ふたば系ゆっくりいじめ 424 俺が、ゆっくりだ! 2

俺が、ゆっくりだ! 2 17KB


『俺が、ゆっくりだ! 2』


・続編です。今回のは「その1」を読まないと分からないかと思います。

・簡単に言えば、「俺がれいむでれいむが俺で」みたいな感じです。

・前回までのあらすじ 「俺は饅頭共の神になる」。











三、

 十月とはいえやはり夜になると肌寒いな…。別にこれくらいの寒さなんて普段はなんともないんだろうが…
この体ときたらっ!いや、この顔か…。髪の毛以外にこの饅頭の皮を寒さから優しく守ってくれるものは断じ
てない。吹きさらしだ。これは寒い。正直寒い。たかが越冬するのにえらい必死で準備したり、簡単に凍死し
たりしてお前らホント貧弱だな、とか笑ってたが実際この姿になってみるとよくわかる。こいつぁ真冬になれ
ば冗談抜きで死活問題だ。本格的に真冬になる前に元の体に戻れる方法を見つけないと…最悪、この姿のまま
死んでしまいそうだ。それだけは勘弁してもらいたい。

「むきゅう…さむいわ…」

 ホントにこの馬鹿饅頭共は正直だな…。そんなの口に出すから余計に寒く感じるんだろうが。ちっとは黙っ
てろ…。

『ばかなの?しぬの?さむいっていうからよけいさむくかんじるんでしょ?すこしだまってねっ」

「ゆぅ…」

 やっちまった…。さっきまではこの饅頭共、頭の中で「れいむマンセー、れいむマンセー」思ってただろう
に俺としたら…っ!いや、正確にはこの腐れ饅頭型自動翻訳機のせいなんだが…。

「れいむ!そんないいかたとかいはじゃないわっ!」

「そうなのぜ…ぱちゅはからだがよわいからまりさたちよりもさむさにびんっかん!なのぜ」

「わかるよー…でも、れいむのいうこともわかるよー…」

「ちぇん…?」

 その…なんだ…こいつら、結構仲間内の間ではお互いのこと気遣ってるんだな。缶詰を開けようとしたとき
も誰ひとりとして、独り占めしようとするようなゲスはいなかったし…。あ、こいつら野良か。ってことは元
飼いゆだもんな。そこそこの知識はあって当然か…。

 待てよ…?今まで野良が…都会の暮らしを経験したゆっくりが…山に戻った例、ってあったか?いや、それ
は探せばあるかも知れんが…。都会で食べた美味いものに味を占めて、自然の中では生きられなくなるって話
のほうが多い気がする…。それ以前に、芋虫やらちょうちょやら食ってる俺を想像すると吐き気がしてくるぜ。

「むきゅっ!ぱちゅがまちがっていたわ…さむいなんていってもあたたまりはしないものねっ!」

 なんかこのぱちゅりーは“俺”にかなりの信頼を寄せているようだな。そんな同意を求めるような目で“俺”
のほうを見られても…。それから、饅頭共が同じ目線で一斉に“俺”を見るのはやめろ。はっきり言ってウザ
キモい。

「れいむは…さすがなのぜ…」

 ハァ?

『ゆ?』

「そうね…わたしたちだけじゃなくて…れいむだってさむいはずなのにひとことももんくをいったりしない…」

 んー…ぶっちゃけ、この姿でまともに目の前の饅頭共と不思議会話を繰り広げたくないから…っていうのも
あるんだけどねぇ…。実際問題ガチで寒いし…。まぁ、お前らがそう思ってるんなら勝手にそう思っといてく
れや…。

「むきゅっ…////」

 なんだ…?ああ、ぱちゅりーが寄りかかってきたのか。頬を染めないでください。大変気持ちが悪いです。
残りの饅頭共もそれを見て目を輝かせてるんじゃねぇよ…どいつもこいつもうざいなぁっ!!!!

「こうすれば…みんなあたたかいわ…」

「わかるよー!みんなでくっつくんだねー!」

「ありすもくるのぜ!」

「…っ!と、とかいはなありすがくっついてあげるんだからありがたくおもいなさいっ!」

 …おい。ちょっと、何この展開。これ、俺がこの場面目撃したら、確実に潰してるよな…?その渦中に俺が
いるのがすんごい納得いかないんですけど…。納得はいかんがそれは置いといてこいつらに言っておかなきゃ
ならんことがある。

『ゆっ…みんなしずかにしてね…。あんまりさわぐとにんげんさんにみつかっちゃうよ』

 良かった。小声と大声くらいの強弱はつけられるんだな…。これでバカでかい声で注意を促しやがったらど
うしようかと思ってたぜ。それから饅頭共。羨望の眼差しを向けるんじゃない。人間のときでさえこんな経験
なかったってのに…。

「れいむ…やまにかえったらどうするのぜ…?」

『ゆ…。ゆっくりできるところをさがすよ』

「むきゅぅ…あてはあるのかしら…?」

『ないからさがすしかないよ』

「…とかいはね…。わたしたちはあたえられたものばかりでくらしていたから…」

「そういうかんがえにはならないんだねー、わかるよー…」

 意外…だったな。人間に依存してる、って意識はちゃんとあったのか。まぁ、街に連れて来られなければこ
いつらがこんな目に遭うこともなかったわけだが…。なんでこいつら、って簡単に人間の前に出てきて潰され
るんだろう、って思ってたけど…。野良は元飼いゆだから…人間に依存するしかない、ってのがわかってるか
ら…なんだろうか。

 そういえば、人を襲うクマっていうのも…過去に人間が餌をあげたりなんたりするから…っていうのを見た
気がする…。ったく…なんなんだよ…ぶっちゃけ調子狂うな…。馬鹿な饅頭共を支配して、俺の“ヒャッハー
プレイス”を作ろうとしてたのに…。

『とにかく…まちをでるよ…きゅうけいさんはおわりだよ…。おひさまさんもいなくなったから…ゆっくりす
すむよ!」

「「「「ゆっ!」」」」

 “俺”のリーダーっぷりも板についてきた感じだな…。全然嬉しくないけど。時計、時計…っと午後八時か。
そろそろ帰宅途中の連中も家に帰りついて…人通りは少なくなってるはずだ…。なんとか路地裏を使って街の
端の方まではたどり着いたが…森のある山へ行くには…この畑の中を突っ切らないといけない。更に畑の先に
は川があったはず…。この二つが難所だな…。

 第一に、畑は一気に突っ切らないといけない。と、言ってもこのへんにはガキの頃、自転車で走り回ってた
が端から端まで五分はかかってた。複数の農家の畑があるから…距離にすれば相当のもんだ。最短距離を進ん
だとしても…この饅頭のあんよとやらじゃ日が昇るまでにたどり着けるかどうか…。考えてても仕方ない。と
にかく川までいけばひと段落だ。

 …って、こっちを見てる饅頭共にも作戦を伝えとかないとな…。

『ゆっくり、さくっせん!をつたえるよ!』(うぜぇ)

「ゆっ!」「むきゅっ!」

『いまから…むこうにみえるやまさんまでおひさまがこんにちわーするまですすむよ!』

 おや。急に意気消沈したな…大丈夫かこいつら…。

「れいむ…そのさくっせん!は…むりだわ…」

「そうなのぜ…まりさやちぇんはなんとかなるかもしれないけど…」

「ぱちゅにはつらいんだねー…わかるよー…」

「むきゅぅ…」

『でもそうしないとやまさんにはかえれないよ!』

「とちゅうできゅうけいするわけにはいかないのぜ…?」

『ここはにんげんさんのはたけだからあさになったらにんげんさんがおしごとにくるよ!』

「どうしてそんなばしょをえらんだの?とかいはじゃないわっ!」

「ありす…」

『やままではとおいよ。とちゅうでおなかがすいてうごけなくなったらそこでずっとゆっくりすることになる
 よ!でもはたけのなかならにんげんさんのつくったおやさいさんがあるから、うごけなくなることはないよ!』

 今日の昼過ぎに空腹で既に死にかけた俺なら言える。ここ以外のルートは危険すぎる。道路なんかにこいつ
らが食えるようなもんが落ちてるはずはない。と、なると、食べ物を確保できながら進むルートを探すしかな
かった。だが、朝になったら畑仕事に人が現れるだろう。そうなったら仲良く全滅だ。だがまぁ…確かに…こ
のゲロ袋の規格外の体力の無さは計算に入れてなかった…。

「むきゅっ!ぱちゅはいくわ!」

「「「ゆゆゆゆゆゆ?!」」」

『………』

 正直俺もちょっと呆けた。この場所なら別のルートを考えるぐらいはできたが……あれ…?なんだ?わざわ
ざぱちゅりーの…ゲロ袋のためにルートを変えようとしてたのか、俺は…?

「このまままちにのこってもいずれはにんげんさんにつかまってしまうかもしれないもの…」

「それはそうだけど…」

「それならぱちゅは…みんなといっしょにやまにかえりたいわ!」

「でもぱちゅにはむずかしいのぜ…」

「むきゅっ…ぱちゅもれいむのかんがえとおなじよ…。やまへいくにはこのみちがせいっかい!だわ」

「…わからないよー…」

 ぱちゅりーは何を根拠に“俺”と同じ考えだと言ってるんだろうか…?俺は山への正確な道筋を把握してる
のと…こいつらの生態を理解していたから、このルートを選んだわけで…。多少、頭が回るとはいえ野良のゆ
っくりなんかにこのルートが正しいという考えに行き着く知能はないように思うんだがなぁ…。聞いてみよう
かとも思ったが、正直時間が惜しい。

『…ゆっくりすすむよっ!』

「「「ゆぅ…」」」

「むきゅっ!!!」





四、

 このルートを選んだのにはもう一つ理由がある。アスファルトの上を這ったり跳ねたりして進むより足に…
ああ、あんよに負担がかからないからだ。缶詰の一件でこいつらに出会う前からこのルートのことは決めてい
たが、まさかこいつらがついてくるとは思ってなかったからなぁ…。畑の野菜を食うのも今回までだ…。ゆっ
くりに畑が荒らされたなんて話になったら、山にたどり着いた直後に一斉駆除に遭うかも知れん。

 …うん。“ヒャッハープレイス”もそうだが元に戻る方法も考えないとな…。…まぁ、元に戻る方法はすぐ
には答え見つからないだろうし…父さんと母さんを突破する方法も見つけないといけない…。そうだ…字を書
いて伝えるぐらいはできるかも知れないぞ…?なんだ、簡単じゃん…。…ああ、どうやって渡すかが問題か…。
それも山についてから考えるとしよう。

 じきに夜明けだ。意外と根性あるんだな、こいつら…ここまで一度も休憩ナシだ。やるじゃないか。とはい
え、ちっとは後ろも気にしないとな…。後続はどうなってやが…

「むきゅぅ…エレエレエレエレ…」

 …………。ぇぇぇぇえええ…?

「れいむ!ゆっくりまつのぜ!ぱちゅがげんかいなのぜ!」

 なん…だと…?貧弱にも程があるだろうが、このゲロ袋がっ!!!

『ゆゆっ…?よわいぱちゅりーはゆっくりしんでねっ!』

 あ…。

『ゆ…』

 うわぁ…すごい…すごいよこれ。ものすごい冷たい目で見られてるぞ“俺”。いつも見上げて涙浮かべてる
だけの連中かと思ったら…目線が同じ、ってだけで結構なプレッシャーだな、おい…。正直、ちょっと怖いわ。

「れいむ…いくらなんでもそれはひどすぎるのぜっ!!」

「とかいはじゃないわ…れいむ、ぱちゅにあやまって」

「れいむー…、どうしちゃったのー?わからないよー…」

「む…きゅ…」

 チッ…この馬鹿饅頭共が…っ!いや、引き金を引いたのは確かに俺だが…。

 …え?

『…ゆ?』

 嘘…だろ…?まだ夜明け前だったてのになんで軽トラックがやってくる…?やっちまった…完全に誤算だ…。
ていうかここまで早いのかよ、農家のおっさんよぉ!!!しかも目ざとい…“俺”たちに気付きやがった…。
何固まってやがんだ馬鹿饅頭共…っ!これじゃ全員捕まって殺されちまうぞっ!俺だけでも逃げるか…?こん
な野良ゆっくり共、もとはといえば俺には関係ないし…

「ぱちゅ…は……れいむを…しんじるわ…」

 馬鹿なのかこいつは…っ?!真性のっ!!!野生ゆっくり並の馬鹿じゃないかっ!!

『ばかなのっ?しぬのっ?!』

 思わずぱちゅりーに怒鳴りつけちまった。こんなことしてる暇ないのに…やれやれ…俺も餡子脳だってこと
か…?殺る気満々で降りてきてるしな…トラックの運転手…。

「なんだクソ饅頭共が…まさかうちの畑を荒らしに来やがったのか…?あぁん?」

『そうだよっ!!』

((((れいむっ?!))))}

「いい度胸じゃねぇk…」

『このゆっくりたちはわるいゆっくりたちなんだよっ!まりさもありすもちぇんもぱちゅりーも…おやさいさ
 んをぬすんでたべようとしたんだよっ!!!!』

 後ろから殺気の籠った視線をビシビシ感じるな…。ちぇんが泣いてやがる…。ありすも…声は出してないけ
ど…多分、泣いてるな…。まりさも…泣きながら顔膨らませてんだろ…。ぱちゅりーは…言葉も出ない、って
とこか。

「ほう、じゃあお前は悪いゆっくりとやらじゃ、ねぇってか?」

『そうだよっ!わるいことしようとしたゆっくりをにんげんさんにわたして“かこうじょ”までつれていって
 もらおうとしてたんだよっ!』

「お前、まさか金バッジゆっくりか…?」

 金バッジ。それは、“ゆっくりを取り締まるゆっくり”に与えられるバッジだ。言ってみればゆっくり共の
警察。野良が街中で問題を起こす前に、野良を睨みつける役割を果たす存在…ってのをこないだ見たテレビで
言ってたぜ…。

「かこう…じょ…」

「きんばっじ…」

「れいむは…れいむは…」

「「「ゆっくりできないゆっくりだよ~~~~~~!!!!!」」」

 いいぞ。叫べ叫べ。そうすればそうするだけ、この農家のおっさんは“金バッジゆっくり”の“俺”を疑わ
なくなる。…見下ろしてニヤニヤしてんじゃねぇよ、おっさん…何がそんなに可笑しいんだよ…って危ない危
ない。喋っちまうところだったぜ…。

「ははは!同じゆっくりに売られる気分はどうだお前ら?すぐに加工所に送ってやる!!」

 散り散りになって逃げようとする三匹を追い詰めるのは“俺”の役目だ。まりさもちぇんも動きは早いが、
所詮はゆっくり。おっさんの手助けもあって、簡単に四匹を麻袋の中に閉じ込めることに成功した。

「しねぇっ!!!!」

「ゆっくりできないれいむはしになさいっ!!!」

「わからないよー…!!!」

「………っ」

 “俺”は荷台に載せられた麻袋の番をすると申し出た。さすがに怪しまれるかとは思ったが…。袋の中で
動きまわって荷台から落ちる可能性もある…と考えたらしく、おっさんはあっさり承諾した。運よく、荷台
の一番後ろは壊れてて閉じることができないみたいだし…。

 麻袋の中の四匹はすぐ近くにいることがわかってるんだろうな、“俺”に向かってずっと罵声を浴びせて
いる。だが、そろそろネタ明かしだ。“俺”は口で麻袋の口を結んでいた紐をほどき、四匹に声をかける。

『ゆっ!みんな!ゆっくりしずかにでてきてね!』

 極力、声を小さくして喋る。だが、車の動く音でおっさんの耳にはどっちにしろ“俺”たちの声は届かな
いだろう。もそもそ出てきた四匹は“俺”に向かって声にならない批判を訴えていた。“俺”はこの饅頭共
に横を見るよう促す。

『ゆっ!むこうをみてね』

「「「ゆ…」」」

「む…きゅぅ…あれは…やまの…いりぐちなの…?」

 正確には森だがな。森を抜ければその先は山だ。というか、水場が近ければ森だろうが山だろうがどっち
でもいいんだけどよ…。

「どういう…ことなのぜ?」

「れいむ…あなた…まさか…」

『かこうじょはやまのおくにあるよ…。ということはにんげんさんのスィーはやまのなかをとおるよ』

「む…むきゅきゅ…っ!」

『にんげんさんのスィーではこんでもらって…ここからとびおりるよっ!そうすればやまにつくよっ!』

 俺も作戦が上手くいってちょっと興奮気味なのかな。心なしか“俺”の声がちょっとでかい。

「と…とかいはなさくっせん!だわ…」

「わかるよー!れいむはすごいんだねー!!!」

「れいむ…れいむはさいこうにゆっくりしたゆっくりだねっ!!!」

 ぱちゅりーは感極まって泣いてるのだろうか。何も言ってこない。まぁいい。

『あのはしさんをわたったら“ゆっせーの、せっ!”でとぶよ!!!』

「「「「ゆっくりりかいしたよっ!」」」

『ぱちゅりー…?』

 思わず、声のほうが先に出てしまった。だが、なぜかぱちゅりーは返事をしない。なぜだ?目指す場所が
もうすぐそこにあるというのに…。

「ぱちゅは…とべないわ…。ぱちゅはからだがよわいから…たぶん…」

 死ぬ、のだろう。確かに軽トラックから飛び降りる行為は、まりさ、ありす、ちぇんでさえ結構なダメー
ジになるはずだ。だが、橋はもう目の前。迷ってる暇なんてないっ!!!!

『とぶよっ!!!』

 戸惑いながらも饅頭共が荷台から飛び降りる構えを取る。ぱちゅは荷台の隅で震えていた。“俺”はそん
なぱちゅりーの髪を咥えて引きずりだすと、

『ゆっせーの…せっ!!!!』

 軽トラックの荷台から饅頭共がジャンプする。取り残されたのは“俺”とぱちゅりーだ。

「むきゅっ!れいむ!ぱちゅのことはいいからいってちょうだい!」

 そういうわけにはいかねぇだろうが!ゲロ袋っ!!!俺を信じるって言っただろうが!!!!

『ばかぱちゅりー!!そういうわけにはいかないよっ!れいむをしんじるっていったでしょぉぉぉ!!!」

 俺が絶対てめぇを死なせやしないから、さっさと飛ぶぞっ!!!!

『れいむがぱちゅりーのことをぜったいにまもってあげるから!ゆっくりしないでとぶよっ!!!!』

 “俺”はぱちゅりーの髪を咥えたまま、荷台から飛んだ。宙に舞い、必死に目を閉じて泣いてるゲロ袋…
いや、ぱちゅりーが視界に入った。饅頭なんぞに義理はねぇが、一度死なせないと言ったからには絶対に死
なせない…っ!正直、ここでこいつが死んだら寝覚めが悪いぜっ!!!!

『ゆべしっ!!!!』

「むきゃっ!!!」

 ごああああ…後頭部が道路に直撃…っ!!舗装された道路だったら俺間違いなく死んでたぜ…!あと重い
んだよ、ゲロ袋…っ!!生きてるんならさっさと降りやがれ…っ!聞いてんのか…って…

「れいむーーーー!!!!!」

「ぱちゅりーーーーーーー!!!!!」

「「「!!!!!」」」

 饅頭共が動きを止めるのもよくわかる。正直、俺だって動きが止まってる。わけ、わからねぇ…。本当に
こいつらは…わけのわからない…“生き物”だぜ…。

「と…とかいは…だわ…」

「はずかしくてみてられないんだねー…」

「は…はれんちなのぜ…」

 前略、母さん。俺のファーストキスは、ゲロ袋でした。もう死にたいです。ただ、不覚にもこいつの唇意
外と柔らかいなぁ…なんて感想を抱いてしまいました。助けてください。

 とりあえず…みんな、生きてる。目指した場所はもう目の前だ。それで…ヨシということにするか…。









つづ…く…?







 ぱちゅりーは銅バッジを取得したゆっくりだった。ペットショップの価格にして60000円。一般的な
銅バッジの中では若干値段が落ちるものの、仲の良さそうな親子に買われていった。ぱちゅりーはこれから
どんな幸せなゆん生を送ることができるのだろう…と期待に満ちた妄想を頭の中で繰り広げていた。

 ぱちゅりーは簡単な文字が読めるぐらいの訓練を受けていた。5歳ぐらいの娘と一緒にいろんな本を読も
うと思っていた。読んで聞かせてもあげたいし、読んで聞かせてももらいたかった。賢いぱちゅりーは自分
がそんなに長く生きられないことも、なんとなく理解はしていたし…せめてそれなら、自分を選んでくれた
飼い主と自分の命が終わるまで精一杯、ゆっくりしよう。…そう、心に決めていた。

 最初のうちはたくさん可愛がってもらえた。家族は毎日のようにぱちゅりーの様子を見に来てくれた。

 ぱちゅりーが風邪をひいたときも、一家が心配そうに看病をしてくれた。

 ぱちゅりーは病弱だった。何度も何度も風邪をひいた。ひきたくないのに、風邪をひいた。

 やがて、家族は…そんなぱちゅりーの面倒を見るのに疲れてきた。



 ある日、ぱちゅりーが風邪をひいて寝込んでいると、ケージごと車の中に載せられた。病院に連れていっ
てくれるのかと思っていたが…そうではなかった。ぱちゅりーはケージに鍵をかけられたまま、ゴミ捨て場
に捨てられた。

 夜になり、冷えた風が弱ったぱちゅりーの体を蝕んでいく。空腹でケージを壊して逃げ出すこともできな
い。

 ぱちゅりーはあの家族にもう一度会いたかった。風邪をひいても、体調が悪くても、元気なフリをするか
ら…だから…もう一度優しくしてほしい…とそればかり願っていた。楽しかった最初の数週間の思い出が次
々によみがえり、ぱちゅりーは自然と涙を流していた。もう、自分はこのまま死ぬのだろう…。

 そう思っていた。

 しかし、ぱちゅりーは助けられた。重たい瞼を開けると、そこにはまりさ、ありす、ちぇんがいた。三匹
ともぱちゅりーのことを心配そうに眺めている。一瞬、ぱちゅりーはあの親子がまた自分を家に連れ帰って
きてくれたのではないか…と思ったがそうではなかった。

 ぱちゅりーの事情を聴いた三匹は何も言わずに泣いた。ここにいる三匹はいずれも飼い主に捨てられ路頭
に迷っていたゆっくりだった。

 四匹は行動を共にするようになった。相変わらず、ぱちゅりーはよく体調を壊したけれど、三匹はそんな
ぱちゅりーを気遣いながら、街の片隅で日々を懸命に生きていた。ぱちゅりーは自分の持っている知識を使
い、住む場所を考えたり、食べ物の確保の仕方を三匹に教えたりもした。

 ぱちゅりーが一番望んでいたものは、自分が望んだ場所では手に入らなかった。

 体の弱い自分を受け入れ、認めてくれて、助け合える仲間が欲しい。ぱちゅりーはゆっくり理解した。

 裕福な飼いゆっくりとして育てられたぱちゅりーは…野良という地位に落ちぶれて、初めて自分にとって
のしあわせー!を手にしたのだ。




 ぱちゅりーにとって、自身を受け入れてくれるものは、自身にとっての全てであったと言える。



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感想

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  • イイハナシダナーーー
    ハッピーエンドを迎えて欲しいね -- 2013-08-12 21:34:45
  • ↓↓とめないよwww -- 2012-06-14 23:51:23
  • かんっどうしたのぜ…。 -- 2012-05-08 05:38:07
  • とってもゆっくりできるいいはなしだよ!はやくつづきをよむよ!とめないでね!むぎいいいぃぃぃぃ!!!とめないでっていってるでしょおおおぉぉぉぉ!!!? -- 2010-11-22 02:12:50
  • 最初の方の温度差www -- 2010-08-06 21:55:29
  • お兄さんかっけえ! -- 2010-08-01 04:22:31
  • 結構熱いなw -- 2010-07-12 20:17:58
  • どうなるんだ・・・ -- 2010-06-23 22:25:48
  • あれ・・・?結構いい話だ・・・ -- 2010-03-05 17:30:43
最終更新:2009年10月27日 16:14
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