キラキラありす 31KB
虐待-いじめ 愛で 観察 自滅 飼いゆ 都会 透明な箱 現代 愛護人間 独自設定 飼い赤ゆへのしつけを書こうとしてこの結果
・山のゆっくりは雨と風で死にます。
街のゆっくりは諍いと傲慢さで死にます。
では飼いゆっくりはいかに死ぬべきでしょうか?
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~1~
『お前ゆっくりが欲しいっつってたろ』
『おう言った言った』
『うちのありすが赤ゆ産んだからやるよ。ありす種ならおとなしいから飼いやすいし』
『マジ? うおっ可愛い』
『だろ? でもな、ゆっくりってすぐ調子こくから最初の躾が肝心だ。躾な。
ホイこれ新発売の”ゆっくりしつけ棒”』
『何これ小さいしフニャフニャしてて全然効きそうに無くない?』
『それがいいんだよ。
赤ゆって超潰れやすいんだけど、バカだし言葉が通じないから叩いて躾しなきゃならんのよ。
大方の飼い主は手加減して叱るから結果的にゲスを育てちまう。
厳しく叱る奴らは10匹のうち9匹ぶっ潰して教育するけど非効率的過ぎる。
で、出来たのが”しつけ棒”。
これなら人間が少々強く叩いてもまず潰れないんだっつーの。
れいむ種のもみあげの構造を研究・再現してまるで母親に叱られているかのような効果を……』
~2~
「ゆぴぃぃ……おそらをとんでりゅみたいにぇ……ゆんやぁっ!?」
すーやすーやしていたと思ったら、いきなり知らない景色が目の前に飛び込んできたので
赤ちゃんありすはビックリしてしまいました。
目の前にはいつものおにーさんとは違う、別のおにーさんがいます。
赤ちゃんありすは怖くなって、どこかに逃げようとしましたが
目の前に何かがあって向こう側は見えるのにどうしてもそれ以上進めません。
赤ちゃんありすは透明な壁に、むにむにと頬を押し付けて通り抜けようとしました。
水槽の中で、赤ちゃんありすは壁に沿ってむーにむーにと歩き回ります。
「あはは、チビすけだから分かんないか」
新しいお兄さんはそう言って大きな指でありすを撫でて、小さな丸い麦チョコをありすの傍に落としました。
怖いのもすっかり忘れた赤ちゃんありすはあまあまに飛びつきます。
そしてゆっくり味わって
「しあわちぇー!」
と目を輝かせて叫ぶと、お兄さんはゆっくり笑いました。
なんだか、ここ、ゆっくちぷれいすになりそうだわ。
「ゆっくちしちぇいっちぇね!」
赤ちゃんありすは凄くゆっくりした気分になって、
にこにこして目の前の透明な壁、そしてお兄さんをめがけて誇らしげに
しーしーを元気良くぴゅーっと出します。
どう? みえないかべさんをこうゆうふうに、おといれにしゅるのって、『とかいは』でしょ?
その瞬間、ひょいっと大きな手で摘まみ上げられて、赤ちゃんありすはぽむんと優しくテーブルの上に置かれました。
あそんでくれるのね!
思わず小さくぽよんと飛び跳ねてお兄さんを見上げると、
その大きな手に大きなピンクの棒が掴まれているのが分かりました。
そして振り下ろされたピンクの棒が赤ちゃんありすのお顔をぺちんっ!と叩きます。
「ゆんやぁぁぁぁっ!?」
ありすの目の前が、キラキラとピカピカとチカチカに白くはじけます。
「こらっ! そんな所でオシッコしたらダメ!」
お兄さんが何か言っていますが、ありすは叩かれた痛みと
それ以上に叩かれた事にビックリして凄く凄く怖くなって悲しくなりました。
「ゆっぴぃぃ! ゆぴぃぃぃぃ!!」
「そんな大きな声で泣いたらうるさいぞ、ダメ!」
もう一度、柔らかい変な棒でぺちんっと叩かれて、赤ちゃんありすはもっともっと泣きたくなりましたが
これ以上泣くともっと酷い事をされるだろうというのは小さな餡子でも身に染みて分かりました。
柔らかいぺちぺち棒で叩かれたお顔は、ケガはしていないけど、熱く熱くなっています。
涙を我慢しようとして、ぐずぐずっと鼻をすすり、唇を曲げて体を震わせるみじめな赤ちゃんゆっくり。
お兄さんはそっと赤ちゃんありすのふわふわした髪を撫でて、
また透明な水槽の中に置きました。
「トイレはここでしような。賢いから言葉は分かるだろ?」
そう言って、大きな手は水槽の隅の砂場を指します。
まだゆんゆん涙と鼻水をすすっていた赤ちゃんありすには、ちょっと意味が分かりませんでした。
(こういうおうちだったら、かべにしーしーするのが『とかいは』なのよ?
どーちて、そんなとこにしーしーしなきゃいけないの?
『いにゃかもの』ねっ!)
でも、口には出しません。
お兄さんに逆らったらまた大きなピンク色の棒で叩かれるかもしれませんからね。
そこで赤ちゃんありすはゆっくりと、小さな黄色いカスタードクリームを巡らせました。
(そうだわ!
わざと『いなかもの』のこーでぃねいとをして、わざとおにーさんにぶたれりゅの。
たたかれるってわかってたら、いたくないもん。
それで、おにーしゃんがカンカンさんになったら、こんどは『とかいは』のこーでぃねいとをしゅりゅの。
そしたらおにーしゃんはかんっげきっして、ありすのゆうこと、なんでもきくようになるの!)
何だかワクワクして、赤ちゃんありすはいそいそと水槽の床に敷かれたタオルの端をくわえて
ゆんゆん苦労しながら不恰好に折りたたんで、ベッドさんの形に整えました。
「お、えらいぞチビすけ。小さいのにちゃんとお片づけ出来るんだなぁ。
ありす種の『とかいは』ってやつだな『とかいは』。えらいぞー」
ゆっくりフードを盛ったお皿とお水を注いだお皿を
ありすの邪魔にならないように水槽の隅に置きながら、お兄さんが褒めました。
・・・小さなありすの小さな頭がチカチカし始め、目の前が真っ白く光り始めます。
(は? ぜんっぜんっ『とかいは』じゃないじゃにゃい!
ばかにゃの? しにゅのっ!?
タオルさんのまきまきが、1つたりないでしょぉおおおっ!?
きっと、おにーしゃんは、ありすがこのていどのせんすの、『いにゃかもの』ってわらってるのね!
こんにゃの、ちっともゆっくちしてないわよ!!)
カンカンになった赤ちゃんありすは置かれたばかりのご飯のお皿をひっくり返し、ゆっくりフードを水槽の床にばら撒いてしまいます。
でも、かんしゃくを起こして暴れたわけではありません。
ゆっくりありすという種類は常に『とかいは』なのです。
赤ちゃんありすはぷぅって膨らみながら、床の上にぐちゃぐちゃに噛んだタオルさんをふぁさっと被せました。
(どうかちら、この『とかいは』こーでぃねいと?
タオルさんをめくれば、いつでも『たからもの』の『たんけんゴッコ』ができりゅのよ!
すごーくすごーく、ゆっくちしちぇるわぁ……りかいできりゅ?)
言葉も出せないほどかんっどうっしてるおにーさんに向かって
「ゆっくちしちぇいっちぇね!」
と、赤ちゃんありすは得意げに精一杯のーびのーびしながら挨拶します。
突然、さっきよりも強い感じでお尻を摘み上げられ、宙に浮いたまま、ぺちん!と
さっきよりも強い調子で赤ちゃんありすのお顔がピンクの棒で叩かれました。
ショックと痛さとビックリで目の前がチカチカします。
どーちて? 『とかいは』がダメにゃの?
おにーしゃんは『いにゃかもの』だから、『とかいは』こーでぃねいとがイヤにゃの?
お兄さんが強くて怖い声で何かを言っているけど、ありすにはよく分からなくなって、
お兄さんの手から無理矢理飛び降りてタオルさんの上に顔から着地します。
ピンクの棒で叩かれた軽い痛みと、タオルさんにぶつかった時のじんじんする痛みでゆんゆん泣きながら、
拗ねた赤ちゃんありすはお水飲み場さんへ逃げて、お水さんをずずずっと啜りました。
綺麗なお水と鼻水と涙が混じって、まん丸のぷにぷにしたお顔はぐしゃぐしゃ。
なんだか凄くみじめな気分になった赤ちゃんありすは、
拗ねた顔のままぶりぶりぶりっとそのお水のお皿の中にうんうんをしました。
あんまり力んだので、あにゃるの穴が少し痛いぐらいです。
(どうかちら?
こうやっておみずさんのなかに、うんうんすると、くちゃいくちゃいがなくにゃるのよ?
ゆっへん! ありすのとかいひゃ……)
「ゆんやぁあああああああああ!!?」
お兄さんがありすのお顔の後ろをグイッと摘まんでテーブルさんの上に置き、
ピンク色の柔らかい、なんだかゆっくりしてるんだかしてないのだか分からない棒で
ぺちん、ぺちんと2回も赤ちゃんありすを叩きます。
ありすの目の前はピカピカピカチカチカチカ。
(あっそう! そんにゃに『とかいは』こーでぃねーとがイヤなら、
おにーさんのすきな『いにゃかもの』こーでぃねいとにしてあげるわよぅっ!)
そう思って赤ちゃんありすは傍にあった四角いピカピカする箱に、
ぬーちゃぬーちゃとうんうんを擦り付けてゆっくりしてる事を教えてあげました。
「ゆっきゅりぃーっ!」
(ゆんっ! 『いにゃかもの』ふうの、おトイレよっ!
さっきの『とかいは』ふうのおトイレよりゆっくちしてにゃいけど、
これならおにーしゃんも……)
「ゆぴいいいいいいいいいっ!?」
ピンクの棒でもっともっと強く叩かれて、怒鳴られました。
とかいはふうはダメ、いなかものふうもダメ、じゃあどうすればいいの?
ピカピカとチカチカの中にグルグル回る黒い渦巻きまで重なります。
赤ちゃんありすはピカピカとチカチカとグルグルを見るのにいっしょうけんめいで、
お兄さんの言葉に全然返事が出来なかったしお兄さんの言葉を全然聞いてなかったので
もう一度ぶたれました。
~3~
赤ちゃんありすがお兄さんの家で暮らすようになってからずいぶんと日が経ち、
時々お外でお散歩したり、お兄さんと一緒にテレビを見たりしながらゆっくり大きくなります。
もう、赤ちゃんを卒業して「ありす」と呼ばれていいぐらいの大きさです。
元々ゆっくりという生き物は足音が小さいものなのですが、
ありすはとても静かに音を立てずちょっとずつちょっとずつ動くようになります。
お茶碗をひっくり返してかくれんぼしようとしたり、チラシさんを噛み千切って水槽に飾りたくなったりするたびに
あのピンクの棒で叩いて叱られるので、
水っぽいカスタードクリームでも人間さんの『イイコ』と『ダメ』が分かるようになりました。
ゆっくりしていないことが『イイコ』で、
ゆっくりしていることは『ダメ』なのです。
水槽の中で、出来るだけタオルやお皿の位置を動かさないように気をつけながら、
ありすは息も動きも潜めてじっと太陽が沈み月が昇りまた太陽が来るのを待っていました。
水槽の透明な壁にはお兄さんがインデックスシールを貼り付けて(お兄さんが持っているシールはそれしかありませんでした)
ここからには進めないんだよ、と教えてくれましたが、
それでもありすは時々透明な壁に思いっきりぶつかりました。
大きくなったありすはあまあまもごはんさんも食べる気分になれません。
仕事から帰ってきたお兄さんは心配して、ありすを水槽からつまみ上げ
フローリングの床の上に置いてやりました。
昼間に散歩をあまりしてやれないのでストレスが溜まっているのだろうと思ったのです。
「ほれ、遊びな」
と言われたありすの目の前がまたあのピカピカ真っ白になります。
(あそぶ? あそんでいいの? だってこないだも、しかられたのに!
もしかしたら、おにいさんはありすのことをまた、いじめるつもりなのかしら)
ガチガチと震えが止まらなくなり涙がじんわりと滲み出て、
じんわりとしーしーが漏れだしました。
「うわっ! そんなとこでしたら駄目だって!」
お兄さんの大きな声。そして取り出されたピンクのぺちぺち棒。
ありすの目の前はますますピカピカチカチカ。
「ゆきゃぁぁあっ!!」
たまらず叫んだら、我慢していたうんうんクリームがぷりぷりっと一気に出てしまいます。
たたかれる。
あの大きいピンクの棒のびっくりを思い出して、
ありすはとにかく隠れられそうな所へ精一杯の速さで逃げ込みます。
逃げ込んで逃げ込んで、なのにぐいぐい体を押し付けても隠れられません。
ぶたれる。
チカチカが色んな物の色を白くして、わけが分かりません。
ありすは真っ白のチカチカの中で、点滅して見えた黒い何かを死に物狂いで噛んで
その黒い何かの奥に逃げようとしました。
「あっ馬鹿!」
ばしんっ。
物凄い衝撃と一緒に、ありすは宙に吹っ飛んで、座布団さんの上にちょうど落ちます。
お目目が片方めりこんで、小さな前歯の付け根がじくじく痛んで、
餡子の奥の奥が怖いぐらいぶるぶる震えますが
そんな事も気にならないぐらいありすはびっくりしていました。
「お前これコンセントだよ……うわっ歯型付いてる」
「ゆきゃああああああああああああ!
ぴきゃあああああああああああああ!!!」
ぶった。ぶたれたよぉ。
おにいさんがありすをぶった。おめめがいたいよぅ。
ほっぺたの上、こめかみの下が勝手に引っ張られて、勝手に動いて、おかしくなります。
「ぴっきゃぁああああああああ!!」
自分でもびっくりするぐらい大きな声が全身から出ます。
「ごべっ、ごっべべべべぇ!」
ありすはとにかく謝ろうとしましたが、何を謝るのか自分でも分かりませんでしたし、
なにしろお顔の半分が物凄く熱く膨らんで上手く喋れません。
外れかけた片方の目をむりやり嵌められて、お尻を抱えられてありすは水槽の中に戻されます。
「おわ、ゆぅ、ゆぴきゃぁぁぁあああああ!!」
ぶたれた。ものすごいこわい。ごめんなさい。やだ。
大きな手で何度もさすられたけど、ありすはいつまた殴られるか気が気ではありませんでした。
スプーンいっぱいにお兄さんがくれたミルクティーを飲むのが怖くて怖くて
ありすはまた吐きましたが、飲まないともっと酷い目に遭うと分かっていたので
何度も喉の奥で「えれぇっ」てしそうになりながら、
ありすは舌でスプーンを舐めました。
スプーンさんがもうただのギラギラした味になるまで、舐めました。
そしてずっとガタガタ震えていたありすにようやくカーテンから光が差します。
少しも眠れなくて、でも泣いて騒ぐ事もできなくて、ずっと透明なカベにすーりすーりしていたありすに、
お兄さんは「何か欲しいものあるか?」と聞いてきました。
ありすはまた目の前がピカピカし始めます。
何を欲しがっていいか分かりません。
あまあまも1日に2回貰っているし、お水も寝る場所もあります。
実際のところ、何も欲しくないのです。
でもお兄さんの親切をむげにするのは大変な『いなかもの』です。
(お散歩はもうちょっとしたかったけれど、ありすにとって
お散歩とは「させてもらうもの」であって「欲しいもの」ではありませんでした)
ありすは小さなクリームでゆんゆん必死に考えていましたが突然恐ろしい事実に気付きました。
自分はお兄さんをゆっくり待たせてしまっているのです!
質問されたらすぐに答えなくてはなりません。
人間さんは、ゆっくりほどにはゆっくりしていないのです。
(たたかれる。あのいたくない、ぶよぶよしてるぼうさんでゆっくりぶたれるんだわ)
目が、視界ではなく目の玉自体がぐらぐらし始めます。
ガチガチと歯を鳴らし体を震わせてお兄さんを見つめ、
「あ、ありすね、おちびちゃんが、ほしいの」と
ありすはやっとの思いで言いました。
たまたま、水槽の向こうのテレビに映る赤ちゃんゆっくりが見えただけなのに。
そんなの全然欲しくないのに。
「そうだな。お前も1匹だけじゃ寂しいもんな」
ゆっくり微笑むお兄さんに、やっぱりいらないとは言えませんでした。
~4~
『もしもし鬼井? いつぞやのチビありすがなんかさ、赤ん坊欲しいんだって』
『お前それ絶対駄目だ! ありす種は簡単にれいぱーになるぞ? ぺにぺにが生えるんだ』
『ぺにぺに?』
『まむまむかも。とにかく駄目。つがいを持ってくるのは厳禁。
ゆっくり専門の動物病院なら赤ゆタダで配ってっからそっち行きな。
しつけ棒は使ってるよな?』
『うん、最初の頃にちこっと叱ったらもうずっと良い子でおとなしいわ』
『へっへっへ。俺のありすの子だから善良確定』
~5~
その日の夕方、ありすは久しぶりにぐっすり眠れていました。
息を一杯吸うと大きく膨らんで、息を吐くと深くて暗いどこかに沈むような、あの感じです。
でも、ありすのゆっくりとした眠りは、
密かに自慢している綺麗な髪の毛がぐしゃぐしゃに引っ張られる痛みで簡単に終わります。
「こら、お前たち仲良くしろ」という小さな声、
そして重たい視界でちらちら見える小さな影。
ありすの身体中の餡子がひっくり返りそうになりました。
「だじぇー!!」
小さな小さな、赤ちゃんまりさがいつの間にかありすの傍にいました。
「ゆきゃぁぁああっ!?」
びっくりしたありすをなだめる様に、お兄さんがそっと頭を撫でます。
「ほら、赤ちゃんだぞ。仲良くしろな」
「おっ……おちびちゃん?」
お兄さんが色々と喋る間も、ありすの目の前で赤ちゃんまりさは大はしゃぎ。
「ここ、しゅごーくゆっきゅりするよー!」
と大声で叫んで、まだ全然減っていないお皿のゆっくりフードを食い散らかし
水槽の隅に丸く畳まれたタオルの上でぽんぽん跳ねます。
「ゆっきゅりしちゃー!」
そこはありすのベッドさんなのに。
ありすがせいいっぱい、おにーさんにあわせたこーでぃねいとなのに。
お尻がぎゅううっと絞むのが分かりました。
(このおちびちゃんもあのぺちぺちさんで、ぺしぺしってされるのかしら?)
でもお兄さんは笑って「チビすけー、暴れるとお姉ちゃんが怒るぞ」と指先であやすばかり。
だめよ。ゆっくりできるこは、ゆっくりできないようにしないとだめ。
ピカピカピカチカチカチカッ。
自分の皮がみるみる真っ赤になってゆくのが分かります。
歯に自然に力が入って、体中がわなわなと震えだします。
ティッシュの切れ端に巻きついて、嬉しそうにふざけている赤ちゃんまりさ。
ありすのこーでぃねいとが!
赤ちゃんまりさが、お姉ちゃんありすに
「ゆっきゅりしちぇっちぇね」の挨拶をしようとして「ゆっ」と口を開いた途端、
ありすは歯を食いしばって思いっきり体当たりしました。
目の前のピカピカチカチカでおちびちゃんが見えなくて、とにかく力任せにぶつかりました。
「だめでしょおおおおおっ!?」
「ぶぎゅっ!?」
赤ちゃんまりさは透明な水槽の壁にばしんっと当たって落ちて小豆色の泡を吹きます。
そして、ありすは何度も、しつけ棒でぺしぺしとされて
泣きながらお兄さんとおちびちゃんに謝りました。
でも何で謝らなくちゃいけないのか全然分かりませんでした。
それから3日間、お兄さんがスポイトで朝と晩に何度もオレンジジュースをあげて
赤まりさはようやく元気になりました。
それからしばらくは警戒してありすの横に近づかなかったけれど、すぐに嫌な経験を忘れて
一方的にすーりすーりしてくる『いなかもの』のおちびちゃんだというのが
ありすにはよく分かりました。
まりさ種というものは人懐っこく色んな遊びをしたがるのですが、困った事に、相手が自分に興味が無いという事を分かろうとしないのですね。
~6~
異様に元気な赤ちゃんまりさとのお遊びに辟易していたある日、お兄さんは水槽の上から白いお花を渡してくれました。
外に行けば、川の近くで咲いているような小さな白いお花。
だけれど、それを見たとたん、赤ちゃんまりさを『永遠にゆっくり』させかけてしまった事件から
ずっと淀んでいたありすの目に綺麗な涙が溢れ出しました。
お兄さんの大きな手と、ふるふる揺れる小さなお花に頬ずりして、ありすは囁くように呟きます。
「ゆっくりぃぃぃぃ。すごぉぉぉく、ゆっくりぃぃぃぃ」
お兄さんが心配そうに声をかけます。
「お誕生日プレゼントって、こんなんで良かったかな。大切にしろよ。
チビすけとも仲良くしてあげてな」
「ゆんっ!」
お兄さんの言葉にも、久しぶりに明るくお返事できました。
お花を貰ったありすはそれから毎日毎日、
白いお花を咥えてお水のお盆の傍に置いたり、
「みて! みて! おにーさん! おはなさん、『とかいは』だわ!」
ベッドさんの下にそっと隠したり、
「おはなさん、おやすみなさいっ! ありすもすーやすーやするわ……ゆきゃっ くすぐったぁい!」
お花さんに話しかけたりして
「おはなさんはありすのこと、すきぃ? ありすはおはなさん、とっても『とかいは』だっておもうわ」
すっごくゆっくりできています。
お兄さんもありすの頭をよく撫でてくれるようになりました。
時々、息をするのも忘れて、体を前後左右に振り続けてお花と遊ぶようになったので
ちょっぴり大きくなった赤ちゃんまりさもそのマネをして遊んでいたのですが、すぐに飽きてしまいました。
というよりも、ありすが赤ちゃんまりさを徹底的に無視したので仲良くなれなかったのです。
だから赤ちゃんまりさはイタズラっ子になりました。
ありすが寝ている時にいきなり嫌な大きい声を出したり、
ゆっくりフードでサッカーごっこ(テレビさんは赤まりさの一番のお友達でした)をしようとするのです。
ゴールはもちろんありすのお顔。
お兄さんがいる時なら叱ってくれるのですが、問題はお兄さんのいない時です。
赤ちゃんまりさのイタズラはどんどんゆっくり出来ないものになっていきました。
でもありすは『とかいは』です。
(相手から仲良くなってもらおうなんて、『くーる』だけれどお姉ちゃんとしてはゆっくりできてないわね)
白いお花の花びらを一枚お口でちぎって、赤ちゃんまりさにあげながら
ありすはそう考えました。
まりしゃだって、こんなゆっくりしたお花を見れば凄くゆっくりすることでしょう。
ほら! 可愛くてやんちゃそうなおちびちゃんもすっごく笑っています!
「むーちゃむーちゃ……おいちー!? しあわちぇー!」
この黒いうんうんっぽい何かと仲良くするのをありすは1秒で諦めました。
「おねーちゃんっ! おはなさん、ちょうだいっ! ゆっくりしちぇいっちぇねっ!」
透明な壁の砲を向いてお昼寝の準備を始めたありすのお尻に、まりしゃがじゃれ付いてきましたが
挨拶する気力さえ沸きませんでした。
―そして毎日見る、あのなんだか悲しくてゆっくりした赤いお日さまの光が部屋に差す頃。
ありすが目を覚ますと、そこには、ただの緑色の細い……細くてぐちゃぐちゃに噛まれたヒモがあるだけでした。
呆然としているありすに、
まりしゃがぷくーっと膨らんで威張ります。
「ありぇだけじゃ、まりしゃぜんっぜんっおなか いっぱいじゃにゃいよっ!」
目の中に熱くてヒリヒリするお水が溜まってきたのが分かりました。
「おねーちゃんっ! もっとおはなさん、もってきてほしいじぇっ!」
もう駄目です、お水を止めるのが、我慢が、出来ません。
「ゆわぁぁあぁああああああっ!! ゆっきゃああああああああああ!!!」
「ゆきゃきゃぁ! おねーちゃんが、ないちゃった! まりしゃがつよくっちぇ ごみぇんねだじぇー!」
「ゆわぁぁああああああんっ!!!」
お花だった、今はただの緑色のヒモを必死でぺーろぺーろしても、
ありすには赤まりさのヨダレの味しか分かりません。
ありすにはお花さんを治してあげられません。
泣き叫ぶ事しか出来ませんでした。
そんなありすを見てさすがに反省したのか、それとも体当たりされた時の怖さを思い出したのか、
赤ちゃんまりさは水槽の隅っこに逃げて、
「ゆゆん? おねーちゃん、なんじぇないてるのじぇ?
ほ、ほら、おねーちゃんがつくってくれたクシャクシャおりがみさんって、『とかいは』なのじぇ~♪
いっしょにあそんでほしいのじぇ~♪」
と知らん振りをしました。
欠けたお月様がゆっくり達に挨拶してからしばらくして、お兄さんが帰ってきました。
水槽の中で大騒ぎしている2匹を見て、お兄さんは大きくため息をつき、
とりあえずマトモに会話できそうなまりしゃに話しかけました。
「どうしたんだお姉ちゃん」
「あにょ……ええっと……おはなしゃんがね、きえちゃったの。
おねーちゃん、びっくりしちぇ、まりしゃがあそぼってゆってるのに、あそんでくれないのじぇ」
(ここで私はさも真実であるかのように言われている「ゆっくりの悪い性格」への誤解を解かなければなりません。
ゆっくりという生き物は、しばしば事実と異なることを言いはしますが
決して嘘はつかないのです。
一度何かを思い込んでしまったら、それはゆっくりにとってホントのことになるのです。
空からキャンディが降ってこようが、地面から野菜さんが生えて来ようが、小さなゆっくりにとっては同じ事です。
その妙な想像力を豊かと見るか貧困と取るかはあなた次第ですけれどもね)
赤ちゃんまりさはなおも何かぺちゃぺちゃ喋っています。
ありすはゆーんゆがーと泣いて緑のぬるぬるした紐を舐めるばかりで何も説明できません。
けれどもお兄さんは、まりしゃのお顔に所々付いている白い花びらを見て
あっという間に何が原因でこういう事になっているかを察しました。
大きな手が、ひょいっと小さな黒い帽子を摘まみます。
そして、あの、ピンク色のふにゃふにゃした棒が、もう片方の手にありました。
ありすは更にゆんぶぅぅぅと泣く途中でしたが、そのピンクの棒を見ただけで全ての動きが凍りつきます。
(あのおちびちゃんもピカピカのチカチカさんするのぉ!?)
大きな手の中のまりしゃはとってもごきげん。
「たかいたかーい! あしょんでくれりゅんだじぇ!?」
「バカッ! お姉ちゃんのお花食べちゃ駄目だろう!」
ぺちんっ。
しつけ棒で思いっきり叩かれた赤ちゃんまりさは、顔を真っ赤にして泣いてしまいます。
お兄さんはありすのお顔の位置まで手を下げて、そこでもう一度まりしゃをぺちんと叩きました。
「ゆんやぁ~!」
「ヒトの物を取ったら泥棒だぞ! ゆっくり出来てないぞ、チビ!」
もう一度しつけ棒で叩かれると、赤ちゃんまりさはゆぐん、ゆぐんぅと鼻水を啜って
大きな手のひらの上でぶるぶるっと震えました。
「ご、ごべ、ごべんなしゃい」
「もう二度とお姉ちゃんのお花食べたりしないか?」
「みょ、もう、しまぢぇん、おにーじゃん、ありしゅおねーちゃん、ごべんなしゃぃいい」
(あ、あら?)
泣きじゃくりながら自分に謝ってくるおちびちゃんに、ありすのピカピカチカチカは出ていいのかどうか迷っています。
(どうして? あのピンクの棒さんで叩かれたら、ピカピカさんとチカチカさんが凄くて、
お話できなくなっちゃうんじゃないの?)
混乱してきょろきょろと左右を見渡すありすに、赤ちゃんまりさはまだ謝ります。
「おねーぢゃん! ごべんなしゃいい! まりぢゃわりゅいの~!」
そんなのはいいの! ピカピカとチカチカは!?
目を見開いたありすの、ふわふわの髪の毛にそっと大きな手が触れます。
「チビすけがこんなに反省してるんだからお姉ちゃんも許してあげてな。
そういや、そもそもチビすけには花をあげてなかったなー。
俺もごめん! 今度の日曜にみんなで取りに行くか!」
その言葉を聞いた途端に泣きじゃくっていた赤まりさはケロッと泣きやみ、涙の後の残る頬をぷるるんっと弾ませて
「やっちゃー! えんそくなのじぇー!」
と手のひらの上で大喜び。
ありすは急に出たり帰ったりするピカピカさん達を見送るのに一生懸命で、
何も耳に入りませんでしたが、どうやら、おちびちゃんがピカピカさんとチカチカさんなんて
全然怖がっていないのだという事は、よく分かりました。
そして水槽の中に離してもらった赤まりさが仲直りの挨拶で摺り付いて来て、
ねとねとする体温を感じながら、ありすは体をぶにんぶにんと前後に揺すり続けるのでした。
~7~
「おし、今日は雨だからお部屋の中で散歩だぞー」
お兄さんの一言で、ありすとまりしゃは水槽から出されました。
以前ありすが大暴れしてしまった時よりもお部屋はずっと綺麗に片付き、
尖った物や危ない物はゆっくりがいくらのーびのーびしても届かない位置に置かれていました。
「じゃ、昼ごはんと水皿はここに置いとくから。トイレもそこな。
チビすけ達は仲良く留守番してるんだぜぃ」
「ゆっ……」
「りょーかいなのじぇっ! ゆっくりしちぇいっちぇね!」
ありすが戸惑って声をかけられないのに、赤ちゃんまりさは元気に弾んで挨拶が出来ます。
なんてゆっくりしているのでしょう。
ありすはまた泣きそうになりました。
静かな雨が、アパートの薄い屋根を叩く音が部屋の隅々まで浸していきます。
赤ちゃんまりさが、騒がしくトイレ用の砂にしーしーをする音も加わりました。
ゆぅぅううぅぅん!
ゆぅぅううぅぅん!
ゆぅぅううぅぅん!
誰かがどこかで何かを物凄い力でバンバンバンって叩いて、大きな音がしていました。
大きな音は次第にうねって、ありすの周りに巻きついてきます。
きっと、うーきゅーしゃが100台も来たのでしょう。
ありすを助けに来るのです。
いいえ、うーきゅーしゃの音はありすの声でした。
うーきゅーしゃはありすの目を出ておでこに上って、ぐうるぐうると回っていました。
「もうやだ! おうちかえるぅぅう!!」
叫びだしそうになって、ありすは気付きます。
ここがありすのおうちなのです。
どこへ帰ればいいのでしょう?
不思議そうにこちらを見上げる赤ちゃんまりさも目に入らず、
ありすはテーブルさんの角に当たらないように、
お部屋の中をすーりすーりとお兄さんが帰ってくるまで静かに丸く回りました。
赤ちゃんまりさも途中まで喜んで一緒に回っていましたが、
まだ小さいのですぐに疲れて、座布団の上で眠ってしまいました。
ありすが1匹でぐーるぐーるとお部屋を回っていると、
隅っこに置いてあったお皿から何かの拍子でゆっくりフードが1つコロンと落ちました。
冷たいフローリングの床を転がる茶色いペレットを目で追いかけているうちに、
ありすはゆっくりフードに小さく開いた穴を数える遊びを思いつきます。
でも、ありすが目を凝らそうとして丸いお顔を近づけると、
鼻息でフードはコロコロと転がってしまいます。
ありすをからかってイジワルしているのです。
「ごはんさん、ゆっくりしてねっ!?」
何度も飛び上がって、大慌てで近づくと、またころころりんとフードさんは逃げます。
「ゆっぐぢしでってゆっでるのにぃぃ!!」
ありすがしゃくりあげながらお願いしても、ゆっくりフードさんはイジワルするかのように部屋の中をコロコロ。
おちびちゃんはゆぴぅ~……とぐっすり寝ていて全然起きてくれません。
お姉ちゃんを助けてくれないのです。
「ゆっびゃあああ! ごはんしゃんが、ごはんしゃんがいぢわりゅすりゅにょぉぉぉぉお!!
お゙に゙ぃぃぃじゃぁぁぁぁん!!!」
ありすはみじめになって、本当に泣いてしまいました。
そんな可哀想なありすを気の毒に思ったゆっくりフードさんは、いつもありす達が眠っている水槽の傍で
ころとん、と止まってくれました。
鬼ごっこ楽しかったね、もっと一緒に遊ぼうよ、と言っています。
「ゆっぐ、ゆぐぅぅぅ……や、やさしいのねっ! 『つんでれ』なのねっ!?」
まだ目の端をちょっと赤くしたありすが大喜びでゆっくりフードに抱きついて嬉しさを伝えようとしました。
ばぐぎゅっ。
透明の壁に、ありすの柔らかいおでこが思いっきり当たって、ピカピカが世界を覆いました。
ウソつき。いじわる。
ふと、ありすが起きたらカーテンのお外はもう真っ暗で、お部屋も真っ暗。
相変わらず静かな雨降りの音がカスタードを休ませようとしています。
ありすはすーりすーりと動きましたが、すぐに見えない壁にむににんっと当たりました。
寝ている間に、お兄さんが水槽の中に入れてくれたようです。
頭のてっぺんがじんじんじんと痛んで、壁に思い切りぶつかった衝撃で
あごの奥もなんだかグラグラして凄く痛みます。
暗いお部屋の中でお兄さんが部屋のどこかでもぞもぞ寝ている音がします。
ありすのすぐそばからは、赤ちゃんまりさのゆっくりした寝息が響きます。
もう一回眠ろうとしたけれど、そう言えば今日はうんうんとしーしーをしていないので
身体の中のクリームからすえたような嫌な臭いがして、
全然眠れません。
でも、今うんうんをしたら水槽の中がとっても臭くなってしまいますし、
寝息を立てている赤ちゃんまりさが起きて大騒ぎするでしょう。
それならまだいいけど、「おねーちゃんがおもらししゃんちたよ! ゆきゃきゃ!」なんて
あの癇に障るバカでかいいなかものの声で笑われたらと思うと
ありすはそれだけでカーッとなってしまいました。
(と、とにかく、くさくしちゃダメ……)
ありすはそろーりそろーりとお水飲み場の方へお尻をプリプリ動かします。
お水の中にうんうんを落とせば夜の間の臭いはそこまで酷くないはずです。
小さい頃、おにーさんに凄い叱られたのを思い出しましたが、
ぶたれるのと笑われるの、どっちが嫌でしょうか?
(あんなおちびちゃんに ばかにされる『いなかもの』なんてぜったいイヤ!)
お腹の中で爆発寸前のカスタードうんうんさん達が、ありすのあにゃる目掛けて
ぐりゅぐりゅって動いているのが分かります。
(うんうんさん、ゆっくりしてね! もうちょっとでとかいはトイレなの! ゆっくりして……)
ぷにゅん。
何かが当たって、ありすのお尻の穴がぞわぞわぞわっとしました。
(なぁに!? なんなのぉぉぉっ!?)
脂汗を浮かべながらお尻の方へ顔を向けると。
黒い、とんがった帽子が見えました。
「ゆっきゅり~ん……ゆぐぅ……えんそくぅ……たのちー……ゆぐぅ」
寝ぼけたおちびちゃんの帽子が、ありすの丸いお尻につんつん当たっているのです。
ありすは歯を食いしばって、白目を剥いてあにゃるの刺激を我慢します。
(ゆっ、ゆっ、ゆんやあああああっ)
ぶぴっ!
水っぽい、変な、いなかものの音がお尻の穴から響き渡ります。
ぶぴぴぴぴっ!
おちびちゃんはこの音と臭いで起きてしまうでしょう。
泣きじゃくる準備の出来たありすが、全身の皮が突っ張るほどゆっくりゆっくり、
ゆむゆむ唸って寝ぼけ眼の赤ちゃんまりさの方を見ると
ふと、水槽の隅に隠してあったお花さん―の、ボロボロになった茎―が、もう完全に乾ききっているのが見えました。
もうずっと、お水をあげていなかったのです。
お兄さんに「大切にしろよ」って言われて、貰ったのに。
それぐらいの事も出来ないありす。
いなかもののこーでぃねいとしか出来ないありす。
おちびちゃんもおはなさんも、ありすがきらいになっちゃったの!
クリームの奥の奥から、ビカビカに光る何かが出てきます。
「ゆんっやぁぁあああああああああ!!」
ありすは今までのゆん生で一番大きな大きな高い声で泣き叫びました。
あまりにうるさかったので、世界中の耳のある生き物たちが寝返りを打ったぐらいです。
目の前が、さぁぁっと夜空の布で覆われました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
――気が付くとありすは真ん中にいました。
紺色の柔らかな布が辺り一面、壁も天井も覆っています。
紺色の布には所々小さな穴が開いていてそこから光が漏れています。
お日さまのような騒がしい明かりでも、お月さまのような寂しい明かりでも、
お部屋の明かりのようなただ眩しいだけの明かりでもない、
ゆっくりしてキラキラしている明かりでした。
目を凝らすとあいさつをしてくれるかのようにチカチカと瞬きます。
ありすは何だかすっごく安心して笑いました。
「チカチカさん、ゆっくりしていってね!」
ありすが笑うと小さなチカチカさんはピカピカさんに変わって、
静かな色の柔らかそうな布地の上をすぃーっと滑っていきます。
慌てて追いかけたら、親切なピカピカさんは滑る速さをゆっくりありすに合わせてくれます。
ピカピカさんの行く方向を見上げると、そこでは大きなピカピカのお花さんがふよふよと揺れて、
ゆっくりとも人間さんとも違う言葉でありすを歓迎してくれています。
てれびさんでみた、うみさんみたい! 『とかいは』ね!
ありすだってちょっとは大きいはずだけど全然くらべっこ出来ません。
こんなに頼もしいピカピカさん達が今までありすを見守っていたのです。
ここにはありすがこーでぃねいとしなくちゃいけない物なんて何もありません。
ピカピカのお花と紺色の大きな布しかないのですもの。
すごくゆっくりした気分で、ありすは目をつぶりました。
もう、ピンク色のぺちぺち棒なんて怖くありません。
(ここにきたら おにーさんのおおきなおてても、ちっちゃくなっちゃうかしら?
おちびちゃんは、こわがって ないてしまうんじゃないかしら?
そしたら、ありすが『ぜんっぜんっこわくないわよ』ってくーるになぐさめてあげるべきよね?)
ありすはちょっとだけ威張った気持ちになりましたが、すぐに光の溢れる花びらに包まれて
何も思い出せなくなってしまいました。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
~8~終わり
びーびー喚く泣き声で目が覚める。
友人にメールする。
冷たくなった饅頭は燃えるゴミの日に出せとのこと。
硬く強張った頬を舐め続けるチビまりさを摘み上げ携帯を置く。
ありすを新聞紙に包んで小脇に抱え、チビの散歩ついでに埋められる場所を探す。
誰かを待ち疲れたまま眠っているような顔。
わりと重い。
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あとがき:ゆっくりありす天使説を唱える俺はしかしレイパー役ばかりのこのイカレた時代に対してタフでいたかった。
・裏テーマとして「こんなゆぴゆぴ騒ぐクソ饅頭がいたら近所迷惑だろうが
イイハナシダナー的に〆てんじゃねえよ愛護派の坐骨カチ割れろや!」
という内容が盛り込まれていましたが
読み込んでいただけたでしょうか。
・前回、虐待少な目ほんわか→いきなり暴力!って展開にしたらオチに大失敗したので、
今回は満遍なく虐待を入れてオチも静かにしたら全然ヒャッハーできねぇ感じに。
どぼじてこんなことに……根本的な問題が……
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- ・・・?
意味がわからん。
↓の言うとおり、中枢餡(餃子でも「餡」と言う為)を排出して昇天しまったのか?
揶揄表現も、作者は上手くないのか。。。 -- 2018-02-20 05:09:00
- つまりは下品に言うと力みすぎてうんうんどころか中枢餡…じゃねぇ中枢カスタードクリームまで全部あにゃるから排出してしまったと -- 2012-10-07 21:36:40
- ・・・・・・? -- 2012-07-26 16:51:18
- よくわかんない……でもなんとなく好き
幼い頃、あまり意味がわからないまま漫画を読んでいた
切ないような楽しいようなふわっとした感覚を思い出す -- 2011-04-02 14:18:16
- ↓↓の論理もよくわからん -- 2011-02-03 20:08:16
- うーん、よくわからんかった -- 2010-11-28 16:51:29
- まりさ駆除すらしないありすが死ぬのは当然
まりさを飼っている人間もまりさ共々死ぬべき -- 2010-11-21 10:36:49
- 『キラキラありす』という、なんだかファンタジーな予感のするタイトルに惹かれて読んでみたら、人間もゆっくりも報われない、妙に切ない気持ちになる話だった・・・
文章としては優れているとは言い難いが、ありすが誕生日プレゼントとしてお兄さんから白い花を貰う場面が個人的に好きだ -- 2010-09-22 22:44:24
- 人間の視点で見れば、ありすが痛い目にあったのは完全に餡子脳による自業自得。
でも、無知で餡子脳な生まれながらの馬鹿なゆっくりを「愚かだ」と考えず「気の毒だ」と考えるなら、このありすは少し可哀想で、この話は少し切ない。 -- 2010-09-22 22:35:24
- こいつがありす種にあるまじき無能だと言うことは良ぉっく理解した
親はれいむに違いない -- 2010-09-20 17:43:24
- この作者の場合万遍とかいきなりとか関係無しに題材がヒャッハー向きじゃ無いな
あまり「虐待入れないと」「殺さないと」とか考えずに自由に書いてみると良いと思う
癖は強いかもしれないけどもうちょっと纏まって読みやすくなれば良いと思う -- 2010-09-12 05:05:26
- わかりずらい、、結局どんな話なのこれ? -- 2010-08-19 03:46:52
- 壁しーしーはまかり間違ってもとかいはじゃない -- 2010-08-07 01:09:46
- 統合失調症か何かだったのか??
わけがわからなかった -- 2010-08-03 20:46:27
- わけがわからん。 -- 2010-07-26 03:22:19
最終更新:2010年03月08日 20:09