お汁粉職人の朝は早い 25KB
虐待-普通 パロディ 理不尽 赤子・子供 現代 独自設定 初投稿失礼します
*初投稿となります
*俺設定、パロディ、設定の借用、説明過多等が含まれている可能性があります
*どっちかというと主役は人間さん?
*虐待本編(?)に入るまでの能書きが長いです
*初っ端から伝説のネタスレリスペクトとかばかなの? しぬの?
【お汁粉職人の朝は早い】
海辺に近く首都にもそれなりに近いある町、冬に入り寒風の吹く中、
その町からそれほど遠くない駅のホームに私は降り立った
ゆっくりを扱う職業の専門雑誌「ゆんず」 そこと契約している職業ライター、それが私だ
今日はゆっくりを使った乾燥お汁粉を手作業で作る職人さんの取材のために遠路はるばるここまでやってきた
『ゆっ!? おにーさんゆっくりしていってね!』
『『『ゆっきゅりしていっちぇね!』』』
と、早速カオガタマンジュウモドキ一家から声をかけられる
正直即行で中枢餡、もしくはその体躯すべてを踏み抜いてしまいたい衝動に駆られたが、
「ゆっくりがゆっくりできない格好で取材に来ないこと」
という取材の条件を出されていたため、ここはぐっと堪える
「ゆ、ゆっくりしていってね?」
不本意ながらも挨拶を返し、これ以上何か言ってくる前に黄緑色のキャンディをいくつかばら撒き先を急ぐことにした
「おじちゃんはいいひとだね! れいむたちはこのあめさんをいただいていくよ!」
ペーロペーロ! …… ネギィ!?
なお、マンジュウモドキにあげたのはネギの味がする飴だったりする
空腹時の人間が食べても半日は腹の調子がわるくなるシロモノで、ゆっくりが食えば……言うまでもあるまい
町境までくると「これより河港町」という看板とともに
「このまちのゆっくりはバッチつきがほとんどです! ちゅういしてください!」
との注意書きの看板も見られた
何でも、ゲスではないゆっくりは町ぐるみで保護して扱い易い材料兼ペットっぽいものとして量産、
ゲスや流れ者は即行潰して他のゆっくりの餌として使うらしい
ゆっくりを加工する職人たちが町役場に税金を払い、その税金で役場が一括して町のゆっくりのバッジ処理、
職人が必要な時にバッジ付を加工し、バッジは町役場に返還、
役場はバッジの情報の書き換えを行うことで町中に常に一定のゆっくりを確保する、というシステムだとか
加工所を誘致してもいいんじゃないか、と思ったのだが、役場の人曰く
「加工所をショッピングモール、職人さんたちを商店街と考えてもらえばわかるんじゃないかね」
と言われて合点がいった。更にこの町では逆にそういうゆっくり加工職人を誘致しているとのことで、
なるほどこういう町のあり方もあるんだな、と思う反面。鬼意山はゆっくりできなさそうだなぁ、とも思ったりした
町役場での話を聞き、それをまとめながら歩いていたらいつの間にか目的地にたどり着いていた
ほったて小屋。そうとしか形容のできない建物だった
表には「ゆっくり汁粉工房」とえらく達筆な字が書かれている
あたりは殺風景で、ここから見る限り特筆するようなものは特にない
まぁ、とりあえずお邪魔しますか
「ごめんくださ――」
玄関を通り抜けると、そこは別世界であった
庭にはいくつもの台がおかれていた。その上にはカビに包まれた球体が綺麗に並べられており、
先程までは聞こえなかった『ユンヤァ!』だの『モウオウチカエリュウ!』といったゆっくり独自の悲鳴が、裏口の方から聞こえていた
どうやらカビ玉はゆっくりらしい
らしい、とはいうものの遠目にみるとやはりカビの塊にしかみえない
事前にここがゆっくりを加工する職人の家である、と聞き及んでいなければとてもではないがわかるまい
そもそもカビたゆっくりはドロドロに――
「ん? お前さんが取材のもんか?」
理解に苦しむと考え込む癖のせいで、話しかけられるまで声に気付かなかった
「あ!? はいそうです!」
顔を前にむけると、ねじり鉢巻、タンクトップ、腹巻という古き良き時代の顔をしたご老人がいた
白髪で角刈りとなるともう年季の入った、としか言い表せないもののふの顔と言ってもいいだろう
「えーっと、干野職人(ほしの しきと)さんですか?」
「おうよ。そういうそちらさんは取材に来た久留照朗(ひさどめ てるあき)でよかったか?」
「はい、そうです」
「まー立ち話もなんだ。そこの縁側にでも座ってくれ。茶でもいれてくる」
そう言って彼は土間の方から家の中へ入っていった
~~~
「まぁ好きで始めた仕事だからな!」
最初の質問に対し、職人さんはこう答えた
~~~
彼は湯のみ二つ、汁椀二つ、ポッド、あと何故か小鉢に一杯盛られた沢庵をもって現れた
椀の中には子ゆっくりサイズの白い饅頭が入っており、職人がお湯をいれてフタをする
三分待って、中身をさっとかき回すと立派なお汁粉が出来上がった
加工所製のものや既製のインスタントとは異なり目玉や飾りが入ってないところを見ると、
やはりさっきのカビ玉はゆっくりだったのか、という疑問に囚われる
「やっぱ最初は元がゆっくりだったとは思えねえよな?」
「え、えぇ。まぁ……」
「あぁ、思った通りに言ってくれ。」
汁の方は深い甘みと豊かな風味、そして気のせいかほんの少し塩味も効いてるのか、
それがただの甘い汁とは一線を画していた
そしてお餅はゆっくりの薄皮とはとても思えない。この厚み、柔らかさ、噛みごたえ
なによりも餅と餡子の馴染みの良さが――
「自分がおいしいと思うのはもちろんだけど、食べてくれる人はもっとおいしくないとな
もちろん出来上がったのは一つ一つ俺自身が味見して――喉にでもつまらせたか?」
一瞬吹き出すところだった。お茶をぐいっと飲んで人心地つく
「もちろん味見は一回の出荷分に対してだぞ? お前さん、考え込む割には早とちりだな」
「す、すいません。よくいわれます」
「まぁいい。食い終わったなら、まずはまってな。今日始める分を取ってくる」
そう言って彼は裏口に回る
それを私は追いかけようとし、その前に盛られていた沢庵をつまんだ
お手製だろうか。やけにその沢庵をうまく感じた
~~~
「やっぱり一番うれしいのはお客さんからの感謝の手紙ね、この仕事やっててよかったなと」
車内で職人さんはそう言った。照れ笑いするその横顔にも彼の誇りが見えた気がする
「やっぱ冬の仕事はキツイね、愚痴ってもしかたないんだけどさ(笑)
でも自分が選んだ道だからね。後悔はしてない」
今、一番の問題は後継者不足であるという
自分と同じ道を継いでくれる人がいないというのはやはり寂しいものがあるのだろう
~~~
ほんの少し車を走らせ、原材料となるゆっくりの生産場についた
「町で集めているのはいい【素体】でな。そこから各自の作るもんに合わせたゆっくりに仕立てるのさ」
「へぇ、そういうもの――でかいですね」
中に入るとそこには10組のれいむとまりさの番、それにたくさんの子ゆが眠っていた
頭から茎を生やし、そこには4,5匹の実ゆが……と、特筆するのはそこじゃない
どの親、子、赤ゆですら一回り大きい。試しに子れいむをつついてみるとゆっくりとは思えない程の皮の厚みが感じられた
しかももっちもちである。これ単品で虐待しがいのある丈夫なゆっくりとして売りに出せるんじゃなかろうか
「しかもこの皮……米粉ですか?」
「どうやってそうしたかは弟子にしか教えねえぜ?」
しかし、厚いとは言っても所詮ゆっくり。先程食べた餅の厚みには程遠い
ぷにぷに。ぷにぷに。あぁ、指を刺してこのまま貫きたい……
『ゆぴぃゆぴぃ……。おねえちゃんくしゅぎゅった――みゅ? おじちゃんだぁれ?』
「あ」
と、寝てたはずの子れいむが目を覚ましてしまった
「ん。目が覚めちまったか
あまり西洋菓子をやりすぎると味の深みがなくなりやすいんでな
昼飯に混ぜるラムネは少なめなんだよ
……まぁいい。今日はこいつを持っていくか」
「すいません……」
「なぁに、気にすんな。しっかり育ってていい汁粉になりそうだ」
『ゆ!?』
~~~
職人さんの仕事はまず、素材の入念なチェックから始まる
厳しい目で子ゆたちを一匹一匹見つめて、計100匹ほどの子ゆを選ぶ
手際よく猿ぐつわをかませ、ケースの中に放り込んでゆく
仕込みに満足できないとその日の生産をやめてしまうという
自分に厳しく餡子は甘く。なんでもこの加工場のモットーだとか
~~~
れいむはとてもゆっくりしたゆっくりだった
隣のおばちゃんれいむにも、そのまたとなりのおじさんまりさにも
『れいむはとってもゆっくりしたゆっくりだね』
と言われており、それがれいむの自慢だった
が、ゆっくりした生活は突如として終わりを告げた
目を覚ましたらいつも餌をくれるおじちゃんと知らないおじちゃんがいて、
いつものおじちゃんがれいむをしゃべれなくした
そしていつものおじちゃんがれいむやまりさをたくさん大きな箱の中につめていく
『んーんーんー!』
(おじちゃんにゃにしてりゅの!? れいみゅたちにひどいきょとしにゃいでね!)
おもえば時々友達のまりさやいもうとれいむがお昼寝している間にいなくなっていた……ような気がした
お父さんまりさに聞いてもお母さんれいむに聞いても、
『ゆ? れいむもまりさもたくさんいるよ? 誰もいなくなってないよ?』
と言うばかり。おとーさんもおかーさんもそう言うならきっとそうなんだよね――
それが間違いであったことを、れいむは身を持って理解した
~~~
戦時中はゆっくりが不足し、工場を休むことも度々でした
1973年、虐待鬼意山たちによる乱獲で原料の価格が3倍にまではねあがり、一時は店を畳むことも考えたという
それでも、町の職人達が知恵を出し合い、助け合い、ここまでやってきた
~~~
職人さんは連れてきたゆっくりを竹細工の籠に入れなおす
猿ぐつわの結び目をもち、片手でほどき、コマ回しの要領で籠の中に投げる
少し離れたところにある4つの籠にゆっくりが次々埋まっていくのは流石職人芸といったところか
『おそらをとんで――ゆぴぃ!』『おそらをちょんで――ゆぎぃ!』
『おそらをとんで――ゆぎぃ!』『おちょらをとんで――ゆぎぃ!』
トラックの振動で目を覚ましたゆっくり達が定間隔で悲鳴をあげるところから、
職人の手さばきに一切のブレがないことが伺える
『『『『おいこのくしょじじぃ!』』』』
最後の一匹の悲鳴が収まったところで声を揃えて罵声を吐くゆっくり達
もっとも声が揃ったのは最初だけで、その後は
『まりさにあまあまをもってくるんだじぇ!』
『れいむをおこらせるとこわいんだよ! ぷくー!』
『ばかなにんげんはゆっくちちないでしね!』
『めざわりなくじゅはさっさとしかいからきえてね!』
と言いたい放題である
「どうみても……ゲスですよね?」
「どうせしゃべれなくなるからゲスかどうかは関係ないさ
大事なのは今までどれだけ幸せを謳歌したか、ってとこでな」
「落差が甘さを生み出すってこと、ですか?」
「そういうことさ。おいゆっくりども! 今から上を向いてないと死ぬからな!」
『『『『ゆ?』』』』
職人さんはぐらぐらと煮えたぎった釜に籠の一つを下ろす
ゆっくり達からすると突然煮えたぎった風呂に浸かったことになるわけで――
『ゆぎゃああ゙ああ゙あ゙あ!!!!!』
『あぢゅい゙い゙い゙いいい!!!』
「ったくよお! 上向いてろって言ってるだろがっ!」
職人さんは箸とテボで20匹以上の泣き叫ぶゆっくりをすくい上げては上を向かせる
湯の量は真上を向いていればなんとか息ができる程度で、
凄まじい勢いで、泣き叫ぶゆっくり達は上を向かされる
『もっぢょ、ゆっぎゅr「させるかあ!」
今にも死にそうなゆっくりをすくい上げ、横に置いてある鍋の中に移す
鍋の中は砂糖と米粉の混合物が詰まっており、そこで転がしたあとにすぐ別の籠に投げ入れられた
「いいかてめえら! 死にたくなかったら上を向け!」
『ゆっぐりりがいじまじだぁ!』
籠の網目から仲間たちがどうなるかを見ていたゆっくり達は、
ガクガクブルブルといった様子で必死に体(頭?)を上下に振る
一方自分たちの未来が見えていないゆっくり達は相変わらず職人さんに罵声を浴びせる
クショジジイハイイカゲン……アヅュイ゙イイイ゙!!!
ユピィィィィ!! レイミュニニャンヂェコンニャコトシュルニョオオオ!!!
マリシャハニャマイイマシチャアアア!! ユルヂデェエエ゙!!!!
バキャナニョオオオ!!!? シニュノオオ!?
しばし調理場内は甘ったるい湯気とゆっくりの悲鳴に充ち満ちていた
こうやってごく短時間茹で上げるのを4籠×30セット行うことで茹で作業を完了する
普通に考えれば死んでしまうのではと思うのだが、
茹でるお湯に相当量の砂糖を混ぜてあるのと、上を向かせることで餡子を吐けないようにすることで死ぬのを防ぐのだとか
また、それでも死にそうなゆっくりは米粉と砂糖の混合物でコーティングすることで皮の厚みを増しつつ栄養補給を行うとのこと
ちなみに元から皮の分厚い品種として育ててあるため、
表面がぬめることはあっても溶けて死ぬことはないそうだ
「こんなところで死なれたら、とてもじゃねぇがいい汁粉にはならねえよ」
そう言いつつ、彼は一匹一匹に砂糖を少しづつまぶしていた
「本物……本物をな……伝えてぇんだ」
彼は作業の最中、そう呟いた
その小さな呟きこそ、現代の日本に失われつつあるものではないか
~~~
額に流れる汗をぬぐいながら
「本物に追いつき、追い越せってとこかね」
そんな夢をてらいもなく語る彼の横顔は職人のそれであった
~~~
『ゆぴいいいいいい!!!!!』
れいむは何度も何度も体の芯が煮えて死ぬかと思った
何度かお湯を飲んで死んでしまうのかと思ったが、何故か死ななかった
瀕死の状態でお湯から上げられてはあまあまをふりかけられた
最早あまあまは生きるためのものではなく、死なないためのものであった
なかよしのまりしゃはもうあまあまをたべちゃくにゃい!と言ったが、
無理矢理口の中にあまあまを詰め込まれた
詰め込まれたからには反射的にぺーろぺーろしてしまい、
あまあまをぺーろぺーろしたのだから反射的にしあわせー!をしてしまう
れいむには何故親の元から連れ去られたのか、何故おじさんに怒鳴られるのか、
何故こんな死ぬような責め苦を味わうのか、何一つわからなかった
『ゆうう……なんでこんなめにあうのかれいむにはわからないよ』
『まりさもだぜ……。あのくそじじいにこんどあったらころしてやるんだぜ』
そう毒づくものの、れいむもまりさもそしてまわりのゆっくりすべてが今は疲れを癒す事に専念していた
今日まで食べて寝て遊ぶというしあわせーな毎日を繰り返していたれいむ達
それが突然地獄の釜の底に放り込まれてしまった
本当に何もわからぬまま全身を煮え湯で煮られ、
熱さで死ぬか、溶けて死ぬか、餡子を吐いて死ぬか、そんな地獄の時間を過ごした
今はようやく落ち着き、火傷を癒すため体をぺーろぺーろしたり、
すーやすーやしたりする子が出てきた
『ゆゆう。れいむもすーやすーやするよ……』
まわりのゆっくり達も夢見心地、れいむもいよいよ寝ようかとしたその時、
「おーいガキども起きろー!」
ガインガインガイーン!
『『『『ゆぴゃああああ!!?!?!??』』』』
フライパンをすりこぎで叩く音でみんな現に引き戻された
慌ててまわりを見渡すと、目の前に釜茹でじじいが立っていた
『『『『おいこのくしょじじぃ!!!!』』』』
さっき受けた仕打ちを忘れてれいむたちは釜茹でじじいを罵倒した
が、一部のゆっくりはすぐそれを思い出し青ざめる
「おおわりいわりい
さっきは悪いことしちまったなぁ。あまあまやるから許してくれよ」
『ゆ! あまあまくれるならゆるしてやるんだじぇ!』
『さっさとあまあまちょうだいね!』
『あまあまおいてったらさっさときえさってね!』
『なにつったってるの? ばかなの? しぬの?』
流石あまあま。ゆっくり達は仕打ちのことなど綺麗さっぱり忘れてあまあまを要求する
釜茹でじじいは後ろを向くと、みんなの目の前に白い小山を用意した
「舐め終わったらまた用意してやるさね」
『すこしすくないけどれいむはこれでがまんしてあげるんだよ!』
『たべたらすぐにもってくるんだぜ!』
「わかったわかった。すーぱーぺーろぺーろたいむだっけ?
終わったら持ってきてやるよ」
『『『『ゆわーい! それじゃあすーぱーぺーろぺーろたいむはーじまーるよー!!!!』』』』
くしょじじいがにやにやしてたけど、
きっとれいむたちがしあわせー!でしあわせー!なんだろうね!
『『『『ぺーろぺーろ!!!!』』』』
『『『『…………』』』』
ぷるぷるぷる……
『『『『これどくはいってりゅー!!!!????』』』』
~~~
「一度はやめようかと思ったこともあるんだよ
でもな、街中で雄闘惨が飲んでいる汁粉ドリンクを見たとき、
あんなんじゃだめだ! 俺ならもっといいものを作れるっ!
って、やっぱりこの道に戻って来ちゃったんだわ。あの雄闘惨のおかげだな」
人間、一度や二度の挫折はあるということか。それは職人さんも例外ではなかった
~~~
「なるほど、ここで塩を食べさせるんですね」
「砂糖にある程度混ぜて、吐かない程度にな
もう少しきかせたいとこなんだが、これ以上は吐き出すヤツがでてきちまうんだ
さて、と。このまま次の作業に移るかね。おい赤に青!!」
「「餅の用意できてます!」」
職人さんが声を張り上げると、裏口から二人の青年がせいろを両手に走ってきた
二人とも麻袋のようなものを被り、それぞれ赤色と青色で鬼と書かれているが……なんなんだろう
「赤が千切り! 青が飾り!」
「「Sir,Yes Sir!」」
そういうと二人はすぐに仕事を始める
赤鬼はせいろの餅をちぎると丸くのして職人の左手におく
職人さんは右手で少し餡を取り、その更に伸ばした餅の中央におく
その間に青鬼がなれた手つきで一匹のゆっくりから飾りを取り去って、開いた職人の右手においた
『ゆびぃ! まりさのおか――』
「――ッ!」
職人さんの目がカッと見開かれ、両手が合わさる
次の瞬間、彼の手には一切の継ぎ目がない餅の玉が出来上がっていた
トン、タッ、トン、タッ、トン、タッ、トン、タッ
トンで弟子が準備を、タッで職人さんが両手をあわせ、その繰り返し
文字通りの流れる作業に私は声をかけるのも忘れてあんぐりとしていた
しかし、どうやら声をかけなくて正解だったらしく、
我に帰った私に赤鬼さんがシー、というジェスチャーをしながらも餅を千切っていた
「おい赤!」
「おやっさんすいませんでした!」
レイムノオリボンガ――
モウオウチカエr――
ユンヤ――
オウドン――
~~~
「やっぱりアレだな、たいていの若い人はすぐとどめをさしちまいやがる
踏んだ方が早いとか、ヒャッハーできればいいとか……
でもそれを乗り越える奴もたまにはいる。ほら、そこにいる鬼意山もそうだ
そういう奴が、これからのゆっくり職人界を引っ張っていくと思うんだがね」
さっき後継者が不足とか言っていたが、いるにはいたらしい
職人さん流の冷やかしだったのだろうか
~~~
次の作業の準備をお弟子さんにしてもらってる間に、さっきの作業のことについて聞く
「結局本物のお餅を使ってましたね」
「そう言われると言い返せないんだがな。あれはゆっくりの新しいガワだ」
「……ガワ?」
「あぁ。ゆっくりたちは茹でられて火傷、もしくは皮膚が溶けかけているわけだ
そこを餅でくるんでやるとな、ひっつくんだよ」
「……それは本当ですか?」
「疑り深いヤツだな。じゃあ逆に聞くが、最初に食わせた汁粉に目と髪は入ってたか?」
「入って……なかったですね」
「まず餅がガワになって、中身を餡子として消化して、
次にガワに目玉とか髪の毛とか生えてくるのよ」
「まさに不思議生物――」
「で、今からガワと一つになる前に一仕事ってわけよ」
~~~
「毎日毎日温度と湿度が違う 機械では出来ない」
お弟子さん曰く師匠の受け売りだとか
テキパキと燻製の準備をしていくお弟子さんの姿とそれを見守る職人さん
ここ数年は、安価な企業レベルの加工所製に押されていると言う。
「いや、オレは続けるよ。待ってる人がいるから───」
下町ゆっくり食品の灯火は弱い。だが、まだ輝いている
~~~
『あ゙ぢゅい゙よお゙お゙お゙お゙お゙!
れいむのおめ゙め゙ざんがあああ゙!!!』
れいむは暗闇の中にいた
おかざりさんをとられたと気づき『おかざりさんかえしてね!』という間もなく、
暗く熱い何かの中に閉じ込められてしまったのである
わかるのはまわりがとても熱いこと、特におめめが焼けるように熱いことぐらい
しばらく泣き叫び、目元が熱くなくなり、ようやく口の前に何かがあるのを感じた
目が見えず、もみあげもうまく動かないのでおそるおそる舌でそれをなめてみる
『ぺーろぺーろ――。……し、しあわせー!』
また先程みたいにゆっくりできないものだったらどうしよう、と考えていたのも杞憂、
とてもあまくておいしいあまあまがそこにはあった
思わず舌が伸び、ぐるっとあまあまを囲みそれを口元に引き寄せてむーしゃむーしゃしてしまう
『むーしゃむーしゃ! し、し、し……しあわせー!!!』
まぁ、実際お汁粉に用いるには極上の餡子なのでれいむが\うちょうてん!/になるのも仕方あるまい
かんっぜんっに余談であるが、この餡子には二つの意味がある
一つは次に行う作業のための栄養補給、そしてもう一つがゆっくりの甘味化の促進である
梅干を知らない人に梅干の酸っぱさを想像しろと言われてもどだい無理である
ゆっくりは苦しめば苦しむ程甘みを増していくが、
その甘みを知っていればその甘くなる効率がよくなる、そういう話である
つまり極少量の高級餡子を与えて苦しめることで、高級餡子を量産できる
まさに不思議ナマモノ――
と、れいむに変化が現れたようだ
(ゆゆっ? なんだかれいむ、おおきくなったような気がするよ……?)
相変わらずれいむの視界はまっくらだ
だが、何故か体が一回り大きくなったような気がする
先程までは熱かったれいむの周囲がそれほど熱くなく、
それどころか外気を感じられるようになった気がするのだ
(でも、おくちさんもあかないし、あんよさんもうごかないし……
どういうごどなのおお゙お゙お゙!!!?!?)
つまりれいむにとっての皮という認識が餅の部分まで達した
しかし、とうぜんただの餅、おくちもあんよもおめめもあるはずがない
いまのれいむは、感覚があるだけの餅の玉でしかない
こういうことである
~~~
ケースに煙を流し込んでゆく
この時の温度調節で品質はガラリと変わってしまう
「やっぱねえ、手で団扇を煽るからこその風ってのがあるんです
機械がいくら進化したってコレだけは真似できないんですよ」
~~~
「よし、そろそろガワと中身がくっついた頃合だな。火入れいくぞ!」
「「Sir,Yes Sir!」」
「その西洋かぶれはヤメロっつってんだろ!?」
「「すいやせんっ!」」
それにしてもこの職人ノリノリである
今から煙を焚き、餅の水分を飛ばす作業にうつるとのこと
口や鼻はないものの、本能的に煙はゆっくりできないと思っているゆっくりが全身でソレを浴びる
乾燥させるのとゆっくりを苦しめるのを一つの作業でおこなえる、というわけだ
熱いからか、それとも煙が嫌なのか、餅の玉は小刻みにプルプルと震えている
~~~
「自分の作ったお汁粉を息子達に食べてもらう……
それがこの仕事を始めた頃の夢だったんだけどな」
職人さんは淋しそうに笑った
~~~
(あじゅいいいいいい!!!
けむりざんはゆっぐりできないいいいいい!!!!)
れいむは必死に煙から逃げようとしていた
逃げようとしていた、もののその体をぷるぷる揺らすのがいまのれいむの精一杯だった
(おめ゙め゙ざんびらい゙でねええ゙え゙!!!
あ゙んよざんうごがい゙でねええ゙!!!!)
既にれいむの元々の目は焼け爛れており、今は髪の毛と一緒に中で餡子になろうとしていた
一方足はただの皮の一部に成り果て、新しいあんよができるのはまだ先であろう
ただ、一つ言えるのは目にせよ、足にせよ、それを作るにはこの煙に耐え切る必要がある、ということだけ
(げむりざんばどごがにい゙っでねえ゙え゙え゙え゙!!!
あ゙どれい゙むをゆっぐりざぜでねえ゙え゙え!!!?)
そんな絶え間の無い苦しみを受け、れいむの意識は闇に沈んだ
~~~
「私とゆっくり、どっちが大事なの!?」
……痛烈な一言だった
息子は、父親の仕事のことでいじめに遭い、2人とも家出した
たった1人残った妻も、2年前に他界した
「今はもうこいつだけですよ」
どこか寂しげに笑いながら、彼は膝の上のゆっくりこまちを抱いてみせた
~~~
かれこれ三週間後、再び取材に訪れた
彼らは二週間から三週間にかけて燻製を続け、徹底的に水分を飛ばす
ほとんどのゆっくりはここで死ぬが、ここで生き延びたゆっくりがいた場合、
極上の旨さを持つ汁粉になるだとか
「まぁ、年に数匹いるかどうかよ?」
何でもここの味に惚れ込んだ常連さん曰く、とのこと
ここ数年企業レベルの加工所で大量生産された安価なゆっくり製品に押されていた職人さんは、
2年前から、インターネットによる個人注文を始めた
その常連さんは一番最初に注文してくれた方だとか
本人も一度だけ食べたことがあるが、再現は結局叶わなかったとのこと
「次の代への宿題さね」
笑顔で職人さんは言う
「……で、次の作業についてだっけか」
「ええ」
「今、表面を削ったゆっくりを天日で乾かしてるだろ?
そしたらな、カビをつける」
「カビですか!?」
「そう、カビ」
ゆっくりにカビは厳禁なんじゃ――
そう思ってたところに青鬼さんがフォローをいれる
「師匠、説明が不十分ですよ」
「ああ、わりい。こういう仕事やってるもんでな
そういうゆっくりの常識ってのをついつい忘れちまう」
青鬼さん曰く、
カビは口、まむまむ、あにゃる等を通して中枢に至るため厳禁なのであり、
餅玉にして経路を塞ぐことでカビでゆっくりがダメになるのを防ぐのだとか
「そもそも、どうしてカビなどを――」
「えーっと、照朗さんは鰹節の作り方を知ってますか?」
今度は赤鬼さんがフォローを入れてくれた
なんでもカビをつけることで更にゆっくりの水分を搾り出し、
更には有害なカビの発生を抑制する働きがあるだとか
「それでですね」
「俄には信じがたい話なんですけどね」
赤鬼さんと青鬼さんは二人して顔をあわせる
「「カビを付けなかった昔は、
極稀に生き返るゆっくりがいたそうなんですよ」」
二人ともカビ付をしないでお汁粉を作ったことがないため、実際にその姿を見たことはないという
だがしかし二人の推論によると、極稀にいるという生きていたゆっくりがいた場合、
あの餅の玉から目や足といった器官を作り出し、それを生き返ったとしたのではないか、
という話が考えられるとのこと
カビをつければカビた表面にそういった器官は発生せず、
尚且つそれまで生きていたゆっくりは極上の味を持つ汁粉になる
「信じがたい話ですね」
「でも、嘘か真か師匠の師匠は見たことがあるとか」
「まぁ、自分たちも手抜きはいけないぞ、という意味を寓話化したものだと思ってますけどね」
そしてその日は以前つくったゆっくりのカビをおとすところ、
できあがったゆっくりを袋詰めにするところを取材させていただいた
「それでは本当にありがとうございました」
「ええ宣伝になることを期待しとるわ」
「ご期待に添えますよう頑張ります。それでは」
「雑誌が出来上がったら送っちょくれよー!」
「是非ともそうさせていただきまーす!」
こうして私の此度の取材は終了した
~~~
まだ需要がある、それだけで職人さんは頑張れると言う
「この歳でこの商売ってのも、世間様から見ればおかしいだろうがね。オレは続けるよ」
~~~
れいむは奇跡的に生きていた
燻製の時に幸運にも気絶し、そしてそのまま煙をやり過ごせたのだ
(ゆゆ……れいむ、いきてるの?)
そして意識を取り戻していく
(いきてるなら……あのじじいを……せいっさいっ……するんだよ……
でも、そのまえにおはようのあいさつを――)
一月弱気絶できただけでも奇跡であったが、
流石にそれ以上は続かない。れいむは現実と再び向き合うことと相成った
(――どぼじでかびさんがはえでるのおお゙お゙お゙!!!!?)
れいむ、もとい餅の玉の表面にはゆっくりの天敵の一つ、カビで覆われていた
れみりゃの前でゆっくりできる通常種がまずいないように、
カビに覆われてゆっくりできるゆっくりもまずいない
されどもカビによって直接死ぬこともできない
(がびざんばゆっぐりでぎないい゙い゙いい゙!!!!)
こうしてれいむは、考えるのをやめるまで、ゆっくりできない生涯を送ったのである
今日も、彼はゆっくりを燻し続ける。
昨今では、一部団体からの風当たりも強い。しかし彼は語る。
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、
なんというか救われてなきゃあダメなんだ、独り静かで豊かで……」
今日も彼は、日が昇るよりも早くもち米を洗い始めた
明日も、明後日もその姿は変わらないだろう
そう、お汁粉職人の朝は早い───
――完
あとがき:
書いてるうちに「ゆっくりオナホ職人の朝は早い」の方が原作に近くてよかったんじゃ
と思い始めたものの、そもそもは鰹節みたくカビで死なないゆっくりを書こうとしてたのを思い出した
しかし、オナホール職人の朝は早いは神スレですね
オナホだからこそ映えたセリフも多く、それをどうやって取り込もうか考えた末に撃沈したこともしばしばです
(「神事に」とか「マヨネーズの蓋」とか「職人による手コキ」とか)
という前振りはおいといて。はじめまして
初投稿ということで至らぬ点が多々あったと思いますが、どうだったでしょうか
かなり説明過多になってしまった点については反省しております
次回作を作ることがあればその際には留意したいところで――
それはさておき、
おにいさんおねえさんおねにいさま方にゆっくりしていただければこれ幸いです
まだ若輩者故に何を語ればいいのかわからないので、今日はこれにて失礼します
NextRoot:
A.輝石の価値は(希少種虐待)
B.したいさんはゆっくりできない(ゆっくり&にんげんいじめ?)
C.見敵ゆっ殺(テンプレ虐殺らしきもの)
余談ではありますが、わたくしの書くSSで名前が出てくる主人公は基本照朗(てるあき)名義とする予定です
理由はと言いますと、もしBかCの作品を投稿する機会があれば、ということで
蛇足となりましたがこれにて閉幕。またのご開演をお待ちください
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 面白い作品だった!
ちょっと断面図見たくなったww -- 2018-01-11 22:33:36
- これは面白い!カビにそんな効果があったのか -- 2010-10-25 15:15:43
- 他の職人さんの話も是非! -- 2010-06-29 17:18:08
- 面白かった -- 2010-06-11 22:21:25
最終更新:2010年01月08日 18:51