落語「ちぇんのバッジ」 7KB
虐待-普通 制裁 ギャグ 理不尽 現代 四作目です。 ※人によっては不快になる可能性有り
・四作目です。
・元ネタは落語「猫の皿」です。
・元ネタを知らなくても、おそらくお召し上がりになれます。
・人によってはゆっくりできない可能性もあるんだねー、わかるよー。
・でも不快にさせるつもりで書いたわけじゃないんだよー。わかってねー。
えー、世の中には、こう、人やら物やらを肩書きで見てしまうってことが、よくありますな。
パッと見て、なんだかよくわからねえ絵だな、と思っても、
「あれはピカソの絵だよ」 って言われるとなるほど、いい絵だなぁ、なんて感心してしまう。
何言ってるのかさっぱりわからねえな、と思っても、
「あれは教祖様のありがたいお言葉であるぞ」 って言われると、なんか含蓄があるのかなって思っちまう。
あたしの落語もそうなってくれるとありがてえんですが……
適当なこと言ってても、「ああ、おもしれえ」 と勝手に思ってくれりゃあ、こんな楽な商売はないッてんで。
ゆっくりなんて饅頭にも、バッジシステムとやらがある。
金、銀、銅と等級が合って、一等上の金バッジともなると、結構なお値段もする、
だから「こりゃあ、いい饅頭だな」 と見た人間も勝手に思い込んじまう。
まあ、実際中身の方は知れたものってことが多いんですが、そいつをうまいこと使おうってェ、良くないヤツもいたもんで……
三度の飯よりゆ虐が好きってぇ、人にはあんまり言えねぇ趣味を持ってるお兄さん、
ちょいと商売の帰りに、小腹が空いたもんだからなんか入れてこうかとふらり飯屋に入った。
丼飯をかっ込んでいるってえと、店のガラス戸をドンドンっと叩く音がする、
「きょうもごはんさんをもらいにきたんだよー!」
「なんだ? ありゃ、ちぇんか?」
ガラス戸を空けるとお世辞にも綺麗とはいえない一匹の饅頭が転がり込んできた。
なんとも渋ーい顔をしながら店主が持ってきた飯にむしゃぶりついて、
「むーしゃむーしゃ、おいしいんだねー、わかるよー!」
「……おい店長、なんで飯屋で饅頭がメシ食ってんだよ、なんとかしろよ」
「すいやせん、あたし共もやっかいっちゃあやっかいなんですが、なにせ金バッジなもんで……」
「金バッジだぁ? あんな汚ったねぇのがかい?」
「へい、そうみたいなんでさぁ。毎日この辺の店を回っちゃあ、餌ぁねだるんですよ。
まあ、ゴミまき散らかされたり、店ん中荒らしたりしねぇだけマシなんですがね。
お気に触るようでしたら裏ァやりますんで、どうか一つご勘弁を」
怪訝に思ってちぇんのお帽子についてるバッジをグーっと覗き見ると、これが飼いゆっくりを証明するバッジとは似ても似つかぬ物。
まんまるピカピカの金バッジじゃなくって、少しくすんだ菱形のバッジが付けられていた。
ゆっくりを見慣れてない人間には『金バッジ』といえばそんなもんかな? って騙されるかもしれねえが、
ちょいと目端の利く、その気のある人間ならすぐにわかっちまう。
ムラムラっときたお兄さん、早速、
「そうか、そりゃあ大変だな、 俺が何とかしてやろうか?」
「へ? まあ、何とかしていただけるなら、ありがたいんですが…… やめたほうがよろしいかと」
「大丈夫、大丈夫、なあに、店には迷惑かけねぇよ。ちょいと裏ァかりるぜ!」
饅頭ごときがいい気になって人間様のメシ食うなんて生意気に、
ちょうどいい腹ごなしだってんで、ちぇんの頭ァ鷲掴みにして店の裏ァ回った。
ミチミチっと指ィ食い込ませながら問い詰めることにゃあ、
「なあ、お前は金バッジなんだって?」
「そ、そうだよー、ちぇんはおにいさんにきんばっじさんをもらったんだよー」
「そうかそうか。……金バッジ試験ってのは難しいそうじゃねえか。試験では何を習ったんだい」
「しけんってなんのことかわからないよー、ちぇんはかわいいからきんばっじさんなんだよー! わかるねー?」
「あのなぁ、ちぇん、
お前のバッジ、偽物だぞ」
「わがっ!!」
「大体、こんな汚い飼いゆっくりがあるかってんだ、え? 何いい気になってんの?」
「でも、ちぇんはおにいさんに」
「お店の人にも迷惑だろ? 人の迷惑になることをしちゃいけない、なんて飼いゆっくりの基本だよねぇ」
「きんばっじさんだからいいんだよぉぉぉ!! おにいさんがいってたんだよぉぉぉおぉ!!」
薄汚ねぇなりで、人間様との決まりも知らねぇ、おまけにバッジも偽物だ、
とくると、潰しちまってもかまわねえ泥饅頭だってんで、
懐から紙袋を取り出して
「はいはい、ゆっくりゆっくり。
ちぇんを紙袋に押し込んで~♪ 裏でお兄さんがちぇんを蹴る~♪」
「わ! っが! らにゃ! いぃぃ! やべで! おにいざぁぁぁん!!! だずけでねぇぇぇ!!」
「お兄さんって誰のこと? ねえ? 飼い主さん? 来るわけねえだろ! 騙されてんだよ! クソ野良が!
なあ、お前らは目障りなんだよ、そんな偽もん金バッジで餌ァ強請ってたなんて、とんでもないゲスだねぇ」
「お、お、にぃい、ざ…… ら……しゃ……」
「ポンと蹴りゃ~らんと泣く~♪ ポンポンポンポンっと蹴りゃ、にゃんにゃんにゃんと……
なんだい、もうくたばっちまったのか。つまらねぇ。
まあ、偽金馬鹿を成敗したってことで。……ああ、いい善行をした!」
ってすっきりー! したところに、
「ちぇぇぇぇぇぇぇえええええぇえぇぇぇぇえええええん!!!」
どパンチパーマにアルマーニのダブル、首から腕からジャラリジャラリと金鎖を鳴らしながら、
どう見ても堅気じゃないお兄さんが物凄い勢いで駆け込んできた。
スーツが汚れるのもかまわずに、紙袋を抱きしめて、向こう三軒に届こうかってぇくらいの胴間声で泣き叫ぶ。
「痛かったろうになァ!!! 可愛そうになぁ!!!」
「え、あ、あの、それ」
「人間だってこんな!! 袋に詰めて蹴りまわしたりしちゃぁ!!! 死 ん じ ま う よ な ぁ !!!」
「でも、その、バッジが偽物で」
「バッジ!? 偽物ぉぉ!? 家族とも弟分とも思って付けてやった ウ チ の 金バッジにケチ付けようってのかぁぁ!!!」
袋から潰れ饅頭を取り出して、お帽子についてるバッジをグッとお兄さんに突きつける、
これが怖いお兄さんのスーツの襟元についてるバッジと寸分たがわぬ菱の大紋付のバッジだ。
「いや、でも、お店の人に迷惑を……」
「店に迷惑ゥ?! ウチの金バッジが外で腹ァ空かしてたら可哀想だから、このあたりの店にゃぁ、メシぐらい食わしてやってくれって
お ね が い してあるんだよ! お前ェが首突っ込む問題か? ああぁん?!」
だぁん! と壁をブッ叩くと同時にお兄さんにグーっと顔ぉ近づける、
すっかりブルっちまった所で、
「……いやぁ兄さん、すまねぇ、ウチの可愛い可愛いちぇんがブチ殺されたんだ、ちょっと取り乱しちまったなァ。
とりあえず、お話をしようか」
「こんな酷いことを平気でする奴ァ、同ンなじ目にあわせてやりてぇと思うんだけど、この国ァ、法治国家だ。
饅頭と人間の価値は一緒じゃねえよな。わかるねー?」
「まあ、警察行こうか。動物じゃないから動物愛護法は適用されねぇとは思うけど、器物破損で間違いなく前科者だな」
「……これはあくまで、訴えれば、の話だ。……俺も愛するちぇんが無残に殺されて深い悲しみに包まれているんだ。
どうすればいいか、わ か る ね ー?」
「きょ、脅迫じゃないのか!」
「脅迫ぅ?! おいおい、人様の物ォ、てめえで勝手にブチ殺しといて脅迫だァ?!」
「……脅迫にはなりませんよ。あたしがちゃんと聞いてますから」
怖いお兄さんの後ろからスッと出て来たのは店の店主。手にゃあICレコーダーがしっかり握られているから驚きだ。
「お客さん、あたしゃ忠告したんですよ? やめたほうがいいって」
「どぼじでごんなごとずるのぉぉぉ!!」
パチリとレコーダーのスイッチを切って店主、
「いやぁ、ちぇんに金バッジを付けとくと、時々お兄さんが高く売れるんです」
お後がよろしいようで。
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~蛇足~
後日、怖いお兄さんがこの飯屋に顔を出すってえと、ゆっくりを虐め殺したにんげんさんをとっちめたお兄さんだってんで、
野良ゆっくりが群がってきた。
「おにいさんはすごいのぜ! まりさもきんばっじさんがほしいのぜ!」
テッポウダマ
「……ああ、いいだろう。お前も『金バッジ』さんにしてやろう」
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- ・・・法治国家なら、なおさら虐待お兄さんは問題ないのでは?
893のバッチといえど、国から許可が下りた正当なゆっくり用バッチではないから、
飼いゆっくりの証明にはならんだろ。
むしろ店主と結託して「あたかも正当な損害賠償請求」に思わせてるから、
逆に、集団による計画的な詐欺罪で訴えられる。
※会話からバッジ無しゆっくりへの保護義務は皆無らしいしね。 -- 2018-03-03 08:09:08
- ちぇん構成員、お勤めご苦労さまでした -- 2013-06-27 12:49:29
- 菱形の金バッチでたぶんそうだろうなと。 -- 2012-09-14 17:08:27
- ショーモナ! -- 2012-08-13 07:54:48
- これはいい新作落語ww -- 2010-11-20 15:49:18
- おぉ・・・面白いな -- 2010-08-22 11:08:25
最終更新:2010年03月27日 08:33