餡婆娑 12KB
パロディ 群れ ドスまりさ うんしー ドスVSドス
餡婆娑
ある森の中にゆっくりの群れがあった。
群れ長のドスを中心としてそれなりに秩序あるゆっくり生活を営んでいた。
だがそのゆっくりとした群れに異変がおきていた。
群れ長のドスの目の前に、もう一匹のドスが現れたのだ。
群れ長ドスと寄り合いで集まっていた群れ中のゆっくりたちは、見知らぬドスを取り囲み、緊張した面持ちで出方を待っていた。
だが、見知らぬドスはなにも喋らなかった。
これまた緊張した面持ち(だがわずかににやついてるようにも見える)で、殺気を放ちながら群れ長ドスをにらみつけている。
他のゆっくりは一切眼中にないようだった。
奇妙なドスだった。
すぐに目に付くのはその赤い帽子だった。
まりさ種から派生したドスまりさの帽子は黒色だ。
その色合いはれいむ種の赤い飾りとも違う赤黒さで、どこかしら禍々しい雰囲気を醸し出している。
“ゆっくりできない”を体言したかのような色合いだった。
このドスはまりさつむりのような変異種なのだろうか? まりさ種は変異種の発生率が比較的高めであるという説がある。
帽子以外にも奇妙なことがあった。
このドスは忽然と群れの縄張りに現れたのだ。
ドスほど大きな生物が隠れながら群れまでやってこれたとは考えにくい。群れの周囲を見張っているゆっくりがすぐに気がつくだろう。
まさしく“忽然と”現れたとしか形容できなかった。
「ここはドスの群れだよ! ひとつの群れにドスはふたりもいられないよ!
食べ物ならいくらかわけてあげるよ! 用がないならゆっくりさっさと出て行ってね!」
群れ長ドスが沈黙を破った。
ドス同士は通常出会うことがない。ドスは他のドスの群れを避けて通るものである。
ドスがドスに近づくときは、よほど困ったことがあったのか……あるいは縄張りを奪うつもりかのどちらかだ。
群れ長が問いただすまでもなく、この赤黒いドスは友好を求めてやってきたのでないことは明らかだ。
赤黒いドスは、群れ長に返事することはなかった。ただ、ドスの動きにだけ注意を払っているようであった。
「もし、ドスの群れを奪うとかちびちゃんたちに酷いこととかするつもりならようし」
赤黒いドスは唐突にニヤリと不気味な笑みを浮かべると、話途中の群れ長に体当たりを仕掛けた。
「ゆべぇ!」
群れ長は大きく弾き飛ばされる。
赤黒いドスは容赦なく追い討ちをかける。
何度も体当たりを繰り返し、ドスを押しつぶさんとする。
「ゆぁぁぁぁぁぁ! ゲスドスが襲ってきたよぉぉぉぉぉぉ!」
「ドスゆっくりがんばっていってね!」
「ごっぢごないでぇぇぇぇぇぇ!」
群れは阿鼻叫喚に包まれた。小さなゆっくりたちがドス同士の戦いに巻き込まれて次々に潰されていく。
群れ長ドスは、里ゆっくりたちの命がかかっていることを思い出すと、果敢に反撃に打って出た。
体格は群れ長の方がいくらか大きい。まともに戦うなら群れ長の方が優勢になるはずだった。
だが、赤黒いドスはいくら反撃されても、体力が無尽蔵であるかのようにまったく攻勢に衰えがなかった。
「ドスの方がなんだか不利みたいだよ!」
「ドスがやられちゃうでしょぉぉぉぉぉぉぉ!」
群れのゆっくりたちの存在も群れ長に不利な材料だった。
ドスがいくら逃げろといっても、ゆっくりたちはドスの視界内に留まった。
群れに属するゆっくりはドスから離れるのが不安なのだ。
いわゆるドスの呪縛である。
かつてドスまりさがより強く、より魔的で超自然的な存在であった時代には、ゆっくりたちを強制的にゆっくりした精神状態にすることも可能であったという。
ゆっくりたちがドスに惹きつけられるのは、この名残なのかもしれない。
ゆっくりたちがドスの足手まといになってるのがわかっていないのか、自分たちが応援することでドスを助けられると思い込んでいる、というのもあるかもしれない。
また、敵対者たる赤黒いドスは群れのゆっくりをまったく躊躇なく踏み潰すということもあった。
これは群れ長にとって想定外のことであった。群れを簒奪するつもりなら、群れゆっくりの心象は良くしておいた方がいいに決まっている。
縄張りが目的ではないのだろうか……?
とにかく群れ長は早急に仕留めなければこのドスに勝つことはできず、ゆっくりたちを守ることもできないと悟った。
群れ長は赤黒いドスの攻撃に耐えつつタイミングを見計らって大きくを口を開けた。
「ドススパーク!」
ドスの十八番、ドススパークが炸裂した。
戦艦の主砲並の威力を持つこの破壊光線は、ゆっくりにして人間をも恐れさせる要因だった。
もっとも、すべてのドスが使えるわけではなく、厳しい修行に耐えたドスだけが扱えるのだが。
群れ長起死回生のドススパークは赤黒いドスに見事に命中した。赤黒いドスは体の大半を吹き飛ばされた。
「やった! ドスが勝ったよ!」
「やっぱりドスは最強だね!」
「人間にも勝てるね!」
「ゆわーい! ゆわーい!」
「スパークの使えないゲスなドスとは格が違うね!」
「悪いドスはゆっくり地獄でゆっくり反省していってね!」
群れゆっくりたちの歓声が森中に響き渡る。
(勝った……!)
勝利を確信した群れ長ドスは安堵のため息を漏らす。
だが、そのとき奇妙な痺れがドスを襲った。
「なにこれぇ!」
「なんだか体がビリビリするよ!」
「これじゃゆっくりできないよ!」
なにやら静電気のようなものがドスだけでなくゆっくりたちをも包み込んでいるようだった。
しかし、少し痛い以外に実害はないようだった。
(一体これは……えっ!?)
怪現象の連続に困惑する群れ長の前に、いつの間にかあの赤黒いドスが立っていた──ほとんど無傷で!
「ゆげぇぇぇぇぇ! ゲスドスが生きてるぅぅぅぅぅぅぅ!」
「ゾンビなの!? 化け物なの!? 死なないの!?」
「どぼじでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
(そんな! たしかにスパークで撃ち抜いたはずなのに!)
だが群れ長は賢いドスだった。恐慌状態には陥らずにすぐに気を落ち着けると、今一度スパークを放とうと口を大きく開けた。
立ち上がるというのなら何度でも倒すまでという覚悟で。
だが、スパークは放たれなかった。群れ長ドスはあんぐりと大きな口を開けたまま硬直する。
(なぜ!? 魔力が足りない!? まだ余力はあるはずなのに! まずい!)
赤黒いドスはその隙を見逃さず、強烈な体当たりを群れ長に見舞った。
「ゆげぇ!!」
完全に無防備だっただめ、その一撃は群れ長に致命的なダメージを与えた。
そのまま赤黒いドスは有利な体勢を維持したまま、群れ長に何度も何度も攻撃を加えた。
「ゆげぇ! ゆべぇ! ゆぶぅ! ゆぐっ! ゆ゛っ! ゆ゛っ……ゆ゛……ゆ゛……」
群れ長の悲鳴は次第に弱弱しくなり、やがて完全に途切れた。
「ゆぁぁ……ゆぁぁ……」
「ドスが殺されちゃった……」
「もうおしまいだよぉぉぉぉぉぉ!」
「おぎゃーじゃんだじゅげぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
次に狙われると思い込んだゆっくりたちは恐慌状態に陥り、辺りをわけもわからず跳ね回っている。
パニックのあまりまっすぐ逃げることさえできない。
あまりの突発的な出来事に餡子脳がついていけずに、しーしーを垂らしながらフリーズしているゆっくりもいる。
そのとき、赤黒いドスは唐突に爆発し、煙のような霧のようなものを撒き散らした。
「ゆひぃ!」
「ゆわぁ!」
煙のようなものはすぐに晴れた。その後にあの赤黒いドスはいなかった。
「ゆゆ!?」
「悪いドスが消えたよ!」
「れいむたち助かったの?」
「わからないよー! なにもかもわからないよー!」
静電気のようなものも消えていた。
群れゆっくりたちはどうやら助かったらしい。
まるで悪夢のようなわけのわからない事件だった。
だが、夢でも幻でもなかった。
群れ長の無残な死体がそれを雄弁に物語っていた。
群れの解体はあっという間だった。
ドスが他のドスに殺されてその権威が完全に失墜したというのが大きかった。
普通、こういう状況では勝った方のドスについていくのが通常のゆっくりの本能的な習性だったが、あの赤黒いドスは消えてしまった。
統率するものがいなくなった群れは無政府状態に陥り、盗み、殺し、おうち宣言その他あらゆるゲス行為が日常茶飯事のものとなってしまった。
ドス直属の警備隊のようなものがあったのだが、まずこれらのゆっくりたちから真っ先に腐敗した。
というのも体格が大きな強いゆっくりが選りすぐられていたからだ。
警備ゆっくりたちはその体力を武器に好き勝手し放題だった。なまじ仲間意識があるため反抗したときの組織的な報復も恐ろしい。
わいろを贈れるものだけが、警備ゆっくりによる“治安”の恩恵を受けることができた。
警備ゆっくりが真面目に働かなければ、他のゆっくりたちも次々にタガがはずれていく。自分だけ我慢しても意味がないからだ。
弱いゆっくりたちは食い物にされ、弱者がいなくなれば強者どうしで食い合う。
これらの行為を抑制してくれるものはなく、生き残りたければ群れから出て行くか、自分もゲスとして図太くやっていくしかない。
この事態を打破するため、心あるゆっくりたち──かつてドスに側近として仕えていたものたちを多く含んでいた──が集まって相談した。
だがこれといった妙案が出るはずもなく、結果として人間の村に行って助けを乞う以外道はないことがはっきりした。
極めて危険な行為であったが、ドスと同じかそれより強いものでなければこの事態を収めることはできない。
なにも手を打たなければ群れは遠からず崩壊することになる。
ドスの他には人間しか頼れるものがなかった。
何匹かのゆっくりが決死の覚悟で使者として人間の村へと赴くことになった。
村の外れに一人の猟師が住んでいた。
ゆっくりにも比較的理解があり、村との仲立ちになってくれたりもした。
使者ゆっくりたちはまず彼のもとを尋ねた。
「村へは行かないほうがいい」
その猟師は開口一番こう言った。
「どぼじでぇぇぇぇぇ!」
「おまえたちのドスが放ったと思しきスパークが民家に直撃したんだ。
犠牲者も出た。
村人たちは群れのゆっくりを皆殺しにするつもりだ」
赤黒いドスを撃退せんとした群れ長は不幸にも人間の村がある方角にスパークを放ってしまったのだった。
目の前の敵以外のことを配慮する余裕はあのときの群れ長にはなかった。
「そんな……」
「ちがうよ! ぜんぜんちがうよ!」
「ゆっくり助けてね!」
「あれはドスのせいじゃないんです! ドスが悪いんです!」
「とにかく落ち着いて喋ってくれ」
ゆっくりたちは、群れに何が起きたのかを説明した。
忽然と現れた赤黒い帽子のドス。死闘。群れ長の死。
「にわかには信じがたい話だ」
「ゆっくり信じてね!」
「本当にドスは死んじゃったんだよぉぉぉぉぉぉぉ!」
ゆっくりたちはなんとかわかってもらおうと必死だ。
「おまえたちのドスが死んでしまったのはこちらでも確認している。
だが、その赤黒いドスとやらはまったく目撃されていない。
俺たちも森に見張りを巡回させている。巨大なドスがそれらをすりぬけられるとは考えられない」
「ゆゆ……」
ゆっくりたちもあの赤黒いドスを事前に見つけることができなかった。
その場しのぎの稚拙な嘘と言われてもそれを否定できる証拠はない。
「群れ長ドスはゆっくりの統制に失敗して反乱され、スパークで応戦するも殺された。
そして流れスパークが村に……。
これが村としての見解だ。
もうじき、群れゆっくりの一斉駆除が始まる」
「ゆうかたちなにも悪いことしてないよぉぉぉぉぉぉぉ!」
「やめさせてね! ゆっくりやめさせてね!」
「おまえたちの話が本当だとしてもスパークを放ったのが群れ長のドスであることに変わりはない。
おまえたちに非がないとしても、今や群れのゆっくりすべてが敵視されている。
件の赤黒いドスを村人たちの前に突き出し、“事故”であったと証明できるならば、説得できるかもしれないが……」
そんなことは言うまでもなく不可能だ。
あの赤黒いドスは消えてしまったし、まだ近くに潜伏してるとしても見つけ出し、ましてや捕らえることなど到底不可能だ。
「どのみち望みは薄い。……おまえたちはなるべく早く里から逃げることだ。
群れから離れるならそれ以上は追及されることはないだろう。それだけの人的予算的余裕もないからな」
「おねがいでず! なんどがぜっどぐじでぐだざい!」
「ゆっくりおねがいするよ! ゆっくりなんとかしてね!」
「群れが終わっちゃうでしょぉぉぉぉぉぉ! みんなでゆっくりできなくなるでしょぉぉぉぉぉぉぉ!」
ゆっくりたちはなおも懇願する。それ以外に群れを救う方法はないのだ。
群れがなくなれば野生生活に元通りだ。群れの恩恵を一番に受けていた元側近たちは殊更その維持に躍起になる。
「俺には無理だ。
スパークの被害にあったのは村長の縁者なんだ……。
村全体が憎悪の炎で燃え上がっている。彼らは贖罪の生贄を求めている。
早く逃げろ。
俺が言えるのはそれだけだ。これだってギリギリなんだ。
ここからも早く立ち去った方がいい。でないと俺がおまえたちを殺さなければならなくなる……」
「ゆひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
ゆっくりたちは一目散に逃げ出した。
「残念だけどこの群れはおしまいね」
使者に選ばれたあるぱちゅりーが冷たい口調でつぶやいた。
あきらめきれなかったゆっくりたちは、猟師の警告を聞かずに村へ行った。もう二度と帰ってこないだろう。
元側近ならばドスと同様、一定の敬意が払われるだろうと期待していたようだ。
だが、人間にとってドス以外のゆっくりは対等に話し合うに値する存在ではない。
食料か害獣のどちらかでしかない。愛玩動物として飼ってもらえることもあるだろうがそれも都会での話だ。
今、あの村に入ったゆっくりはなんであろうと殺される。人間の仲間意識の強さは尋常ではなく、報復の規模を力の限り大きくしようとしたがるのだ。
群れに報告するという名目で、ぱちゅりーとみょんは残った。
「あの赤黒いドスはなんだったんでしょうか?」
みょんがぱちゅりーに尋ねる。
「まったくわからないわ。こんな話は初耳よ。
この世にはわからないことがたくさんあるわ。人間にだってわからないことがあるぐらいなんだから。
なにがおきても不思議じゃない。せいぜい心を強く広くゆっくり持つしかないわね。
とはいえ、この群れがこんな形で終わるとはね……」
「みょんの気のせいかもしれませんけど……殺された群れ長からなにか霧のようなものが立ち昇りませんでしたか?
「え?……いわれて見ればそんな気もするけど」
「その霧はあの赤黒いドスの体に吸い込まれていったように見えました」
「みょんは注意力があるわね。……最初、あの赤黒いドスは群れを奪うために挑戦しに来たと思っていたわ。
もしかすると、群れとはべつのなにかを奪いに来たのかもしれないわね……。群れ長が持っていたなにかを……。
実はね、赤黒いドスが現れる少し前、群れ長の様子がおかしかったの。
聞いてみても何も答えてくれなかったけど」
「そんなことがあったんですか……。群れ長はなにか知っていたのかもしれませんね」
「まあ、これ以上考えても何もわからないでしょうね。ぱちゅたちはあまりに小さく、知らないことが多すぎる。
……ぱちゅはもう群れから出て行くつもりだけど、みょんはどうするつもり?」
「みょんは群れに残ろうと思います。みょんは群れ長に忠誠を誓いましたから……」
「そう、惜しいわね」
「あっ、最後にひとつだけ! あの赤黒いドスが再び現れることはあるのでしょうか?」
「あくまで根拠のない憶測だけども……ぱちゅたちが生きているうちにはもう会わないような気がするわ。
あの悪魔のような魂を持ったドスとはね」
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そんな炭酸飲料があったね -- 2011-08-21 14:17:56
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最終更新:2010年04月04日 13:03