怨みと罪 10KB
とある群れ。
とあるゆっくりの家族に、二人のゆっくりが生まれた。
胎生で生まれた二匹は、一餡性双生児だった。
通常、胎生では一度に一匹しか生まれない。
双子が生まれたとしても、二餡性がほとんどであり、区別はつく。
だが、この二匹の赤れいむは何から何までが一緒だった。
「まりさたちのおちびちゃんは、ふたりともれいむににてすごくゆっくりしてるよ!」
「れいむのあかちゃんたちは、れいむだけどまりさみたいにとってもりりしいよ!」
この二匹は運がよかった。
両親は実にゆっくりとしたゆっくりで、二匹を平等に扱う。
どちらがどちら、という区別をつけることなく、ゆっくりと二匹を育てていった。
やがて二匹は成体になった。
成体となったゆっくりは、親元を離れなければならない。
二匹は涙ながらに両親と別れた。
だが、二匹は離れない。
生まれた頃、いや、生まれる前から一緒だったのだ。
今更、片方と分かれて暮らすなんて考えられなかった。
ただ、両親の言いつけで二匹は別々にすまなければならない。
それならばせめて、と隣り合って住めるような場所を探すことにした。
この二匹は、運に恵まれている。
そう時を置かずして、巣にうってつけの場所を見つけることが出来た。
当然、希望通り、二つの巣が隣になるような場所である。
「ゆ!ここをれいむのゆっくりぷれいすにするよ!」
「ゆゆ!それなられいむはここをゆっくりぷれいすにするよ!!」
そういって二匹は笑いあった。
群れの長達にも認められ、珍しい一餡性双生児の二匹はゆっくりとした生活を始めた。
巣を作ってしばらく経った。
二匹はそろそろパートナーを得なければならない。
ゆっくりにとっては、子を成すことがとてもゆっくりできることなのだから。
二匹は別々に森を歩いた。
二匹は別々にパートナーとなるゆっくりを見つけた。
巣穴に戻り、互いにパートナーを紹介しあった。
しかし、そのまりさ達もまた、一餡性双生児だった。
四匹は、
「「「「とてもにているね!ゆっくりしているね!」」」」
と笑いあった。
非常に珍しい一餡性双生児同士の番は、群れからも祝福された。
その笑顔は長く続かなかった。
一餡性双生児は、容姿だけでなく、性格もまったく一緒である。
何せ、親の餡子は記憶から何から、すべてを子に伝える。
元が一緒で同じようにしか育てられないのだから、個性など生まれようはずもなかった。
そして、残念なことに、二匹のまりさは性根の腐った両親の元で生まれ育った。
「ゆ。まりさ、まりさのれいむのぐあいはどうなんだぜ?」
「わるくないんだぜ。でも、まりさのれいむのぐあいこそどうなんだぜ?」
二匹は一緒に狩りに出る。
話すことは毎回一緒だ。
互いのパートナーであるれいむの、まむまむの具合だ。
「まりさは、そっちのれいむのほうがすっきりできたきがするのぜ」
「まりさのれいむはまりさのれいむだよ。まりさにはれいむがいるんだからそっちとすっきりするんだぜ」
傍から聞いていると何を言っているか良くわからない。
だが、要するに、この二匹は時折入れ替わって、相手の妻であるれいむとすっきりしていたのだ。
そして、片方のれいむの具合はよくて、もう片方は今一、ということらしい。
当然、不倫である。
群れの掟では結束を乱すとされ、制裁の対象になる。
だが、二匹は容姿から何から一緒であることを生かして好き放題やっていた。
どちらも外に射餡するため、まだ子どもはいない。
「なあ、たのむんだぜ。こんやかわってほしいのぜ。まりさはいいかげんよっきゅうふまんでゆっくりできないのぜ」
「まりさのたのみならきいてあげたいんだぜ。でも、れいむはまりさのだからだめなんだぜ」
相手が欲しがれば欲しがるほど、自分の物は価値を増す。
相手が惜しがれば惜しがるほど、相手の物は価値を増す。
片方は頼むが片方は突っぱね続けた。
やがて狩りを終え、一匹は不満を抱えたまま、もう一匹は得意な気分になりながら、帰路に着いた。
その晩。
「まりさあああ!いいよ!れいむすごくいいよ!んほおおおおおおおおおおお!!!」
「ゆっゆっ!れいむのぐあい…すごくいいんだぜ…!!」
二匹の嬌声が巣穴に満ちていた。
通常のゆっくりの番なら、自然と言っても良い光景だ。
だが。
「まりさあああああああああ!?なんでまりさがまりさのれいむとすっきりしてるんだぜえええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
巣穴の隅で寝ていたまりさが目を覚まし、その状況に絶叫する。
「ちっ。まりさがおきてしまったのぜ」
「おひるにまりさのれいむはだめだっていったでしょおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!????」
「ゆっ!?ゆゆっ!?まりさがれいむのまりさじゃないの!?」
さっきまですっきりしていたまりさにれいむは問いかけた。
「そいつはれいむのまりさじゃないんだぜ!れいむのまりさはまりさだぜ!!」
目を覚ましたまりさが叫ぶ。
「れいむ、あのまりさはうそをついているよ。まりさのれいむがとてもゆっくりできるから、あんなことをいってぬすもうとしてるんだぜ」
すっきりしていたまりさはこう言った。
「ゆ…!?ゆ……!?」
れいむは混乱した。
二匹とも、何から何まで、すべて一緒である。
愛がどう、と言っても、所詮は餡子脳。
状況すら理解できず、ただ視線を彷徨わせるだけだ。
目を覚ましたまりさは埒が明かないと考えた。
隣のれいむなら、わかるかもしれない。
そして自分のまりさだと、言ってくれるかもしれない。
まりさは隣の巣穴へ駆けつけた。
「れいむ!れいむのまりさがまりさのれいむと……ゆゆ!!?」
隣の巣穴に満ちた甘ったるい餡子の臭い。
まりさは嫌な予感に駆られた。
だが、自分のれいむを渡すわけにはいかない。
奥へ入る。
「な、なんなんだぜこれはああああああああああああああああああああ!!!!!!????」
まりさが目にしたのは、れいむの死骸だった。
無残にも、まむまむを抉られ、そこから大量の餡子を引きずり出されている。
相当苦しみ、転げまわったのだろう。
あたり一面には、噴出した餡子が飛び散っていた。
「どうしたの、まりさ!!」
自分の番のれいむが駆け込んできた。
もう片方のまりさもいる。
「ど、どぼじでごんなごどになっでるのおおおおおおおおおおおお!!!!???
れいむ!ゆっくりめをさましてねぇ!?れいむううううううううううううううううううううう!!!!??」
自分の半身ともいえる存在の、無残な死に方にれいむは絶叫した。
「こ、これはひどいんだぜ…」
「まりさ!まりさがやったんだぜ!?」
「なにをいってるの?ばかなの?しぬの?」
「ゆゆ!?」
「まりさはこのれいむといっしょにいたんだぜ。かりからかえってきてからずっと」
「それは」
「まりさ、かりのときいってたんだぜ。じぶんのれいむよりまりさのれいむのほうがいいって」
「それはまりさじゃなくてまりさが」
「いくらじぶんのれいむよりまりさのれいむがいいからって…これはやりすぎなのぜ。
しかもしたをぬいてこえをだせないようにして、ころしたんだぜ…まりさはまともなゆっくりじゃないんだぜ」
れいむを寝取られたまりさは悟った。
自分の半身に陥れられようとしていることを。
自分の反論はすべて大きな声で遮られ、れいむはもう自分に対して憎悪のこもった視線しか向けてこない。
まりさは悟った。
自分のすべてを知り尽くした半身は、それを逆手に取る手段をどこかで覚えていたということを。
「まりさ。これがばれればまりさはせいさいなのぜ。
まりさとまりさはいっしょにうまれたんだぜ。だから、しなせたくないのぜ」
自分をはめたまりさは、自分からここを出て行けと言っている。
表情は勝利の余裕を称えた、とてもゆっくりとしたものだった。
「ゆがああああああああああああああ!!!!!!!!!」
自分のれいむを奪われ。
同属殺しの汚名を着せられ。
すべてを失って放浪するくらいなら。
こいつを殺してからそうしてやる。
まりさは叫び声を上げて飛び掛った。
歯をむき、頭を噛み千切ってやるつもりだった。
しかし、それは適わない。
隣から飛んできたれいむが体当たりを食らわせ、まりさは弾き飛ばされたからだ。
「まりさ。いいかげんにするのぜ。れいむのたいせつなれいむをころしたまりさをいかしておいてあげるんだぜ
ゆっくりかんしゃして、どっかにきえてね!」
「まりさ!このまりさはれいむをころしたよ!れいむはぜったいにこのまりさをゆるさないよ!!
れいむのかたきはれいむがうつよ!ゆっくりりかいしてね!!」
「れいむ、ききわけるんだぜ。こんなくずはれいむがころしちゃだめなんだぜ。
どうせむれにもいられないよ。どっかでのたれじにするのがおにあいだぜ!!」
まりさは途方にくれた。
あれほど愛したれいむが。
あれほど愛してくれたれいむが。
自分に体当たりをした。
それどころか、まりさの半身をまりさだと思い込み、守ったのだ。
自分はすべてを失った。
れいむを交換したりと爛れた日々を送っていたことなど、もう一片の記憶すらない。
残っているのは、都合の良いゆっくりした記憶と、自分の半身への憎悪だけだ。
夜が明けた頃、巣にはまりさの姿は無かった。
れいむとまりさの番は、可愛そうな被害者として同情を浴びた。
まりさはなにかの間違いだ、と庇い続けるふりを、れいむは絶対に許さないと涙ながらに言葉を搾り出した。
そのたびに同情は増していき、生活は豊かになった。
巣を追い出されたまりさは野垂れ死んだ。
群れから群れへと渡り歩き、無念さを語って。
同情した群れのゆっくりたちは、一緒に住もうと提案してくれる。
だが、まりさはそれにうなずくことは無かった。
群れから群れを渡り、恨みを語る。
ただそれだけを自らに課していた。
まりさが何を意図していたかはわからない。
だが、その形相は鬼気迫るものがあった。
それだけに話を聞かされた者達は信じざるを得なかった。
やがて死んだとき、その形相は無念さと怨みとでしわくちゃになり、醜く歪んでいた。
まりさの死骸を見つけたゆっくりは、その死に様に涙した。
こんな酷いことが、ゆっくりしているはずはない。
話を聞いた者で、涙しないものはなかった。
ある者は言った。
まりさの無念を晴らしてやろうと。
れいむを奪ったまりさは、どこか満たされないものを感じていた。
れいむを奪った瞬間。
それはとてもゆっくりした感覚だった。
だが、今は違う。
子どもができた。
れいむは奪おうと思ったときと変わらず、とてもゆっくりしている。
それだけだ。
何かが足りない。
それがなんなのか、わかるはずもない。
物思いにふけっていたが、何か村が騒がしい。
「なんだぜまったく…」
面倒くさいが、一応様子を見てやるか。
村の広場へ行くと、この辺では見かけない大勢のゆっくりたちが何か喚きたてていた。
「ぱちゅりー。これはいったいなんのさわぎなのぜ?」
長のぱちゅりーは答えない。
「ぱちゅりー?なんでだまっているのぜ。はやくこたえるのzゆべぇっ!!!」
苛立ちを見せながら詰め寄ったまりさに、石が投げられた。
「だれだぜいまいしをなげたのは!!このまりささまにさからおうっていうのぜええええ!!?」
周囲は静まり返った。
「な、なんだぜ。なんでみんなだまっているのぜ」
「むきゅー…どうやら、このまりさがげすというのはほんとうのようね…」
「な、なんのはなしだぜ!?」
「あなたが、れいむのれいむをころしたというはなしよ」
ぱちゅりーの一言にまりさは凍りついた。
何故あの事が漏れている。
れいむが喋るはずはない。
ただの流れ者になったまりさの言うことを聞くゆっくりがいるはずもない。
ならば、何故。
「むきゅ。まりさ、あなたをせいさいするわ」
まりさは自分がころしたれいむと同じような殺され方をされることになった。
つまり、舌を抜かれ、まむまむを抉り、出餡多量で死ぬまで放置される。
一つ違うのは、村の中心に棒を立て、死んでも晒され続けるということだ。
下を抜き、まむまむを抉ったのは残されたれいむの片割れだった。
自分のまりさを、れいむを殺したのはこいつだ。
憎悪に燃える目で、刑を執行した。
舌を抜かれるまでまりさは違う、自分は何もしていないと喚き続けた。
舌を抜かれてからは涙を流し、なるべく自分が哀れに見えるようにもがいた。
当然、無駄だった。
まりさが死んだ晩。
れいむは子どもを寝かしつけた。
一匹一匹、ぺろぺろして、すりすりする。
とても愛らしく、ゆっくりしている、
れいむは口に含み、苦しまないよう一息に噛み砕いた。
そして一言。
ごめんね、まりさ。
翌朝見つかったのは、噛み砕かれた赤ゆの破片と、壁に体当たりをし、自らをはじけさせるようにして死んだれいむの遺体だった。
【終】
by原あき
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 自然界の多くの動物や鳥ならハーレムを作ったり、毎年のように番を変えたりする。
人間のように一生に1人だけって動物は実は珍しい。
ゆっくりって野生なのに人間と同じ結婚システムというのは何故なんだろう?
傲慢で強欲なゆっくりという種族ならハーレム制度だと思うのに。 -- 2018-01-21 17:46:35
- なんか残る感じの終わり方だな、ゲスじゃないれいむは可哀想に・・・ -- 2012-12-13 17:54:10
- 最後のれいむの行動はなかなかできないことだなレイムは自分から産まれる子はどう育ててもゲスになると悟ったのだろうな -- 2012-07-23 13:07:13
- 哀れというか、むなしいというか・・・(´⊂`)
不倫する奴等が死んでいいわけじゃないと思うけど
不倫は許せんな・・・(´з`) -- 2012-05-20 14:56:54
- うわーん!!途中で訳わからなくなったよお! -- 2012-01-08 00:21:20
- どろどろして胃がきりきりしそうな昼ドラみたいな内容も
ゴミ饅頭だとただのコメディだな。 -- 2011-11-12 02:28:45
- すごい昼メロをまさか饅頭で見ることになるとはwwwww -- 2011-06-04 05:56:26
- てか途中のまりさ同士で口論訳分かんねーよww -- 2010-09-07 03:31:20
- 制裁もちゃんとされているのに・・・なんなの?この心地の悪さ。
まったく救いの無い話だな・・・ -- 2010-08-15 03:21:44
- まぁ、同意
この話の結末にもあるとおりに不倫は必ず不幸になる
不倫は文化とか言う糞ゲス共がいるが、それは責任一つ取る気が(取れない)ないくせにいつまでも恋愛(笑)したい、でも家族も欲しいとか言う幼稚園児にも劣る幼稚思考から来ている発言だからな
でもゆっくりだと喜劇に見えるw -- 2010-08-15 03:13:45
- 不倫なんてする塵屑はゆっくりに限らず死滅するべき。 -- 2010-08-14 20:32:08
最終更新:2009年10月18日 13:54