ふたば系ゆっくりいじめ 783 南の島の生命賛歌

南の島の生命賛歌 23KB


観察 自業自得 群れ 自然界 現代 独自設定 うんしー 南の島のまりさ続編です



読みにくいところが多いと思いますが、ゆっくりしていただければうれしく思います。
独自設定多めです。ご注意ください。

設定
地理:亜熱帯気候に位置する無人島です。
   絶海の孤島で、島の周囲のほとんどは断崖絶壁に囲まれています。
観察者:避難小屋に拠点を置き、周辺の漁師らの協力を得ながら観察しています。
    避難小屋は島周辺で漁をすることもある近隣の島々の漁師たちが悪天候
    に見舞われた際の避難所として使っているものです。


南の島のまりさ2
『南の島の生命賛歌』


季節は晩秋、とはいえ常夏の陽気に包まれたこの島に劇的な気候の変化は現れない。
夏に比べて若干降雨量が減少する程度で、依然として島は花に、虫に、海は魚に、その他
の小動物たちにあふれていた。しかし、この時期になると干潮を迎える時間帯が次第に夜
間へと移行していく。そのため、まりさ種以外でも海に漁にでかけられるようになるが、
夜の海は捕食者たちが動き出す危険な場所であった。また、視界も悪いため、この季節に
なると食料は海での漁よりも林での狩りに依存する割合が高くなっていく。

この島の数少ない穏やかな海岸にある、ゆっくりのコロニー。
そこに一つの変化があった。
長く長老として群れを率いてきた老ぱちゅりーが息を引き取ったのである。
老ぱちゅりーは死ぬ場際、その枕元に、次のリーダーとなる若きぱちゅりー、ずっと長老
を支えてきたぶれーんの老ありす、群れ一の狩りの名手である父まりさらを集めた。
枯れ草を積んだベッドの周りに集まった面々をじろじろと疲れた目で見回した後、老ぱち
ゅりーは口を開いた。

「げほっげほっ…もうぱちぇと一緒に海岸に引っ越してきた仲間たちは、みんな永遠にゆ
っくりしてしまったわ…げほっ…最期の言葉…みんなに伝えておきたいことが、げほっ」

老ありすが優しくすーりすーりをする。みな、一言も言葉を発せずに、老ぱちゅりーの次
の言葉を待った。

「ありすは知らないんだったわね…げほっげほ…ぱちぇたちが山から逃げてきたことを…」
「ええ、ありすは逃亡中にゆっくり生まれた世代だわ。」
「ぱちぇたちのむれは最初、山の中にいたの…お水さんが豊かで、木陰もたくさん、カニ
さんも虫さんもたくさんいた、とてもゆっくりしたぷれいすだったわ。」
「すごいわ!ぱちぇもおばちゃまのその、ゆっくりぷれいすに行って見たいわ!」

老ぱちゅりーの話に興味を示す若ぱちゅりー。
しかし、老ぱちゅりーは静かに首を横に振った。

「げほっげほっ…ひゅー…ひゅー…ぱちぇたちは逃げてきたの…山の中はとてもゆっくり
できたけど、ゆっくりしているのはぱちぇたちだけじゃなかったのよ…ひゅー…」

老ぱちゅりーは呼吸を整えるのに数分を要した。

「…むきゅ…山の中には魔物がいるの」

老ぱちゅりーの話をまとめるとこうだ。
山の中は水・食料とも豊かだが、それを奪い合う、さらにはゆっくりを食べようとする魔
物がいるという。魔物は三種類いるらしい。

まず、キングベヒんもス
名前はこれに襲われたてんこが、「き、キングベヒんもス…」という言葉を残して事切れ
たことに由来する。ゆっくりの巣を壊し、掘り起こし、ゆっくりが蓄えたエサやゆっくり
自身を捕食するという。前述のてんこは山にあったいくつかの群れの一つのリーダーだっ
たが、この群れは三匹のキングベヒんもスによって全滅した。老ぱちゅりーによれば、豚
さんという生き物ではないか、という話だった。

次に、ぴかぴか
名前はこの魔物の目が夜間に爛々と輝くことからきている。物音一つ立てずに忍び寄り、
ゆっくりを永遠にゆっくりさせてしまうらしい。実質的な被害はキングベヒんもスに比べ
ればたいしたことはなかったみたいだが、一度その姿を見ると恐怖のあまり死ぬまでしー
しーを垂れ流したゆっくりが続出したらしい。時折、ものすごい声で鳴くことがある。

最期に、赤ゆ泥棒
名前はこの魔物は夜間に巣に音もなく忍び込み、赤ゆたちをさらっていくことに由来する。
子ゆっくりぐらいのサイズでもさらわれたことがあるらしいが、成体が襲われることはな
かったという。

ぴかぴかと赤ゆ泥棒は夜行性、特に、赤ゆ泥棒は昼間の襲撃例は一つもない。
しかし、ぴかぴかは少数だが、夕方、明け方に襲われた事件もあり、明るいからといって
油断はできないという。

話を聞き終わったゆっくりたちはあまりの恐怖にゆっくりできなかった。
父まりさなどは、巣にいる新しい赤ゆたちが無事かどうか確認したくて気が気ではないよ
うだ。

「ごほっ…う…ここも決して安全ではないけど…あの三種類の魔物に比べればたいしたこ
とないわ。もし、ここにもあの三種類の魔物が来るようになったら他のゆっくりぷれいす
を探しなさい…う!げほげっほっ!!」

老ありすが老ぱちゅりーの背中をすーりすーりする。

「今はみんななんだかんだで穏やかに暮らしてるわ。むきゅう…すてきなことね…げほっ
でも、このゆっくりらいふは…当たり前のことじゃ…げほげほっ!!」
「おばちゃま!」

「次のりーだーはぱちぇよ…ひゅー…ひゅー…ゆっくり……」

こうして老ぱちゅりーは永遠にゆっくりし、山での生活や、海岸での生活を切り開いた実
体験を持つ世代はいなくなった。この先どのように転ぶにしろ、この群れは新しい時代を
迎えつつあった。



晩秋、雨季最後の長雨が何度か続く、ある日の夕方、山の奥の水源地から「それ」はやっ
てきた。最初に異変に気づいたのは狩りに出ていた父まりさだった。

「ゆ?ここなっつの林さんが真っ赤だよ!!ゆっくりできないよ!!」

真っ赤なカーペットのようなものが、少しずつ、染みが広がるように海へと広がってくる。
這い寄る混沌、というものを見たとしたら、こんな感じだろうか?

「あれは?…カニさんだよ!!ゆっくりできないカニさんの群れがやって来たよ!!」

それは雨季最期の大潮に一斉産卵を海で行うアカガニの群れだった。
数万匹?いや数十万匹だろうか?そのすべてが卵を抱えた雌であり、ただ産卵をするため
だけに海へと殺到する。その途中にあるものは、倒木だろうが、谷だろうが、ゆっくりの
巣だろうが情け容赦なく蹂躙し、ただただ海を目指していた。

「ゆゆ!かわいいかわいいれいむに食べられに来たんだね!いいこころがけだよ!ゆっく
り死んでね!」

中にはカニがたくさん食べられると喜ぶゆっくりもいたが、巣の中、どこへでも入り込ん
で来るため、すぐに大騒ぎになった。

「やめてね!入ってこないでね!カニさんゆっくりしないで出てってね!」
「ちねくちょがに!れいみゅのたからもにょかえちぇ!かえちて!ゆえええええええ!」

中には食べ物やたからものをアカガニに持っていかれて泣き喚いているゆっくりもいた。
この時期のアカガニは産卵に全力を注ぐため、ほとんど摂餌などは行わない。
ゆっくりのエサやたからものなど見向きもしないはずなのだが、余程気に入らなかったの
だろうか?ゆっくりたちにつぶされても、吹っ飛ばされても、他の個体が拾い上げ、まる
でバケツリレーのようにそれらは海へと持ち去られていった。食料などの貯蔵庫は、備蓄
品の管理や内装・道具の加工を担当するありす種がフタをしたため、入り込まれることは
なかったが、何百というアカガニに侵入され、群れは大混乱を起こしていた。
その一方で、この大量のアカガニはいい獲物でもあり、普段狩りをしないれいむ種なども
外でアカガニを追い掛け回していた。なにせ、今は産卵にのみ集中しているのか、攻撃さ
れても反撃よりも、海へ向かって逃げるほうを選ぶアカガニが多い。

かつてタカラガイにこだわっていた子まりさの妹は、子れいむといえるサイズにまで成長
していた。子れいむは大好物のカニの大群を相手に無双乱舞を披露していた。

「ちね!ちね!くちょがに!きゃわいいれいむのためにちね!」

かつて姉のまりさに作ってもらった狩り用の棒を振り回し、あちらこちらのアカガニへと
叩きつける。通常、ゆっくりの棒切れ程度ではこのサイズのアカガニを潰すことはできな
いのだが、子れいむの執拗な攻撃によって脚が何本がもげ、片目がつぶれたアカガニは、
体当たりによって岩に叩きつけられ、ぐったりと黒い泡を吹いて動かなくなった。
子れいむは器用に小石を投げつけ、外骨格にひびが入った部分を棒で執拗に殴りつける。

「ゆへ!ゆっはー!れいむの強さ!おもいちったか!」

得意げにもみあげをぴこぴこわさわさするれいむ。アカガニのキチン質の甲殻の隙間から
は黄色い内臓が飛び出、大事に山から抱えてきた卵は辺りに散乱していた。それをなめと
るように食べていく子れいむ。

「うめ!これめっちゃうっめ!」

このアカガニの産卵大移動は毎年恒例であり、ゆっくりの巣も少なからず被害を受けるも
のの、まだ幼いゆっくりに栄養価の高い卵やカニを食べさせることで、成長を促進する大
切な季節イベントでもあるのだ。そもそも、ゆっくりの跳ねる速度で捕らえられるカニは
限られており、そのようなカニは甲殻が堅く、岩場で割るにも一苦労するものが多い。
だが、今なら、海岸にものすごい数が集中しているため、適当に石を投げるだけでもアカ
ガニを仕留めることができる。海岸で生きる上で、このアカガニのように産卵のために集
まってくる生物は貴重な食料源なのだ。

あの子まりさも石や棒切れを使ってカニを次々と仕留め、新しい妹たちへのごはんを集め
ている。(既に子まりさと表現し辛いサイズまで成長しているのだが、便宜上この表現を
使わせていただく)

「ふう、れいむはもうおなかいっぱいだよ!」

アカガニを三匹平らげた子れいむは巣に戻って、お昼寝しようとしていた。
しかし(巣内はそれどころではないのだが)、アカガニがなにやらきらきらしたものを持っ
てゆっくりの巣から海へと歩いていく。

「ゆ?しょくもつれんちゃのてーへんが、ゆっくりからたからもにょをうばおうなんて、
ゆるちぇないよ!げちゅはせーさいするよ!それはれいむがもらっちぇあげるよ!」

子れいむは巣から誰かのタカラガイを持ち去ろうとしたアカガニにとびかかり、三秒後
には十三匹のカニにはさまれていた。

「ゆげえええええええええ!!ばばじぇくじょがにいいい!!」

余程存在が腹立たしかったのか、アカガニは何をするわけでもなく、ただひたすら子れい
むをはさみ続けていた。一匹のアカガニがぴこぴこわさわさと動くもみあげをはさみでつ
かむ。

「やめりょおおお!れいみゅのきゃわいいもみあげにじゃわるなあああ!ちね!くじゅ…」

ぶちぶちぶち

「ゆぎゃああああああ!!れいみゅのぴこぴこきゃわいいもみあげがあ゛あ゛あ゛!」

アカガニは引きちぎったもみあげを口にしたが、食事に興味がないのか、美味しくなかっ
たのか、泡と一緒に口から出して捨ててしまった。

「あぎゃああああああああああ!!」

そうしている間にも、髪を、口を、リボンを、あにゃるを引っ張られ、子れいむが悲惨な
姿になっていく。

「ゆ゛え゛え゛え゛!!どぼじででいぶがごんなめじいいいい!!!」

そこへ子れいむの異常に気がついた父まりさと子まりさが駆けつける。

「れいむー!今ゆっくりしないで助けるよ!」
「カニさん永遠にゆっくり死ね!」

父子まりさが数匹のアカガニを棒で叩きつけると、アカガニたちは我に返ったかのように
海への向かって走っていった。

「ゆぎゃああああ゛いじゃい!いじゃいよおお!どぼじでぼっどばやぐたじゅげにごない
の!ばかなに!じぬにょ?」

「どぼじでぞんなごというのおおおおお!?」

子れいむの暴言に餡子がペタフレアした子まりさを押さえるように父まりさが割って入る。

「ケンカはあとだよ!ゆっくりしないでぱちゅりーたちのところにれいむをつれてくよ!」
「ゆ…ゆっくりりかいしたよ…」

二匹のまりさは泣き喚き暴言を二人に向かって機銃掃射する子れいむを抱えて、巣の奥に
いるぱちゅりーのもとへと連れて行った。その後には子れいむのあにゃるからもれたうん
うんが点々と残っていた。

その日の夜、多大な犠牲を払ったアカガニたちは一斉産卵を行った。
海水に体を洗われながら、全身をふるわせ、ゾエア幼生を海に放っていく。
たまに、卵塊ごと落下してしまうものもあったが、海中で孵化し、ゾエア幼生は新しい世界
へと拡散していった。

翌朝、海岸を埋め尽くすほどのアカガニの死体が残された。
ゆっくりたちはこの数日のうちに確実に肥え、巣の各地ですっきりーが行われることになっ
た。他の地域のゆっくり同様、ゆっくりたちの集団繁殖を促す要因は栄養状態である。一般
的にゆっくりは越冬後、新たに豊富な食料を集められる春が到来したことですっきりを行う。
その行動は、気温の上昇と栄養状態の二つがカギになっていると考えられてきた。
しかし、ここ南国のゆっくりたちは、常に温暖な環境に棲息しており、栄養価の高いエサを
豊富に摂取した状態になると年中すっきりすることが確認された。その中でも、このカニの
大移動、産卵に伴う一斉すっきりは、この島の生態系に適応した繁殖戦略といえる。



だが、生物が産卵のために一箇所に集中する現象はときにゆっくりたちに悲劇をもたらした。
あのカニの産卵から数日後、群れのまりさつむりたちは一斉に夜の海に繰り出していた。
まだ生きている弱ったカニを選別し、ついでに潮が引いた海岸の付着性二枚貝、貝殻の薄め
の巻貝、ヤドカリなどを集めていた。太陽の光が和らぐ、これからの季節には軟らかくて食
べやすい海藻も期待できた。主だった食用海藻は夏場はその強烈な太陽光線が生育を阻むた
め、冬が盛期となるのだ。

まりさつむりが夜の漁に動員されたのは、夜間は強力なはさみを持ったカニ類が活動するた
めである。野球ボール以上の大きさのまりさつむりならば、貝殻の中に身を隠すことで、潮
間帯のたいていの捕食者をやり過ごすことができる。カニ類は夜行性というよりは、潮の干
満に合わせた活動リズムを持っているため、夜だから特に危険というわけではない。しかし、
夜間の狩りは視界が不明瞭であり、月の光だけでは十分な警戒が行えないため、生存性の高
いまりさつむりが選ばれたのである。

「ゆ!ゆっくりできないカニさんだよ!」

大きなカニの接近を察知したつむりが殻の中に閉じこもる。そのとき、入り口を拾った小石
や貝殻の破片でふさげば「ぜったいぼうぎょ」の完成である。
カニははさみでつむりの貝殻を割ろうとするが、このサイズのカニには厚すぎるようだ。

「ゆ!ゆ!まりさはここにいないよ!ばかなカニさんはゆっくりいなくなってね!」

しばらくしてカニがいなくなると、つむりはひょっこり顔を出し、エサの収集を再開する。

「ゆゆゆ!まりさのぜったいぼうぎょを崩そうなんて無駄な足掻きだったね!」

高笑いをしながらタイドプールの回りのエサを集めるまりさつむり。
そのとき、水面下に危険な眼があることには気がついていなかった。

「この貝さんはおいしいよ!ゆっくりできるね!」

また一つおいしそうなエサを見つけて貝殻にしまい込むまりさつむり、次の瞬間なにかに
貝殻を絡め取られ、水中へと引っ張られる。

「ゆゆ?なに!?なんなの?」

すかさず貝殻に引っ込み、フタをしめる。

「まりさはここにいないよ!ぜったいぼうぎょの前にゆっくりしないであきらめてね!」

まりさつむりを水中に引きずり込んだのは大きなタコだった。タコはつむりを口元に抱え
るとそのまま水中の物陰で動こうとしない。
つむりは焦っていなかった。捕食者がいなくなった後、素早く水上にでなければならない
がこの場所に深いタイドプールはないはずだった。

「ゆー!ゆっくりしないでまりさを放してね!まりさはとってもかわいいんだよ!」

つむりがタコに捕らえられ10分ほど経ったときだった。
小さな音と共に、つむりの貝殻に小さな穴があき、つむりの体にちくりとした痛みが走る。

「なに?なんなの?ゆっくりできな…うべえええええええええ゛!!!」

つむりは急にに気持ち悪くなり、餡子を吐いてしまった。息苦しくて餡子がとまらない。

「ぎぼじわるいいいい゛!だじゅげで!」

つむりが今の状況を忘れて貝殻から顔を出すのに時間はかからなかった。

「ぐばっぼみじゅじゃんはゆっくじ…!!!!!」

次の瞬間タコの腕に絡め取られ、貝殻から本体のみ引っ張り出される。つむりはそのまま
タコの鋭いくちばしでかじられていった。

「!!!!!」

タコは貝やカニを捕食する際、殻に小さな穴を開けて毒を注入することが知られている。
毒で麻痺させた後に、貝殻から中身を引っ張り出したり、カニをばらばらにして食べるの
だ。しかし、このタコはまりさつむりを少しかじるとすぐ捨ててしまった。
タンパク質性のエサを好むタコは、炭水化物の塊である饅頭に価値を見出さなかったので
あろう。
タコから開放されたものの、つむりは水中で麻痺状態にあり、このまま何もできずに溶け
ていくしかなかった。
同様の悲劇は他のつむりにも起こっていた

「ゆあああ!タコさんだああああ!ゆっくり貝殻に避難するよ!」
「ゆげええ゛ぎもじば…おぼぼぼぼぼぼぼ」

タコはカニが大好物である。おそらく、この前のアカガニの集団産卵に魅かれて浅瀬へ来
たのであろう。かなりの数のタコがこのエリアに集まっていた。まりさつむりたちはタコ
に巻貝だと誤認され、貝殻に穴を開けて毒を抽入され、死んでいった。



まりさつむりがタコによって大きな被害を受けた翌日、今度はヤシガニが巣を襲った。
悪いことは重なるものである。襲ったと言っても、うまく割れずに巣の前に放置して
おいたヤシの実を食べて帰っていっただけであった。しかし、まりさたちは勇敢に応戦
し、三匹が永遠にゆっくり、八匹が重軽傷を負った。
と言ってもそのほとんどが、歩いているヤシガニに勝手に潰されただけなのだが。今回襲
撃したヤシガニは15kgはある個体で、まりさたちの棒きれも石もまるで通用しなかっ
た。れいむたちは必死にぷくーっをしたが、ヤシガニはれいむを一瞥すらしなかった。
結局、ヤシガニはヤシの実でなごむと去っていき、れいむたちはまりさですら叶わなかっ
たヤシガニをぷくーっで追い返したと認識、増長した。

「ゆゆゆー!れいむたちのいだいさの前にへんなのは逃げてったよ!」
「あんなのも倒せないなんて、まりさもありすもぱちゅりーもたいしたことないね!」

ヤシガニのはさみで貝殻ごとまっぷたつにされたつむりや、踏まれて中枢餡をかき回され
たまりさの死骸が横たわる中、れいむたちは意気揚々と巣に帰っていく。老ありすは、こ
の状況を苦々しく思っていた。



かつてこの群れの7割はまりさ種で占められていた。まりさ種がエサを集め、れいむ種が
生まれた子を育て、ぱちゅりー種がエサ場や環境の変化を読み取り、ありす種がそれに応
じて巣の改造の指揮をとったり、備蓄量をコントロールしたりしていた。
しかし、まりさ種が連続する災厄によって減少し、今ではゆん口こそ夏の頃の9割を保っ
ているものの、その半分をれいむ種が占めるようになっていた。おまけにゆん口構成は、
カニの大移動に伴う一斉すっきりーによって、若い方へ大きく傾いている。
エサを自力で取れるベテラン、将来性を期待できる若い個体が不足していた。

「むきゅう…このままじゃ群れはゆっくりできないわ…」

新しくりーだーとなった若ぱちゅりーが苦悩に満ちた表情を浮かべる。

「みんなですっきりーすれば、きっとごはんさんをとってきてくれるまりさが増えるよ!」

そう発言したのは、かつてカニにもみあげをちぎられた子れいむだった。あの後、ぱちゅり
ーたちの懸命な治療によって、片方のもみあげ以外は回復したのだ。今では、勝手に側近気
取りで若ぱちゅりーの周りにくっついて歩いている。正直、若ぱちゅりーはこのゆっくりで
きない子れいむを嫌っていたが、親があの狩りの名人父まりさであるため、今まで耐えてき
た。

「れいむ、今みんなですっきりしてもまりさは増えないわよ…むきゅう…分かるでしょ?」

子れいむは何を言うわけでもなく、片方だけになったもみあげをぴこぴこ上下させている。
何も分かっていないようだった。若ぱちゅりーは小さく舌打ちをした。

頭を抱える若きりーだーの隣にいつの間にか老ありすがいた。
老ありすは静かに口を開いた。

「話はゆっくり聞かせてもらったわ。この群れは滅亡するわよ!」
「「ゆがーん!!な、なんじゃってー!!」」

固まる若ぱちゅりーと側近たち。

「最近、まりさたちがたくさんゆっくりしてしまったせいで、食料は不足、おまけに巣内に
残っているのは、にんっしんしているれいむばかり。もし、またまりさたちがたくさん永遠
にゆっくりしてしまうようなことがあれば、例え春まで生き延びても、おひさまがゆっくり
できなくなる頃にはエサがなくなってしまうわ。」

若ぱちゅりーが疲れたような顔をあげる。

「ありす、ならどうすればいいのかしら?むきゅう…いっそ、たくさんのお水とごはんさん
でゆっくりできる、あのおばちゃまが住んでいた山の中に…」

「ダメよ!」

老ありすが声を張り上げる。思わぬ剣幕に若ぱちゅりーは冷たい汗をかいた。

「ごめんなさい、こんなのとかいはじゃないわね。山はだめ。忘れたの?ぴかぴかやキング
ベヒんもスのことを?」

「…山の中にみじゅもあまあまさんもたからものもいっぱいのゆっくりぷれいす…じゅる…」

子れいむは大事なところをまるで聞いていなかった。その上勝手に妄想まで付け加えている。
だが老ありすはそんな子れいむの戯言を聞いてはいなかった。

「狩りを集団で行うことで、少しでも永遠にゆっくりしてしまうまりさを減らす。そして、
今までとは違う場所にゆっくりぷれいすをつくることもゆっくりしないで検討すべきよ。」

側近たちがざわめく。ほかはともかく、このゆっくりぷれいすを捨てるという選択は、彼ら
にとってゆっくりできない提案だった。一方で、老ありすはこの程度でざわめく若い個体に
苛立ちを感じていた。この比較的安全なゆっくりぷれいすで長い間に渡ってゆっくりしたこ
とで、お外の危険を、狩りの危険を、そして生き延びることの大変さを知らない世代が増え
ていた。

いや、若い世代のせいにするのは老人の傲慢か?

老ありすは考え直した。初夏から秋にかけての完全な分業―狩りはまりさ種頼み―体制をあ
たり前と思い込み、巣の中でのんびりすることばかり考えているゆっくりが増えてしまった
のだ。今も若ぱちゅりーたちはまりさ種を増やすことを考えている。
それが間違いなのだ。
みんなでお外に出なければ、何も変わらない。

「ぱちゅりー、後で話があるわ。ゆっくり相談にのってくれないかしら?」
「むきゅ?わかったわ。いつでもいいわよ。」

この後、老ありすはぱちゅりーの知恵を借り、肉厚の葉っぱを素材として、まりさ種以外で
も夏のお外で行動できる帽子を開発することになる。


「それからまりさ、あなたのゆっくりした子供に、新しいゆっくりぷれいすをゆっくり探し
てもらいたいのだけど」

父まりさは表情を強張らせた。



翌日、若手のホープとして期待されている、子まりさを中心とした、
「にゅーゆっくりぷれいすたんけんたい」、通称「最後の大隊」が結成された。
メンバーは六匹のゆっくり、まりさ種が二匹、まりさつむりが一匹、ちぇん種が一匹、あり
す種が二匹、そして、あの老ありすの娘の一匹である水色リボンのろりすである。ぱちゅり
ー種やれいむ種は外した、完全に屋外探索を目的とした編成である。
老ありすはメンバーに山の魔物の話を伝え、選別として海藻を乾燥させた携帯食料、開発し
たばかりのまりさ種以外のためのお帽子、そして万が一のための武器(錆びた釘)を与えた。

ほかのゆっくりぷれいすを探すことが知れ渡ってはパニックになることが予想されたため、
見送りに来ているのは家族のほかは、若ぱちゅりーと老ありすのみである。なお、子れいむ
は昼寝の時間ということで来なかった。
穏やかな秋の午後の陽気の中、巣からゆっくりのあんよで一時間ほどの野原でお別れとなる。
他のゆっくりに気取られないよう、巣から離れた場所で出発することにしたのだ。

「おとーさん、おかーさん、行ってくるよ。元気にゆっく…」

子まりさは最後まで言い切れずに涙ぐんでしまった。両親はそんな子まりさを優しくすーり
すーりする。

「いつでも待ってるよ。」
「体にはゆっくり気をつけてね」
「「おねーちゃーん!はやくかえってきちぇねー!」」

何も分かっていない妹の赤ゆたちの言葉が、子まりさや両親には辛かった。他の家族もしん
みりとした別れの言葉を交わしている。

「ゆっくり行きなさい。帰りを待っているわ。」
目を真っ赤にした老ありすがみなに声をかける。その声に促されるようにゆっくりたちは
ゆっくりした足取りで、野原を越え、低木林に入り、見えなくなってしまった。
残された家族は、そんな彼らの後ろ姿をいつまでも、いつまでも見続けていた。



見送りの家族たちが巣に戻った頃にはすっかり日が暮れていた。

行ってしまった。

まりさとれいむのおちびちゃんだった子まりさは、新しいゆっくりぷれいすを探す旅にで
かけてしまった。後ろでは母れいむが嗚咽をもらしている。

もう会うことはない。

直感的にそう感じた。

まりさ、どこに行ってもゆっくりしていってね。

心の中でそう祈ると父まりさは巣に戻ることにした。もう夜の闇も深まり、空には満点の星
が輝いている。赤ゆたちを寝かせなければゆっくりできない。

「さあれいむ、おちびちゃんたち、帰ろうね。今日はぱぱが『すたーだすとればりえ★』の
お話をしてあげるよ!」
「ゆゆ!とってもゆっくりできそうなお話だよ!」
「れいみゅは!『むそーふいーん♪』のお話がいいよ!」

そのとき、赤ゆの一匹は気づいてしまった。父まりさの後ろから二つの光る目が近づいている
ことを

「…ゆ、ゆあああ…ぴゃぴゃ…そんにゃ…うちろに!うちろに!…ゆあああ…目が!」
「ゆ?」

後ろを振り返ろうとした父まりさが最期の瞬間に認識したのは、自分の体を貫く生暖かい牙の
感触だった。





私は内陸部の探検から帰ってきた。
ほとんど前人未到の島の奥地を探検してきたのだ、体のあちこちをダニやヒルに食われ、そ
の日はレポートをまとめることもできす、治療に勤しんだ。

机の上には幾つか論文が置いてある。
この島の棲息する動物相、植物相についてまとめた短い論文である。投稿先の雑誌が十年前
に廃刊されたものであったため、探すのには苦労した。これによれば、この島にはワシやミ
ミスクなどの肉食性鳥類や雑食性のイノシシが棲息している。この中でゆっくりを捕食する
とすればイノシシであろうか?鳥類も捕食するであろうが、鳥類よりも悪食のイノシシの方
が群れに大打撃を与えそうな気はする。
もちろん、これは私の感想に過ぎない。捕食者たちの糞や胃内容物から帽子やリボンといっ
たゆっくりを捕食した証拠を見つけなければ結論は出せないだろう。

しかし、だ

山の中で聞いたあの鳴き声はなんだろう。

「んごー!んごー!」
という鳴き声。明らかに獣の鳴き声であった。それとも自分が未熟なだけで、何か鳥かカエ
ルの類だろうか?カエルといえば、論文では爬虫類や両生類がほとんど調査されていない。
大型の爬虫類や両生類はいるのだろうか?彼らはゆっくりを食べるのだろうか?
森でヒキガエルの鳴き声は聞いた気がするが、他はどうだろう?

ゆっくりたちが海岸にコロニーを設けた理由、
常識的に考えれば、海岸が適していた、または海岸に避難してきた、の二択である。
私はゆっくりたちがそもそも水に弱いことから、内陸の捕食者から逃げてきて、または、内
陸にもゆっくりのコロニーがあり、エサをめぐる競合から海岸へ追いやられたと推測してい
る。内陸部の調査で、ぼろぼろになった帽子やリボンのようなものを発見することができた。
おそらく、内陸部にもゆっくりが住んでいるか、住んでいたのだろう。

現時点ではまだ結論は出せない。
私はたまっているゆっくりたちの行動を記録した映像や音声記録をチェックすることにした。

捕食種ゆっくりは棲息している痕跡がさっぱりだったが、イノシシは確実にいる。
幾つか、ススキやササを積み重ねたイノシシの寝床を発見した。寝床からは無数のダニが検
出できたため、今も使っているはずである。内陸部にもカメラを設置すると共に、糞の調査
を行おうと思う。内陸部を動いていれば、いずれあの鳴き声の正体にも会えるかもしれない。

私は紅茶を入れ、ゆっくりたちの巣が見える位置にしかけたカメラと、指向性マイクの記録
の再生を始めた。



続けようと思う



神奈子さまの一信徒です。

前作にて感想をくださった皆様、ありがとうございました。
皆様からのコメント、本当に嬉しく、励みとなりました。

幹部クラスのゆっくりたちの会話が、頭良すぎますね。


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このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

すべてのコメントを見る
  • ろりす飼いたいなぁ -- 2013-04-07 20:23:36
  • 子れいむが良い感じでピキピキくるねw続きが楽しみだ -- 2011-08-19 16:13:27
  • ↓無能のれいむ達の犯行なら発覚しないわけないだろ -- 2011-01-06 02:28:42
  • >>赤ゆ泥棒
    れいむ種がツガイの餓鬼喰ってるだけだろwww -- 2010-09-14 21:19:46
最終更新:2010年02月05日 19:43
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