れいむ・マスト・ダイ(後編) 31KB
まりさは遂に逃げ出した。
いくら故郷でも、ゆっくりできない群れなど真っ平だ。
まりさの横には、まりさ、まりさ、まりさ、まりさ。
珍しいまりさの番と、その子供達である。
逃げ出しまりさは息を切らし、跳ねる。
家族はその俊足に、必死で食らい付く。
「もうちょっとだよ、みんな。もうすぐ、でぐちだからね」
ゆっくりの行動原理とは、『常に最短距離』である。
逃走経路一つ選ぶにも、安易な方法しか考えない。
群れの外れにある、木々の間が大きく開いている道。
いつもはちょっと大掛かりな狩りなどに使われる。
そんなお馴染な出口を脱出に利用する。
実にゆっくりらしい、逃走術であった。
案の定。
5匹のまりさのあんよが止まった。
「にゃんなのこれはぁぁぁぁぁ!」
「ゆっくりできなぃぃぃ!」
まりさ達の前には、見覚えのある棒が無数に立てられている。
そして、その一番手前にある棒には、2匹のゆっくりが刺してあった。
みょんと、ちぇん。
群れの中で最も強い種と、最も素早い種が、串刺しになっている。
生きたまま、そうされたのであろう。
激しくもがいた跡が、辺りに撒き散らされた体液として残っている。
強い死臭が漂う。
ゆっくり達が、うんうんより嫌う、最悪の匂いだ。
よく注意して嗅げば、さらに発見することだろう。
刺されている全ての棒から、おびただしい死臭が放たれていることを。
もちろん、そこまでの余裕が饅頭生物にあるはずもない。
第一印象から早くも、まりさ親子は狂乱の態を見せていた。
「あっばばばばばば!」
「ぱぴぶべぼぉぉぉ!」
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
早くもショック死する赤ゆが出た。
こんな時、大人になったまりさが取る行動はひとつである。
「ゆっくりにげるよ!」
「まっで、ばりざぁぁぁ!」
「おどうじゃぁぁん!」
「どぼじでぇぇぇぇぇ!」
「おさ、まりさのかぞくが、にげだしたみょん」
洞窟の中。
長まりさは、みょんから密告を受けていた。
岩壁の側、棒がうず高く積まれた一角がある。
その前に長が立つと、おもむろに手頃な1本を引き抜く。
洞窟の外。いい天気である。
長まりさがみょんと一緒に洞窟を出る。
かつて英雄と呼ばれ、今や正式に長となったまりさ。
しかし、それを見るゆっくり達の目には、脅えしか見て取れない。
長が棒をくわえ、巣を出る時。
それは、残忍極まる制裁が執行される時である。
「そこのちぇん、ありす。いっしょにくるんだぜ」
ビクッとすくみ上がる2匹。
今日もまた、同族殺しを強要されるものが出た。
密告みょんが、薄ら笑いを浮かべる。
舌舐めずりをする様など、ゲス丸出しである。
逃走に失敗したまりさは、とにかく跳ねていた。
必死丸出しの形相で、群れの方へと戻っていく。
「『ししゅう』さんは、ゆっくりできなぃぃぃ!」
どうも、逃亡中であるということを忘れてしまったらしい。
家族も同様に、父まりさの後を追っている。
速度に付いていけなかったのか、子まりさのあんよが破れる。
疲労とストレスでそのまま動けず、また1匹脱落した。
「もっちょ、ゆっくり・・・・・・」
残り1匹となった子まりさは、ちゃっかり母の帽子に乗っている。
布を甘がみしつつ寝息を立てていて、中々に器用である。
道は、見晴らしの良い一本道である。
外れからでも、巣やゆっくりの様子がよく分かる。
何故、そんな道を選んだのか。
考えなしにもほどがある。
「見つけたんだぜ・・・・・・」
長まりさが現れた。
横にはみょん、ちぇん、ありすがいて、実にゆっくりしていない。
「ゆわぁ!」
実にまぬけで愛らしい悲鳴をあげる逃亡饅頭。
飼いゆならば、そこそこに可愛がられたかもしれない。
しかし、待ち受けていた運命は、あっけない最期であった。
ぷっと長が吐き出した棒が、逃げまりさを貫く。
いつぞやとは反対に、一撃で中枢餡を貫く。
大口を開けたままの表情で、父まりさは絶命していた。
「ゆぅぅ! まりさのまりさがぁ!」
母が驚いた衝撃で、寝ていた子まりさが落下する。
あんよから着地した子供は、寝起きのご挨拶を披露する。
「ゆっくちしちぇいっちぇね!」
みょんが飛び出し、子まりさのあんよを噛んだ。
お決まりの悲鳴を聞くと、ちぇんとありすは、すくんだ。
長まりさは、饅頭に刺さった棒を引き抜く。
そしてそれを、2匹のゆっくりの前に、転がした。
「ちぇん、ありす。のこったまりさを、せいさいするのぜ」
れいむの時は、皆で一斉に行った。
だから、勢いでやれた部分が大きい。
しかし今回は、2匹きりである。
しかもありす種は、まりさ種を好む傾向にある。
「お、おさ。ありすは、できないわ」
「ゆぅ? なにをいってるんだぜ?」
「おさ、ありすはきっと、れいむのなかまなんだみょん」
みょんが、長まりさの方を振り向いて、言った。
いつのまにか、子まりさの死体はなくなっている。
「ゆぅ。そうなんだね。だから、おさのめいれいを、きかないんだね」
「ちがうわ、ありすはただ、まりさを」
「れいむはつぶす!」
言い放ち、長まりさはありすの上に圧し掛かった。
飛び散るカスタード。それは、ありすの生命だ。
「・・・・・・さぁ、ちぇん。ちぇんは、どうするの?」
「ちぇんは、ちぇんは・・・・・・」
ちぇんは、棒をくわえた。
それからのことは、言うまでもない。
母まりさへの制裁が行われている間、みょんは忙しそうだった。
まりさやありすの死体をくわえて、ある場所へ運んでいる。
外れにある、かつてれいむ種が身を寄せ合っていた巣。
そこが今では、みょん専用の死体置場となっていた。
みょんは、そこにまりさとありすを詰め込む。
そして、長まりさに一礼して、置場の中に入った。
未だ震えているちぇんを促し、長は群れへと帰る。
死臭が生々しい棒は、取り合えず、現場に放置しておいた。
「むきゅ。ごくろうさま、おさ」
巣としている洞窟では、ぱちゅりーが待っていた。
今ではすっかり、副官が板に付いている。
「ぱちぇのさくせんは、だいせいこうなんだぜ」
「みんな『ししゅう』はこわいものよ」
死臭がたっぷり染み付いた棒を、群れの出口に立てておく。
これほど、ゆっくりを阻む門は存在しない。
それに遭えば、冷静でいられるゆっくりは少ない。
中には、未だ棒に刺さっているゆっくりが見えるものもいるらしい。
念の為、群れを取り囲む茂みにも対策を立ててある。
れいむ虐殺の時の、返り餡を浴びた覆面。それを、ばら撒いてあるのだ。
群れを死臭で囲み、逃走を阻止する。
ゆっくりらしからぬ知恵ではあるが、全てぱちゅりーが献策したものである。
「すべては、おさのためよ」
「ゆぅ。たよりにしてるんだぜ」
「きょうは、だれをつれていったの?」
「ちぇんと、ありすだぜ。ありすは、つぶしたんだぜ」
「そう。わたしは、ちぇんのようすをみてくるわ」
「もうゆっくりできなさそうだったら、『すっきりようゆっくり』にするんだぜ。
ゆっくりがへってきてるから、どんどん、おちびちゃんをふやすんだぜ」
「みんな、よろこぶわ」
ぱちゅりーと入れ替わりに、みょんが入ってきた。
みょんに満ち足りた顔をして、ゲップなどをしている。
死体置場に入った後は、いつもこうだった。
何をしていたのか、想像に難くない。
長まりさは、それを咎めたことなどない。
密告にかけては、このみょんの右に出るものはいないのだ。
ぱちゅりーもみょんも、長まりさをゆっくりさせている。
ゆっくり以上に大切なことなど、何もない。
「ちぇんは、れいむと、むしさんをおいかけてたことがあるわ」
「それは、たしかなんだぜ?」
「これが、その『しょうこ』よ」
ありすが差し出したもの。
それは、虫や木の実を、葉っぱに包んだものであった。
「ゆぅ。これはたしかに、『しょうこ』かもしれないんだぜ」
「ちぇんを、せいさいしてね、おさ」
「かんがえとくんだぜ」
ありすは、頭を下げて洞窟から出る。
その目には、妖しい光が浮かんでいる。
「・・・・・・だ、そうだけど、ほんとうなのぜ?」
長まりさの後ろから、隠れていたちぇんが顔を出す。
その顔には、ありありと憤怒の炎が見て取れた。
「うそっぱちなんだよー!」
「ゆぅ?」
「ちぇんが、ありすをふったから、さかうらみしたんだよー」
「でも、ありすは、ちぇんが、れいむのなかまだといってるのぜ?」
「ちゃんは、もっともっとたくさんの、『しょうこ』をもってくるよー!」
「ほんとうなのぜ?」
「あしたまでに、おさにとどけるよー。そうしたら、ありすをせいさいしてねー」
「わかったのぜ」
「これで、すっきりーぐるいのありすも、おしまいだよー。わかるよー」
えらい勢いで、ちぇんも洞窟から飛び出した。
一部始終を見ていたみょんは、実に楽しそうだった。
「『しょうこ』は、じつにゆっくりできるみょん」
「そろそろ、ひとふゆこせるくらいあつまったのぜ」
「ここはひとつ、みょんも『しょうこ』を、おくりましょうかみょん」
「・・・・・・いらないのぜ」
近頃、『証拠』という名目で、餌を長まりさに贈るゆっくりが増えている。
要は、ワイロである。
ある密告されたゆっくりが、脅えながら長を訪ねたことがあった。
そして、自分の巣から持ってきた餌を差し出し、こう述べたのである。
「ばりざを『みっこく』したありずが、れいむのなかまなんでずぅ!
おざ、どうぞ、これをうけとってくだざいぃ!」
泣きながら訴えるまりさは、額を土にこすり付ける。
その様子よりも、長の目は、山盛りの餌に引き寄せられた。
「これは、なんなのぜ?」
「ぞれは・・・・・・」
「ああ、わかった。これは『しょうこ』なんだぜ?」
「ゆ?」
「れいむとありすが、なかまだった『しょうこ』なんだぜ?」
「ぞ、ぞ、ぞうでずぅ。『しょうこ』ですぅ!」
まりさを密告したありすは逆に制裁された。
これ以後、静かに『しょうこ』の慣習が広まっていったのである。
「ゆっへっへっへ!」
「むきゅ。おさが、そんなわらいかたするもんじゃないわ」
夕方になると、ぱちゅりーがやってくる。
群れであった事件や、個体の増減などを報告するのである。
しかし、今日ばかりは長まりさの耳に堅苦しい話は入らない。
その理由とは、洞窟の奥に高く積み上げられた、葉っぱの包みにあった。
「みるんだぜ、ついに『しょうこ』が、てっぺんまでとどいたのぜ!」
「そんなに、たべられるの?」
「なにいってるのぜ? 『しょうこ』は、あればあるほどいいんだぜ!」
冷蔵庫がパンパンになるまで買いだめする主婦のような発想である。
どうせ、いくつかは、腐らせてしまうだろうに。
「でもそんなに、しょくりょうをひとりじめして、だいじょうぶ?」
「ゆ?」
「みんな、おなかがすいて、ゆっくりできないんじゃない?」
「そんなこと、しったこっちゃないのぜ?」
「でもまりさは、おさでしょう? おさは、みんなをゆっくりさせないと」
「ぱちぇ。いいこと、おしえてやるのぜ」
「なに?」
「まりさは、おさなんかじゃないのぜ?」
「むきゅ? じゃ、ただのまりさなの?」
「ちがうのぜ! まりさは、『どくさいしゃ』なのぜ!」
ぱちゅりーが、感情を露わにしたことなど、1回もなかった。
だが、この時ばかりは、大きく目を見開いた。
「・・・・・・まりさは、『どくさいしゃ』だったの?」
「そうだぜ! おさは、みんなをゆっくりさせないといけないのぜ。
でも『どくさいしゃ』は、ゆっくりするために、みんなをつかうのぜ!」
「そう、まりさは、『どくさいしゃ』なのね・・・・・・」
「なにか、もんくがあるのぜ!」
「むきゅ。なにもないわ。
ぱちゅりーは、まりさをゆっくりさせるのが、しごとですもの」
独裁者を名乗ったまりさは、気付いただろうか。
ぱちゅりーの瞳が、先程から見開かれたままであることに。
「ぱちぇに、いいかんがえがあるわ」
「なんなのぜ?」
「まりさが、いつまでも『どくさいしゃ』でいられる、ほうほうよ」
「ゆゆ!」
急に前傾姿勢になる、独裁まりさ。
ゆっくりできそうな気配に、興味を隠しきれない様子である。
ぱちゅりーの提案は、シンプルであった。
今まで以上に洞窟にこもって、姿を見せない。これだけであった。
何を考えているのか、決して分からせない。
そうすれば、今まで以上に独裁まりさを、皆が恐れる。
密告と『しょうこ』の受付回収は、ぱちゅりーとみょんが引き受ける。
だからまりさは、ここでゆっくりしていてほしい。
餡子脳にも怪しげに映る提案である。
しかし、何もせずに『しょうこ』が集まるようになると、疑念も薄れていった。
とにかく洞窟の奥で食っちゃ寝していれば、独裁者でいられるのである。
安全な巣、大量の食料。そして怠惰な生活。
独裁まりさには、分け前を出してまで番を作ろうという意思はない。
つまり、ここにあるのは、まりさにとって完璧なゆっくりプレイスであった。
独裁まりさは、1日ゴロゴロして過ごすことが多くなった。
ただ物音には敏感で、ぱちゅりーが来た時だけは居住まいを正す。
簡単な報告を受け、『しょうこ』を受け取る。
そして、それを洞窟の奥に運んで、積み上げる。
あとはだいたい、食って、寝るだけである。
だらしなく船を漕いで、帽子がずれることもある。
その時、洞窟の中にもっと光があれば、見えることだろう。
帽子のつばの裏に、何やら書き込まれていることに。
それは、おびただしい平仮名で埋め尽くされている。
中でも一際目を引くのが、赤丸で囲まれた6文字である。
その文字とは、『どくさいしゃ』。
独裁まりさは、夢の中で、昔の自分に返っていく。
「『どくさいしゃ』?」
「そうだよ。それはこの世で一番、ゆっくりできることなんだよ。
『独裁者』になれば、群れのゆっくりは、まりさをゆっくりさせてくれるよ」
「ゆぅぅ、すごいのぜ!」
「まりさは、『独裁者』になりたいかい?」
「なる! ぜったいなるのぜ!」
独裁まりさはかつて、飼いゆっくりだったのだ。
バッチ試験などは受けなかったが、それなりにゆっくりした生活を送っていた。
しかし、もっとゆっくりしたい、というのが饅頭生物の性である。
それを見透かしたかのように、飼い主のお兄さんは語りかけたのである。
「よーし。だったら、今から言う3つのことを、覚えようね」
「まりさ、みっつまでだったら、りかいできるのぜ」
「いい子だ。ではまず、群れに入ったらどうしたらいいか教えるよ。
まりさ、これを見てごらん」
お兄さんは、ゆっくりフードをパラパラとまりさの前に撒く。
ワゴンに大量に積まれていた、安物である。
「これを口にくわえて、僕の所まで運んで来れるかい?」
「かんたんなのぜ!」
飼いまりさが、ゆっくりフードを口に運ぶ。
そして、運んだりすることなく、咀嚼した。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわ」
デコピンを受ける、まりさ。
それだけで、コロコロと転がったりする。
「だめだよまりさ。ちゃんと言うことは聞こうね」
「ゆっくり、りかいします・・・・・・」
「これは、他のゆっくりに『あまあま』を配る訓練だよ。
皆に好かれるためにすることだから、自分で食べちゃだめだよ」
「それができれば、『どくさいしゃ』になれるのぜ?」
「まだまだ。『独裁者』になるためには、あと2つのことを、やらなきゃね」
思いの外、険しそうな道に怖気付いているのか。
簡単にしょぼくれて、萎んでみせるまりさ。
「まぁまぁ。時間はいくらでもあるから、ゆっくり出来ればいいんだよ。
今日は取り合えず、一通り説明しようね」
「いいのぜ!」
「よし。他のゆっくりに好かれるようになったら、次の段階だよ。
ゆっくり達を、自分の言う通りに動かすんだ」
「ゆゆゆ? そんなことができるのぜ?」
「まりさ、君の帽子、変わったところはないかい?」
「かわったところ? ゆぅ! ひらがなさんが、いっぱいあるんだぜ!」
「君が寝ている間に、帽子のつばの裏に、台本を書いておいたんだよ」
「だいほん?」
「まりさが皆の前でそれを読めば、言った通りに動いてくれるよ」
「ほんとうなのぜ? でも・・・・・・」
「でも?」
「こんなに、ゆっくりよめないんだぜ」
「それをこれから練習するんだよ。順番通り読めるようにね」
「『どくさいしゃ』って、たいへんなのぜ」
「でも、誰よりゆっくり出来るよ」
「まりさ、頑張るのぜ!」
凹んだり息巻いたり、忙しい生き物である。
扱いやすいというか、救い難いというか。
「じゃあ、最後にやることを言うよ。
それは、他のゆっくりを、ゆっくりさせなくすることだよ」
「ゆ!?」
「まりさは、れみりゃよりも、怖いゆっくりになるんだよ。
そうすれば、皆、まりさをゆっくりさせてくれるようになるよ」
「れみりゃよりも? いったい、どうすればいいんだぜ?」
「こうするんだよ」
お兄さんは、れいむの赤ゆを取り出した。
そしておもむろに爪楊枝を、額目がけて振り下ろした。
「いちゃぃぃぃぃ!」
「おにいさん、やめてあげるのぜ。いたがってるのぜ!」
「まりさ、ここにもう1匹、おちびちゃんがいるよ」
そう言って、まりさの前に赤ゆを置く。
続いてまりさの口に、そっと、爪楊枝を含ませる。
「さぁ、僕と同じようにして見せるんだ」
「で、できないのぜ!」
「まりさ。まりさはゆっくりしたくないの?
『独裁者』になったら、今よりずっとゆっくりできるんだよ?」
「ゆ、ゆぅ・・・・・・」
「おちびちゃんも刺せないようじゃ、まりさはゆっくりできないね。
ゆっくりできない子は、うちでは飼えないなぁ」
「ま、まって、おにいさん」
「ここが分かれ道だよ。やるんだ。君なら、できる。
まりさ、目をつぶって・・・」
「ゆ・ゆっ」
「刺せ!」
「ゆぅぅぅぅ!」
成体れいむを棒で刺し殺せるようになるまで、時間は掛からなかった。
『あまあま』運びや、台本読みとは、比べ物にならない修得速度であった。
才能でもあったのだろうか。まりさは棒を自在に操れた。
遂に、槍投げのように用いる術まで身に付ける。
襲い掛かってきたレイパーさえ、一投で仕留める。
時には、一投げ2匹刺しなどの技も披露し、飼い主を驚かせた。
『あまあま』を配る方法や、台本を読み上げる順番は、実は煩雑であった。
しかし飼い主は、あくまで『3つのことの内の1つ』として教え込んだ。
そうすると、文字通りゆっくり理解することができた。
流石、思い込みの生物である。
それなりに長い年月を経て、まりさは帝王学をマスターした。
飼い主はまりさをキャリーバッグに乗せて、森へ向かう。
「いいかい、まりさ。これからは、まりさだけで生きていくんだよ」
「おにいさん、ありがとう。りっぱな『どくさいしゃ』になるよ!」
物騒な会話をしているうちに、目的地に着く。
ここは、ゆっくりの群れの外れ。まりさ野望の地である。
飼い主はバッグを開くと、中身をひとつひとつ取り出す。
ゆっくりフード一箱、白い覆面50着、大小の棒100本。
それらを手近な茂みに隠し、迷彩柄のシートで覆った。
シートには、殺ゆの際に付いた死臭が染み込んでいる。
「これで、良し。それじゃ、まりさ、ゆっくり頑張ってね!」
「いろいろありがとう、おにいさん。ゆっくりがんばるよ!」
永久の別れを済まし、まりさは群れへと跳ねる。
帽子の中には、すでに安物のゆっくりフードが入っている。
後のことは、前に述べた通りである。
野生ゆっくりは、まんまと『あまあま』の虜となる。
そして、まりさの『えんぜつ』に酔い痴れる。
実は台本の棒読みであることなんか、ゆっくりが分かるはずもない。
早い段階で、ぱちゅりーを味方にしたことも大きかった。
まりさが動きやすいように、次々に手を打ってくれるのである。
実はまりさにも、台本の中身なんて理解できていない。
ぱちゅりーは、それを理解し、応用まで考えてくれた。
かくして、れいむへの虐殺が始まる。
群れのゆっくり達は、憎悪に駆られながら凶行に走る。
しかしまりさは、れいむを憎んでなんかいなかった。
ただ、台本の通りに述べ、行動したまでだった。
台本に書かれていたならば、ありすでもみょんでも良かった。
他のゆっくりであれば、まりさでさえ良かったのだ。
「ゆふぁ・・・・・・」
独裁まりさは、大きな欠伸を立て、目を開く。
まだ半分は、夢の中だ。
視線を床へやると、いつのまにか『しょうこ』の山ができていた。
眠っている間に、ぱちゅりーが持ってきたらしい。
最近では、誰か来ても目を覚ますことはなくなった。
寝床から起きる必要もない。それでも全てうまくいく。
かつて夢見ていたことは、全て適った。
『独裁者』は、最高にゆっくりできる。
ゆっくりしすぎた結果だろう。
独裁まりさの体は、2回りほど大きくなっていた。
動きは常に緩慢であり、『しょうこ』を奥に運ぶ他、運動もしない。
あの華麗な棒さばきが、今でもできるかどうか。
それでも未だ、群れのゆっくりからは恐れられているのだろう。
独裁まりさの周りには、常に『しょうこ』が積まれている。
いつまでも、この生活が続く。
独裁者は、本気でそう思うものだ。
しかし、常にこの世は諸行無常である。
永遠にゆっくりできるものなど、何一つとして、ない。
ある日、独裁まりさは跳ね起きた。
得体の知れない感覚に、突然襲われたからである。
体の中から、穴を開けられたような未知の苦痛。
まりさには、それが一体何なのか、しばらく分からなかった。
大したことではない。単に空腹だったのである。
それさえ忘れるほど、独裁者の生活は満たされていたのである。
懐かしい感覚を思い出した饅頭は、当然、腹を埋めようと考える。
そして、積まれている『しょうこ』の山を省みた。
あるのは、岩の壁。土の床。
その他には、葉っぱ一枚落ちてはいない。
かつてあったはずの『しょうこ』の山。
今では、一切合財残ってはいなかった。
「どういうことなんだぜぇ!」
久しぶりに発した声は、怒号だった。
独裁まりさは、のし、のし、と光のある方へ向かう。
余程感情が高ぶっているのか、棒を拾うことも忘れていた。
そして、何週間かぶりに、洞窟の外に出た。
「たいようさんが、いたいのぜ・・・・・・」
まるで引きこもりのようなことを言う独裁者。
しばらく目蓋をパチパチさせて、陽光に目を慣らす。
目の前には、誰もいなかった。
かつて脅えながらも生活を営んでいた饅頭の姿が、どこにもない。
まりさは、木々や、空を見上げて確認する。
雨でもなければ、冬が来ているわけでもない。
「ぱちゅりー! みょん! どこにいるのぜ!」
返ってくる声はない。
辺りは微かな風が吹くのみである。
ここに来て、独裁まりさはようやく、完全に目を覚ました。
嫌な予感が、餡子脳をかすめたからである。
まりさは、慌てて跳ねる。
まずは、一番近くにあるゆっくりの巣穴の方へ。
独裁者は、捨てられたのではないか、と考えた。
自分だけを残して、全員、他のどこかへ移動したのだ、と。
冗談じゃない。
群れのゆっくりは、独裁者に仕えるためにあるのだ。
まりさは、ゆっくりが残っているかどうか確認するため、焦りに焦った。
焦ってもその動きは、悲しいほど衰えている。
独裁まりさが巣穴に着いた頃には、息が上がっていた。
まずは一呼吸、二呼吸置いてから、闇の方へ堂々と怒鳴りつけた。
「まりささまが、きたんだぜ! かおを、みせるのぜ!」
やはり、返事がない。
まりさは、恐る恐る、中を覗き込んだ。
ちぇんとらんが、いた。
らんがいる巣は、この群れでここだけである。
「ちぇん、らん。いたならいたと、いうのぜ!」
2匹とも何故か、独裁まりさの声を無視している。
しっぽをまりさの方へ向けたまま、動こうともしない。
「むしすんなぜ!」
とうとう頭に来たまりさは、荒々しく巣の中へ乗り込んでいく。
中は薄暗く、ちぇんとらんの姿が、よく分からない。
「ゆ? ちぇんはいつから、しっぽさんが、みっつになったのぜ?」
確かに、二又であるはずの猫型ゆっくりの尾が、増えている。
一本だけ不自然にピンと張って、地面へ伸びているのだ。
まりさは、帰ろうか、と考え出していた。
とてつもなく、ゆっくりできなくなる気がする。
今日の所はとりあえず帰ろう。
そして明日、この番のことを公表して、制裁するのだ。
そう思いつつも、好奇心が勝ってしまう。
ゆっくりと、まりさは2匹の前に回り、その顔を眺めた。
目が闇に慣れてくる。
ちぇんの額から、何かが伸びている。
茎だろうか。
しかし、それにしては、表情がおかしい。
白目を剥いていた。舌をたらしていた。
明らかに、永遠にゆっくりしている。
顔を貫いているもの。それは、棒だ。
いつも独裁まりさが使っていた、あの凶器。
そんなまりさだから、分かる。
ゆっくりと、中枢餡を貫いている。
そして、らんの方を見る。同じだ。
モフモフの九尾が、後ろまで貫通している棒を隠している。
独裁まりさは、叫んだり喚いたりしなかった。
ただ大汗をかきながら、その巣を出た。
饅頭のくせに、顔を真っ青にしている。
状況は、思っていたよりも、深刻だったのだ。
別の巣を回る。
ひとつとして、例外がない。
まりさも、ありすも、ちぇんも、みょんも。
同じように刺し殺されて、ゆっくりしていた。
違うのは、上下に貫かれているか、左右に貫かれているか。
その違いでしか、なかった。
最後の巣を出ると、まりさはヨロヨロとへたり込んだ。
僅かに冷静な部分が、原因を探り出そうと働き出す。
人間さんの仕業?
違う。小さいゆっくりの巣の奥まで、入ることなんてできない。
れみりゃやふらんの仕業?
それなら、食べられているゆっくりがいないのは、何故?
他の群れのゆっくりの仕業?
あの死臭を乗り越えてくるゆっくりなんて、存在するのか?
ならば、この群れの誰かの仕業か?
そんなことして、一体、何になるんだ。
独裁者だったまりさの視線が、小高い丘の方へ向けられた。
そのてっぺんに、銀の髪をなびかせたゆっくりがいる。
みょんだ。
いつも密告しに来た、あのゆっくりがいる。
まりさは、丘の上目指して駆け上がる。
疲労は深かったが、そんなことは言っていられない。
あのみょんが犯人なのか。それとも、違うのか。
いずれにしても、声をかける以外にない。
ゼイ、ゼイと息を乱すまりさ。
ゆっくりに、肺などないはずなのだが。
「み、み、みょん!」
丘の上についたまりさには、その呼びかけが精一杯だった。
もう一歩も、歩けそうにない。
風が、先程より強く吹いている。
飛ばされないように、やや前のめりになる、まりさ。
風圧に耐え切れなくなったのは、みょんの方だった。
コテン、と、仰向けになって倒れる。
そこには、顔があるはずだった。
しかしあったのは、白いチョコレートまみれの何かだった。
顔の前半分が綺麗に抉れて、なくなっていた。
そして白く甘くなった部分には、黒い線が入っていた。
蟻である。
天然の栄養を運ぶため、黒い虫が整然と集っていたのである。
それを見たまりさは、ここに来て理性を失った。
最初に巻き起こったのは、森中に響き渡る叫び声であった。
「ゆっっぎゃああああああああああ!」
丘の上から、転がり落ちる。
帽子のみは、本能で守り抜いていたが、それ以外はひどい有様だった。
皮膚を切り、歯を折り、涙が溢れ出して止まらない。
そうなっていることさえ、当の饅頭は気付いていない。
完全に、まりさの中の何かが切れていた。
混乱し、恐怖し、暴走を始めていた。
「もう、おうぢがえるぅぅぅぅぅ!」
ようやく転倒が止まると、滅茶苦茶に走り出す。
石の上だろうが、尖った木の上だろうが、お構いなしだった。
あちこちから餡子がはみ出す。
怠惰で培った巨体が、その圧力に弾みをかける。
そんな悲惨な状況であっても、自分の巣は見失わなかった。
それこそが、まりさのゆっくりプレイスなのだから。
大きくて懐かしい穴が、目の前に広がる。
まりさは、ほんのちょっとだけ、冷静さを取り戻した。
そして、あんよが、動かなくなった。
ゆっせーの、せ! で力を込める。
動かない。そして気付く。
自分が、餡子まみれであることに。
それだけではない。何か、鈍痛があるのだ。
頭の上から、あんよの先まで、貫くような痛みが。
どんなに力んでも、跳ね上がろうとしても、適わない。
ただジタバタしているうちに、どんどん痛みが広がっていく。
目の前に、ゆっくりプレイスがある。届かない。
そして、視界を遮るものが現れた。
「ぱちゅりー?」
「まりさ、ゆっくりしてる?」
「ゆっくりしてるわけ、ないんだぜ。からだが、うごかないんだぜ」
「それはそうよ。ぼうがまりさに、ささっているんですもの」
皮肉な光景だった。
それは、れいむを串刺しにしたものと、同じ技であった。
中枢餡を避けながらも、棒はまりさを垂直に貫いている。
あの時と違うのは、れいむか、まりさか、だけである。
「だ、だれが、こんなことをしたんだぜ?」
「わたしよ」
「そ、そ、そんなはずはないんだぜ。ぱちぇは、からだがよわいのぜ」
「ねぇ、まりさ。はなしたことが、あるかしら?」
ぱちゅりーが、まりさに、すりすりをする。
性行のそれではない。親愛の情を示す行為。
「ぱちぇはね、むかし、かいゆっくりだったのよ?」
「ゆ? はつみみなんだぜ」
「そこで、おにいさんに、おそわったのよ。
まりさを、ゆっくりさせなさいって」
「なにを、いってるのぜ?」
「なかでも、よそからきた、まりさをゆっくりさせなさいって。
そうすれば、ぱちぇも、ゆっくりできるって」
「いったい、なんの、はなしをしてるのぜ!」
「ぱちぇのおかげで、ゆっくりできたでしょ、まりさ。
ぱちぇも、ほんとうに、ゆっくりできたわ」
確かにそうだ。
ぱちゅりーの立てた作戦で、随分助けられた。ゆっくりできた。
しかし今のぱちゅりーは、明らかにおかしい。
今までで一番、ゆっくりできない何かを、このゆっくりは持っている。
饅頭にも、火事場のクソ力というものはあるのだろう。
渾身の力で、地に刺さった棒ごと、まりさは飛び上がる。
拘束からは、解放される。
しかし、もう全身に力が入らない。
あんよが破れ、餡子の流出が止まらない。
それでも、洞窟の中へ、ずーりずーりと這って行く。
その側を、ぱちゅりーは離れない。
歩みをまりさに合わせながら、話を続けていく。
「おにいさんは、もうひとつ、おしえてくれたわ。
すべてのゆっくりは、れいむから、うまれたって」
「ゆーしょ、ゆーしょ・・・・・・」
「にんげんさんが、『あふりかのいぶ』さんからはじまったように、
ゆっくりも、『ゆっくりれいむ』からはじまったのよ。
そして、『ゆっくりれいむ』から、まりさがうまれたわ。
そして、ありすが、ちぇんが、みょんが、すべてのゆっくりがうまれた。
このぱちゅりーも、ね」
「ぱちぇのはなしは、・・・・・・さっぱり、なのぜ」
「だから、ね。まりさも、ぱちぇも、みんな、れいむのこどもなのよ。
みんな、あんこのどこかに、れいむが、はいってるの」
「それが、それが、どうしたっていうんだぜ!」
まりさの体力は、限界に来ていた。
目の前が、霞む。
そんなまりさの目にも、はっきりと映るものがあった。
ぱちゅりーの瞳であった。
表情こそ、慈悲に溢れている。
しかし眼だけが、大きく見開かれている。
まるで視線だけで、相手を抉り出そうとするかのような光。
ゆっくりできないものの正体が、そこに宿っていた。
「まりさはいったわよね。れいむは、つぶすって。
そうすれば、みんな、ゆっくりできるって」
「ゆぅ・・・」
「れいむのこどもも、なかまも、つぶしたわね。
そうしたらまりさ、ほんとうに、ゆっくりしてくれたわよね」
「ぱちゅりー、わかった、もう、だまるんだぜ」
「まりさ。ゆっくりはみんな、れいむなのよ。
ありすもれいむ。ちぇんもれいむ。みょんもれいむ。
らんも、めーりんも、ゆうかも、れみりゃも、ふらんも!
みんなみんなみんな、ぜんぶ、れいむ!」
「くちを、ひらくななのぜ!」
目と目が、合った。
合ったが最後、もう2度と逸らせない視線が。
「だから、みんな、つぶしたの。
まりさをゆっくりさせるのが、ぱちぇのしごとだから」
まりさの歯が鳴った。失禁した。
餡子が、どこまでも甘くなる。
「まりさ。まりさも、れいむのなの。ぱちぇも、ね。
だから、ぱちぇがつぶしてあげる。
まりさのれいむも、ぱちぇのれいむもつぶしましょ。
そして、ずっと、ゆっくりしましょ」
何か、何かを言おうと思った。
震える顎を、必死で止めた。舌を、できるだけ伸ばした。
そして、最後の抵抗を試みた。
全てのゆっくりを従えるべき、あの言葉を。
「まりさは『どくさいしゃ』なんだぜ! まりさに、さからうなのぜ!」
沈黙が、訪れた。
黙りこくったぱちゅりーを見て、まりさは、勝利を確信した。
やはり『独裁者』は、最高にゆっくりできるのだ。
これからも、ずっと、変わらずに。
ぱちゅりーが、まりさの前から消えた。
てっきり立ち去ってくれたものと、勘違いした。
まりさはまだ、洞窟からほんの少し入ったところにいた。
瞳は、棒を積み上げている一角を見ている。
視界が突然、上がった。
木の束が沈んでいき、硬そうな岩壁が目の前に競り上がってくる。
体が動かないまりさには分からなかった。
まりさを貫いている棒の先で、何が起こっていたのかを。
「まりさ、ぱちぇがさいごに、おにいさんから、おそわったことがあるの」
ぱちゅりーの声が、まりさの真上から聞こえた。
いつのまにか、視界が引っくり返っていた。
見上げると、土があり、ぱちゅりーがいた。
そして、棒をくわえていた。
ぱちゅりー種は、虚弱のはずである。
それが、まりさの体ごと、顎の力で棒を持ち上げている。
「『どくさいしゃ』は、さいごに、せいさいされるって、ね」
ぱちゅりーの歯が、ポキリと折れる音がする。
そんなもの、誰の耳にも入らない。
大きな力が、動いていた。
恐るべき勢いで、まりさの前に、壁が迫る。
帽子が垂れて、『どくさいしゃ』の文字が、目に入る。
汁という汁を垂らすことしか、まりさにはできなかった。
「おにぃぃざぁぁぁ、だずげ
れいむは、たった1匹で暮らしている。
そして、誰よりもゆっくりしたゆっくりだった。
ゆっくりには、余裕という意味と、愚鈍という意味がある。
このれいむは、後者だった。
なにせ、ここ1ヵ月以上も、眠りこけていたのだ。
まだ、冬には程遠いにも関わらず。
だかられいむは、外で起った異変を知らない。
れいむ種狩りのことも、群れの全滅も。
巣には、れいむが結界を張っていた。
ただし、御利益があるとは到底思えない代物である。
入り口に、木の枝を2本、『×』状に立てかけている。
ただ、それだけのものだった。
しかし実際、他のゆっくりは、この巣に入ってこなかった。
本当に、結界などというものが、あるのだろうか。
本当の結界は、外に合った。
巣は、大きな木の根元を掘るようにして、できている。
その木の周りには、背の高い草が、密集していたのである。
しかも、ゆっくりが嫌う、にがーい草であった。
食べられもしない草に、近付くゆっくりはいなかった。
そんなゆっくりできない場所に巣があるなんて、誰も気付かない。
幾重にも重なった幸運。
それが、れいむが何となく生き残った理由だった。
虐待鬼威惨が知ったら、即虐待地獄巡りに遭うだろう。
事実、れいむは、そうなってもおかしくない状況にいた。
れいむは草をかき分け、のこのこと群れの方へ近付く。
最後の一束を払って見えてきたのは、1人の人間だった。
大きな洞窟の前である。
れいむが見た人間は、何やら一生懸命、手を動かしていた。
饅頭は、今まで培ってきた知識を総動員する。
結果、『かみに、なにか、かいている』ことだけ、分かった。
「ゆっ。にんげんさんは、ゆっくりしてないね!
そこは、ぱちゅりーのすだよ。じろじろ、みないでね!」
何を思ったか、話しかけるれいむ。
人間は、れいむの方を振り向く。
紙に何かを書き足して、再び、洞窟に目をやる。
甚だ遺憾なことではあるが、人間のリアクションは、それだけだった。
れいむは、相変わらずボーッと見ている。
れいむ種は、愚かだという。これを見る限り、そうなのかも知れない。
人間は遂に、書くことを止めて、どこかへ立ち去った。
れいむは、気軽にご挨拶などして見送った。
「ゆっくり、さようならー!」
れいむは、あんよ取りも軽く、洞窟へと向かう。
ぱちゅりーにも、ゆっくりご挨拶しようと思ったのだ。
森は静かで、人の声もゆっくりの囁きも聞こえてこない。
ただ、「ゆんやー」という叫び声が、微かに響くだけであった。
(終)
【あとがき】
以上、初投稿でした。
お読み下さり、ありがとうございました。
前編に、多くの感想を頂いております。
重ねて、御礼申し上げます。
でいぶ顔になったれいむとか、密告みょんとかは、
書いている最中に、勝手に飛び出して来ました。
気ままに動くゆっくりに振り回されながらも、
ようやく書き上げることが、できました。
何故か全編通して、セリフ以外の文を二行単位で書いています。
何でこんなことしてるのか、自分でもよく分かりません。
そんなこんなで、以後、『二行』と名乗らせて頂きます。
二行記述は、もう止めると思いますが。
今後も、ゆっくりSSを書いていきたいと思いますので、
よろしくお願い致します。
二行
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- ↓座布団1枚! -- 2023-04-20 06:39:35
- ド臭い者www -- 2014-08-24 12:38:10
- 独裁者だから真っ先にヒトラーを思い出したけど、やってることを見るとキリスト教を思い出すな
前編ではれいむは全てのゆっくりはれいむ種から生まれた事を知っていたのか、案外バカではないのかもしれない -- 2013-01-21 07:37:58
- ↓↓>一人称がぱちゅりーだし
文章読解力が皆無だなアンタ、洞窟を覗き込んでるんだかられいむの巣じゃないだろ
>結界ていう新しい能力まで持ってたし
にわか乙、けっかいは他のSSでもふつうに使われていますよ? -- 2011-09-22 18:03:23
- 最後のれいむは純粋のれいむでぱちゅりーでは無いと思う
-- 2010-12-30 17:40:19
- 最後のれいむってぱちゅりーが変化した奴じゃないかな。一人称がぱちゅりーだし、結界ていう新しい能力まで持ってたし。文中でも全てのゆっくりはみんなれいむだった、なんて話も出てたしね。 -- 2010-10-13 19:13:57
- 最後の人間は何を書いていたのかな?
気になるー -- 2010-10-07 20:45:23
- いろいろアイデアがあるのは分かったけど
全体的に読みづらいです
ぱちぇの行動もいま一つわかりづらい
-- 2010-10-03 18:31:28
- 黒幕に人間がいて、その人間が遊びか実験かでゆっくり達に独裁国家ごっこをさせていた・・・って感じかな?
最後で奇行に走ったぱちゅりーは、第三帝国末期の某ナチ高官やバチカン特務機関の某シスターみたい。
教義のためなら教祖をも殺す・・・か。単純なゆっくりらしいと言えばゆっくりらしいかな。
・・・生き残りのれいむは幸せになって欲しい気がする。愚鈍ゆえに過剰に欲することも、他者に行為を強要することも
なさそうな良いれいむっぽかった。 -- 2010-08-18 06:23:06
- つまり...どういうことだってばよ -- 2010-07-26 17:11:58
最終更新:2009年10月27日 13:14