おんもでゆっくりしよう!2 22KB
『おんもでゆっくりしよう!2』中編
オレはイライラしていた。
前回、編集ミスでナレーターであるこのオレ『観察お兄さん(神気取り)』の説明文が無くなっていた事に。
ではなく、今回絶賛観察中のこのゆっくり家族達に、である。とにかくウザイ。
観察一直線のオレが虐待鬼意三に宗旨替えしてしまいそうなウザさだ。
特にれいむ種のウザさに拍車がかかっている気がする。
かなりの数が死んだとはいえ、それでも溜飲が下がらないとは。
つーか、なんで全滅しなかったんですか?
そんな運はイラナイよ!
今回(元々は1話形式でした。)はれいむ種のウザさにも焦点を当てて観察してみよう。
「それじゃあれいむ、おちびちゃん、ゆっくりおうちにかえっておみずさんご~くご~くするのぜ…」
「つかれたよ! もうあんようごかないよ!」
「おみじゅ! おみじゅ!」
「まりさ! れいむもかわいいおちびちゃんたちも、つかれちゃってもううごけないよ!
ゆっくりしないでおみずさんさがしてきてね!」
「ゆぅぅぅ…」
でた、れいむ! なんなんですかね、コレ(笑)
身体機能に差が皆無なら、れいむの無能っぷりはその『向上心』の無さに尽きる。
ゆっくりは種毎に性格が違う。同種個体でも臆病・活発等の差異はあれど、
基本的な種の行動原理のようなものがあったりなかったり
観察対象のゆっくりについて考察するなら
まりさ:活発、蒐集癖。これはエサを集めるのに適したものだ。
ありす:活発、とかいは。まりさほどではないが、ガラクタ蒐集もする。
れいむ:(笑)
現状に甘んじることなく、よりゆっくりするためにアクティブに行動するのが今回のまりさ、ありす。
餌場の開拓、食料の選別(毒など)、とかいはなコーディネート(資材集め)、すっきりてくにっく…枚挙に暇が無い。
一方、れいむは漠然とした『ゆっくり』を求める傾向にある。
『おうた』等は他のゆっくりだって歌うし、れいむ種は狭い自分の引き出しからしか旋律を生み出せない。
特に練習らしい練習もしない。どちらかというと、ゆっくりしたおうたを聴くことの方がゆっくりできる。
あったかいおうちでゆっくりしたい。
おちびちゃんがいればゆっくりできる。
おいしいごはんがあればゆっくりできる。等など
そのどれもが受動的であり、現状の『ゆっくり』に甘んじてしまう傾向が強いのが『ゆっくりれいむ』だ。
例えば、ここに一本のアイスの棒(はずれ)が落ちていたとしよう。
例1)まりさ:「ゆゆゆっ! これはすごくゆっくりしたぼうさんだよ! まりさのだんびらにするよ!」
例2)ありす:「ゆゆっ! なかなかとかいはなぼうさんね! おうちのこーでぃねーとにつかえるわ!」
例3)れいむ:「(ぴょーん、ぴょーん、ぴょーん、ぴょーん…)」
…。たとえが悪かったかもしれない。おっと、またまた観察が疎かに。
この癖なんとしないといかんな。
「だめなんだぜ、ここはあぶないんだぜ、おうちのちかくにごーくごーくできるかわさんがあるから
そこまでがんばってほしいんだぜ…」
「ゆっ! …しかたないね。れいむはおちびちゃんたちにしんじゃったおちびちゃんたちのぶんまで
ゆっくりしてほしいよ。…おちびちゃん、れいむのおくちにはいってね! おうちかえろうね!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「ゆっきゅち!」
「やじゃぁぁっ! おみじゅ! おみじゅごーきゅごーきゅちたぃぃぃいいっ!」
「ゆっくりしないではやくしないとまたゆっくりできなくなっちゃうんだぜ!
ゆっくりしないでおうちかえるんだぜ!」
どうやら、まりさ一家は帰宅することで話が纏ったようだ。
れいむも意外と聞き分けが良いのがオドロキである。
さて、赤れいむが1匹ダダこねているがどうするのかな?
「おおきなおちびちゃんたちは、まりさのおくちにゆっくりはいるんだぜ!」
「ゆびいいいいいぃぃっ! おみじゅぅぅぅ! ゆびぃぃぃい!!」(ころころ)
※饅頭格納中…
「ゆびぃぃぃぃっ! びゃぁぁぁっ!! みじゅもっでごぃぃぃっ!!」(ころんころん)
「ふうう、おひひひゃん、ふぁふぁうひへね…」
「へいふ…ひはんははいんはへ、ほうはへふぁふぁいふぉ…」
「ふうううう! ほへんふぇぇぇ! ほひひふぁんほへんふぇぇぇ!!」
あらあら、生き残った子ゆっくり達を格納した親達はわがまま赤れいむをおいて
ずーりずーりと帰途についてしまった。
ころころ転がりながら泣き叫んでいる赤れいむはソレに気付いていない様子。
一家は、蚊に刺され苦しみぬいた末に死んでいった子達、泣き叫んでいるあかちゃん、
そして未だ毒に苦しんでいる瀕死の我が子を順に見やり、
『ふっふり…』
ぽつり、と涙と共に零し、背(?)を向けた。
すぐ傍には当然ありす一家もいたのだが、子ありすの惨状に嘆くのに忙しく、
まりさ達が去ったことには気が付いていない。
ありす達もまりさ達も、他の家族を気遣っている余裕など既に無くなっていた。
「ありしゅおみじゅごーきゅごーきゅちたいよ!」
「れいむものどさんからからだよぉ! おみずさんご~くご~くしたいよ!」
「ゆうう、れいむ、どうしよう…?」
「ゆっ! ゆっ! あがれないよ!」
ありす一家もノドの渇きに苦しんでいるようだ。
だが、帰ろうにも一家の大黒饅頭ゆっくりれいむが側溝から抜け出せない。
親れいむは側溝から抜け出そうと必死で、親ありすの問いかけにも気が付かない。
「ゆはぁ、ゆはぁああ、れいむのどさんからからになっちゃったよ!
かべさんはいじわるしないでれいむをここからだしてね!
ゆっ? これはおみずさんだよ! れいむがごーくごーくするよ!」
「ゆゆっ!? おと~さん! れいむにもごーくごーくさせてね!」
「ありしゅも! ありしゅも!」
どうやら、目の前のゆっくり皿に溜まった黒い雨水に気が付いたようだ。
ボウフラがうじゃうじゃ湧いているんだが、ゆっくり的にはお構いなしらしい。
蚊柱と同じ位、ゆっくりしていない挙動で蠢いているのだが…、水の中は良く見えないのだろうか。
側溝は成体1匹分の深さ。子ゆっくりどもはゆっくりしないでご~くご~くしたいのか
親れいむの頭を経由してコロリンと側溝の底に降り立った。
成体でも恐れをなした高さだというのに、なんとも無謀・無知・無垢…
そこは風の通り道になっているからか、子れいむたちはヒヤリとした空気に包まれる。
コンクリートの外壁はどこまでも続いており、フタの抜けたこの場所から少し先は
キチンと天蓋があり、『ュゥゥゥゥゥ』と暗い音を黒い洞から発していた。
ゆっくりの目線からすれば、天井が暗くざわめく灰色の異空間に迷い込んだような感覚だ。
そして目の前にはなんだか不気味な雰囲気の肌色のオブジェ。この中で子ありすは…。
「ゆううううっ! なんだかこわいよ! ゆっくりできないよ!」
「ゆぇぇぇぇえん!」
降りた子ゆっくり達は、その強烈な違和感に怯えはじめた。
「ゆっ! おちびちゃんたちもおりてきちゃったの?
ゆふふ、しかたないね。いっしょにご~くご~くしようね!」
子ゆっくりでは皿の縁に届かないので、親れいむは口移しで子ゆっくり達を潤す。
大量のボウフラと共に…
「ごーくごーく! ごーくごーく! しあわせー!」
「とかいはなおあじね!」
「れいみゅも! れいみゅもぉぉぉっ!」
「れいむ、こっちにもとかいはなおあじのおみずさんちょうだいね!」
側溝の縁で待機していた親ありすと赤ゆっくり達もおみずの催促。
「ゆっ! わかったよ! ご~くご~く! ご~くご~く!」
「ゆゆっ! いじわるしないでおみずさんちょうだいね!」
「ちょ~らいにぇ!」
「ひゅっひゅひ、ひひゅほ! ぴゅ~~~~~~っ!」
「ゆわぁ~~~! あめしゃんだぁぁ!」
「ゆゆっ! これはおみずさんだよ! とかいはなしゃわ~さんね!
さすがありすのだ~りんだわ!」
「ぴゅ~~~~~~~っ!」
「ゆきゃっ! ゆきゃっ!」
親れいむは口に含んだおみずを、上段の家族に向けて緩やかに噴出した。
蚊に刺された蔓の処理といい、今のしゃわ~といい、このれいむは何かと気転が利くようだ。
父ゆっくりになると、れいむ種でも少しは変わるのだろうか
渇きを潤す黒いしゃわ~(ボウフラ入り)にご満悦の一家。
黒い虹が一家の行く末を暗示するかのように架かっていた。
「ゆぅぅぅ~~~… でられないよ…」
一通り水遊びを楽しんだ一家はようやく、もう帰ろうという結論に辿り着く。
しかし、未だ親れいむの側溝脱出は成らず、残された一家は困り果てていた。
子れいむたちは親れいむのおつむに取り付いてず~りず~りと登頂し、なんとか脱出できた。
「れいむぅぅぅ、だいじょうぶなのぉぉ!?」
「ゆゆゆ! …しんぱいごむようだよ! きっとべつのばしょさんからでられるよ!
ありすたちはゆっくりしないでさきにおうちにかえってね!」
「ゆ~~~ん… わかったわ、れいむ。ゆっくりしていってね!!!」
『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっきゅちちちぇいっちぇにぇ!!!』
子ゆっくり達を連れてその場からず~りず~りと去る親ありす達。
「ゆっ、おか~さん! あかちゃんがないているよ!」
「ゆっ!? ……いきましょう、おちびちゃんたち。ゆっくりしないでおうちにかえりましょうね…」
「ゆぅぅぅ…」
置いていかれた赤れいむを捨て置き、帰路に着く。
自然は厳しい。ゆっくりだって生きている。
時折見せる、こうした野生動物然としたドライな反応もゆっくりの魅力のひとつだ。
おうちにかえろう。おうちにかえってゆっくりしよう。
きょうはおちびちゃんたちがいっぱいゆっくりできなくなってしまった。
しんでしまったおちびちゃんのぶんまでいっぱいゆっくりしよう。
おいしいごはんさんをぽんぽんいっぱいむ~しゃむ~しゃしよう。
まいにちいっぱいす~やす~やしてす~くす~くおおきくなろう。
ゆっくりしよう。
おんもはこわいこわいだったけれどあしたもがんばってゆっくりしよう。
「ゆっ! ゆっくりしないででぐちさんをさがすよ!」
ゆっくり皿のあった場所は格子があり、『下流』の方に行くしかない。
意を決したれいむは暗闇の洞に吸い込まれるように消えていった。
遊歩道には呻き声と赤れいむの嘆きだけが残っていたが、
元々小さな体から発せられる声は、少し強くなってきた風に容易く掻き消される。
「か゛ゆ゛…う゛ま゛。゛」
「ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…ゅ゛っ…。 ……。 …。
ゅ゛っ…。 ……。 …。」
「ゆびいいいいい!! ゆっ!? おきゃーしゃんどきょぉ? どきょぉぉぉ!?」
今まで宥めてくれていた親れいむの声が無くなっていることにようやく気付いた赤れいむ。
不信に思い、辺りをキョロキョロ見渡すが、そこにはゆっくり出来ないオブジェと化した家族達、おともだち。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆぁぁぁぁ! うわあああああああ!!」
(○)(○)
あれだけ喧騒に包まれた遊歩道も静かになった。
散らばったゴミクズを足で寄せ集め、遊歩道のベンチの脇にあるクズ篭に放り込みながら
これからの観察プランを練ることにする。
『ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…』
…側溝から時折聞こえるこの音。大体見当はつくが、中はどうなっているのだろうか。
それにさっきまでは静かだったのにまた聞こえてきた。
次の観察プランはコイツでいくか。
「ず~り、ず~り! ゆっ! ゆっ!」
暗闇の側溝の中、親れいむは窮屈そうに這っていた。
天蓋はバスケットボール大の体の頭頂部分にピッタリで跳ねることが出来ないのだ。
じまんのかわいいおりぼんが擦れて汚れてしまっているのも知覚出来ていたが、
今は一刻も早くここから脱出して、ありすたちに合流しなければならない。
くきさんを生やした身重のありすひとりとおちびちゃんでは、帰り道は不安である。
生き残ったおちびちゃんもまだいっぱいいるのに、おと~さんのれいむが守らねば!
「まっててね! ありす! おちびちゃん! れいむはゆっくりはやくだっしゅつするよ!」
『ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…』
「ゆ! ゆぅぅぅ… またきこえてきたよ」
この音。いや、声。
どれくらい進んだのか判らないが、だんだん近づいてきているような?
既に風の音ではないというのは、れいむでも判った。
こころなしか、ゆっくりの声に似ている?
「ゆ~~ん! だれかいるのぉ~? いるならおへんじしてねぇ~! ず~り、ず~り!」
呼びかけながらまた暫しのず~りず~り。
「ユウウウウウ… ユウウウウウ…」
「ゆゆゆ!?」
いた。
ゆっくりだ。
天蓋ブロック端に刻まれた取っ手が明り取りの窓の役割を果たし、ボンヤリと照らす。
そこにはボロボロのれいむがいた。
おりぼんも、おはだも、かみさんも、きっとおくちのなかのは(歯)やしたさんもボロボロだろう。
(なんだかゆっくりしてないれいむがいるよ…)
観察お兄さん的に側溝の中の状態も看破できるのだが、
観察お兄さん的好奇心で、れいむに姿を見られないよう留意しながら蓋を外してみる。
差し込んだ外の明かりにボロれいむ&親れいむがそれぞれ別な反応を示す。
いや、根底は同じなのかもしれない。
「ゆぴぴるっ… おんもぉ? …ゆぴるぱっ!」
「ゆゆゆ!? あかるくなったよ! でぐちだよ! れいむのるーとせんたくはただしかったよ!」
側溝の1ブロックを外すと、れいむとボロれいむが丁度露出した。
光を浴びたボロれいむの様子が何かおかしいと感じたれいむは、ボロれいむがかなり衰弱しているということに気が付いた。
「ゆゆっ! だいじょうぶ!? だいじょうぶ!? ゆっくりしてる!?」
「ゆぴぴる! ぴぴるんぱ! ぱぴゅるぴゅん!」
「ゆっくりしてね! ゆっくりしてね!」
「ぴぴゃらっぷ! ぴゃぁん! ぴゃぁん!」
ボロれいむがどんな状態か、簡単にいえば、体内で大量のボウフラが暴れているのだ。
天蓋を外したおかげで半透明の眼球から体内に光が差し込み、負の走光性だか走地性よろしく
ボウフラが一斉に活動したのだ。その眼球内にもギッシリとボウフラが詰まっていたが。
それにしても、いったい、体内でどうやって呼吸しているのだろうか。
ボロれいむは一昨日、側溝に迷い込んだ若れいむだった。
はるさんを迎えひとりだちした矢先、同じく巣立ちをしたかっこいい若れいむ2・若ありす1姉妹に出会い、
一緒に遊んでいるうちに遊歩道に近づいてしまった。
針金に引っ掛って落下し、その時出来た傷口に卵を産み付けられ、体内でボウフラが孵化してしまったのだ。
傷の痛みと、一緒に落ちて分断されたおともだちのあまりにゆっくり出来ない最後に
散々泣き叫び衰弱していたため、あちこち刺されても大した反応も出来ず、
ゆっくりできないなにかから逃れるように這いずりながらココまで辿り着いた。
オレはゆっくりと蓋を元に戻した。
「ぱぴぷぺっ… ユウウウウ…」
「ゆっくりしてね! ゆっくり! (ゴゴゴ…)ゆゆっ?! おんもさんまってね! ゆっくりしててね! ゆぅぅぅぅ…」
予想通りってのも、案外つまらない。
くぐもっていく2匹の声を聞きながらオレは考える。
この親れいむも直接ボウフラ入りの水を飲んだし、ボウフラ自体もあんこに耐性があるようだ。
頭頂部も擦れて禿げ上がり、もうしばらく這いずれば中身が露出するだろう。
それにこの先には…
「ゆぐぅぅぅ?! でぐちさんがなくなっちゃたよぉぉお!? でぐちさんやめてね!!
れいむをおんもにださせてね! それからしまってね!!」
「ゆううう… れいむは、いきるよ…
いきて、ありすとおちびちゃんとしあわせ~にくらすんだよ…
ず~り、ず~り」
「ュゥゥゥゥゥ… ュゥゥゥゥゥ…」
「ュゥゥ…」
「ゆっゆっ!? すすめないよ! どおして!?」
側溝には要所毎に格子が設えてあった。
格子の向こうからもあの声が渦巻いて聞こえてくる。
そして、ゆっくり出来ない羽音も…
オレはありすを追いながら携帯で蚊について調べていた。
展望台は電波塔の役割も果しており、自然豊かなこの公園内でも感度は良好だ。
どうやら『ゆ擦り蚊』とかいうのがいるみたいだが、ソレと今回のは少し体色が違う。
コイツの口吻は赤く、翅はステンドグラスのように七色に煌いているのだ。
『紅魔蚊(ん)』ゆっくりの死体を媒介に繁殖する蚊だそうだ。
ゆっくりに含まれるれみりゃ・ふらん等の因子が起因して発生するらしい。
吸血するもの同士、気が合ったってことなのか?
ゆっくりのあんこしか吸わず、日の光が苦手。
繁殖力・成長速度はゆっくり並み。etc.
ちなみにボウフラは『ぼうふりゃ』とも『ぼうふらん』ともいわれるそうだ。
正直、どうでもいい。
ゆっくりが介入したことで、残念ながら全てにおいて元の蚊よりグレードダウンした生物である。
歴史的にみても、ゆっくりなんぞよりも蚊が優れた生命であることは知れたことなのだが
ゆっくり同士でもこのようなグレードダウンは往々にして起こりうる。
例えば、れいむの場合
ゆっくりの基本的な身体差は無いが、れいむ種は小柄な個体が多い。
これはエサ集めを幼少期や成熟期に他の個体に依存した結果、最終的な摂取量がまりさ種やありす種に及ばないためだ。
もし、れいむ種が父役を果たした場合でも、拾得量や栄養面での問題。
少ないエサを子(特にれいむ種の仔にだが)に優先的に分け与えるため似たような結果になる。
アクティブに動く個体は『かり』の際にも少なからず食料を摂取し、運動の作用で健康なものが多い。
経験を積み重ね、それに基づいた野生ならではの知性と閃きも見せる。
小柄な個体が産む仔は、比例して小さく貧弱であり、餡容量も少ない。
ゆっくりの特徴として、劣性の遺伝情報も色濃く受け継がれてしまう。
野生で生きるものの母体としては、れいむ種などではなく、まりさ・ありす・ようむ等、
とにかくれいむ以外のゆっくりが望ましいのだ。
これは、現代で言うところのラバ・ケッティの関係に当てはめると判りやすいかもしれない。
♀ウマに♂ロバを掛け合わせると、体の大きな♀ウマからは
馬の力強さ、ロバの頑丈さ、粗食に耐える素晴らしい能力を持った
『ラバ』という動物が生まれる。寿命も比較的長い。
♀ロバに♂ウマを掛け合わせると、体の小さな♀ロバからは
馬の臆病さ、ロバの矮小さ、粗食に任せた大食らいの役立たず
『ケッティ』という動物が生まれる。体が小さいので労役には耐えられない。
これらは一代雑種と呼ばれ、子孫を、仔を成せない個体として生まれる。
だがこれがゆっくり同士、母体がれいむ、もしくはでいぶならどうだろう。
どんな個体でも大量に仔を成すし、れいむ同士(苦笑)の『つがい』も珍しくない。
上記の例をゆっくりに当てはめて鑑みれば、現在のゆっくりを取り巻く状況も少しは改善されるのかもしれない。
そんな事を考えながら散策していると、丘の手前の草むらでなにやら騒いでいるありす一家に追いついた。
「ゆぷりぴゅん!」
「ぷりんぱ!」
「おぢびぢゃんどおじぢゃっだのぉぉぉおおおっ!!」
ぼうふりゃ水を浴び、飲んだチビどもが悉く奇声を上げて転がっていた。
時刻はまだ14時。絶好のぴくにっく日和の丘の草原なのだ。
子ゆっくりのおめめから入った光は小さな体内を蹂躙し、ソレを受けたぼうふりゃもあんこを蹂躙する。
その苦痛は想像を絶するだろう。
わずかに生き残ったチビども(それでも『いっぱい』いたのだが)は、総てが正常に立つことが出来ず
その丸っこい身体を弓なりに反らせ、ぬるぬるの気味の悪いアーチを形作っていた。
「あぎゃぢゃぁっ!! あぎゃぢゃっ! じっがりじでぇ!!
おうぢがえろーね゛っ! もうずぐそごだよぉ!!」
「ぴぴゃらぁぁぁっ!! ぴゅん! ぴゅん!」
べぇろべぇろと子を舐めてあやす親ありす。
赤れいむ・赤ありすは、アーチのバランスが崩れ横倒しになるとコメツキムシの如くパチンと跳ねる。
普段の跳躍の倍以上の高度から粘液濡れの地面に叩きつけられ、またゆっくりとブリッジの態勢をとる。繰り返しだ。
よく見ると体表面がボコボコと不規則に波打っていて、体内でぼうふりゃが暴れていることがわかる。
体内のところどころから小さな突起が飛び出て、手を振るようにピンピンと動く。
コレも逃げ場を求めて体外に出ようともがくぼうふりゃだった。
幼体の場合、半透明の眼球を経由せずとも、その体全体で光を受けるだけで十分だ。
手を陽にかざすと光が透過するように、皮の薄い子ゆ・赤ゆも同様に体内を光が通る。
紫外線の影響もその身体内部全域に受けるので、成体近くになるまでの日光浴は程ほどにするのがゆっくり飼育の常識。
因果関係は不明だが短時間でも効果が出るので、それでも楽観視は出来ない。
野生の個体が良くする、実ゆっくりといっしょにひなたぼっこ→いねむり等は、高確率で先天的な障害を招くのである。
ちなみにれいむ種の多くは日光浴を好む傾向にある。
そう、れいむ種はその行動規範の悉くが実利を成さない。それはゆっくり全般に云えることでもあるのだが…
れいむ…(笑)
「ぴぴりぎぃぃぃいっ! ぎぴぎぎぃいいぃぃぃっき!」
子ありすはよほど苦しいのか、アーチが捻れ、まるで固絞りの雑巾の様になっている。
絞られて出てくるのは水とは形容しがたいヌルヌルの黄ばんだ粘液だけだ。
そして、ギリギリと音立てるかのごとく捻れた子ありすが瞬時に弛緩し、
カラカラの体がぺしゃん!と粘液溜まりに沈む。
苦しみにもがき捻れすぎて水分を絞りきってしまったらしい。
おまけにゆっくりゲージ残量もほぼゼロ。えんぷてぃっ!だ
まあ、ぼうふりゃに殺されたようなもんだから脱水赤れいむよりはマシかな。
なかなかとかいはな死に方だし、やったね! 雑巾ありす!!
パサパサ雑巾ありすはその体全体を使い水分を吸い上げるが、既に意思の宿らない身体に給水される液体は
その皮をグズグズに変化させてしまう。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! だんでだのぉぉぉおお!!」
「ぴききぃいぃっ! ぴぃぃいいぃいっ!」(ぱぴゅ!)
こちらは子れいむ。全身を捻った結果、眼球が破裂してかわいい音を奏でる。
破裂と共に飛び出た大量のぼうふりゃが日の光に晒され、粘液ダレと子れいむの亡骸の上でピンピン跳ね回る。
欲張って他の子よりも大量に黒水を飲んだ結果であった。
「ゆひっ! ゆひっ!
…ゲッ!! ォゲェェェ!!!
ゲェッ! ォァゲッ!!
ウェォォォオッ! …ッオ!」
その光景に親ありすも堪らず嘔吐してしまう。
水っぽいソレはパシャパシャと親ありすの前を流れ、のた打ち回る仔ゆっくり溜まりにまで到達する。
既に赤ゆっくり達も捻れており、その姿は一手間施したパスタ、もしくは何かの幼虫を髣髴させた。
どちらか一方の先端にはモッサリと毛が生え、鮮やかな飾りのようなものがヒラリと揺れていたが
親ありすの消化液も兼ねた吐瀉物が触れると、雪解けの如く消えてしまった。
「でいむぅぅぅ… ありず、どうじだらいいのぉぉぉぉ… ぽうやだよぼほぉぉ… ゆっぐりじだいよぉぉぉ…」
))))
「ゆうう?」
今度は頭上の蔓に成った実ゆっくりが高速で振動し始めた。
3つの実のうち、本体側の2個の実(ありす・れいむ)がカッと目を見開き、苦悶の声をあげる。
子を宿したゆっくりが何か摂取すると、まずはその孕み子を経由する。
親ありすが飲んだ水、そのぼうふりゃが実ゆっくりまで到達し、徐々にその中身と摩り替わっていったのだ。
「おぎびぎゃん! やべで! おぢびぎゃんぼゆっぐりさぜて! ありずのおぢびじゃっ!」
)))) (ぷつん! ぽとり)
「ゆゆゆっ! あ゛りずのおぢびぢゃん! うばれだよ! ゆっぐり゛! ゆっぐりじでいっでねぇぇ!!」
振動実れいむが蔓を離れ、地面に落ちた。
振動具合がしゅっっさんの前兆とは程遠いものだったとはいえ、ありすは無事におちびちゃんが生まれてくれたのだと思った。
こんな状況なのに、こんな状況だからこそ生まれてくれた。流石ありす。自分はゆっくりしているとかいはなありすなのだ。
おちびちゃんがうまれたよっ!!
れいむ! ゆっくりしないではやくきていっしょにおちびちゃんとす~りす~りしようね!
かっこいいれいむにそっくりなかわいいかわいいおちびちゃんだよ!
(パカッ)
「ゆ゛っ?」
実れいむの上半身がパックリと縦に割れ、体内から白い虫が2匹、のっそりと出てきた。
6本の脚で逆さにおりぼんに掴まって身体を支え、重力の力を借りて翅を下方に垂らす。
体が黒ずみ、翅が本来の七色を放ちはじめた。
ワァ、こうまかの羽化だぁ。
「う~☆」(羽音)
2匹の蚊はその場で翅を振るわせアイドリングを済ませると、
示し合わせたように同時に飛び立ち、日の光を避けるために近くの草むらに消えていく。
イソイソとした所作だったが、その姿は中睦まじい姉妹に見えなくもなかった。
「お、おぢびぢゃっ! だんでおぢびぢゃんがわれじゃうのぉぉぉぉ???!!!」
残骸はぐるりと白目を剥き、割れていない下半身はだらりを舌を出して弛緩している。
やがて上半身が徐々に左右に垂れ下がり、無事だった下半身もキレイに真っ二つになってしまう。
水分もトンでしまっているようで、割れた惰力でボソリ…と崩れる。
羽化の最中に実ありすも地面に落ちていたが、こちらは何の反応もなくただただ、黒ずんでいくだけ。
親ありすは割れた赤れいむが衝撃的で、実ありすが生まれ落ちたことにも気付かなかったし
実ありすも消化液と残骸たちに紛れて融けてしまった。
「おうち… かえらなきゃ… れいむがまってるよ…」
ぼろぼろの蔓に残ったのは実れいむ(1)だけ。
辺り一面ヌルヌルした粘液とピンピン跳ねるぼうふりゃまみれ。
先ほどまで蠢いていたチビどもも、ありすの消化液の影響で全て体が半壊状態。
生き残ったおちびちゃんは実れいむを残してひとりもいなくなってしまった。
「どぼじでこんなことに…」
ず~り、ず~り。ありすは振り返らない。
残った実れいむが落ちないよう、ゆっくり、ゆっくり、あいするれいむのまつおうちへと這う。
「このおぢびぢゃんは… ごのおぢびぢゃんだげでも… ありずはぜっだいまもっでみぜるよ…」
本日、太陽の光を一身に浴びた実れいむ。
おひさまさんのひかりがあたると、きらきらすけてきれいなおちびちゃん。
きょうはいっぱいひなたぼっこしたね!
あとはおうちでゆっくりしようね!
おいしいごはんでゆっくりしようね!
ありすのつくったきれいなあくせさりーさんでおしゃしようね!
おとーさんれいむからぶゆーでんをいっぱいきこうね!
ゆっくりしようね!
ゆっくり!
展望台横の茂みに消えていく親ありすを見定め、巣の場所に中りをつける。
さて、次はまりさ一家だ。
帰宅済みなのか、枝葉で施錠された『おうち』の横にオレは腰を下ろした。
続きます。次回は後編。
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- ぼうふりゃキモいなw
ってゆーか、飲み込んだのに餡子変換されないのか? -- 2018-01-03 11:49:12
最終更新:2009年10月20日 15:38