田舎の少年たち 10KB
*初投稿です
『田舎の少年たち』
序、
巣穴の中からひょっこりとまりさが現れた。口にはオールを咥えている。いわゆる水上まりさだ。まりさはずりずりと音を立てながら巣穴の目の前にある川辺に這って行った。そして頭をふりふり、帽子を器用に脱ぐとそれを水に浮かべた。この種のまりさは帽子に乗って水の上を移動することができる。それが“水上まりさ”の名の所以なのだが。
「まりさー!ゆっくりまってね!わすれものだよっ!」
巣穴から別のゆっくりの声がする。大きな声だ。先ほどの巣穴から飛び出したれいむは、ぴょんぴょんと元気よく跳ねながらがまりさの元へと駆け寄った。口には葉っぱでくるんだ何かを咥えている。
「ゆゆっ!まりさはあわてんぼうさんだねっ!おべんとう、わすれていってるよ!」
「ゆぅ…れいむはしっかりものなのぜ」
帽子から降りたまりさはれいむから葉っぱにくるんだお弁当を受け取ると、れいむの頬にちゅっちゅした。
「ゆゆぅん…」
頬を染め、くねくねと身をよじらせるれいむ。まりさは最愛のれいむのそんな愛らしい仕草に満足気な微笑みを浮かべると、
「じゃあいってくるのぜっ!」
「ゆっくりきをつけてねっ!!」
口に咥えたオールを使ってこれまた器用に川の向こうへと漕ぎ出して行った。と言っても川の幅はそれほど広くない。まりさが向こう岸に着き、森の中へと元気よく跳ねて行くのを見届けると、れいむは巣穴の中へと戻った。
「おきゃーしゃん!」「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」「ゆゆっ!しゅーりしゅーりしゅるよ!」
二匹の赤れいむに一匹の赤まりさ。まんまるな目がたまらなく愛しいれいむとまりさの自慢のちびちゃんたちだ。一様にれいむの元へと跳ねてくると、れいむの体に自分たちの頬をすり寄せた。
「ゆぅ…おきゃーしゃん…あっちゃかいよ…」「しゅーりしゅーり…しあわちぇぇぇっ!」
三匹からの深い愛情をその身いっぱいに感じながら、れいむは穏やかに微笑えんだ。朝ごはんはまりさが出かける前に済ませてある。れいむの仕事はまりさが帰ってくるまでの間、子供たちの面倒を見てあげることだけだ。
「おきゃーしゃん、れーみゅ、おきゃーしゃんみたいにおうたさんがうまくなりちゃいよ!」
赤れいむの言葉を皮切りに、一斉におうたの練習の催促を始める子供たち。れいむはにっこりと子供たちに笑顔を向けると、深呼吸して歌を歌いはじめた。練習、練習と言っていた子供たちは母親の奏でる優しいメロディに包まれ、いつのまにか静かな寝息を立てていた。
れいむとまりさは、幸せだった。それこそ世界で一番ゆっくりできているゆっくりだと思っていた。
一、
餌を求めてぴょんぴょんと飛び回るまりさ。すばしっこくてゆっくりの中では秀でた運動能力を持つまりさ種にとって狩りはお手の物だった。狩りを始めて僅かな時間で帽子の中には木の実や芋虫、蝶々などれいむや子供たちの大好きな食べ物が集まっていた。
「ゆぅ…これだけあればあしたのあさまでみんなでゆっくりすることができるのぜ…」
帽子の中の食糧を眺めて、ゆっくりと一息つく。そして木に寄り添ってれいむが朝に渡してくれたお弁当を取り出した。くるまれた葉っぱの中から出てきたのは、三匹の芋虫。それもとても大きな芋虫だ。まりさは嬉しそうにその芋虫を口に運ぶ。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせぇぇぇぇっ!!!!!」
美味しさのあまり、それに加えてれいむの深い愛情を感じたまりさは目に涙を湛えながら歓喜の声を上げた。
それが、いけなかった。
「おい、今こっちでゆっくりの声がしなかったか?」
「したした!探そうぜっ!ちょうど探検にも飽きてきたし!」
森に遊びに来ていた少年たちが、まりさの声を聞きつけ、まりさを探し始めたのだ。
「ゆ?ゆゆっ?」
普通、こんなところに人間は入ってこない。少なくとも今までこの森で人間に会ったことはなかった。まりさは両親から人間にだけは関わってはいけないと何度も教わっていた。人間に捕まるとどんなに恐ろしい目に合わされるか、聞かされながら育っていたまりさは恐怖で思うように体を動かすことができなくなっていた。
「どこだ~?」
「こっちだと思うんだけどな」
草を掻き分ける音がだんだんと近づいてくる。まりさは意を決して帽子を咥えると脇目も振らずに逃げ出した。そして、
「いた!ゆっくりだ!!!もう逃げてる!!!」
「追え追え~~!!」
二人の少年はものすごいスピードでまりさの背後に迫ってくる。帽子を咥えながらのせいで思ったより早く跳ねることのできないまりさは、青ざめた顔から大量の冷や汗を流し、
(ゆっくりできないよ~~!たすけてぇ!!れいむ!れいむ~~~~!!!)
帽子から集めた餌が落ちていく。まりさは餌を諦め、帽子をかぶり直すと少しだけ跳ねる速度を上げた。やがてまりさの目の前に川が広がった。巣穴が対岸に見える。まりさは帽子を素早く水に浮かべると、手際良く川を渡り始めた。少年たちは初めて見る水上まりさの行動に、呆気に取られて立ち尽くした。振り返り、それを見たまりさは
「にんげんさん、こっちこないでねっ!ゆっくりしないでしんでねっ!!」
叫ぶ。少年たちは冷えた目でまりさを見据えると、川の中に入ってきた。
「どぼじでがわざんに゛ばいっでぐる゛の゛おおぉぉ??!!!」
この川は、浅い。泳ぐまでもない。ばしゃばしゃと勢いよく水しぶきを上げながら追ってくる少年たち。
「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛!!!ごないでぇ!!ごな゛いでぇえぇぇえ!!!」
まだ直接危害を加えられたわけでもないまりさの顔はすでにぐしゃぐしゃだ。その表情も悲痛な叫び声も少年たちの嗜虐心を煽ることにしかならなかった。
やがて岸にたどり着いたまりさは、帽子をかぶり直すとオールを吐き捨て一目散に巣穴の中に逃げ込んだ。少年たちはまりさの巣穴を確認すると、下卑た笑みを浮かべゆっくりとそこに近づいていった。
二、
ものすごい形相で帰ってきたまりさにれいむはただただ唖然としていた。泣きじゃくるまりさには普段のような自信も力強さもない。戸惑うれいむだったが、そこはまりさの最愛のパートナー。頬擦りしながら、
「…まりさ?…ゆっくりおちついてね…?すーりすーり…」
「ゆゆっ?!…ゆぅ…れいむ…れいむぅ…」
只事ではない母親の様子を見た子供たちは、瞳を潤ませそんな両親の姿を怯えながら見つめていた。赤れいむもまりさの元へ恐る恐るやってくる。
一瞬だった。
赤れいむは“何か”に包まれるとまりさの視界から消えてしまった。状況が飲み込めないまりさ一家に巣穴の外から赤れいむの悲鳴が聞こえてきた。
「ゆんやああああ!!きょわいよぉぉぉ!やめちぇぇぇ!ゆっくちおろちちぇえぇぇ!!」
まりさとれいむはお互いの顔を見合わせると、揃って巣穴の外に飛び出した。
そこにはまりさを追ってきた少年たちがいた。左手に赤れいむが握られている。手の中で赤れいむがうぞうぞと動くのがくすぐったいのか、少年は赤れいむの真っ赤なリボンをつまむと無防備になった顔にデコピンを食らわせた。
「ゆびゃっ!!!」
少年の指先を支点に赤れいむが前後にゆらゆらと揺れる。額が少しへこんでいる。赤れいむは大粒の涙を流しながら
「ゆぴゃああああああ!いぢゃいよぉぉぉ!!おぎゃーしゃああん!!!だぢゅげでぇぇ!!」
必死の懇願は少年たちにとっては笑いのネタにしかならない。はらはらと泣き崩れるれいむに反して、まりさは泣きながら頬をふくらませて少年たちを威嚇した。
「ゆっくりちびちゃんをはなしてねっ!!いたがってるからやめてあげてねっ!!!」
少年たちは全く動じない。当たり前だ。手も足もない顔だけの饅頭が口の中に空気をためて“ぷくぅ”したところで何も怖くない。まりさはなおも、
「ゆっくりはなべびゅえ゛ぇぇっ??!!!!」
少年のつま先が顔の中心に深くめり込み、まりさはそのまま宙を舞った。そして巣穴の入り口付近の壁に叩きつけられ、跳ね返ってくる。歯が数本折れ、叩きつけられた際の衝撃のせいか破れた皮から少量の餡子がはみ出ていた。
「ま…までぃざぁぁぁあぁぁ!!!!」
変わり果てたまりさの姿にれいむが駆け寄る。赤れいむは言葉も出せずにただ、しーしーを漏らしているだけだ。勝ち誇る少年たちに向き直り、
「どぼじでごんな゛ごどずるの゛お゛お゛お゛?!!」
「おきゃーしゃん!ゆっくちできにゃいよぅ!!」「ゆえぇぇぇ……」
巣穴から赤れいむと赤まりさが跳ねてくる。振り返るれいむの青ざめた表情とは裏腹に少年の一人がれいむを飛び越え、あっさりと二匹の子供たちを捕まえた。最初に捕まった赤れいむ同様に泣き叫び、まりさとれいむに助けを求めてくる。
力のない二匹にはどうすることもできなかった。怯えながら二人の人間を睨みつけることぐらいしかできなかった。逆効果にしかならないと理解できずに。
三、
捕えられた三匹の子供たちは少年の一人が持っている。二匹の赤れいむはリボンをつかまれているだけだからいいが、赤まりさはおさげをつかまれているため、泣き叫び続けていた。泣き叫びながらも、帽子が落ちないようにしているあたり、飾りへの執着は大したものだ。
もう一人の少年はひたすら、まりさを蹴り続けていた。バスケットボールぐらいの大きさだが、重量はあまりないため蹴り飛ばすとサッカーボールのような感覚を覚える。壁にぶつかって跳ね返ってきたまりさをまた直接蹴り返す。この少年はいいサッカー選手になれるだろう。
「おでがいじばずぅぅぅ…ばでぃざに…びどいごど…じない゛でぇぇ…」
少しずつ叫び声も上げなくなり、原形を留めているかも怪しくなってきたまりさのボロボロの姿を見せつけられ、れいむはただただ泣いていた。子供たちを捕まえている少年は
「なぁお前だけずりーよ。俺にもやらせろよ」
「いいけどこいつもうボロボロだし、そっちのリボン付いてる奴やれば?」
「ゆゆうっ??!!!」
まりさが刻みつけられた痛みと同じ痛みを味わう恐怖に、れいむはカチカチと歯を鳴らした。その様子を見た少年は、
「こいつは張り合いがなさそうだからいいや。それよりこの、ちっこい奴で遊んでいい?」
「好きにしなよ」
三匹の子供たちが一様に震え上がる。汗とも涙ともわからない液体でぐしょぐしょだ。そのくせ、怯えきった目だけは本人たちの意思とは無関係にキラキラしている。少年は二匹いた赤れいむの一匹を手の中に入れると、
「何段、行くかな~?」
サイドスローで赤れいむに強烈な横回転をかけて川の中にぶん投げた。
「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛??!!!!」
「ゆべっ! ぴゅぎっ! ぎゅぶ! ゆ゛! ぅ゛… …! …っ!」
れいむの悲痛な叫びをバックコーラスに、水面に叩きつけられた赤れいむが勢いよく跳ねあがり、また水面に叩きつけられ、跳ね上がる。そして最後はとぷん…という音と共に川の中に沈んで行った。
「よっし!」
れいむには何が“よし!”なのか理解できない。
「へへへ!汚い帽子を手に入れた!!」
状況の処理が追いつかないれいむの後ろでもう一人の少年が声を上げる。手にした帽子もそうだが、それよりも。…顔中のいたるところが破れ、飛び出かけた目玉に大量の餡子を吐き出し、事切れている最愛のまりさがれいむの視界に入った。血の気が引く。動くことすらできない。
「この帽子の中に、そのちび共を入れてやろうぜ」
合意した少年が赤れいむと赤まりさを帽子の中に投げ入れる。…死臭付きの。
「ゆぎゃあぁぁ!ゆっくちできにゃいよぉぉぉぉ!!!」
「おぼうしいや゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「失礼な奴らだな、お前らの親の帽子なんだぜ?」
赤れいむと赤まりさの跳躍力では帽子の外に飛び出すこともできない。少年たちは、帽子を水に浮かべると、二匹を見送った。流されていく帽子の中から最愛の子供たちの悲鳴が聞こえる。
「ちびちゃん!!!ちびちゃあ゛あ゛あ゛ん!!!!」
「安心しろよ、お前も一緒だぜ?」
「ゆゆ゛っ!?」
持ち上げられる。そして…
「…っらぁ!ゆっくり魚雷!!!」
れいむの体が宙に投げ出される。眼前に迫るは帽子の中で震える赤れいむと赤まりさ。それが最後にれいむの見たものだった。凄まじい水しぶきを上げ、見事帽子に着弾したれいむは親子仲良く、川の底へと沈んで行った。
終わり
*駄文、失礼しました。
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- サイコパスなガキどもだな -- 2023-04-26 19:44:02
- 少年
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ヽ( ˘ω˘ )ノ <うるせぇオフトゥン
| / ぶつけんぞ!
UU
(⌒⌒)
川
/⌒ヽ
⊂(` Д ´)訴えてやる!
/ ∪彡
しー-J ||
Σfニニ/ ̄
ペシッ!!
-- 2016-08-14 05:17:16
- ガキは死ね -- 2015-08-20 15:10:59
- こいつらはサッカー選手より鬼意山に向いていると思う。
でも鬼意山は邪悪な心99%だろうけど、子供は純粋な心99%なんだろうな。 -- 2012-05-15 21:53:15
- 魚雷wwwww糞ワロタwww -- 2011-10-11 18:59:39
- >>ゆっくりしないでしんでねっ
わざわざ挑発するなよww
ゆっくり水切りとは凄いな。一旦平べったく押し潰しからやればもっと飛距離が出そうだw -- 2010-10-04 19:56:08
- 子供だからこその陰鬱さのないさっぱりとした虐待もいいもんだね! -- 2010-09-17 12:53:56
- ガキじゃなくて鬼意山だったら最高 -- 2010-09-09 12:06:58
- 喰うよりも虐待だよ。 -- 2010-08-05 09:56:45
- 最初の10行で踏み殺したくなったわ~
面白かった -- 2010-07-25 21:36:48
- ゆっくり水切りとゆっくり魚雷(魚雷というより大砲?)の表現が最高に面白かった
本当、ゆっくりは良いおもちゃだねw -- 2010-07-09 05:29:23
- 野生は喰えよ。もったいない。 -- 2010-07-01 00:30:42
- GJ! -- 2010-06-21 21:39:22
最終更新:2009年10月24日 08:52