昔なつかしゆっくりれいむ02 12KB
昔なつかしゆっくりれいむ 02 作:YT
月曜日。ゆっくりがもそもそと起きて来て、朝日に向かって元気に叫んだ。
「ゆっくりしていってね!!!」
それを見ていると何かむらむらしてきて、洗濯物を入れるバケツを持って来てゆっくりを放り込んだ。
ぼすっ。
「ゆゆっ? 出られないよ? ここはどこ?」
丸い体がすっぽりはまって、動くに動けないゆっくり。
真上から見ると、赤い髪飾りが左右に回転して面白い。
ぐるぐるぐる。ぐるぐるぐる。
けれどもぐらぐらやっているうちにバケツごとごろんと転がって、今度は頭にかぶっちゃった。
「なにするの! れいむおこるよ! やっつけるからね?」
叫んで激しくぴょんぴょんと跳ねる。けれどもそれぐらいじゃバケツは外れない。
そのうちれいむは動き出したけど、のそのそ走っては壁にぶつかり、跳ね返ってはクッションに埋まっちゃった。
のそのそのそ……ゴンッ!
ふらふらふら……ドサッ!
よろよろよろ……バサバサッ!
最後のは本棚にぶつかって振ってきた本に埋まった音だ。
にっちもさっちも行かなくなったれいむは、とうとう泣き出した。
「ゆああああ、ぜんぜんうごけないよ! れいむもうおこったよ! ほんとうにゆるさないからね! やっつけてやるよ!」
ドサドサ、バサッ、ばたんばたん!
暴れまくったけれど、本をどけることは出来なかった。
そのうちに動きが止まって、変な声が漏れてきた。
「ゆううぅぅぅ……ゆううぇぇぇぇぇぇん……」
泣いちゃった。その後もれいむはずーっとめそめそ泣いていた。
三時間ぐらいしてから掘り出してみると、涙の後をつけたまんま眠り込んでいた。
火曜日。エサ皿を前にしたゆっくりが、ぱああと顔を輝かせて言う。
「ゆっくりいただきます! むーしゃ、むーしゃ……しあわせー!」
それを見てるとまたむらむらしてきて、私はエサ皿を持ち上げた。
へにょ、とゆっくりは困った顔になる。
「ゆっ? ごはんが消えたよ? どこー! れいむのごはんどこー!」
あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。
頼りない泣きそうな顔で、ごはんを探し回る。
少したってから床に下ろしてやると、遠くからそれを見つけた。
「ゆっ! れいむのごはん! もうにがさないよ!」
ぴょん、ぴょん、ぴょんっ!
元気に勢いよく飛んできたので、目の前で持ち上げた。
スーッ。
「ゆあああ! ごはん! れいむのごーはーんー!」
あっという間に泣き顔になって、必死に飛びつこうとする。
ぴょーん、ぴょーん、ぴょーん! ぼてっ。
高さが全然届かずに、ひっくり返るだけなんだけど。
「ゆううう、ゆあああ」
また泣き顔になって口を曲げたれいむは、だだをこねだした。
「れいむのごはんー! とどかないよー! ゆっくりたべたいよー!」
泣きわめきながら仰向けになって左右に転がる。
ごろんごろん、ごろんごろん。
私はそれをたっぷり見つめて、にやにやしちゃった。
それからまた、エサ皿をいったん下ろした。喜んでれいむがやってくる。
そこで電気を消して真っ暗にして、その間に取り上げた。
また電気をつけると、れいむがすごく驚いた顔になって叫んでいた。
「ゆっくり!? れいむのごはんがきえたよ! はやくでてきてね!」
出さずに焦らしていると、またまたれいむは泣いちゃった。
さんざんれいむを泣かせた後で、やっとエサを下ろしてやった。
「ひっくひっく……むーしゃむーしゃ……むーしゃ、むーしゃ!」
食べているうちに元気が出たのか、すぐにゆっくりは元の勝気な顔に戻ってた。
水曜日。妹から電動のわんこのぬいぐるみを借りて、部屋に入れた。
わんこは四本の脚を動かしてすすんでいく。
ジーコ・ジーコ・ジーコ・ジーコ……。
「ゆゆっ? ゆっくりにげるよ!」
ぴょーんぴょーん、と逃げ出すれいむ。
ジーコ・ジーコと追っかけるわんこ。
「ゆっゆっ! ゆっくり逃げるよ!」
得意になって逃げてたれいむも、十分もするともう息が切れた。
無表情のまま涙を流してへたりこんじゃう。
「ゆはっ! ゆはっ! ゆはっ! ……」
そこへじっくり近づくわんこ。
ジーコ・ジーコ・ジーコ。
「ゆゆっ? ゆっくりしていってね!!! ゆっくりこないでね!」
ゆっくりが叫んだけど、わんこが聞くわきゃない。
どんどん進んで、転がってるゆくっりのほっぺたにぶつかった。
ジーコ・ジーコ・ジーコ……ぽむっ、ジーゴ・ジーゴ・ジーゴ。
「ゆああああ! やめてね! けらないでね! けらないでね!」
ほっぺたをわんこの脚でけりけりされて、形を変えながら左右に首を振った。
ぶにぶにぶに。ぶんぶんぶん。
とっとと逃げればいいのに、わんこを避けるのに必死で逃げ出せないらしい。
それを見た私はけらけら笑っちゃった。
木曜日。
「れいむ、おいで。ブラッシングしてあげるよ」
「ゆっゆっ♪ ゆゆっ? なんだか高いよ! むこうがよくみえる!」
椅子に座って抱き上げると、見晴らしがよくなってれいむは喜んだ。
ブラッシングを始めると、気持ちいいのか、そのまますやすやと寝ちゃった。
「ゆぅ……ゆぅ……ゆぅ……」
私はれいむの髪の毛をひと房ずつ梳いてあげた。
きれいな黒髪だけど、先っちょのほうにはほこりが絡まってる。
むりもない。ずっと床の上を這い回ってるからね。モップみたいなもんだ。
取りながらほっぺをつまむ。むにむに、むにむに、とおもちの感触がする。
おもちなのに生きてるなんて……不思議だなー。
私はれいむのほっぺを両手で挟んで、正面からよーく見たみた。
眉は、ある。ピンと左右に跳ねた細いのが。
でも……なんか、人間みたいな眉毛が生えてないよ?
筆で書いてある感じだ。
「れいむ、れいむ」
「ゆっ? ゆっくりしていってね!!!」
目の醒めたれいむが、ぱちぱちと瞬きした。けど……。
目、丸くない。
黒目と白目があるけど、虹彩がない。
ベターッとした、ようかんみたいな茶色い部分になってる。
どこを見てるかわかんない……(汗
「ゆっゆっ♪ ゆっゆっゆっ♪」
楽しそうに声を漏らす口にも、唇がない。なんか白い切れ込みで、中が赤くなってるだけ。
手を入れて、開けてみた。
くわっ。
「ゆあ? やめふぇね! はなひへね!」
舌がヒラヒラ動いているけれど……のどの奥は行き止まりだ。
あれ?
あれぇー……?
ゆっくりって、目も眉も口も、実は目でもなければ眉でもなくて、口でもないの?
頭みたいに見えるけど、それは人間の勝手な思い込みで、実は顔でもなんでもないとか?
何それ。
……なんか、急に気味が悪くなってきた。
「えい」
「ゆっ!?」
私はれいむを投げ出した。れいむは床におっこちる。
ぼふん。
「ゆゆっ! ゆっくりしていってね!」
声を上げたれいむは、ぴょんぴょんと窓際に行って座っていた。
金曜日。
れいむの正体がどうしても気になって、確かめることにした。
私はれいむにお酒をたくさん飲ませた。れいむは喜んで飲んだ。
「ぺーろ、ぺーろ、ごきげんー!!!」
何度もぺろぺろしては喜びの声を上げて、しまいには真っ赤になった。
そしてころんと転がって眠り込んじゃった。
「ゆぅゆぅ……ゆぅゆぅ……」
私はそんなれいむを持ち上げて、机に載せた。
まずは試しにほっぺを針で突いてみる。
ツンツンッ。
「ゆぅ……ゆぅ……」
反応なし。よし。
少しあお向け具合にして、鼻のところにマジックでバツ印を引いた。
キュッ。
鼻がないから書きやすい。
そして、それにそってカッターで十字に切った。
スッ、スッ。
「ゆぅ……ゆぅ……ゆゆ……」
ちょっと動いたけど、まだ目覚めない。お酒がよく効いてるみたい。
それからガラスの試験管を取り出して、バツ印の真ん中に押し付けた。
めりめりめりめりぃ……。
試験管は中に入っていく。とてもスムーズだ。やっぱり骨はないみたい。
最初の三センチを越えると、あとは一気だった。長さ30センチのちょっと長めの試験管が、どんどん入っていった。
めりめり、めりめり、めりめり、むにゅっ……ずぽんっ!
「あ」
貫通した。
れいむの後ろ頭を見ると、髪の中からあんこまみれの試験管が突き出していた。
「ゆぃぃ……ゆぃぃ……ゆぃぃぇ……」
あれ? ちょっと鳴き声が変。
もう一度顔を見ると、薄目の白目っぽい感じになっていた。
これ、やばいのかな。
でもまあ、生きてるからいいのかな……。
考えながら、丸い鏡に柄の付いたデンタルミラーを出す。
試験管にゆっくり入れる。
ペンライトで照らすと、れいむの断面が見えた。
最初の三センチは分厚い白い皮。
よーくみると、なんか小さな粒粒がうにうにむにむに動いてるみたい。
それをすぎると、茶紫色のあんこ。
注意してみたけど、普通のあんこにしか見えない。
8センチぐらいそれが続いた後で、ちょっとだけ色が変わった。
なんか、灰褐色っぽい感じ……?
そのとき、ミラーがコツンと試験管の内側に触れた。
「ヲ゛ッ」
……なんだかれいむがおかしな声を出した(汗
コツン、コツン。
「ヲ゛ッ、ヲェ゛ッ」
声を出しながら痙攣する。口の端からよだれを漏らす。
ビクッ、ビクッ。とろとろー。
「うぇ……」
や、やばい。ここは何か、れいむのとっても大事なところみたい。
下手にいじると死んじゃうかもしれない。
……まあ、普通の生き物ならとっくに死んでるところだけどさ。
真ん中の餡を過ぎて、奥のほうへ行くと、また元の茶紫色に戻った。
裏側から、後ろ頭の皮をよく見ると、リンスのCMに出てくるような、生きてる毛根の断面が見えた。
だいたい納得できたんで、試験管を引き抜いて前後の穴を塞いであげた。
ずるずるずる……ずぽんっ! ぺたぺたぺた。
それから一時間ぐらいほっといたら、赤くなって転がっていたれいむも目を覚ました。
ぶるぶるぶるっ! ぽぺん。
勢いよく身を震わせて、ぽんと元の姿勢に戻る。そして例のお約束の――
「ゆっヲ゛りしていってね!!!」
「は?」
「ゆゆっ!?」
驚いて、戸惑った感じできょろきょろするれいむ。
「れいむへんなこえがでたよ! ゆっヲ゛り! ゆっヲ゛りっ!?」
きょろきょろ戸惑ってから、れいむはぴょんぴょん跳ねた。
「やめてね! やめてね! れいむゆっヲ゛りできないよ! ゆううう!?」
「あははははは」
うろたえるれいむがとても面白くて、私はおなかを抱えて笑った。
れいむは夕方までには治った。
中に何か入れといてやればよかったと思った。
土曜日。めっちゃんが来た。私はれいむを抱っこして前の道路に出た。
10メートルぐらい離れて、キャッチボール。ゆっくりを交互に投げる。
ぽーん、ぽーん。ぽーん、ぽーん。
「ゆゆっ! やめて! ゆっく! ゆっぶ!」
ばむっ。
くるくる回って、強くキャッチされるもんだから、れいむは半泣きで悲鳴を上げている。
それをバックにして、私はめっちゃんとおしゃべり。
「それはさー」
「うんー」
「中枢餡だよ」
「ちゅうすうあんー?」
「ゆっくりの脳みそってことー」
「そうなんだー。やっぱり大事なとこ?」
「大事大事。そこ壊すと死んじゃうからねー」
「やっぱりかー」
「わりとポピュラーだよ、そこいじるのはー」
「ふーん」
「あっ、でもえっちゃんは飼ってるんだから、壊さないようにしなくちゃね」
「そだねー。あっ」
ぶぎゅる。
私の手をすっぽ抜けて、れいむがおっこちた。顔面から着地して変な音を立てる。
と思ったら、ぽんっと起き上がって走り出した。
てーんてーん、ぴょんぴょんっ!
「れいむ、もうおうちにかえる! もっとゆっくりしたい!」
「あ、やば」
あわてて追いかけようとするめっちゃんを、私は止めた。
「待って」
「えー、なんで? 逃がしてやるの? もったいないって!」
「そうじゃなくて」
私はめっちゃんと並んで、あぜ道を跳ねていく黒髪頭をしばらく見つめていた。
そして、れいむが森の手前で点のように小さくなったところで、つぶやいた。
「それっ」
一気にダッシュして追いすがる。れいむはもうのろのろになっていて、余裕で追いつけた。
すぐ後ろに立つと、一休みしたれいむがつぶやいていた。
「ゆっくりにげたよ! れいむはやい! とってもはやい!」
「残念でしたー」
油断してきっていたから、簡単に捕まえられた。抱き上げるとれいむはものすごくビタビタ暴れた。
「ゆゆっ、すすめないよ? れいむはすすむよ! ゆっくり、ゆっくりー!」
「でもダメです」
戻ろうとした時。
森の茂みをがさがさと揺らして、もう一頭のゆっくりが出てきた。
私のれいむに向かって、どことなく嫌みったらしい目で得意げに叫ぶ。
「れいむ! ゆっくりしていってね!!!」
私は振り返って叫んだ。
「めっちゃーん! まりさ出た、まりさ!!」
まりさは、捕まったれいむを笑いに来たのかもしれない。
でも速攻で自分も捕まった。
日曜日。
私はこの一週間で、たっぷりゆっくりをいじめてしまった。
だから、日曜日ぐらいはお休みにしてあげるつもりだった。
けれど。
ガシャーン、カラカラン、びしゃー。
部屋で自分の食事の準備をしてちょっと目を離した隙に、まりさとれいむにテーブルをやられた。
戻った私が見たのは、床に落っこちた料理と、ぽんぽん逃げていく二頭。
「ゆっゆっ、ゆっくり逃げるよ!」
「たいりょうだよ! かくれてたべようね!」
そんな声を残して、安全なゆっくりプレイスに逃げ込んだ。
もちろん、安全だと思っているのはれいむたちだけで、その屋根はただのクッションだ。
私は洞穴の前にいって覗き込んだ。二頭が幸せそうに食事をしていた。
「むーしゃ、むーしゃ」「しあわせー!」
「れいむ!」
「まりさ!」
「すーりすーりすーりすーり!!!」
「やわらかいね!」
「あったかいね!」
「ゆっくりしていってね!!!」
むらむらむらっ。
……あー。
これか。
めっちゃんが言ってたのは、この境地なんだなー。
「れいむ、まりさ」
私はニッコリ笑うと、洞穴に手を突っ込んで、嫌がる二匹を無理やり引きずり出した。
「ゆっゆっやめてね! いたいよ! れいむ出たくないよ!」
「はなしてね! おぼうし脱げちゃうよ! れいむとすりすりしたいよ!」
いろいろ言ってるのを全部無視して、こぼれたご飯のところに連れて行って、一頭ずつお仕置きしてあげた。
ずぴしずぴしずぴしずぴし!
ぎゅいーぎゅいーぎゅいー
ぱーんぱーんぱーんぱーん!
でこピンと、ほっぺつねりと、おビンタをたっぷり。
それから、床の上の料理に顔をしっかり押し付け。
ぐりぐりぐりぐりぐり。
「テーブルのごはんはいけません」
「ゆあーんゆあーん! ゆあーんゆあーんゆあーん!」
「ゆあーんゆあーん! ゆあーんゆあーんゆあーん!」
れいむとまりさは真っ赤な泣き顔になって、プレイスへ逃げていった。
楽しい……♪
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結局いじめちゃった。
YT
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 原種に中枢餡は無い。(逆に耳はある)
この作者は色々と混同しているのか? -- 2018-03-21 21:01:25
- これは素晴らしい。 -- 2011-12-23 12:44:21
- ニヤ(・∀・)ニヤ -- 2010-09-29 23:44:35
最終更新:2009年12月26日 17:00