ふたば系ゆっくりいじめ 747 餡動戦士ゆんだむⅢ めぐりあい饅頭(ゆっくり)編

餡動戦士ゆんだむⅢ めぐりあい饅頭(ゆっくり)編 25KB


虐待-凄惨 悲劇 理不尽 現代 虐待人間 会話部分で、読みづらいとこあるかも。すいません

餡動戦士ゆんだむ、第3部目になります。
いよいよ虐待が始まってます。が、まだまだ序の口という感じです。
本番は、まだ先なのだっ…!すいません…。






 そこで、時は止まってしまったのかと思われた。

 ある意味で、まさしくそうだったのかもしれない。
ゆっくり達にとっては、この、外界から断絶されていると固く信じ切っている
ゆっくりプレイスに、人間が姿を現す事など、ありえない、いや、あってはならない事である。

 到底、目の前の現実をにわかに受け入れる事など出来ようはずもなく、
目を<○><○>にしたまま、二人の少年を、全身の餡子を硬直させたまま、
ただその場で凝視し続けている事しか、出来ない。

 少年達は少年達で、当然、そこにはびっしりと雑草が詰まっているだけ
だと思われた空間に、突如開けた謎の光景にすっかり面くらい、
更に、それに輪をかけるように現れた謎の怪物体を目前にし、
一体何をどう考えて納得すればいいものなのか、すっかり困惑し、当惑し、
二人とも、ぽかんと口をあけたまま、ゆっくりれいむを見つめ続けるだけである。

 お互いに、ありえない場所で、ありえないモノを見つめ続けているのである。
その意識は、驚愕と不信に支配され、時の流れなど、どこかへ吹き飛んでしまい、
何の意味も為さぬかのようであった。

 しかし、そんな二人と一匹にとって、時が硬直したのかとさえ
思われるような時間も、永遠に続くという訳には、ゆかなかった。

 先にその硬直を破ったのは、れいむの方だった。
その精神が、長い時間をかけ、ようやく目の前に人間がいる、という事実を
はっきりと認識し始めると、みるみるその、極端にデフォルメされた表情が
恐怖にひき歪み、目は涙を流し、もみあげを逆立て、全身がぷるぷると震え、
じょろじょろと小水を垂れ流した。

「ゆ”っ…ゆ”っ…」

 そして、急速に膨れ上がった恐怖心は、ゆっくりの脆弱な自制心など
容易く吹き飛ばし、れいむはあらん限りの大声で、喚いた。

「どっ…どぼじでにんげんざんが、でいぶだぢのゆっぐりぶれいずに、いるのおぉぉぉぉぉ!!??」

 そして、更に泣き叫びながら、広場の奥へ向かって、跳ねてまろびつつ、逃げていった。

「おざあああ!!おざあああ!!だずげでえええ!にんげんさんだよ!にんげんさんがいるよおおお!!!!」

 二人の少年は、その様子を、あっけに取られて見送るしかなかった。

「な、なんだ今の…?ぬいぐるみ…じゃ、ないよなあ…。おい、中島…」

 いや、磯野は相変わらず、目の前で繰り広げられた珍妙な光景に目を白黒させるばかりであったが、
中島の方の様子は、少しずつ変わってきていた。

「…『ゆっくり』だ…」

「え?ゆっくり?ゆっくりって…」

 その、一時は不信と驚きで固まっていた目の色が、にわかにキラキラと輝き始め、
中島は、明らかに興奮し、何か新しい玩具でも与えられた時のような、
わくわくどきどきと、夢と期待に胸を膨らませる少年そのままに、うきうきと落ち着かない様子になっていた。

「磯野、行くぞ!」

「へ?あっ、おい、中島…!」

 中島は、言うやいなや、駆け足で、逃げたれいむの後を追っていった。

 追っていったと言っても、ゆっくりにとっては広大な村の敷地でも、人間の足にとっては、
小さ目の公園程度のものでしかない。すぐにその足は広場を横切り、
雑草を潰して作った通路に入り、それもすぐに抜け、そして、その光景を見た。

「うおーッ!すげーッ!!」

「うわっ…ま、まじかよ…」

 その光景は、中々に壮観で、そして珍妙で滑稽な光景であった。
そこは、先に二人がれいむと出会った場所よりも、大分広めな広場だったが、
どこにもそこにもかしこにも、ひしめくようにゆっくり達がいた。
大きいの、小さいの…。帽子を被ったの、リボンを付けたの…。
様々な種、大きさのゆっくり達が集っていて、足の踏み場も無い程であった。

 そしてどうやら、その大量のゆっくり達は、何か大事件でもあったものか、
中島達が踏み込んで行くまでもなく、ぎゃーぎゃーわーわーと喚き、騒ぎ、
右往左往していた様子だった。
先程、二人と鉢合わせしたれいむもいたようで、何とか群れに人間の襲来を告げ知らせようと、
声を枯らしつつあちこちを跳ね回っていたが、この混乱状態に完全に呑まれてしまい、
群れの誰もが、れいむの警告に耳を貸すどころではなかった。

 見てみれば、群れ集ったゆっくり達の中央には、例のダンボールにシートを被せた
物があり、それは、真ん中が大きくへこみ、ひしゃげていた。

 どうやらゆっくり達は、その様子を見て、騒いでいるようだった。

「お、おちびちゃん、むっきゅりおちついてね!いったいなにがあったのか、
わかるようにむっきゅりぱちゅにおしえてね!」

「ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!れいみゅのおうちしゃんがぁぁぁ!!
うえきゃら、おしょらをちょんでるみちゃいにいんしぇきしゃんがふっちぇきちぇ、
れいみゅのゆっくちちたおうちしゃんをちゅぶしちゃっちゃにょおぉぉぉ!!ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」

「むぎゅぎゅ!?いんせきさん…!?」

 このゆっくり達の阿鼻叫喚の中でも、何とか群れの混乱を静め、原因を探り出そうとしていたのは、
やはり長であるぱちゅりーであったが、赤れいむのその説明ではにわかに納得し難く、
そちらは一旦置いて、とりあえず群れ全体を落ち着かせる為に、声をかけながら
群れの間を跳ね回り始めた。

「お、おいおい…中島……。あのヘンなの、口聞いてるぞ…!?」

 磯野は、相変わらずまだ困惑と非現実感が抜けないらしく、不気味そうに声を震わせて言ったが、
中島の方は、もう全く平静といった状態で、胸に腕組みをして、悠然とそのゆっくり達の
騒憂の様子を眺めていた。

「磯野…?知ってるか?こいつらが、『ゆっくり』だよ」

「え?いや、だから、そのゆっくりってのは、一体…いや、待てよ?ゆっくり…?」

 先に述べた通り、2010年現在では、大々的な駆除により、都市部からは、ゆっくり達は
ほぼ姿を消している。
それが行われたのが2005年であり、この年代の少年達ならば、ゆっくりの存在など、
本当に幼い頃の記憶の片隅にかすかに残っているか、あるいは全く知らないのが当たり前なのである。

「あー、そういや…いたな、そんなの!すんげー小さい頃、テレビでやってるの、
見た記憶あるわ」

 しかし、また、この親友同士の二人の少年の片割れ、中島の方は、そういった一般的な少年とは
また違った、特殊な経験と趣味嗜好を経てきた人間であり、ゆっくりに対する造詣は、
そこらの大人よりも深かったのである。

 その造詣とは、まさしく『ゆ虐』…今に至るまで、ゆっくりの存在を忘れられない、
ゆっくりを見、その言葉を聞き、更には痛めつけ、あらゆる意味で苦しめ、殺し、また生かす…。
その麻薬的な快感に魅せられてしまった者達のコミュニティをネットで知り、
自らもバーチャルな世界で、そうしてゆ虐を嗜みながらも、いつか自分もリアルな世界で
ゆ虐の快楽を味わう事を、密かに夢見ていたのである。

 そして、今、ついに、その夢の舞台に立っている中島…彼の脳内は、ヘブン状態であった。

「ゆっくりしていってね!!!」

 その言葉は、どのゆっくりの口から発せられたものでもない。
磯野は、いきなり訳の分からない事を叫んだ中嶋を、びっくりして見つめていたが、
更に驚いた事には、ゆっくり達の反応が、即座に返ってきたのである。

「「「「「「「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」」」」」」」

 一斉にこちらを振り返っての、大合唱。
磯野はあまりの事に、その場に尻餅を付きそうになってしまった。

 しかし、本能でそのゆっくり流の挨拶を返したまでは良かったものの、
ゆっくり達の瞳と精神は、そこで驚愕に凍り付き、固まってしまった。

 その目が見たのは、ありうべからざるモノ――
自分達は、それから逃れ、それの目が届かず、それから隔絶され、
それが足を踏み入れて来るなどあり得ないと、固く信じていられるはずのこの場所、
『ゆっくりぷれいす』を、作り上げたのに――――。

 そこに立っていたのは、紛れも無く、自分達をいつも狩り立て、痛めつけ、苦しめ続けた、
永遠の恐怖の対象――にんげんさんであった。

 一人は、相次ぐ予想外の展開に、幾分腰が砕け気味になっているが、もう一人の方は…。

 胸に腕を組み、不気味な薄ら笑いを浮かべ、超然とこちらを睥睨してくる、あの目――。

 自分達の生殺与奪の全てを握り、自分達を使い、どう楽しんでやろうか…
それしか考えていない、『虐待鬼意山』の血脈をはっきりと示した、目であった。
ゆっくり達の、先祖代々受け継がれてきた餡子脳の記憶がそれを喚起させ、
ゆっくり達はぶるぶると、怖気にふるえた。

 中島は、サディスティックな笑みを口元に浮かべたまま、一歩踏み出した。
それをきっかけに、ゆっくり達の硬直の呪縛は、解かれた。

「ゆんやあぁぁぁぁぁ!!!」

「どぼじでにんげんざんがはいっでぐるのおぉぉぉぉ!!?」

「だじげでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「ゆぐっ…ゆっぐちぃ!ゆっぐちぃぃぃぃ!!」

 ゆっくり達は算を乱し、我を忘れ、仲間同士でぶつかり合い、ののしり騒ぎながら、
それぞれてんでの方向へ向かって逃げ出した。
小さな赤ゆっくりや子ゆっくりが、成体にぶつかられ、吹き飛ばされ、
あちこちで潰れかけ、餡子を吐き出し、あっけない瀕死の姿を晒して、
助けを求める弱々しいうめきを上げた。

「ほほう…お前達は、逃げないのか?」

 中島は感心したように言うと、そこに残っていた、7,8匹のゆっくりをねめつけた。

 正確には、8匹のゆっくりが、そこに残っていた。
内訳は、ぱちゅりーが1匹、まりさが7匹。
ぱちゅりーは、群れの長たるあのぱちゅりーであり、残ったまりさ達は、
あの大工の棟梁、えどっこまりさを中心とした、大工の一団であった。

 ぱちゅりーはそれでも、恐怖にぶるぶると震えていたが、
まりさ達は震えもせず、ぷくうううと頬に空気を含んで体を膨らまし、
こちらを威嚇さえして来た。

 やがて、ぱちゅりーが勇気を奮い、一歩進み出て来た。
そして、震える声で言った。

「む、むきゅ…!まりさたち、とりあえずぷくーはやめてね!
にんげんさんにさからうと、むっきゅりできなくされちゃうのよ…!」

 長の一声で、まりさ達は皆、しぶしぶと空気を吐いた。
しかし、その大きな目は相変わらず、挑戦的に人間達を睨み付けている。

 意を決したぱちゅりーが、続けて言った。

「む、むきゅ…にんげんさん、むっきゅりしていってね!!」

 愛想笑いのような表情をなんとか浮かべて、ぱちゅりーは言った。

 中島はにやりと笑い、なるほど、こいつは、俺達と交渉するつもりのようだ…
と、当たりをつけた。しかし、何も言わなかった。

「む、むきゅ…ひょっとしてにんげんさん、あれをとりにきたんじゃないかしら?」

 そう言って、後ろにある、ひしゃげて潰れたダンボールを、おさげで指した。

 そこで、磯野が声を上げた。

「あ、俺のボール…」

 そのダンボールの住居には、上から磯野達の飛ばした野球ボールが直撃したらしく、
真ん中にボールがめり込み、家全体をぺしゃんこに潰していた。

 ぱちゅりーは、慌てながら潰れたダンボールの上からボールを取り出し、
二人の少年に捧げるように両おさげで持ち上げた。

「む、むきゅ…!このとおり、おにいさんたちのぼーるさんは、むっきゅりかえすわ!
だ、だからおにいさんたちも、むっきゅりおうちにかえってくれないかしら?」

 中島は、ぱちゅりーからボールを受け取り、ほらよ、と、未だに場についていけない
磯野に投げ渡すと、わざとらしく、考え込むようなフリをした。

「ふむう…」

 しかしその時、まりさ達の中から、勇ましげな声が上がった。

「おさ!まつんだぜ!!」

 そう叫んだまりさが前へ跳ね出て来て、おさげでビシィと中島を指しつつ、続けた。

「このクソジジィは、まりさたちがせいこんこめてつくりあげたおうちさんを、
ぺしゃんこにつぶしたのぜ!そのおとしまえをつけさせるまで、おうちにかえしてやるわけには、
いかないのぜ!!」

「む…むきゅうう!?まりさ、なにいってるのおおお!?むきゅ、まってね、にんげんさん…」

 ぱちゅりーは慌てて中島に向かい、取り繕いにかかったが、
そのまりさの一言を皮切りに、被せるように口々に、まりさ達が喚き立てた。

「まりさのいうとおりだよ!にんげんさんごときが、まりさたちのたてた、
とてもゆっくりしたるねさんすようしきのおうちさんにてをだすなんて、
ゆるされないことだよ!!」

「よくみるのぜ!こいつらはにんげんさんとはいえ、まだこどもなんだぜ!
それなら、まりさたちがぜんいんでかかれば、かんったんにゆっくりぼこぼこに
できるに、きまってるのぜ!」

「ゆゆっ!それもそうだよ!ゆっくりできないにんげんさんは、
ゆっくりしたまりさたちに、せいさいされるべきだよ!ゆっゆおー!」

 勝手に盛り上がり、制裁だのなんだのと喚き立てているまりさ達を見て、
中島は、既に馴染んだ、ゆっくりに対するムカツキの感情が、ビキィと高まっていくのを感じたが、
それと同時に、笑いが止まらないような気分でもあった。

「むぎゅうううー!みんな、おねがいだからおちついてえ!!にんげんさんにさからわないでええーー!!
えれえれえれ…」

 ぱちゅりーは、尚も必死にあらぶるまりさ達を押し止めようとしていたが、
無理をして大声を出し続けていたため、生来の虚弱さが祟り、
生クリームを吐いてその場にうずくまってしまった。

「とうりょう!ときはきたのぜ!たたかいのごうれいをくだすのぜ!
つよいつよいまりさたちがにんげんさんをやっつけて、むらをまもったえいゆうさんに
なるのぜっ…!!」

 大工の棟梁、えどっこまりさは、目を閉じ、いかにも大物然とした風情を漂わせながら、
このまりさ達の奮起の声を聞いていたが、やがて意を決したらしく、
帽子から愛用の金槌を取り出し、空へ向かって高々と掲げた。

「てやんでぇい!!てめぇらのそのこころいき、たしかにうけとったんでぇい!
このまりささまのせいぎのはんまーで、ゆっくりできないにんげんさんの
あんちくしょうを、にどとおてんとさまをおがめねぇようにしてやるんでぇい!!
やろうども!ついてくるんでぇい!!!」

「ゆっゆおー!」

 まりさ達が棟梁に唱和し、今まさしく、中島へ向かって踊りかかろうとしていた、
その時であった。

「ちぇやんぢぇい!まりちゃちゃまも、おとっつぁんといっしょに、ちゃちゃかうんぢぇい!」

 突然、棟梁まりさの陰から、小さな赤まりさが飛び出した。
そのおさげに、小さな花の茎のようなものを、握り締めている。

「お…おちびぃぃ!!?まだにげてなかったんでぇぇい!?」

 その赤まりさは、棟梁のまりさの子であるようだった。

 それを目に留めた中島。楽しげな笑みを浮かべ、いきなり進み出ると、
その小さな赤まりさを、ひょいっ、とつまみ上げてしまった。

「ゆぅぅぅぅ!?ゆっ!まりちゃ、おしょらをちょんでるみちゃいぢぇい!」

 ゆっくりにしてみれば、万力のような力を秘めた人間の指につまみ上げられ、
その命は既に風前の灯火なのだが、赤まりさはゆっくりの本能に忠実に従い、
空を飛んでいるような感覚を、無邪気に面白がっているだけである。

 しかし、それを見た棟梁まりさは、絶望的な表情で、中島に向かって突進した。

「ゆぐぉぉぉぉぉぉ!!!おちびをはなすんでぇぇぇぇぇぇぃぶぐぼぉぉわぁ!!?」

 その顔面のド真ん中へ、中島の爆発的なカウンター・キックが深々と突き刺さった。
と、思いきや、弾力のあるゆっくりの体は、すぐに中島のつま先から離れて吹き飛び、
どすん!ごろごろごろ…と、無様に地面に転がった。
そのおさげから金槌が離れ、くるくると回転しながら飛び、別のまりさの脳天を、
ぐしゃりと叩き潰した。そのまりさは、「ぶべぅ」という気色の悪い音声を発すると、
それきり動かなくなった。

「むっ…むぎゅううう…まりさ…とうりょうう…」

 ついに、こうなってしまった…。
ようやく、クリームを吐き出し、苦しみ、うずくまった状態から多少回復したぱちゅりーは、
その惨状を目の当たりにし、悲壮感を貼り付けたような表情を見せた。
こうなってしまった以上、後はもう、最も悲惨でむっきゅり出来ない結末しか、
待ってはいない…。
その事実をひたひたと感じ、ぱちゅりーはさめざめと泣いた。

「とおりょおおぉぉ!!」

「とおりょおおおお!ゆっくり!ゆっくりしてねえええ!」

 吹き飛ばされ、転がった棟梁まりさのもとへ、他のまりさ達が駆け寄る。

 顔面に突き刺さった、初めて食らう人間キックはかなりの衝撃だったはずだが、
子供の命を握られた棟梁まりさの闘志は、まだ萎えてはいないようだった。

「ゆぐっ…ぶふぅっ……、おちびを…はなすんでぇい……!」

 口の端から餡子を垂らしながらも、立ち上がろう…というか、転がり起きようとする棟梁まりさ。

「ふふん…なるほど、ゆっくりにしては、中々根性があるみたいじゃないか…。
んじゃ、まあ、最初だし…とりあえず、分かりやすい絶望をくれてやるとしよーかな」

 そう言うと、中島は空き缶でも投げ捨てるように、ぽい、と赤まりさを手から離した。

「ゆぴぃぃぃ!」

 当然、手から離れた赤まりさは、地面に激突する。
ぺちっ、という軽い音しかしなかったが、小さい赤まりさにしてみれば、
それは全身の内臓が浮き上がる程の衝撃であったろう。

「ゆぴぃぃぃぃぃぃ!いちゃいぃぃ!いちゃいよおぉぉぉ!おとっつぁぁぁぁん!
たしゅけちぇぇぇ!きゃわいいまりちゃをはやくたちゅけちぇぇぇ!」

「おちびぃぃぃぃ!!いまいくんでぇぇい!!ゆっくりしてまってるんでぇぇぇい!!」

 なんとか起き直ると、すぐに赤まりさへ向かって駆け寄る棟梁まりさ。

 しかし、再び親子が身を寄せ合う事は、永遠に無かった。
泣き叫ぶ赤まりさだけを視界にとらえ、真っ直ぐに向かって行くまりさの視界の上から、
何かゆっくり出来ないものが降り落ちて――

 ぺちっ。

「お…ち…び……?」

 それは、赤まりさを踏みつけるべく降ろされた、中島の足であった。
それは、余りにも容易く、棟梁まりさにとって最愛の赤まりさが存在していた空間を
押し潰し、自らのふっくらした愛らしい子を、ただの平べったい皮と、餡子だまりに変えてしまった。

「おぢびいいいいいい!!!ぐおおおおおおおおおお!!!!」

 棟梁まりさは逆上し、激怒に血走った目で、遥か頭上に存在する、中嶋のうすら笑いを浮かべた顔を、
睨み付けた。

「じねえええええええ!!ごんなひどいごどずるくずにんげんは、ぞぐざにじぬんでぇぇぇぇぇぇい!!!」

 そして、渾身の力を込めて、最愛の子供を潰した脚に、飛びかかる。

 しかし、そんな棟梁まりさには、子供の為に一矢をむくいることすら、許されはしなかった。

 今度は真横から、中島のまわし蹴りが棟梁まりさの芯をとらえ、まりさは空中で、歪な形にひしゃげた。
メキメキメキ…とイヤな音がして、棟梁まりさの、砂糖菓子で出来た歯が、何本か折れ飛んだ。

 中島は、蹴り脚を振り抜いた。

「でぇぇぇぇぇぇい…」

 棟梁まりさは、そのままきりもみ回転しながら吹き飛び、ごしゃっ、と地面に叩きつけられた。
今度は、打ち所が悪かったのか。気絶したのかあるいは死んでしまったのか、
そのままぴくりとも動かなかった。

「とおりょおおおお!!」

「よぐもとうりょうを、とうりょうのおちびぢゃんをををを!!」

「じねえええ!ゆっぐりじねええええ!!!」

 この圧倒的な暴力を目の当たりにし、他のまりさ達は、恐怖にかられて逃げ出すかと思いきや、
口々に罵り声を上げながら、飛びかかって来る。
どうやら、己の力を過信するまりさ種の場合は、こういうケースでは恐れよりも、
怒り、憎しみの方が先に立つようだ。

 しかし、それを迎え撃つ中島には、怒りも、憎しみなどあろうはずもない。
ただ、哀れでみじめなゆっくりどもを、蔑む目と――
そんな存在を、圧倒的な神の力を以って責め苛む、その背徳的な喜びが、心を満たしているだけであった。

 中島はそんな、明鏡止水な澄んだ気分で、両手を広げ、飛びかかって来るまりさ達を、
己の懐へ迎え入れた。

「むっふっふ…最高だよ、お前達は。だから俺に出来る、最大限のおもてなしで迎えよう…
ゆっくりしていってねえええ!」

 そして、中島無双が幕を開けた。

 中島は、思うが侭に、小人の国を蹂躙する巨人が如く、まりさ達を殴りつけ、蹴り飛ばし、吹き飛ばした。

 そのおさげを掴んで持ち上げると、痛みと恐怖で顔を引きつらせ、小便を漏らすまりさに
最高の笑顔でにっこりと笑いかけると、そのまま隙間が無い程に、まりさの顔面を、全面まんべんなく
殴りまくり、顔面を生まれたての地球のようにしてしまった。

 そして顔面ボコボコのまりさを投げ捨てると、ズボンとブリーフを降ろし、
地面に瀕死で横たわり、2倍近くに腫れ上がった顔をぴくぴくと小刻みに痙攣させているまりさに、
小便を引っかけた。

 強烈なアンモニアの臭気がまりさの嗅覚を突き刺し、瀕死と思われたまりさが飛び上がり、
ぐざいぃぃゆっぐりでぎないぃぃと喚きながら、辺りを転げ回る。
中島はその様子を、哄笑しながら眺めていた。

 磯野は、更にフルチンのままゆっくりどもを痛めつけ続ける親友の姿を、ずっと眺めていた。
どうしても、目を離すことが出来ないのである。それは、恐い物見たさ、見てはいけない物だからこそ
見続けてしまう、というような、好奇心からだけでは、なかった。

 実は磯野は、中島が最初に小さな赤まりさを踏み潰した瞬間から、自分の中に、
感じた覚えの無い、未知の感情が、もくもくと積乱雲のように湧き上がってくるのを感じ、
それは既に、抑え切れないまでに高まっていたのである。

 そんな磯野の前を、ついに敵わないと悟ったか、暴力を受けた痛みと苦しみで、
恐怖が怒りを上回ってしまったか、逃げて行こうとしていた一匹のまりさが、横切ろうとした。

 磯野は、そのまりさのおさげを、むんずと掴まえた。全く、無意識の行動だった。

「ゆっ…ゆぐううう!はなじでえええ!はなぜえええ!」

「まあ、なんだ…ゆっくりしていけよ」

 そう言った磯野の瞳は、親友と同じ喜びの光を、宿していたのだった。

「おお!磯野ォー!お前もやるか!いいぞおーゆ虐は!全てを忘れさせてくれる!」

「ああ、中島…。やる…俺もやるよ。だけど中島、とりあえず、ズボンはけよ」

 ついに、街の家々が形作る、でこぼこした地平線に、日が沈んで行こうとしていた。

 しかし、少年達のゆ虐の宴はいよいよたけなわ、盛り上がるばかりであった。






「げーっ!やべー!もうすっかり夜になってんじゃねーか!!」

 少年達が、ようやくその狂熱から覚め、我に返った時には、もう既に日が落ちて久しく、
北の空には、一番星がまたたいていた。

「ああ…さすがに、もうそろそろ帰んねーとヤベェなぁ。ねーさん達が心配して、
ケーサツ呼んじゃうかも」

「んじゃ、そろそろウチに帰っかぁ…あ~あ、暴れすぎて、肩と腰がいてーや」

 そう言いながらも、伸びをする中島の仕草は、狩りと食事を終えた
肉食獣のように、疲労しながらも満足げな動きであった。

「でも…さすがにちょっと、もったいねえなあ。せっかく、こんな楽しい玩具、
見つけたってのに…」

 磯野は、相当名残惜しそうに、死体と化したか、ボロ雑巾のようになって
今にも死体と化そうとしている饅頭どもの残骸を、振り返った。

「あん?磯野、何言ってんだよ。また明日も、遊びに来りゃいいだろ?
ゆっくりどもも、まだまだくさるほどいやがるしな!」

「いや~、だってさすがにここまでやったら、こいつらだって、どっか遠くに
逃げようとするだろ?」

「なんだ、そんなことか。安心しな、磯野。俺はゆっくりってもんを、よく知ってる。
…こいつらはな、すげーバカで弱えクセに、プライドとか欲望とかは、
いっちょまえ以上に高いんだよ。みてみりゃ、この村(笑)みてーなのも、
ゆっくりどもが相当苦労して、作り上げたってえ感じじゃねーか。
そんな場所を、こいつらが捨ててどっか行くなんてことは、ぜってぇーありえない。
理屈じゃなくて、無理なんだよ、こいつらには」

「へぇぇ~…そんなもんなのか?うん、そうか、だったら、また明日来りゃいいか!」

 この夢のような時間が、明日もまた味わえる…。
磯野はそう思うと、テンションが上がるのを隠し切れなかった。

「よ~し、帰るぜ~超帰るぜえ~。今日の晩メシなにかな~」

 かくして、ゆっくり達の地獄の一日は、ようやくその幕を降ろしたのであった。
しかし、その地獄はまだまだ一日目。再び日が昇れば、ゆっくり達はまたしても、
その業火にさらされるのである…………。






 そして、更に夜は更けて。

 ここは、二人の鬼が去り、更にしばらく経った後の、ゆっくり達の村の、
その中央広場であった。

 真ん中に、小さな焚き火が、めらめらと燃えている。
その火を囲む、大勢のゆっくり達…その顔には、悲しみ、怒り、恐怖…
負の感情ばかりがあらわれ、彼らが全然ゆっくりしていないのは、明らかだった。

「やっぱり…みんなでにげるしか、ないみょん!あっちのおやまへ…」

 誰もが沈み込み、沈黙が支配していたその会合場で、最初に口火を切り、
そう提案したのは、一匹のゆっくりみょんであった。

「ゆうう…でも、せっかくここまでつくって、ひろげてきた、れいむたちの
ゆっくりぷれいすなのに…。
にんげんさんごときのせいで、でていかなきゃならないなんて…
れいむはぜったいにいやだよ…!」

 すかさず、れいむが反論する。

「だけど…きっと、またにんげんさんがくるんだよー!?
そうだよー…こんどは、もっとたくさんなかまをつれてきて、
ちぇんたちをひとりのこらず、ころしちゃうかもしれないんだよー…わかってねー…」

 ちぇんは二本の尻尾をぱたぱたさせながら、目下一番の脅威の存在を、
主張した。

 群れのゆっくり達が、未曾有の脅威を前にして開いた、緊急の対策ゆっくり会議。
それは案の定、はかがゆかなかった。

 今回の人間さんの襲撃の犠牲になったのは、何匹かの子ゆっくり、赤ゆっくりと、
大工まりさ達だけで、群れそのものが今すぐ、壊滅の危機に瀕しているという訳では、無かった。
しかしそれも、更に人間さんの襲撃が続けば、時間の問題であろう。

 そんな事態を、何とか打開しようと、兎にも角にもと開かれた、この会議であったが…
圧倒的な人間さんの脅威を打開する策など、非力で餡子脳しか持たないゆっくり達に、
あろうはずがなかった。

「だけど、にげるっていったって…。もう、ふゆさんがきてるんだよ?
このへんはしぬほどさむくはならないし、ゆきさんもふらないけど…。
それでも、かぜをふせいでくれるくささんもない、さむいおやまのなかで、
ひとばんじゅうそとにいたら、こごえちゃうよ?
おやまでおうちをつくるには、もっとじかんがかかるし…」

「ゆぐぅぅぅ…どいつもこいつも、さっきからだまってきいてたら、
なにいってるんでぇい…!?」

 ずっと、黙って目を閉じ、何かに耐えるような様子だった棟梁まりさが、口を開いた。
棟梁まりさは、早々に気を失ってしまっていたため、人間さん達の執拗な虐待にも遭わず、
助かったのだった。
歯は何本か折れてしまってすきっ歯になってはいたものの、移動や会話には何の差支えも
無い程には、元気なようだった。

「たたかうんでぇい!!あのくずにんげんどもを、たたかって、たおして、
えいえんにゆっくりさせてやって…それで、こんどこそ、おちびのかたきを…!」

「ゆううう!?なにいってるのおおお!?そんなこと、できるわけないでしょおお!?
ばかなの!?しぬの!?そんなにたたかいたいんなら、とうりょうがひとりでたたかってね!!」

「ゆにいいい!?てめぇ、それでもでかなんでぇい!?そんなこしぬけは、
このむれにはいらないんでぇい!とっととでていけばいいんでぇい!!」

「おお、こわいこわい。ていうか、でかってなんなの?れいむがでかなわけないでしょ?
ばかなの?しぬの?これだから、のうきんのゆとりはこまるんだよ。りかいできる?」

「もおおお!いいかげんにしてねええ!けんかなんか、とかいはじゃないわああ!
それにけんかなんかしてたって、めいあんがうかぶわけないでしょおおお!!?」

 皆、そんな事実は、痛いほどに分かっている。しかしだからと言って、
そんな簡単に、この絶望的な現状を打破する名案など生まれっこないことも、痛いほどに分かっていた。

 再び、重い沈黙が、場を支配した。

「ゆううう…これじゃ、らちさんがあかないわ…おさ!おさ!」

 しびれを切らしたありすが、ずっと下を向いたまま、黙って言い合いを聞いていた長ぱちゅりーに、
最後の助けを求めた。

「さっきから、なにもいわないけど…。おさには、なにかめいあんがないの?
もう、みんな、おさだけがたよりなのよ……」

 ありすの最後の方の言葉は、弱々しく、口の中に消えていく感じだった。
もう全員、薄々は感じていたのだった。例えみんなが頼りにする長といえど、
既にこの状況では、全てを打開するような、ゆっくりした名案など、思いつける訳はない、と…。

 しかし、ぱちゅりーはその時、おもむろに閉じていた目を開いた。

「ひとつだけ…」

「ゆ?」

「ひとつだけ…あるわ。にんげんさんたちをたおし、むっきゅりむらをまもり、
どこにもいかなくても、もとのむっきゅりしたせいかつにもどれるほうほうが……」

「ゆ…ゆゆゆっ!?おさ、それはほんとう…!?」

 にわかに、場が沸き立った。皆、餡身を乗り出して、ぱちゅりーの次の言葉を聞こうとする。
中には、懐疑的な表情で、一歩引いて聞いていた者も、かなりいたのだが。

「ゆゆん、おさ、それはなんなの!?はやくおしえてね!」

 期待に目を輝かせるありすが、せかせかと促した。
ぱちゅりーは、重々しく言った。

「『ゆんだむ』を…」

「ゆ…?」

 ゆっくり達の心中とは裏腹に、夜空には、満天の星々が、降るように美しかった。

 ぱちゅりーは、それを見上げ、託宣を告げる巫女のように、言った。



「『ゆんだむ』を…つくるしか、ないわ……!」






つづく


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感想

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  • 中島、お前そんなやつだったのか -- 2023-02-21 16:38:37
  • 中島、ズボンはけよ -- 2012-12-24 15:05:25
  • ↓嫌な出来事だったよなぁ・・・今となってはいい思い出だが
    -- 2011-09-13 22:22:15
  • やっと本編に入るのかよw
    Vガンダムなんて最初からガンダムが出ていないとプラモの売上に響くって事で
    最初の1話だか2話だかをカットして途中のガンダムがでる話から放送したんだぞ!

    ・・・別にだからどうという事はありませんがw -- 2011-07-18 14:39:25
  • ガキは嫌いなんだよなー -- 2010-07-09 02:57:22
  • あー無邪気(笑)な子供見てるとうぜー -- 2010-03-26 16:56:26
最終更新:2010年01月25日 17:25
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