ふたば系ゆっくりいじめ 1253 飼い主としての

飼い主としての 4KB


小ネタ ちょっとシモの表現があります


右手のリードを弄びながら、何とはなしに空を見上げると、真っ青な空が広がっていた。
少し前までの肌寒さも影をひそめ、ぽかぽかとした陽の光が体に心地よい。
もう半そででもいいくらい――というのは流石に言いすぎか。
小春日和、散歩日和。
こんな日は気分も大らかになろうというものだ。
「おにいしゃん! ゆっくちおねがいしゅるよ! きゃわいいれいみゅがおねがいしゅるよ!」
媚びるように体をくねくねさせるれいむの、いきなりの『お願い』とやらを聞いてやる気になったのも、この陽気のせいだろう。
甘い顔をするのはよくないのだろうが、こんな気持ちのいい日にわざわざ目くじらを立てるのも馬鹿馬鹿しい。どうせ「あまあまちょうだいにぇ!」とかなんとか、そんなところだ。たかが知れている。
ちょうど俺のポケットには食べ物が入っている。――あいにく甘いものではないが。
散歩中いつでも与えられるようにと、ペットフードを持ってきているのだ。甘い飼い主だと自分でも思うが――まあ実際、何事にも俺は甘いのだろう。
リードをいじりながら、俺はれいむに尋ねる。
「お願い? 何だ?」
「ゆふふ~ん! ききちゃい? おにいしゃんは、きゃわいいれいみゅのおねがいをききちゃいの?」
「……もう帰るぞ?」
少しだけカチンときてしまった。
右手をひねり、弛んだリードを手首に巻く。そしてれいむから顔を背けると、
「ゆわわっ! ゆっくちごめんにぇ! ゆっくちしていっちぇにぇ!」
慌てた様子のれいむは、飛び跳ねながら、揉み上げを器用に上下させはじめた。――いわゆる『愛で派』ならイチコロの仕草だろう。
「……で、お願いってのは何なんだよ」
いっそ無視しても良かったが、この辺が俺の甘いところだ。
「ゆっ! あにょね! じつは、れいみゅが――」
あっ、と思った時には、れいむが大きな影に圧し掛かられていた。
「ゆびゃあああああああっ!? やめちぇ……やめちぇえええええっ!!」
「うわっ、ちょっと待て! 待て!」
言いながら、俺は右手のリードを軽く引いて、千切れんばかりに尻尾を振りながられいむにかぶりついているポチ――俺の愛犬――を制止した。
「なんでいぬしゃんがいるにょおおおおおおっ!? いぢゃっ……いぢゃいいいいいいいっ!! れいみゅのきゃわいいおかおっ! おきゃおがあああああっ!?」
れいむは、そこの草藪の中で排泄していたポチに気づかなかったらしい。入れ違いに少し離れた草藪から出てきたから仕方ないのかもしれないが、それでも俺の手にあるリード――もちろん、ポチにつながっている――を見ればわかりそうなものだ。――いや、ゆっくりにそんな事を言うのは酷か。
「ポチ、待て! ――よーし、いい子だ」
ポチは咥えていたれいむを放し、俺に向き直った。
なおも尻尾を振りながら、何かを期待しているような目で俺を見上げるポチ。俺は腰をかがめ、その小さな頭に軽くチョップした。
「拾い食いは駄目だって言ってるだろ? 病気になっちゃうぞ?」
ポチは――犬は、甘いものも、ちょこまかと動く物体も大好きだ。そんな彼らにとって、ゆっくりは格好の遊び相手なのだろう。それはわかる。ましてやポチはまだ仔犬。遊びたい盛りだ。
しかし、だからといって好き勝手に遊ばせるわけにはいかない。おもちゃにするだけならともかく、下手に口に入れられでもしたらことだ。野良ゆっくりなんて不衛生の塊だし、糖分の取り過ぎだって怖い。今日び、飼い主たるもの、自分だけでなくペットのメタボにも注意しなくてはいけないのだ。
俺はポケットからペットフード――犬用ジャーキーを取り出し、小指の先ほどにちぎって、ポチの口に運んでやった。
尻尾を振りながら満足そうに口を動かすポチの頭を、わしわしと撫でてやる。
「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」
俺たちの足元で、れいむは小刻みに痙攣していた。両目は潰れ、いびつに開かれた口と泌尿器からは、だらしなく砂糖水を垂れ流している。
ポチに噛まれたその柔らかい体は、右上から左下にかけて袈裟懸けにぱっくりと割れて、中からは餡子が漏れ出していた。まるで石榴のようだ。
素人目にもわかる――これはもう駄目だ。死ぬ。
そう思った俺は、最期にれいむに尋ねた。
「れいむ、『お願い』って何だったんだ?」
「……ゆ゛っ……もっどゆっくち、しちゃ……かった……」
そう言ったきり、れいむは動かなくなった。
もっとゆっくりしたかった――。
それが俺への『お願い』だったのだろうか。――いや、それはないか。
ともあれ、もうどうでもいい話だ。野良ゆっくりの『お願い』なんて、たかが知れている。
俺は左手に下げたトートバッグからスコップを取り出し、れいむの死体を拾った。そのまま草藪に入り、ポチのフンも拾う。
そしてそれらを、同じくトートバッグに常備しているエチケット袋に突っ込んだ。
れいむは放っておいても良かったが――ゆっくりの死体なんて珍しくもない――ポチのせいでこうなってしまった以上、そういうわけにもいかない。
フンの回収と同じ。言ってみれば、これは飼い主としてのマナーというものだ。


(了)


作:藪あき



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感想

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  • 見ず知らずの野良のくせに「ききちゃい?おにいしゃんは、きゃわいいれいみゅのおねがいをききちゃいの?」だと…!
    一瞬で地獄見せられてもおかしくないレベルのウザさなのに、優しいお兄さんだ。 -- 2011-01-21 22:17:35
  • ゆっくりが飼いかとおもってだまされたよww -- 2010-07-25 04:34:35
  • ポチは名犬だなぁ!
    偉いぞ!とっても!!
    -- 2010-07-17 22:33:45
  • 犬よくやたw -- 2010-07-17 13:13:51
  • NICE DOG -- 2010-07-12 13:11:20
最終更新:2010年05月25日 17:01
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