ふたば系ゆっくりいじめ 338 水上の弾幕

水上の弾幕 7KB


『水上の弾幕』





序、


 川を挟んで両陣営に分かれ、対岸の敵陣に向かって石を投げ合う子供の戦争ごっこ遊び。

 現代の感覚からすれば危険極まりないこの遊びは少年の父が幼少期の頃に流行ったらしい。流行った
と言っても間違いなく父の周りに集まる者たちだけでの遊びだったのだろうが。

 そんな父が死んだ。周りの大人たちは少年を見ては可愛そう、可愛そうと繰り返すばかり。悲しくない
わけないけれども、少年は寂しくはなかった。父の少年時代の日記帳を見つけ、それを読んでいくことで
父を身近に感じることができたからだ。

 少年は父の日記を夢中で読んでは、父が少年と同い年ぐらいの頃にやってきた遊びを真似していった。

 そうすることで、父が隣で笑ってくれているような気がしたからだ。

 さて…この“石投げ”と呼ばれる遊び。時は変われど子供の戦争ごっこ遊びへの興味と関心は不変で
ある。


「今日は絶対に負けないからなっ!」


「この間やられた腕のアザの分、絶対にお返ししてやる!」


「負けたほうは勝ったほうの言うこと、一週間聞くことな!!!」


 そして…どちらからともなく、石つぶてによる合戦の火蓋が切って落とされるのだった。



一、


 水上まりさの一隊が川を下っていた。実は最近になって上流の生息域にれみりゃの群れが現れ、そこ
で静かに暮らしていたゆっくりの一群を壊滅寸前にまで追いこんでいた。そこで帽子に乗って水の上を
移動できるまりさ種…つまり水上まりさは、命からがら逃げおおせることに成功したのだ。

 れみりゃは飛行能力を持っている。川を逃げるまりさたちを追うのは可能であったが、その前に他の
ゆっくりたちを食い散らかすのに手いっぱいだった。


「ゆへへっ!まりささまたちはゆっくりのえりーとなのぜっ!」


「さすがのれみりゃもまりささまにはてがだせないんだぜっ!!」


 仲間を見捨てて自分たちの命があることを理解していない、饅頭の一団はすぃ~すぃ~と川の流れに
身を任せ、仲間たちと暮らしたゆっくりプレイスからどんどん遠ざかっていく。初めのうちは後方から
聞こえてくる、れいむやありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょんなどの悲鳴と絶叫に落ち着かない様子だ
ったが、聞こえなくなると安心したのか急に態度がでかくなる。


「ゆっ!このままあたらしいまりささまたちだけのゆっくりぷれいすをさがすのぜっ!!」


「しゃがしゅのじぇっ!!」


 裏切りの水上まりさ種の中には、赤ちゃんまりさも数匹いた。二匹の成体まりさと、五匹の赤まりさ。
赤まりさのほうが多いのは、両親が自分たちの命と引き換えにおちびちゃんを川に逃がしてあげたから
だ。

 もちろん、そんなことは既に記憶が曖昧になっている。都合が悪いことは忘れるに限るのだ。


「おちびちゃあああああああん!!!!」


 一匹のまりさが叫んだ。見ると、大きな岩に座礁してそこに取り残された赤まりさが親まりさのほう
を泣きながら見つめていた。大切な帽子はすでにどんどん下流に流されている。親まりさはオールを懸
命に漕ぎ、赤まりさの元へと近づくが…水上まりさの帽子は一人乗りだ。赤まりさが親まりさの帽子に
飛び移ろうものなら、即座に沈没…親子仲良く溺死決定だ。


「おか…しゃん…」


 震える赤まりさに、親まりさは泣きながら


「ゆっくりしんでねっ!」


「どぼじでぇぇえぇぇえぇえええぇっ??!!!!」


 親まりさがどんどん小さくなっていく。取り残された赤まりさは岩の上で声を上げて泣いた。いつし
か岩の周りに水鳥たちが集まり始める。満足に逃げ場のない岩の上に赤まりさが一匹。否、水鳥にとっ
ては餌が一つ。壮絶な争奪戦が始まった。


「い゛ぢゃ゛い゛よ゛っ!!やべぢぇ!!や゛べちぇえ゛え゛!!!!!!」


 前から後ろから、右から左から無数の嘴が赤まりさの柔らかな顔を啄んでいく。


「ゆ゛びゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」


 一羽の水鳥の嘴が赤まりさの目を抉り取った。絶叫する赤まりさ。大きく開いた口の中に嘴を滑り込
ませ赤まりさの体内を蹂躙する水鳥もいた。


「どでぃじゃん…ゆっぐぢぃ…やべぢぇに゛ぇぇ?!」


 顔の下半分を失い、かろうじて残った右目だけをキョロキョロ動かしながらなおも必死の懇願を続け
る赤まりさ。それでも水鳥たちはやめてはくれなかった。意識が遠のきかけた赤まりさを一羽の水鳥が
咥えて飛び立った。巣に持ち帰るつもりなのだろう。無論、餌として。


「まり…じゃ………おしょ…りゃ…………りゅ、……みちゃ…」


 お腹を空かせた水鳥のヒナたちは、親の帰りを喜ぶだろう。餌を持ってきてくれた親への感謝を忘れ
まい。



二、


 急流に差し掛かったところで今度は一匹の赤まりさがバランスを崩し、帽子から転落した。最後尾に
いたので誰も気づかない。気づいたところで助ける術などありはしないが。


(ゆぎゅびゅびゅびゅ…おびょ…れりゅぅ…)


 水中では呼吸ができない。手も足もないのでただ沈むしかない赤まりさ。水面は遥か上であり、太陽
の光が反射してきらきらと輝いている。と、次の瞬間、赤まりさの視界は真っ暗になった。そしてすぐ
水の中に戻され沈んで行く。


(ゆ゛っ?!ゆびゅぅ?!)


 ゴボゴボと泡を吐き出しながら目を見開く赤まりさ。そこには自分を丸飲みできるくらいの魚がいた。


(ゆ゛ぼがぼごぼぉ…っ!!!!)


 ただでさえ息ができなくて苦しいのに、この魚。赤まりさを吸い込んでは吐き出して、また吸い込ん
では吐き出して遊び始めた。魚の中には餌を吸ったり吐いたりして遊ぶ種がいる。ウキが沈んでもすぐ
に合わせてはいけない理由がここにある。

 それはともかく、吸ったり吐いたりを繰り返された赤まりさの体は既にボロボロだ。水が皮を容赦な
く溶かし、少しずつ原形を失っていく。


(ゆぼっ!…びゅふぅうう!…ゆぎょっ?!………ふびゅぇ!!!)


 赤まりさの周りに無数の小魚たちが集まってくる。そして、崩れ落ちていく赤まりさの破片をパクパ
クと吸いこんでいった。


(ゆ゛ぼあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?!)


 一気に口の中の空気を吐き出した赤まりさはそのまま溺死した。薄れゆく意識の中で自分の体が少し
ずつ、少しずつ失われていくのを感じた。

 小魚が赤まりさを食べている間、大きな魚は寄ってくる他の魚を追い払っていた。小魚たちは、この
親であろう大きな魚への感謝を忘れまい。




三、



 やがて、川の流れは緩やかになり、開けた場所に出た。川の両岸には森も山もないが、壁のような地
面がずっと続いている。たまに大きな石の柱があり、その下をくぐる時に上を見上げると、やはり石の
天井が見える。見たことないものばかりだが、ここに危険はなさそうだ。

 帽子の上で深呼吸をし、


「ゆっくり~~~~!!!」「ゆっくち~~~~~!!!」


 歓声を上げた。ここに来るまでに二匹の赤まりさが犠牲になっているがもうどのゆっくりもそんなこ
と覚えていない。どころかそのうち一匹は誰にも気づかれずに溺れ死んだわけだが。


「ゆげぇっ?!」


 突然、一匹のまりさが悲鳴を上げた。顔の右側に激痛が走る。涙目になりながら右のほうを向くと、


「おごおっ!!!」


 顔面に拳大くらいの石がめり込んだ。そのままバランスを失い転落しそうになるがさすがは成体の水
上まりさ。なんとか踏みとどまる。しかし、今度は後頭部に激痛。振り返ろうとしたときに下あごに石
がぶつけられた。


「い゛だい゛よ゛お゛お゛お゛!!!!」


 赤まりさの前だろうが何だろうが、プライドをかなぐり捨てて大声で泣き出すまりさ。辺りを見回す
と、


「ゆぎぃッ?!」
「いちゃああああい!!!」
「ゆ゛んや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
「おがーじゃああああん!!!」


 みな、一様に悲鳴を上げている。そしてまりさは見た。川の両岸に何人も人間が立っておりヘラヘラ
笑いながら無数の石を投げ続けているのを。ぼちゃん、ぼちゃんという音に混じり、饅頭に直撃した石
の鈍い音が響く。

 それは左右から高速で攻め立てる高密度の弾幕だった。無数の石つぶては容赦なくまりさたちを襲い、
顔を弾き飛ばし、帽子を破り、目玉を押し込み、おさげをちぎり、一匹…また一匹と川底に沈んでいっ
た。


「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!ゆ゛っぐり゛や゛べでね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!!」


 無論、逆効果だ。ヒットしたら悲鳴を上げるなんて最高の的だ。しかも動きが鈍い。

 前歯を折られ、あにゃるにめり込み、まりさたちの体のありとあらゆる箇所に石がぶつけられた。

 まりさの額に大き目の石が命中した。鈍い音とともにぐらつくまりさ。よろめいたまりさの後頭部に
石が激突し、また前のめりになる。気づいたらまりさ一匹だけになっていた。自機狙いの高速弾が驚き
の精度でまりさを襲い続ける。

 帽子の上で無情なダンスを踊らされ続けた結果、帽子が少しずつ浸水していきすでに絶命したまりさ
は帽子と共にゆっくり沈んでいく。まりさの姿が水面の下に消えるまで少年たちは石を投げ続けるのを
やめなかった。

 少年は父にとても楽しい遊びを教わった。直接教えてもらうことはできなかったけれども、少年は少
年の父への感謝の気持ちを忘れまい。







終わり



*駄文、失礼しました。



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感想

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  • 水上まりさにもゲスが居るのか・・・・・・。 -- 2011-03-14 19:51:44
  • 親から子へ伝わる遊びっていいよね~ -- 2010-07-25 22:45:25
  • 考えてみりゃ、川や池に饅頭が浮いてれば、魚に喰われるのは当然。 -- 2010-07-19 05:41:10
最終更新:2009年10月24日 17:15
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