ふたば系ゆっくりいじめ 1093 美しきゆん生

美しきゆん生 20KB


虐待-普通 悲劇 その1



「ゆはーゆはー……おちびちゃん、いそぐんだぜ!」

「ゆびゃぁぁん!つかれちゃよー!もうはしれないのじぇー!」

「とおくににげないと、にんげんさんにつかまっちゃうのぜ!」

まりさ親子は必死に跳ねていた。
定期的に行われる野良ゆっくりの一斉駆除。
住み慣れた公園の一角から、人気のない路地に向かってひたすら逃げ回った。
このまりさは比較的頭が良かった。
狩りと称するゴミ漁りをする傍らで人目に付かない道を探し覚えていたのだ。

「おちびちゃん、がんばるのぜ!あのかどをまがれば、にんげんさんがおってこれない、ぬけあながあるのぜ!」

「ゆひぃ…ゆひぃ…ゆっくち…がんばるのじぇ…」

まりさ達が目指している十字路の角、そこを曲がると行き止まりになっている。
ただしそれは人間の場合であって、壁にゆっくりがやっと通れるほどの穴が開いていたのだ。
壁の向うは長い間放置してある空き地で、まりさは何度かそこで食べられる雑草を取っていた。

まりさ親子はゆっくりにしては速い速度で路地を駆け抜けていった。
やっとの思いで目指していた角を曲がる…
しかしそこには新しく塗り固められた壁が無常に立ち塞がってた。

「ど…どうしてなのぜ……かべさん…いじわるしないでほしいのぜ…」

「おちょーしゃん…ここまでくれば…あんぜんなの…じぇ?」

賢いまりさには解っていた、壁が意地悪している訳ではない事を。
しかし言わずにはいられなかった。
今までまりさは良い事がなかった、それは今回も同じだった。
まるで誰かが意地悪をしているかのように…
だから、そんな一言が口から出てしまったのだ。

「どうしちゃの、おちょーしゃん?ここまでくれば、ゆっくちできるんじゃないのじぇ?」

「…ゆん…そうだったのぜ………おちびちゃん、ゆっくりしていってね…」

「ゆっくちしちぇっちぇね♪」


遠くから足音が聞こえる。
まりさは覚悟を決める事にした。
おそらく自分達は人間に捕らえられてしまうのだろう。
野良達の話で聞いていた「かこうじょ」という場所に連れて行かれ、ゆっくり出来なくなってしまうのだろう。
悔しくて涙が溢れそうになった。

「おちょーしゃん?どうしたのじぇ?」

「…ゆぅ…なんでもないのぜ!」

『おっと、こんな所に逃げ込んでたか…さっさと回収するか』

「ゆびゃぁぁぁぁん!にんげんしゃんなのじぇぇぇぇぇ!ゆっくちできにゃいよぉぉぉぉぉ!!」

「おちびちゃん、おちつくんだぜ!このにんげんさんはだいじょうぶなんだぜ!!ゆっくりしてね!」

突然姿を現した人間を見たとたんに泣き叫ぶ子まりさ。
それもそのはずだろう、まりさが散々人間はゆっくり出来ないと教えてきたからだ。
まりさは慌てて子まりさをなだめる、このままでは子まりさが殺されると思ったからだ。
捕獲される再に騒いだり暴れたりして潰されてきたゆっくり達を、まりさは沢山見てきたからだ。

「びぇぇぇ……ゆぅ…おとーしゃ……ほんとうなのじぇ?」

「ほんとうなのぜ!だからあんしんするのぜ!………にんげんさん、さわいでごめんなさいなのぜ…」

子まりさはまりさ程頭は良くなかったが、まりさの躾が良かったのか聞き訳が良かった。
もっとも、子まりさがまりさの事をそれだけ信頼していたからなのかも知れない。
さっきまで泣いていたかと思ったら、まりさの一声ですぐに泣き止んだ。

そんなまりさ親子の様子を作業服姿の男は関心したように見つめていた。
そして、男はポケットから何か取り出すと、ブツブツと喋りだした。

「…回収班の……はい…面白い親子を見つけまして……ええ…では、そのようにいたします…はい…」

そんな男の様子を不安そうに見つめるまりさと対称的に子まりさはすっかり安心しきっていた。
まりさももう少しお馬鹿だったのなら、要らぬ心配や不安を抱える事無く楽に慣れたのかもしれない。
しかしかつて飼いゆっくりだった頃は、金バッチまで手が届くほどの優秀さがあった。
そんな賢さが仇となり、余計な思考で自らゆっくり出来なくなっていた。

そんなまりさ親子を作業服の男は丁寧に抱え上げると、回収車に向かった。
回収車の中では薄汚れた様々な野良ゆっくり達が金網の中でひしめき合っていた。

「ゆふふ…また、ばかなまりさがつかまったよ!いいきみだね!とくべつなれいむをみてしっとしてね!」

「むきゅー!ぱちゅはこうえんのけんじゃなのよ!さっさとここからだしなさい!」

「れいむはしんぐる(以下略」

「ゆがぁぁぁぁ!ここはせまいのぜぇぇぇ!ごみゆっくりどもは、まりささまにさわるんじゃないのぜ!」

「かこうじょさんはとかいはじゃないわ……」

そんな中で他の野良達とは別に、透明なケースに入れられたゆっくり達が居た。
まりさ親子はそのケースの中に丁寧に納められる。
ケースの中に居たれいむは、まりさ親子を見下すような目で見つめてきた。

「なんなの?まりさたちも、えらばれたゆっくりだったの?でも、きたないまりさたちは、れいむのそばにこないでね!」

「ゆゆ!しんいりさんなのぜ~♪よろしくなのぜ~♪ゆっくりしていくのぜ!」

「ゆふふふ…けっこうとかいはなまりさね!このあほまりさとは、おおちがいね」

「どおしてそんなこというのぜぇぇぇぇぇ?!」

まりさにも自分達の扱いが別なのは解った。
箱の外からはゆっくり達が嫉妬のような、軽蔑のような、複雑な視線でまりさ親子を眺めていた。

「とくべつあつかいだらかって、いいきにならないでね!れいむのほうがびゆっくりだよ!」

「あわれなのぜ…あのゆっくりたちはまりさたちより、ひどいめにあってしぬのぜ…」

「むきゅー!こうえんのけんじゃより、この、きたないゆっくりをえらぶなんて…」

しかし、どうしてもここに居る者達の様に安心は出来なかった。
そんなまりさを尻目に、子まりさは楽しそうにしていた。

せっかくニコニコしている我が子を不安がらせる訳にはいかない。
そう思ったまりさは周りのお気楽なゆっくり達にあわせる事にした。

「おちびちゃん、おとうさんのいったとおりなのぜ?まりさたちはえらばれたのぜ!」

「ゆーん♪さすがおとーしゃんだね!まりしゃたちが、ゆっくちしていたごほうびなのじぇ?」

「…そ、そうなのぜ!だから、これからもっとゆっくりするのぜ!」

「ゆっくちー♪」

まりさの言葉を聞くと、子まりさは嬉しそうに体を揺らした。
まりさは不安を、子まりさは希望を抱きならが回収車は加工所に向かっていった。





加工所に運び込まれたまりさ達は金網のゆっくり達と分けられ、程よい暖かさの水で洗浄された。

「ゆびゃぁぁぁん!あめしゃんは、ゆっくちできないのじぇぇぇぇぇ!!」

「おちびちゃん、ゆっくりしてね!このあめさんはだいじょうぶなのぜ!からだが、きれいきれいになるのぜ」

「ゆ…ゆぅ…ほんちょー?…ゆっくちー♪」

子まりさは怯え嫌がったが、まりさが汚れた体を綺麗にしてくれているのだと言い聞かせた。
濡れた体を丁寧に乾かされたまりさ親子と、透明ケース御一行は再度透明なケースに入れらた。
そしてケースはカートに乗せられ、そのまま何処かへ運ばれて行く。

「おちびちゃん、これからにんげんさんたちが、おちびちゃんをゆっくりさせてくれるのぜ」

「ゆゆ?!ほんちょー?ゆわーい♪にんげんしゃん、ゆっくちありがちょー♪」

幸せそうな我が子を見ると少しだけゆっくり出来たまりさだった。
まりさのつく嘘は、何時しか子まりさの為だけでなく、自分の為にもなっていた。

しばらくすると、ゆっくり達を乗せたカートが大きな扉の前で止まる。
実際には人間にしてみれば普通サイズの扉なのだが、不安を抱えたまりさには地獄の入り口に見えていた。

ゆっくりと扉が開かれると、そこには目が痛くなるほど真っ白い部屋が広がっていた。
中には白い服を着た人間が一人居て、まりさ達を品定めするかのように眺めていた。

「ゆふふ!これがれいむのどれいなんだね!さすがれいむは、えらばれたゆっくりだね!」

「ゆふふ~ん?まっしろなにんげんさんなのぜ~♪」

「しろはせいけつでいいわね、とかいはなかんじよ!ゆっくりできるわ」

「ゆわーい!にんげんしゃんこんにちはー♪ゆっくりしていってね!」

「ゆぅ…にんげんさん…よろしくなのぜ……ゆっくりしていってね」

白服の人間はゆっくりの多様な反応に満足したようにニコニコ笑っていた。
子まりさを含む他のゆっくり達はその姿を見てゆっくり出来る人間だとか、良い奴隷だと騒いでいた。
だがまりさには、どうしてもその笑顔に潜む物が気になっていた。

白服の人間は、まりさ親子、れいむ、アホまりさとありす、といった感じで透明ケースにゆっくり達を入れるとケースに蓋をした。
ゆっくりの入った透明ケースは棚に収められると、敷居をされお互いのケースが見えない様になった。

「おちびちゃん、まりさたちは、これからここで、ゆっくりくらすんだぜ!ここはいいところなのぜ!!」

「ゆわーい!まりちゃ、うれしいのじぇー♪しあわせでごめーんにぇ♪」

更に不安が募るまりさだったが、自分の不安を誤魔化す様に子まりさに嘘をつくのだった。





「むーちゃ、むーちゃ、しあわしぇ~♪にんげんしゃん、ゆっちありがちょー♪」

「にんげんさん、いつもごはんをくれてありがとうなのぜ、おかげでゆっくりできるのぜ」

この部屋にまりさ親子が運び込まれて数日たった。
まりさ親子は何時ものようにご飯をくれた白服人間にお礼を言う。
実際のところ、まりさにはこの食事はあまり美味しく感じられなかった。

多少の甘みがあるもののパサパサした触感のそれは、飼いゆっくりだった頃に食べなれた味。
それでも野良生活しか知らない子まりさにとっては、それは貴重なあまあまだった。
しかし何時毒が盛られるかを心配して、まりさはゆっくり食べられないで居た。

実際に野良生活時代に毒餌を食べて死んでいったゆっくり達を沢山見てきた。
自分と無理やり番になったれいむと、その間に出来た赤れいむ二匹も、
まりさが見つけてきた貴重なあまあまを、強引に奪い食べたせいで死んでいった。
そんな過去の経験から人間の食べ物に、不信感を抱くようになったのだ。

わざと目立つように捨ててある、あまあまは毒。
あまあまをあげると近づいてくる人間の持っている物は毒。
この人間の持って来るあまあまも毒ではないのか?
そんな思考がまりさをゆっくりさせないでいた。

まりさの気持ちなど露知らず、子まりさは幸せをいっぱいに噛締めていた。
おそらくこの子まりさは今が一番幸せなのかもしれない。
そんなまりさ親子に気が付いているのか、白服は面白そうに笑みを浮かべるのだった。



実際にここに来てからの生活はそう悪いものではなかった。
ご飯は一日三食与えられ、定期的に体を洗ってもらえた。
寝床にはふかふかのタオルも用意され、水もいつも新鮮な物を用意してもらった。
うんうん、しーしー場もちゃんと用意されており、元飼いまりさと躾のいい子まりさはそこで用を足した。
白服がそれらを毎日綺麗にしてくれるので、いつも清潔な生活を送ることが出来た。


不満な点を上げるとすれば、毎日の様に白服が自分達の体を隅々まで見回す事だった。

「ゆわーい!おしょらをとんでりゅのじぇ~♪…ゆ~ん、はなしちぇほしいのじぇー」

「おちびちゃん、じっとしているのぜ!にんげんさんのめいわくになるのぜ!」

「ゆ…ゆぅ…ゆっくちりかいしちゃのじぇ…」

白服に持ち上げられ、お決まりのセリフを言いながら喜ぶ子まりさ。
しかしすぐに不快感に襲われ、白服の手から逃れようと必死にブリブリ尻を振る。
そんな様子を興味なさそうに見つめていた人間ではあるが、まりさは大人しくするように言い聞かせる。
聞き分けの良い子まりさは、それに従い大人しくする。

「ゆわーい!おそらをとんで………ゆぅ……」

子まりさを見終わると、今度はまりさの番だった。
まりさも不快で堪らなかったが、人間を怒らせたくない一心で大人しくしていた。
まりさはこの白服の視線が苦手だった。

それともう一つは、この透明ケースはそれほど小さくもないが、まりさが動き回るには少々狭かった。
それでも子まりさが遊び回ることが出来るだけの広さはある。

「おなかぎゃいっぱいになっちゃから、まりちゃはこーろ、こーろ、するのじぇ!」

「おちょーしゃん、みちぇみちぇ~♪まりちゃ、のーび、のーび、しゅるのじぇ~♪」

「ゆっくちつかれちゃから、まりちゃはすーや、すーや、しゅるのじぇ!」

食事の時間以外は子まりさは狭い箱の中を自由に遊びまわっていた。
無邪気に遊び回る我が子を見つめ、幸せそうに笑うまりさ。
ゆっくりが良く口にする、「あかちゃんはゆっくりできる」、「おちびちゃんはゆっくりできる」というのは、
まさにこの事だろう。

「おちょーしゃん、ここはとーってもゆっくちできるのじぇ~♪」

「ゆふふ…そうだねおちびちゃん…」

「まりちゃはとーってもしあわしぇなのじぇ~~♪ゆっくち~~♪」

子まりさにとってはまさに楽園だった。
まりさの嘘の影響もあり今が一番ゆっくり出来ているのだと思っていた。
そんな子まりさを見ている時だけ、まりさは不安を忘れゆっくり出来ていた。




「おちょーしゃん、ゆっくちおはよー!きょうもゆっくりしていってね♪」

「…おちびちゃん…ゆっくりしていってね…」

「ゆゆ?おちょーしゃんげんきないのじぇ?どこか、ぐあいがわるいのじぇ?」

「…そ、そんなことないのぜ!おちびちゃんはきにしすぎなのぜ!きょうもゆっくりしていくのぜ!」

「のじぇ~♪」

それから更に数日たった。
相変わらず何時もと同じ平坦な生活。
ただ、食べて出して寝るだけの生活。
まりさにはそれが苦痛になってきていた。
何時、無常に殺されるのか。
何時、野良生活に戻されるのか。
この平坦ではあるが安定した生活が何時終わりを告げるのか。
する事のないまりさは、ただ不安を思い描くだけだった。

子まりさの方は相変わらず楽しそうにしていた。
毎日ご飯を食べられる事が、毎日父親と居られる事が嬉しかった。
遊んで、父親とお喋りをして、ゆっくりお昼寝を楽しんで、
毎日がとてもゆっくりした生活だった。

そんな生活でもけして子まりさは増徴する事がなかった。
それも、まりさが人間に対しての感謝を忘れないように教育してきたためである。
人間の機嫌を損ねてひどい目に合った野良達をまりさは沢山見てきた。
理不尽に人間に殺されていったゆっくり達を沢山見てきた。
だからまりさは何よりも人間を恐れていた。

故に、人間対してまりさは常に低姿勢でいることに勤めた。
子まりさも父に習い、皮肉な事に飼いゆっくりの理想というべき態度で人間に接した。






退屈な生活の中でまりさにとって、唯一の救いは子まりさだけになっていた。

「おちょーしゃん、またおちょーしゃんのおはなしを、きかせちぇほしいのじぇ~♪」

「ゆふふふ…わかったのぜ…あれはかりにいったときのことなのぜ…」

まりさはせがまれるままに、子まりさに色々な話を聞かせた。
自分が飼いゆっくりだった頃の話。
金バッチ試験を受けた時の話。
試験に落ちてショックを受けていた時に、飼い主に優しくしてもらった事の話。
突然捨てられた時の話。
母れいむとの出会いの話。
野良生活をしてた頃の仲間の話。
子まりさが生まれるまでの話。

実際のところ、それらの話はけして楽しい物ではなかった。
だがまりさは、暗い部分は適当な嘘で誤魔化して話した。

そんな話を聞いた子まりさには、どんなに辛くても輝かしい希望があるものだと信じきってしまった。

「ゆ~ん♪おちょーしゃんのおはなしは、どれもゆっくちできるのじぇ~♪ゆっくちありがちょ~なのじぇ~♪」

お話を聞き終えた子まりさは、幸せそうに体を揺らしていた。
まりさのおかげで子まりさは、いつもゆっくりニコニコ暮らせていた。
また、そんな子まりさを見ていると、まりさも安らぐ事が出来た。
まりさの唯一のゆっくりは子まりさだけだった。





「おちょーしゃん、おはよーなのじぇ~♪きょうはなんだきゃ、あんよしゃんがむじゅむじゅするのじぇ~」

「おはよーおちびちゃん…どこがむずむずするのぜ?あんよさんをみせてみるのぜ」

まりさは心配そうに子まりさのあんよの様子を見る。
今ののところ何も起こってない様に見えるが、子まりさはむずがゆそうに、あんよをずーりずーりさせていた。
まりさは湧き上がる不安を必死に抑えて、子まりさにまた嘘をつく。

「ゆん…きっとおちびちゃんは、これからおおきくなるから、あんよがむずむずするのぜ。きにしないでおくのぜ」

「ゆーん?そうなのじぇ?おちょーしゃんがいうからまちがいないのじぇ~♪」

まりさの嘘に幸せそうに答える子まりさ。
時折あんよをずーりずーりさせながらも、その日は何時ものように楽しく遊んでいた。



「ゆ~~ん…おちょーしゃん、きょうもあんよしゃんがむじゅむじゅするのじぇ~」

その日も子まりさはあんよの不調を訴えた。
まりさがあんよの様子を見ると、昨日は見られなかった緑の染みの様な物が見つかった。
不安が頭をよぎる。
この染みはゆっくり出来ない物ではないのか?
そう考えれば考えるほど、不安の芽はどんどん育っていく。

だが、子まりさを不安がらせる訳にはいかない。
子まりさが笑わなくなってしまったら、自分の唯一のゆっくりが消えてなくなってしまう。
そんな思いが頭を巡り、またしても嘘で誤魔化してしまう。

「ゆぅ…きょうもなんともないのぜ?おちびちゃんは、きにしないでゆっくりするのぜ!」

「ゆゆぅ?しょーなのかじぇ?…おちょーしゃんがいうなら、まちがいないのじぇ~♪ゆっくち~♪」

まりさの笑顔は不安で引き攣ってしまっていたが、能天気な子まりさはそんな事には気が付かなかった。
昨日の様にあんよをずーり、ずーりしながらも元気に遊びまわった。
まりさはそんな姿を見ても、何時もよりゆっくり出来ないでいた。


その日は白服がいつも以上に子まりさのあんよを観察していた。
まりさはその様子をみて更に不安を募らせたが、子まりさの前ではそんな様子を見せないようにしていた。



それから日を追う事に、子まりさのあんよの染みは大きくなっていった。
染みが大きくなるにつれ、まりさの不安も大きくなっていった。

まりさはこの染みに心当たりがあった。
公園にいたぱちゅりーから聞いた話にこれに似た病気があったのを思い出したのだ。
これはおそらく「かびさん」という物ではないのか?
話では、これにかかると大抵のゆっくりは成すすべもなく死んでしまうそうだ。

ぱちゅりーによれば、「かびさん」に対抗するには毎日体を洗い綺麗にする事、
濡れた体をしっかり乾かす事が予防になるそうだ。
野良生活をしていた時は、公園の噴水で体を洗っていた。

そんな事を思い出し、まりさは嫌な事に気が付いた。
そういえば、数日前から体を洗って貰っていない。
そんな考えが頭をよぎると、今まであえて気にしないで置いた事がどんどん不安になっていく。

この透明ケースに入れられてから、他のゆっくりの声を聞いていない。
数日前から水の味が変わった気がする。
こうなると、まりさは疑心暗鬼に陥り子まりさの笑顔ですら不安に感じるようになった。

本当はおちびちゃんは具合が悪いのを隠して、元気に振舞っているのではないのか?

ついに不安を抑えきれず、まりさは行動に出てしまった。
その日も何時ものように白服がやってきて子まりさのあんよをじろじろ眺めていた。
まりさの番が来て持ち上げられると、機会を伺っていたかのように白服に話しかけた。

「にんげんさん…おはなしがあるのぜ…」

「どうしたんだい?まりさくん?」

「まりさのおちびちゃんは…かびさんに…かかっているんじゃないのかぜ?」

恐る恐るまりさが白服に話しかける。
白服は少し面白そうな顔をしてまりさを眺める。
まりさは本能的にその視線にゆっくり出来ないものを感じた。

「ひょっとして…あのあんよの緑の物の事を言っているのかい?」

「そ、そうなんだぜ!あれは『かびさん』じゃないのかぜ?このままだとおちびちゃんは…しんでしまうのぜ?」

白服は更に面白そうに目を細めた。
まりさは思わずビクッと体を縮めてしまった。

「そんなに怯えなくても良いよ、あれはね…ドスや胴付に進化する前段階なんだよ」

「ゆぅ?それはほんとうなのぜ?」

「私が嘘をついているとでも?」

「…ならきくのぜ?どうしてさいきんは、まりさたちのおからだをあらってくれないのぜ?
 きれいにしてないと、かびさんになるってぱちゅりーがいってたのぜ?」

白服は一瞬眉をしかめるが、すぐに何時も通りにニコニコしだす。
まりさはその一瞬の表情の変化を見逃さなかったが、白服のにやけ面が不気味で目を背けてしまう。

「それはそのぱちゅりーが嘘をついていたんだろう?他のゆっくりがドスや胴付になるのが気に入らないんだろう?」

「ぱちゅりーはうそはつかないのぜ!!そんなのはしんじないのぜ!!」

「何ってるんだい?君だって嘘つきじゃないか、それなのにどうして他のゆっくりを信じるんだい?」

まりさは何も言い返せなかった。
とりあえずは、この白服の言葉を信じる事にした。
不安から目を逸らしたかったのである。



「おはよーおちょーしゃ……ゆびゃぁぁぁぁん!おちょーしゃん!まりちゃのあんよが、みどりいろなのじぇーー!!」

「ゆわぁ………おちびちゃん、それはおちびちゃんが、どすになるからみどりいろなのぜ…
 おめでとうおちびちゃん…だからあんしんして、ゆっくりするのぜ」

「ゆぅ?…それほんちょー?…ゆわ~い♪まりちゃ、どしゅなのじぇ~♪ゆっくち~♪」

まりさは嘘をつくのが心苦しかった、だか今更後には引けなかった。
何よりこの子まりさが笑わなくなる事が怖かった。
まりさの唯一のゆっくりだったから。

その日は白服が子まりさの緑色の物を少し採取していた。
まりさはそれを不安そうに見ていた。
白服はまりさの背中(?)をやらたと調べまわしていた。
まりさは不快で堪らなかったが、白服はお構いなしだった。






それから更に数日たった。
子まりさの緑色の物はどんどん増えていった。
それは今では子まりさの髪や帽子にまで広がっていった。

「おちょーしゃ……きもちがわりゅいのじぇ…くるちーのじぇ…」

「…どすになるには…くるしかったり、きもちわるかったりするのぜ…だからがんばって…ゆっくりしてね」

「ゆぅぅ……まりちゃ…がんばるのじぇ…ゆっく……ち♪」

緑が広がるにつれ、子まりさは弱っていった。
子まりさも自分の体の不調を訴えた。
だが、それを誤魔化すためにまりさはまた嘘をつく。
子まりさは、父の言うことを信じ懸命に耐えていた。


「おちょーしゃ……まりちゃがどしゅにな…っちゃら…こんどは…まりちゃが…おちょーしゃ…をゆっくちしゃ…」

「おちびちゃん、ゆっくりありがとうなのぜ…おとうさんはたのしみにまっているのぜ」

「ゆふ…ふ…ゆっくち……」

子まりさはどんどん弱っていき食事の量も減っていった。
まりさはそんな子まりさをぺーろ、ぺーろしてあげると子まりさはニッコリ微笑むのだった。


その内まりさの目にまで緑色の物が覆い被さってきた。

「おちょー…しゃ…どこなの……まりちゃ…なにも…みえないじょ…じぇ…」

「おちびちゃん、おとうさんはここだよ!すーり、すーりしてあげるのぜ!」

「ゆふふ…ゆっくち…」

白服はそんな様子を楽しそうに見守っていた。





「にんげんさん…おちびちゃんはどうなるのぜ?…このまましんじゃうのぜ?」

「ん?」

その日、白服に持ち上げられた時にまりさが問い掛けた。
白服は静かに笑っていた。

「あぁ…そうだね……実はもう君達は用済みなんだ…だからこれから焼却処分されるんだよ」

「ゆ?……それはどういうことなのぜ?」

「あぁ…頭が良いと思ってたけど所詮ゆっくりか……簡単に言うとね、君達はゴミだから燃やすんだよ」

「ゆ?!」

「君ら親子の命は今日限りだよ…まあ、また得意の嘘で子まりさを誤魔化してあげてね♪」

まりさは頭が真っ白になった。
以前から抱えていた不安が現実となった。
しかしまりさは子まりさが弱り始めてからゆっくり出来なくてその事をすっかり忘れていたのだ。

カビの生えた帽子がまりさの頭からずり落ちる。
まりさの体も大分前からカビに侵食されいた。
白服はそれを拾うと、まりさの頭にそっとかぶせてケースに戻した。

「おちょ……しゃ……しゃむい……こわい……ゆっくち…できにゃ……のじぇ…」

まりさの頭は空っぽになっていた。
まりさにはもう嘘が思いつかなくなっていた。
まりさは嘘をつく事が出来なくなっていた。





まりさは我が子を見つめ涙をこぼした。







「…おちびちゃん……ゆっくり…していってね……」








徒然あき



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感想

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  • すべてまりさを捨てたやつが悪い‼
    -- 2016-06-22 16:50:27
  • zamaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa -- 2016-02-18 18:38:16
  • まりさいいやつ。なんで捨てられたのかな -- 2015-12-14 18:18:59
  • 加工場の白服を焼却処分して欲しい。あと、魔理沙が、天使みたいで、泣ける。 -- 2014-05-12 20:15:54
  • ↓自己レス
    タイトルみたら一目瞭然だったわ
    ただ映画と同じように子供だけでも助けてもらいたかったなぁ
    あと、収容所へ運ばれるシーンが上手く再現されてると思いました -- 2012-09-01 01:16:44
  • 子のために親が明るい嘘をついていたのを見て、ライフイズビューティフルを思い出した。 -- 2012-09-01 00:54:07
  • 回りくどく小賢しい加工所だね~ ムカツクね~ 殺したいね~ 職員全員を血肉片にしたいね~ -- 2012-07-28 17:05:32
  • まりさ・・・(´⊂`)
    幸せになってもらいたかった・・・!(´дゝ) -- 2012-06-11 20:34:29
  • 善良な個体はあんまり殺処分しないでほしいな・・・
    -- 2011-09-12 08:58:48
  • ↓この話は「1094」「1095」「1096」とひと繋がりになってるのよ。 -- 2010-11-11 23:28:28
  • 白い服の人達の目的が不明だからモヤモヤする -- 2010-09-29 12:24:50
  • ゆっくりの糞ガキが死ぬ瞬間に絶望するオチだったら良かったのに。 -- 2010-07-31 14:52:45
  • 別視点。
    まあこういうのも無常でいいんじゃない? -- 2010-07-02 03:43:17
  • 何がしたかったの? 何を書きたかったの? -- 2010-06-18 02:58:22
  • すっきりと後味が悪いくて良い。あのお父さん死んで欲しくなかったなあ -- 2010-06-10 00:36:04
最終更新:2010年03月31日 17:05
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