンと置いた。

「さようなら、まりさ。楽しかったよ」


グシャアッ!


一切の躊躇無く、右足に体重をかけた。
潰された後頭部で行き場を失った餡子が、口や眼窩、皮の破れたところからビュッと噴き出す。
茶褐色の生温かい飛沫がありすとチビれいむの顔にこびり付いた。

足をどけると、そこには穴の開いた顔面だけが辛うじて残り、後はぺしゃんこに潰れたチビまりさがいた。
もう死んでいるから『あった』と言うべきか。

「あ……ぁあ……まりさ……いやぁ……まりさぁ……」
「まり……しゃ……? ゆぐっ……ゆうぇぇぇん……まり、しゃぁ……。ひぐっ……どう、ちてぇ……?」
呆然とするありすとチビれいむ。
無残なチビまりさの亡骸を前にして、ただひたすらに涙を流す。

僕はもう一度足を振り上げた。



ダンッ! ブチャ! グチュチュ



容赦なくチビまりさの最後のひとかけらを踏みつけ、すり潰す。

「ま……り……しゃ……」
チビれいむは泡を吹いて気絶した。
大好きなまりさの最期を看取ることが出来て、本当によかったね。

「……まりさは……とっても……ゆっくりした まりさだったんだよ……?」
一方のありすは僕の眼を見つめて問いかけてきた。
気丈なお姉さんありすが、そこにいた。

「うん。短い間だったけど、一緒に遊んでてよく分かったよ。まりさはゆっくりしたいい子だった」
答えながら、僕はありすの体を持ち上げる。
ありすは「ひっ!!」と体を震わせたが、逃げる事など叶わない。
怯えきったありすに笑いかけて、チビまりさの中身で染められた顔を拭ってやる。
泣き腫らしてふやけた肌が気持ちよかった。

「お化粧してあげようか、ありす」



ザクッ!



涙に濡れる左目の下、湿った肌に人差し指から小指までの4つの爪を食い込ませ、真下に向かって一気に引っ掻く。

「ぴぎゅい゙ぃい゙ぃっぃぃい゙ぃぃっ!!!!」

切り口からカスタードが流れ出し、ありすの左頬は淡い黄色に染まっていく。
指に付いたありすの中身を舐め取り、悶絶する顔に吐きかけてやる。
口の中に残ったのは今まで味わった事の無い仄かな甘さだった。

「ありす?」
僕は問いかける。
ありすは呻くだけ。

「ねぇ、ありす?」
僕は再び問いかける。
傷口に爪を引っ掛け、皮を捲り上げる。
ありすは絶叫した。

「僕のこと嫌いになった?」
僕は三度問いかける。
顔面を耕す。
ありすはようやく返事をしてくれた。

「わがらなぃい゙ぃい゙い゙い゙っ……!! どうじでぇえ゙え゙え゙え゙え゙え゙っ……?! やざじい゙お゙にい゙ざんにもどっでよぉお゙お゙お゙……!!」
絞り出すような悲痛な叫び。
こんな事をされてもまだ、僕に『元に戻って』なんて訴えるありす。
愚かしいまでの純真さだった。
そのまま両手で捻り潰したくなるのをグッと堪える。

「そう。ありがとう。そんな君たちが大好きだよ」
泣きじゃくるありすを優しく下ろす。
もう動く気力も無いようだった。

さて、それじゃあ次は気絶しているチビれいむだ。
ピクリとも動かないが、顔を近づけて確かめるとちゃんと息をしている。

「れいむ、大丈夫かい?」
しゃがみ込んだまま拾い上げて体をさすってやると、程無くしてチビれいむは意識を取り戻した。

「ゆぅ……」
うっすらと開いた眼に映るのは、まりさを潰した『おにーしゃん』の笑顔。

「ゅ……ひゅぅ……ゅゃあ……ゆんやぁあぁぁぁ……!」
プルプルと震えだすチビれいむに、僕はにっこりと笑いかけて言った。

「これは夢だよ、れいむ。君はお昼寝して夢を見ているんだ」
「……ゆめ……? ほんちょう……?」
『夢』という言葉で体の震えが少しずつ鎮まっていく。
緊張が解かれていく。

「そうさ。だから夢から醒めれば、またみんなと一緒に遊べるよ」
あまりにも稚拙な嘘。
しかし幼いチビれいむには気付けない、いや気付きたくない束の間の希望。

「ゆ~。きょわい ゆめしゃんだにぇ。はやきゅ おわっちぇにぇ」
「ほぅら、夢の中だからお空を飛べるよ」
僕はゆっくりと立ち上がる。

「ゆ~♪ ゆふふ~♪ おしょらを~とんじぇりゅ~♪ ゆっきゅり~♪」
どこか虚ろな目で無邪気に喜ぶチビれいむ。
その頬を抓る。
かなり手加減して、だ。

「ゆびゃっ……!」
本来ならばゆっくりの甘噛みと同程度の刺激。
チビれいむは過剰な反応を示す。

まぁ、そうだろうね。

「どうした? 痛いのかい? じゃあこれは夢じゃないのかな?」
その言葉がスイッチとなった。
チビれいむの顔からは笑顔が消え、目には涙が溢れてくる。

「い、いぢゃぐにゃい! いぢゃぐにゃいよ!」

じゃあ、もう少し強くしよう。

抓り上げる手に力を込める。
だが、チビれいむは必死に現実を否定し続ける。

「いぢゃぐにゃい! いぢゃぐにゃい! いぢゃぐにゃいもん!
 ゆめしゃん いじわりゅしにゃいでにぇ! れいみゅ ゆっきゅり おきりゅよ!
 だきゃりゃ はやきゅ……みゅぎゅうぅぅぅうううっ?!」
頑固なチビれいむも可愛かったが、このままではつまらない。
僕はチビれいむの右のもみあげを掴み、引き千切った。
頭皮と、僅かばかりの餡子が付いたそれを、無造作に投げ捨てる。

「いぢゃあぁあぁぁぁああああああっ!!」
「お帰りれいむ。じゃ、遊ぼうか」
僕はチビれいむを握る右腕を頭上に掲げる。

「れいむ、見てごらん。いい眺めだろう?」
「はなぢでね! ゆっぎゅりはなぢでね!」
『たかいたかい』は喜んでくれたのに、どうやらご機嫌斜めのようだ。
ではもっとサービスしよう。

「本当に離してもいいのかい? こんな所から落っこちたら、どうなっちゃうんだろうね?」
「い゙やぢゃぁあ゙っ! い゙やぢゃ! い゙やぢゃ! い゙やぢゃぁあぁあ゙あ゙っ!!
 もゔお゙ゔぢがえ゙りゅゔぅゔぅぅゔゔゔっ!! だじゅげでぇえ゙ぇぇぇえ゙え゙え゙!!」
恐怖に駆られ死に物狂いで手の中から抜け出そうとするチビれいむ。

「おっとっと、そんなに暴れられたらくすぐったくて手を離しちゃうよ?」
僕の言葉に、チビれいむはビクリと反応して必死に体の震えを止めようとする。
それでも込み上げてくる恐怖は相当なものだろう。
これまで理不尽な暴力を受けたことも、ましてや自分が死ぬという事を考えたことも無いであろうチビれいむに耐えられる訳が無い。
僕の腕にはカタカタと小刻みな振動が伝わってくる。

「だぢゅげぢぇぇえぇぇえええ……! じにだぐにゃいぃいいぃぃぃいいい……!」
固く閉じた眼の端から涙をぽろぽろと零すチビれいむの哀切極まる姿に、僕は心を動かされた。
僕は大切なことを忘れていた。

「! ごめんよ、れいむ。僕はなんて酷いことを……」
僕は腕を下ろす。
手の中ではチビれいむが未だ震えていたが、
その頭をそっと撫でてやる。

『おにーしゃん』だよ、れいむ。

チビれいむは心の底から安堵し、泣き笑いの表情を浮かべていた。

「……おにー……しゃん……? ゆぅぅぅぅ……れいみゅ ほんちょうに こわきゃっ……」



「コレ、邪魔だよね」
つぶらな瞳を包む瞼を優しく千切り取る。

一生に一度しか体験出来ないアトラクションだ。
最初から最後まで、全てをその目に焼き付けなければもったいないよ、れいむ。

「ぴぎゃあ゙ぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
乾燥を防ぐために、チビれいむの瞳からは大量の涙が流れ出ている。
それも長くは保たないだろう。

「お゙ね…お゙ねえ゙…じゃ…ん…!」
もう僕に対する信頼など粉々に砕け散っただろう。
チビれいむはありすに助けを求める。

今まで泣き続け、半ば放心状態だったありすにその声が届いた。

「れい……む? ゆ、ゆ、ゆやぁあぁああっ! れいむをはなしてぇえぇぇぇえええっ!!」
顔を上げ、現状を認識すると僕の足に縋りついてきた。
カスタードがこぼれるのも構わずに、懇願する。

お姉さんの鑑だ。
こんなに素敵なゆっくりは久しぶりだ。

「もうやめてぇっ! どうして こんなことするの……?!」
率直な疑問。
それとも愚問と言うべきか。
その問いに僕が答えたところで、君たちは納得できる筈も無いのだから。

でも。

でも本当に、どうして僕はこんな風になってしまったんだろう。


     *


例えば、まだ誰の足跡もついていない真っ白な雪原を最初に見つけたとき、あなたは何を思う?
その美しい光景を、他の人にも見せてあげたいと思うだろうか?

僕は思う存分踏み荒らしたいという衝動に襲われる。

或いは、ビルの屋上から眼下の町並みを眺めるとしたらどうだろう?
綺麗な景色だけで満足出来るだろうか?

僕はフェンスから身を乗り出して、転落の危険も顧みずに地面を覗き込んでみたいという欲動に駆られそうになる。

それはひょっとすると、誰もが魅了されてしまうかもしれない感情。

僕は、『取り返しのつかなくなること』にどうしようもなく惹かれてしまうのだ。
もちろん、他人に危害を加えることは許されないと重々承知しているし、自分を危険に晒す勇気も無かった。
『命』がどれほど尊いものかはよく理解しているつもりだ。
だからこそ、心の中に不意に湧き上がる負の感情を、いつも理性で抑えつけていた。

そんな僕の目の前に現れた、ゆっくりという存在。
夢と希望に満ちた明日を迎えるために、必死になって生きようとしているのに『生き物』ではない。
子供を生み、その誕生に心を震わせ、家族や友人の死を嘆き悲しむのに『尊厳』など無い。
美味しいものを食べれば幸せを感じ、殴られれば痛みを感じるただの『饅頭』。

ゆっくりを虐待する事は、『罪』には問われない。
ゆっくりに『命』は無く、『権利』も認められていないから。

それがこの世界の常識。
人間がゆっくりに用意した『居場所』。

でも僕は思うのだ。
ゆっくりは『尊厳』のある『生き物』だと。

そう思えたからこそ、抑圧されていた僕の狂気は解放された。

僕はゆっくりが好きだ。
絶望に歪んだ表情、激痛にのた打ち回る姿、甲高い悲鳴に至るまで、ゆっくりの全てが大好きだ。
とある評論家はゆっくりのことを『饅頭の妖精』と言っていたが、その通りだと思う。

最高の存在だよ、ゆっくりは。

僕は純粋で心優しいゆっくりは可愛いと思う。
そんなゆっくりと仲良くしたいとも思う。
実際、そうしたければ簡単に出来ることだ。
「ゆっくりしていってね」と笑顔で挨拶すれば、ゆっくりたちも満面の笑みを返してくれる。

そんなゆっくりたちと『ゆっくりできた筈の時間』を、ぶち壊す。
ゆっくりたちの人懐っこい笑顔を修復不可能なまでに踏みにじるのが、とても哀しく、堪らなく楽しい。

こんなにも脆く、こんなにも儚い。
だから愛しい。

こんなにも無垢で、穢れとは無縁だ。
だから虐待したい。

折れる骨も無ければ、吹き出す血も通っていない。

対象が子犬や子猫などの小動物だったら吐き気を催すような行為が平然と出来る。
『命を弄んだ』という罪悪感すら快楽に変わる。



君たちが望むものを与えよう。
甘いお菓子、楽しい遊び、幸せな時間、優しい微笑み。



だから。

せめて君たちは僕のために、『命』くらいは捨ててくれ。


     *


「どうして こんなことするの……?!」

「どうして、か。確かになんで僕はこんな事するようになったんだろうね」
僕の返事にありすは一瞬呆けたような顔をする。

「君たちは何も悪くなんかないよ。……でも、君たちがいるから僕はこんな事をするんだ」
そう言いながら、僕は左手の親指と人差し指でチビれいむのリボンの端っこを摘み、引っ張る。
僕の右手の中のチビれいむの髪の毛から、大切な飾りがシュルシュルと解け始めた。

「君たちは運が悪かった。僕みたいな人間に出会ってしまった。
 君たちはゆっくりしすぎた。僕の本性を見抜けないほどに。
 でもやっぱり一番の理由は……」

「……?」
「……君たちが可愛いお饅頭だから」
ありすに微笑んで、僕はチビれいむを空高く放り上げた。
周囲の梢よりも高く、高く上がるチビれいむ。
森を上から眺めるのはどんな気分だろう?
その感動も一瞬で終わる。

「おしょりゃをとんでるみちゃいぃいぃぃぃぃぃ…………ぁぁぁぁぁあああああああああっ!!」
重力に逆らったモノの末路は決まっている。
チビれいむは顔面を真下にして落ちてきた。

「さようなら、れいむ。楽しかったよ」



ブチャ!



地面に小さな餡子の花が咲いた。

「ゔあ゙ぎゅい゙ぐぎゅあ゙ぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
チビれいむの死をまざまざと見せ付けられ、ありすは中身を嘔吐する。

そんなありすのふわふわとした金髪に、子れいむのリボンを結び付けてやる。
ゆっくりにはどうやっても外せはしないだろう。

「似合ってるよ。ドスまりさみたいだ。優しくて人気者のありすにぴったりだね」
「ゅぁ……ぁあぁ……ぃゃ……ぃやだぁ……。とって……とってよぉおぉぉおぉぉぉおおお……!」
「ひどいなぁ。ありすのことをあんなに慕っていたおちびちゃんの形見なのに。
 ありすはあの子たちのことが嫌いだったのかい?」
「ゆ……う……あ……あぁ……ぁ……ゅ……」
それきりありすは何も言わなくなった。

「さてと、それじゃあ、僕はそろそろ帰るよ。
 その飾りを見て、おちびちゃんたちの親はきっとびっくりするよ。
 悲しむだろうね。どんな悲鳴を上げるのかな。
 怒るだろうね。どんな表情をするのかな。
 楽しみだね、ありす」

さようなら、ありす。
君たちは今まで出会ったどのゆっくりよりも可愛かったよ。
一緒に過ごした時間は、決して忘れない。

僕が視界から消えてしばらくしてから、憔悴し切った表情でありすはゆっくりと森の奥へと入っていった。
どんなに凄惨な体験をしても、ゆっくりに自殺は出来ない。
素敵な思い出を背負って、ありすは生きていくのだ。






その後姿が見えなくなるギリギリまで待ってから、僕はありすを追い始めた。

帰りのバスには間に合わないだろうが、そんな事はどうでも良かった。

これほどまでに善良なゆっくりに出会えた興奮が僕を突き動かす。



ありすの群れのゆっくりたちは『えっとう』と称した冬篭りの準備を終えているだろう。
暖かいおうちで大好きな家族と一緒に過ごすという幸せな夢を見ているだろう。

君たちには春よりももっと素敵なものをあげるからね。

ありすの後を追いかけながら、僕はゆっくりたちの笑顔に思いを馳せた。





(了)





愛情は憎悪より重要である。
憎悪には限界がある。愛情は世界を包み込む。

あなたがゆっくりを虐める、或いは愛でる理由は何ですか?



年末は時間の進み方がおかしいですね。
後ろを振り返ると相対性理論が笑っているような気がします。

3つも暗い話が続いたので、次があれば明るい話を。
この話は24観ながら書いたのでそのネタでいくかもしれません。

挿絵 by儚いあき


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このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

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  • お兄さんの気持ちすごく分かる。
    高速道路で運転して、このスピードのまま思いっきりハンドルを切ってみたい衝動に駆られることがある。 -- 2017-11-10 00:27:22
  • ありすがいい感じに絶望しててよかった。乙 -- 2016-02-29 07:43:24
  • めっちゃ興奮した。
    -- 2014-04-16 16:35:40
  • なんだかこのゆっくりみたいな無垢なのって汚したくなるんだよね。
    純真で無垢で善良で無邪気な奴の
    絶望した顔が見たくなるし、痛めつけたくなるんだよね(笑)
    -- 2014-04-16 00:30:32
  • 俺はゆっくりは無邪気で間抜けだけど気の良い奴らって感じでいてほしいから、こういう作品大好きだ -- 2013-08-29 09:38:08
  • ↓じゃあお前はなんでこのページにきたのw?っていうか人間のいじめと同じとかwまあ,いじめは確かに良いことではないけどこれ,ネットだよ?wあとさあ,この感想書くやつの注意書きみた?ここは基本的にこういう作品が好きな人が居る場所だよ?そこに君みたいな正しいことを言っている(笑)人が1人できてどうにかなるとでも?ゆっくり悔やんでいってね! -- 2013-06-29 01:03:28
  • ↓お前らは「ゲスだから」「悪い事をしたから」と理由をつけて無理やり自分を正当化したいだけだろ
    人間のイジメとも何も変わらない。糞饅頭と同レベルの思考だよw
    認めちゃいなよ、苦しがるゆっくりが好きで好きで仕方ないって -- 2013-04-15 08:00:46
  • ↓俺もそうだ だからこういう『キャベツ畑』や『コウノトリ』を信じている可愛い女の子に無修正のポルノをつきつける時 を想像するような下卑た快感がテーマなSSはちょっと合わん 完成度は高いと思うんだがな -- 2012-03-30 00:06:21
  • 俺はたぶん愛ではなんだろう。制裁系と善良愛、ゲス虐待はとってもすっきりするが、善良虐待やゲス愛では凄いイライラする。
    善良は意地悪してもかけらも虐める気もない。だが、ゴミは躊躇なく潰すことに何の疑問もない。
    それが俺のゆっくりへの愛だな。 -- 2011-11-13 17:29:47
  • 現実の犯罪者に同じような思考しているのがいたような・・・ -- 2011-09-29 02:25:14
  • 最後にちゃんと人間さんにお礼を言うこともできないなんて
    ありすはやっぱり田舎もの -- 2011-01-17 12:09:58
  • おすすめスレからきたんだが、確かにこれは傑作だぜ
    可愛いあまりに虐待したくなる「ゆっくり」に対する感情をこれほど上手に表現した作品は見た事がない
    ゲスじゃないのを虐殺したくなるのはこういう感じなんだよ -- 2010-12-16 04:34:05
  • この無力でどうすることもできない糞ありすの絵はいいね。ゆっくりできる。 -- 2010-09-10 23:24:51
  • これはいい。 -- 2010-08-12 02:47:07
  • 一度、潰してしまったお饅頭は元には戻らないか・・
    どんなに素敵な虐待も終わりがあるからこそ、その瞬間を楽しむ
    確かに、これは・・・・・ようやく気付いた・・・・
    この気持ち・・・・・
    まさしく愛だ!!!!握りつぶしたいなぁ!!!ゆっくりぃ!!!飾りの一つも頂いて行く!! -- 2010-07-28 04:26:14
  • 逆もまた然り -- 2010-07-12 22:05:32
  • なんだか森博嗣っぽい? -- 2010-06-15 20:47:40
最終更新:2009年12月25日 19:19
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