浅瀬 3KB
ゆっくりは不思議な生き物である。
まん丸としていて、手も足もない。
人語を理解し、自らもそれを操ることが出来る。
肌はもっちりとしていて、すぐ傷が付いて痛がる。
中身は餡子のみで、食べる事が出来る。
体液は砂糖水で、ちょっと泣いたりすれば、すぐ虫が寄ってくる。
そして何よりも、弱い。
自然界で生きていく事が不可能な程、弱くて脆い。
では、何故彼女達は絶滅せずに、今日まで生きてこれているのだろうか？
その秘密は、驚くべき適応力、進化力にある。
ゆっくりは、過酷な条件下に置かれても、驚異的なスピードで進化し、その環境に適応してしまうのだ。
しかし、その適応力が必ずしも、群れの寿命を伸ばすとは限らない。
そう、今から紹介する群れのような例も存在するのだ。
｢ゆっくりしていってね！！！｣
朝、一匹のゆっくりれいむが目を覚ました。
一人暮らしの小さな巣に、高らかに声が響く。
つい声を出してしまうのが、ゆっくりの悲しい性である。
｢ゆゆ！おなかがすいたからかりをするよ！！！｣
れいむはバチャバチャと音を立てながら、巣穴から飛び出た。
彼女達の群れは、いつも水に満たされた浅瀬に住居を構えているのである。
彼女が今跳ねている場所は、1cm程水没している。
そして、地面は砂利でとても硬い上に、所々尖った小石が飛び出ている。
水に溶けやすく、刺し傷に弱い。常識では考えられない場所で生息しているが、
この群れはこういった浅瀬で生活出来る様に進化したのだ。
彼女の姿をよく見ると、目や口といった顔面のパーツが、他の群れよりも若干上付きになっている。
そして、底面の辺りが若干肌色が濃くなっていて、ツートンカラーになっている。
これは、足が水に長時間晒されても溶けない様に、皮を分厚くして素材も少し変えているからだ。
では何故、この場所から離れずに、留まるという選択肢を選んだのか。
｢ゆふぅ。つかれたからお水をのむよ！ごーくごーくさっぱりー！｣
まず、飲み水に困らない。何せ、ちょっと屈めばすぐ水があるのだ。
水に飢えて干からびる事は無い。
更に、この豊富な水は、飲み水だけでなく、狩りにも有効活用させる。
｢ゆゆ！はえさんを見つけたよ！はえさんはゆっくりれいむに食べられてね！｣
視界の先の草に止まっている蝿を見つけたれいむは、そう言って足元の水を口に含んだ
そして、目を細めて狙いを定め、舌をくるりと丸めて口から突き出した。
次の瞬間、舌の先から水を細く噴射し、見事に蝿に当て落とした。
｢むーしゃ、むーしゃ、しあわせー｣
ご飯を食べてご満悦の様子。
その後、れいむは何匹かの虫を水鉄砲で打ち落とし、足りない分は苔を食べて補った。
数年後、先程のれいむから何世代か後の事。
浅瀬の水位が５cm程になっていた。
地球温暖化である。
そもそも、初めはこの土地は水に浸かっていなかった。しかし、温暖化の影響で徐々に浸水してしまったのだ。
しかし、これだけ浸水しても、まだこの地にはゆっくりが残っていた。
今残っているのは、昔浸水を始めた頃、数多くのゆっくりがこの地を出て行っても、
しぶとくこの場に留まったゆっくり達の子孫である。
そう簡単にここを動かない。それに、浅瀬用に進化してしまった今、ここ以外の場所では逆にゆっくりできないのだ。
｢ゆっくりかりに行ってくるよ！｣｢ゆっくり行ってらっしゃい！｣
この地に巣を構える、ゆっくり家族の大黒柱、まりさが狩りに出ようとしていた。
番のれいむがそれを見送る。
｢おとーさん、がんばってね！｣｢れいむ、いいこにまってるよ！｣
子まりさ、子れいむも父を応援する。
水深が増えた今、ゆっくりの形はまた変化をしていた。
元々上付きだった顔のパーツは更に上に移動し、目は斜め３０度を向いていた。
髪の毛は少し後退している。
色が濃い部分も高くなり、体の半分程が耐水性の皮膚になっている。
そして、移動方法も跳ねる方法から、僅かに水に浮き、すいすい泳ぐ方法にシフトしていた。
ちなみに帽子移動は、先っぽがこすれるので上手くいかない。
更に数年後、先程の家族から何世代か後の事。
浅瀬の水位が１０cmを超えた。
地球温暖化である。
もうさすがに住めないかと思ったが、そこにはまだゆっくりが住んでいた。
ただ一匹だけ。
｢ゆ……おなか空いたよ……まりさ……かわいいれいむに……早くごはんを持って来てね……｣
それは最早、ゆっくりとは言えない代物となっていた。
形は縦長の円筒形になっており、辛うじて天辺だけが水から出ている。
そこには顔が付いており、頬がげっそりこけている。
髪は完全に退化している。飾りも見られない。
側面底面は耐水性の硬い皮に覆われ、苔や黴が生えて、黒ずんでいる。
｢まりさの……役立たず……もっと……ゆっくり……｣
こうして、この群れは全滅した。
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このＳＳへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ！よく考えて投稿してね！
- 千歳飴かよ -- 2013-09-30 22:56:47
- 5センチあたりのゆっくりを想像すると、すげーキモイな汗 -- 2012-12-10 13:03:02
- 地球温暖化ってすごいって思った -- 2012-11-24 04:04:47
- ↓↓↓↓無理だな食物連鎖の最下層だけで残っても
共食いENDんで餓死か -- 2011-10-07 21:59:19
- 温暖化の進行スピードぱねぇ -- 2011-10-04 14:17:06
- これは絵を見たいものだなぁ・・・
-- 2011-01-26 20:19:27
- 最後は完全に欠陥生物だったけどね… -- 2011-01-15 23:05:06
- 人間絶滅してもゆっくりは生き残るな こりゃ -- 2010-08-25 18:50:42
最終更新：2009年10月14日 18:15
