ふたば系ゆっくりいじめ 183 ミント

ミント 10KB



ぎゃくたい薄く
すっきりできず
にんげんでずっぱりです
それでもよければどうぞ




【ミント】

ハーブは手入れをしすぎると育たないと、祖母は教えてくれた
でも手入れを怠っても強い葉が育ちすぎて
けっきょく庭がダメになってしまう。

だから綺麗な庭を持っている人は
それだけで魔女と言われた時代もあるんだよと

寂しそうに笑いながら
育ちすぎた根と葉を手入れしていく。

祖母の綺麗な庭に並ぶハーブ
アーティーチョーク、オレガノ、キャラウェイ、エルダー
クレソン、ソレル

綺麗に株分けされた、季節を無視して並ぶ
ビニールの天蓋の庭で
祖母がいつも間引いていた
嫌われ者のハーブが

私はとても好きだった


  *   *   *


 直径約八ミリ前後の小さな珠を
水飴を満たした硝子の容器にふたつずつ落としていく
丁寧に取り出した傷ひとつない小さな珠は
水飴の水面に落ちると、もがくように数秒かけて水面を突き破って

悲鳴を上げるようにとろとろと

とろとろと沈んで

やがて同じ大きさの珠が積み上がった海底に跳ねて一部になる。
未練がましく上がる小さな気泡のつぶが涙のように見えるのを
私以外の誰が知るだろう?

シャーレに残る珠をまたふたつ摘んで
手の中で壊してしまわないように慎重にやさしく
水底にたどり着くまでを、シャーレの中が空になるまで続ける。

最後のふたつが幾らか嵩を増した水底に混ざって
涙のような気泡が水面で音も立てずに消えたのを見届けてから
栓をして指紋をふきとり、常温の扉の向こう
No.36のラックに仕舞い込む。
セラーの中には同じ円筒状の硝子容器が半分ほども詰まっている。
本当なら硝子扉の型を置きたかったけれど
急な来客に備えて仕方なく冷蔵庫のような趣の標準型を選んだ

流石にこの中身を見られたら、言い訳のしようがない
苦笑しながら扉に鍵をして

どれかの容器の中で、流れない涙の音を想った


  *   *   *


金具で固定した口蓋に、ゴム手袋をした手を差し入れて

思い切り

もちろん手加減を誤らないように

曳く

「ごっごぎ!!がばッか゛か゛か゛か゛゛!!!!!!」

「ふぅ」

いま後頭部を土の中に沈めて身動きが取れないままの状態で
舌を真上に曳かれて唾液で溺れているのが
おとついみんなの仲間入りをしたシングルマザーのかわいそうなれいむ。

いままでよっぽど辛い目に逢ってきたのか
二日優しくしてあげるだけで汚い言葉を口にする事もなくなった。
連れていた仔れいむ達には可哀そうな事になったけれど
もうすぐ生まれるお胎の中の新しい生命のためにも、悲しみを乗り越えて欲しい。

空いた左手で、その隣のまりさを

優しく

もちろん手加減をしすぎないように

押し潰す

「…っ…………!!!」

彼女は半年前ここに来た時、雨に打たれて半分ほど溶けていたから
苦心して溶けた部分をそのままに、中身をむき出しで体を治してあげたら
声を出すことも出来なくなってしまった。

それでもこうして力を入れてつぶしたり
勢いよく叩いたり熱したりすると体を震わせて反応する

大丈夫、まだ生きている
ひたいの蔦も形は少し悪いけど元気な赤ちゃんを育んでいる。
この子の赤ちゃんはお店に出せないけれど
その分如雨露のご飯にしているので無駄にはなっていない。

たぶんまりさに子育ては出来ないだろう
半分壊れたまりさの餡子を継いで生まれてくる子どもたちは
蔦に実っている状態でも障害を持っていることが分かるほど
いびつな畸形をしているけれど
でもそれは別に悲しむことじゃない
もうすぐ生まれてくる子どもたちは、生まれた瞬間にはまりさと一緒にいることができる。
「あかちゃんはゆっくりできる」と言葉を喋れる仔たちは口をそろえて言うだろう
だからたぶんそれは、とても「ゆっくりできる」事だと思うから

半年前から二日置きに赤ちゃんを生んでいるまりさはとてもゆっくりしていると思う。


ズッシリと重い錻力(ブリキ)の如雨露を
分厚いミトンをした両手で抱えてほんの少しだけ火にくべる。

「あ゛つ゛い゛や゛め゛て゛ぇ゛こ゛ん゛なのとかいは゛なありす゛には゛っ」

こうして温めてあげると、如雨露は勢いよくカスタードを吐き出す
最初のころはやり過ぎて如雨露いっぱいに
ギッシリとこびりついた炭の手入れが大変だったけど
今は丁度いい温度で如雨露を取り出すことができるようになった。

「え~っと…」

程よく温まった如雨露を抱えて、あたりを見回す。
今身軽なのは…ぱちゅりぃが昨日子供を流産して身軽だったはずだ

「こんどこそ、元気な赤ちゃんを産めるといいね?」

温かいカスタードの焼ける甘い匂いを立てながら
ごぽごぽとカスタードを漏らす如雨露をぱちゅりぃの地面に露出している部分に突き立てる。

ジュウゥウゥゥゥゥゥゥ…

「むッギゅゥゥゥゥ、ごぼ、ゴボボボボ」

子宮から溢れたクリームと、焼けた煙を立ち昇らせて
力なく少量の生クリームを吐き出して意識を失う

ここのゆっくりもずいぶん数が増えて、百を超えようとしている

温度が下がってガタガタと震えだした如雨露をまた温めるために火元に戻りながら

そろそろ如雨露の中身も変え時かなぁ、と思った



  *   *   *



「ごめんくださーい!」

「はいはいはーいー!」

3時を過ぎたあたりから表のお店が忙しくなる
錫のベルがひっきりなしに鳴って学校帰りの学生さんや
ご近所の奥さまがお店に来たことを教えてくれるようになる
…とまではいかないのだけど、一度来てくださったお客様は
二度三度と通ってくれると自負している

ただこういうお店の常として暇な日も少なくないので
今日は奥で細かい作業をしていて、あわてて飛び出てくる羽目になった

本日最初のお客様は私も通っていた近くの高校の女生徒さんたち
うち二人は常連で、オドオドと後をついて入ってきた子だけがリボンタイの色が違う

「(一年生かな…?)」

部活の後輩を連れてきてくれる、というのは
経営者的にも、OGとしても結構嬉しい
入ってくるなりガラスケースにかぶりついたポニーテールの少女が

「今日はぱちゅりぃある!?」

「きのう5匹生まれたので、思い切って全部調理してみました」

「やったらっき!みっつ頂戴!!あとは…みょんもみっつ!」

「みょんは冷たいのと暖かいのがありますけれど?」

「あ~、つめたいので!」

「お召し上がりは?」

「もちろんイートインでお願いします、飲み物もいつものを三つで」

財布からスタンプカードと紙幣を取り出しながら
眼鏡の大人しそうな、この娘も常連の少女が
後輩の娘を奥の喫茶スペースに案内する。

楽しそうな背中を見送りながら手早く飾りつけと抽出を済ませる

まずは赤ぱちゅりぃのエクレール・オ・クレーム
指でなぞるだけで裂けてクリームを漏らすほど柔らかい
眠ったように瞳を閉じた赤ぱちゅりぃを
丁寧に余分な部品を取り除いて低温で表面だけ軽く炙ることで
表面だけをシューのような軽くてサックリとした食感に仕上げる
最後に飼いゆっくりのバッジのように金か銀のアラザンを飾って
少し強い暗い苦みを残したショコラで成形した帽子をのせて一応の完成となる。

加工作業の過程で十分すぎるほど甘さを増したぱちゅりぃだからこそ
食材に余分な手を加えずに、そのまま味わえる当店の人気商品

一応持ち帰りのお客様には鮮度を落さないように
串を刺してからドライアイスで冷やしてお渡しするのだが

開店以来この商品だけはテイクアウトを頼まれたことがないので
本の様な専用デザインの紙箱とブックバンドの様なリボンは一度も使われたことがない。
店主としてはこだわり所だったのだけれど、残念


つづいて飲み物を、いつものというのは季節のハーブティーの事
今は夏らしくグラス系のオリジナルブレンドを冷たく用意する

適温で抽出した温かいポットから
シロップアイスをたっぷり落したタンブラーにそそぐ
本当は急に冷やすのは良くないのだけれど
夏はこの飲み方が一番おいしいと思う

コースターを用意して、しっかり汗をかくまで待たせる間に
みょんを冷蔵庫から取り出して成形する。

最後にみょんのショコラ・アイス
楽しそうに笑っている子サイズのみょんは
生まれて初めて甘くておいしいマシュマロを食べた瞬間の子みょんを瞬間冷凍した
うちだけでしか食べられない逸品で
口の中に入れた瞬間、ハーブの爽やかな香りのするホワイトチョコと
凍らせたマシュマロが口の中でとろける柔らかな食感を楽しめる
小中高生の下校のおやつから
ちょっとしたお祝いやプレゼントなどにも人気の定番メニューになっている。
姉妹品にちぇんのショコラアイスもあるが、こちらはみょんに比べるとあまり人気がない。
やっぱりハーブとゆっくりの組み合わせはもっと工夫しないといけないと思う。

基本種やちぇん・みょんは赤・子・成とサイズを選べるくらいには数をそろえられるのだけれど
上質な赤ぱちゅりぃが稀にしか仕入れられないので
月に3度店に並ぶかどうかのレアメニューになってしまっている。
リピーターのお客さんたちからは
「もっと量を増やしてほしい」と言われているが、もう少し頑張らないと難しい。

うちのゆっくりたちが子ゆっくりに成長するまでに平均1カ月
これだけの期間がかかるのは、特別なメニューにつかう子以外は
生まれた瞬間から自社農園(といっても単なる趣味のハーブ園)で
メディカルハーブやビターハーブしか食べさせていないから
食事でゆっくりすることができないからなのだけれど
だからといって、食用ゆっくり向けの飼料や代用品を与える気にはなれない。

生まれた時から徹底管理し
将来を考えながら適種・適量のハーブを与えているからこそ
ゆっくり独特の臭みや製菓には向かないほどのきつ過ぎる甘みが生まれず
育成の難しさや糖度の調整、加工の難しさはあるが
手を入れれば入れるだけ満足のいくお菓子に仕上がるのだと思っている。

カウンターの砂時計が落ち切って五分
手早いとは言い難いものの満足いく作品を用意して
楽しそうに談話している三人のもとに届ける用意が出来た。

会話の邪魔をしないように静かにキャリーを進めた。


  *   *   *



営業を終えて、ハーブを育てている方のビニールハウスに顔を出す。

「こんばんわ」

「「「おねえさんだ!ゆっくりしていってね!!」」」

ここのゆっくりたちは、とても穏やかで賢い
私が声を出すと次々に足もとに集まってくる。

大急ぎで集まったみんなにわずかに遅れて力なくぱちゅりーが這ってくる

「おねえさん、ぱちゅりーの…」

「ぱちゅりーの赤ちゃんはみんな貰われていったわよ」

ほんの少し寂しそうに、でも喜びを隠さずに身体をふるわせるぱちゅりぃ

「末っ子のあの仔、元気がなかったでしょう?」

「むきゅ、あのこはとくにしんぱいだわ…」

「貰ってくれた子もすこし緊張していたんだけど、あの仔が小さく声を上げてねとても感動していたわ」

今日のお客さんたちの話をしてあげると、ぱちゅりぃは
この上なく嬉しそうにほほ笑む。

イートイン限定サービスの水飴とカラメルの飴かけをした瞬間
眠っていた赤ぱちゅりぃが熱さに目を覚まして
可愛らしく啼いたのを見て、すごく驚いていた

「生きているんですか?」

「えぇ、そうよ」

眼を覚まして、自分の状況が分からず

目も
歯も
舌も失って

動くこともできなくなったことに気付いて

ただ身体のあちこちが痛くて

自分の部品が足りないのが怖くて

熱した蜜の様なカラメルと水飴が熱くて、死にそうで

恐怖にふるえてなみだを流すこともできない赤ぱちゅりぃは
ただ可愛いというのとはちがう、抱きしめたくなるような何かを全身で湛えていた

今日初めてゆっくりを食べるという彼女も、小さな胸で指を組んで
ため息をつくように言葉を漏らして

「なんて…」

垂直にナイフを入れる。

子供が貰われていった事に安心したように
嬉しそうに私の手にほおずりするぱちゅりぃを見下ろしながら。

「なんて惨めで哀れないきもの」

とても愛おしい、私の化物たち

「むきゅ?おねえさん?」

「なんでもないのよ、ぱちゅりぃ
みんなもゆっくりしてね?」

「「「ゆっくりしていってね!!」」」

ハーブのビニールハウスの中で生活するゆっくり、総数86匹
感じることができるのは私の与える言葉だけ

一匹残らず眼球を失って
自分たちだけでは生きていくことができない彼女たち

ゆっくりできる赤ちゃんたちを私に預けて
ゆっくりさせてくれる人間さんに飼ってもらえると信じている

『せかいじゅうのひとたちにゆっくりをとどける』夢を見る幸せなゆっくりたち

なんて惨めで、哀れないきもの

もうひとつの趣味のビニールハウスの隣で
こんなにも幸せな彼女たちは、今日も可愛い赤ちゃんたちが
幸せにゆっくりする夢を見ている。

ここは、世界で一番ではないけれど
この街でいちばん幸せなゆっくりが暮らす

【魔女の庭】



【おわり】
藤○雅風で一本
お題をクリアしつつ
直接的な虐待分は控えめに
読む人の心の中に委ねてみました

※クリアしたお題
No.11429450 アイス饅頭
No.11429512 きれいな岩斬両斬波

お題のクリアに関しての意義は認めます。

by古本屋


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感想

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  • wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww -- 2013-05-25 16:37:13
  • 幸せを夢見つつそれとは逆の運命をたどる・・・いいSSだ。赤ゆは一匹残らず不幸になってね! -- 2010-08-21 21:30:51
  • これはすごい。
    新しい、惹かれるな・・・ -- 2010-08-04 20:35:21
最終更新:2009年10月19日 19:27
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