夏の公園にて 4KB
「そろーり! そろーり!! こっそりこうえんにしのびこむよ!! ゆっくりふんっすいさんのおみずをのむよ!」
真夏の昼下がり、誰も居ない公園に一匹のゆっくりれいむの声が響く。
このれいむは、近所の路地裏に住んでいる野良ゆっくりである。
普段は、人間に出会う確率の高いこの公園には近付かないようにしていたが、ここ数日の暑さの為に水たまりが枯れ果ててしまった為、危険を冒してここまでやって来たと言うわけだ。
「ゆふぅ、あとすこしでおみずさんがごーくごーくできるよ!」
幸い、人間に見つからず公園中央の噴水までやって来たれいむだったが、そこに見慣れぬ姿を見て立ち止まる。
「プクー! レイムハツヨンダヨ!!」
れいむと噴水の間に立ち塞がって居たのは、まるで風船のようにまん丸く膨らんだゆっくりれいむであった。
「ゆゆ! おみずさんをひとりじめするつもりだね! れいむをゆっくりさせないなんてとんだげすだよ! ゆっくりせいっさいするよ!!」
相手を「水場を独占する悪いれいむ」と判断したれいむは、ぽむっぽむっと跳ねて近付き、膨らんだれいむを必殺の体当たりで跳ね飛ばした。
跳ね飛ばされたれいむはれいむの勢いに押されて、ぽちゃんと噴水の足元の人工池に突っ込んでしまう。
「ゆっふっふ! いいざまだよ! げすなれいむはゆっくりしないでとけてしね!!」
しかし、水の上に落ちた筈のれいむは一向に溺れる様子もなく、「プクー! レイムハツヨインダヨ!」などと威嚇しながら水面を漂っている。
「ゆゆ!? どういうことなの?」
体当たりをした方のれいむはすっかり混乱した。
ゆっくりは水に弱く、大量の水に触れれば溶けてしまう。
人工池の水はそれなりに深く、もしゆっくりが落ちれば溺れるのは必至だろう。
なのに、あの膨らんだれいむはゆうゆうと浮いている……一体何故?
そしてれいむは喉の渇きも忘れてしばし悩み、あの水上れいむと自分の違いを検証する。
「ゆぐぐぐぐぐ……ゆっ! そうだよ! 『ぷくー!』だよ!!」
お水さんはゆっくりできない。
だからゆっくり達は雨さんが降ってくれば物陰に隠れ、「あめさんゆっくりやんでね!」とお願いして雨さんに止んで貰う。
だが、雨さんに対して威嚇を試したゆっくりは未だ聞いた事が無い。
そうか、れいむはお水さんに対して下手に出過ぎていたのだ! ゆっくりできないわるい雨さんに対してすべきは、お願いではなく怒りの「ぷくー!」だったのだ!
そう考えてみれば、あの膨らんだれいむがひたすらに威嚇していたのも理解出来る。
あのれいむは、水さんを飲みに来たれいむではなく、噴水のお水さんに対して威嚇していたのだ。
「ゆゆ! れいむ、おこったりしてごめんね! れいむもそっちにいくよ! いっしょにごーくごーくしようね!!」
相変わらず水面を行ったり来たりしている膨らんだれいむにそう呼び掛けると、れいむは「ゆうううううううう」と空気を吸い込み、思いっきり「ぷくー!」と膨らむ。
そして、ポイーンポイーンと大きく跳躍すると、噴水の中央に飛び込んだ。
上がる水飛沫の中、満面の笑みのれいむが……浮かび上がる筈もないですね、はい。
「どぼぢででいぶだげじずんじゃうのぼぼぼぼぼ!?」
もみあげを必死に振り回して足掻くれいむだが、皮は水を含んでどんどん重くなって行く。
そして、ほぼ前後して作業服姿のお兄さんが現れた。
「やあ! 僕は公園管理お兄さんだよ! ゆっくりしていってね!」
呑気に噴水を覗きこむお兄さんに、必死で助けを求めるれいむ。
「ゆぶがば! おにいざん、ゆっぐりじでないででいぶをだずげでね!」
「はいはい、ゆっくりゆっくり」
ところが溺れるれいむの言葉に応じてお兄さんが拾い上げたのは、膨らんだ方のれいむであった。
「どぼぢでぞっぢをだずげるのおおお!? ぞっぢはだいじょうぶでじょおおお! でいぶぼ、がわいいでいぶをだずげでねえええ!!」
「どうしてって…こっちは公園の備品の『ぷくうぅ! れいむちゃん(成体バージョン)』だからねぇ」
そう言ってお兄さんは膨らんだれいむのあにゃる辺りの栓を抜く。
するとれいむは一気に萎れ、お兄さんの手の内に収まってしまう。
「これは公園の入り口に設置して、野良ゆっくりが近付いてきたら威嚇して追い返すボイスレコーダー付きの風船なんだけど、風で飛ばされてここまで飛んで来ちゃったみたいだね。今度は紐でも付けておこうかなぁ……」
「ごぢゃごぢゃうるざいよ! ざっざとでいぶをだずげろじじいいいぃぃ!」
水の中のれいむは、最早形振り構わず助けを求めている。
激しく動かしたもみあげは早くも根元から崩れ出し、あんよはぐずぐずとなってしまった。
「うるさいって……どうしてって聞いたのはれいむだよ。まぁいいや、そろそろ我が公園自慢の噴水さんが始まるから、れいむもゆっくりそこで見ててよ」
「ゆぶっ、でいぶのぎでいながみのげが、がわいいあんよがあぁぁぁ!? ゆっ、おにいざん、じじいなんでいっでごべんなざい! がわぞうなでいぶをだずげでぐだざい! おでがいじばず! ゆっぐり! ゆっぐり!」
噴水のれいむは失われたもみあげの代わりに体をくねらせ、必死で浮きあがろうとするが、遂に噴水の水が降り注ぎ始め、「もっど…ゆっぐりじだがっだ」と言う最後の言葉を残して着底した。
そして数日後。
れいむの溺れる様をゆっくり見物していた管理人のお兄さんは、れいむの餡子で詰まってしまった噴水のフィルターの清掃に追われる羽目になってしまったのだが、それはまた別のお話。
「暑い、疲れた、しんどい~……ゆっくりした結果がこれだよ!」
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 一番下のコメが馬鹿過ぎるww
さっさと死ねよ -- 2014-06-02 00:58:07
- おにーさん… -- 2014-02-12 09:37:37
- 餡子詰まったのかよw。 -- 2013-12-29 21:01:12
- 餡子を乾かして燃料に出来ないだろうか?・・・無理だろうなorz -- 2012-12-14 17:00:59
- やれやれだぜ -- 2010-09-28 20:17:51
- 生きてても迷惑死んでも迷惑って・・・マジで糞饅頭だなおいw -- 2010-07-17 02:03:27
- お兄さんが馬鹿すぎる -- 2010-06-19 05:35:57
最終更新:2009年10月18日 16:11