「それより、忍ちゃん・・・」
 お腹の上の精液をティッシュで拭ったよしみが、同じく手を拭っていた忍を呼んだ。
 顔を上げた少女に寄り添い、力を失っている竿を持ち上げる。
 その下に覗いている割れ目を見つめ、太ももに垂れている幾筋もの雫をなぞる。
「女の子のほうも、欲しがっているよ?」
「う・・・」
 もともと一つの体とあって、男が欲情を示せば、しぜんと女も昂ぶってくる。
 まして、よしみに女の淫らさを見せ付けられたとあっては、忍の女も収まりがつかない。
 普段とは比べられない火照りに戸惑いながらも、忍はそれを押さえようともがいている。
「見ないでください。ボク、ボクは男です。ボクの女の子は、見ないでください」
「違うよ。忍ちゃんはまだどっちでもない。男の子でも、女の子でもあるの」
 忍が見せているのは、拒絶ではなく逡巡だった。
 それを見抜いたよしみは、指の腹で柔らかく濡れた秘唇をなぞり、口を少しだけ割り開く。
「まだ選ばなくていいの。まだ決めなくていいの。自分の中の女の子を殺しちゃダメ」
「殺す・・・?」
「忍ちゃんがしてるのは、そういうことなんだよ」
 言葉の響きにおびえる少女に、よしみは穏やかに突きつける。
 雫に濡れた指を、そっと忍に潜らせ、入り口を撫で回す。
「忍ちゃんの女の子は、気持ちよくなりたいって言ってる。男の人が欲しいって言ってる。
 それを否定するのは、自分の半分を殺してしまうことだよ」
「でも、でも・・・」
「私を受け入れてとは言わない。でも、素直になろうよ。女の子の自分が欲しがってること、受け入れてみようよ」
 優しく語る顔の下で、凶悪なほどの男根が脈動している。
 うなだれた忍の目がそれを捉え、上目でよしみを窺った。
「よしみさんは、やっぱり、したいんですか?」
「それは、否定しないよ」
 昂ぶっている自分を晒している以上、嘘をついてもしかたない。
「それで、そんなことを言うんですね。いいです、好きにしてください」
 諦めたように足を開く。
 自分だけ受け入れてもらうのは不公平だとでも思っているのだろう。
 そんな忍の自棄気味の態度に、よしみが寂しそうに首を振る。
「私は、忍ちゃんが望むまでは挿れたりしないよ」
 そんなに信用できないかと、悲しみを込めた瞳が問いかける。
「私は男の欲望を持て余してる。すぐにでも忍ちゃんとしたい。それは本心だよ。
 でも、女の子の気持ちだっておなじぐらい判るの。望んでいない相手に体を穢される辛さも判っちゃうんだよ」
「よしみ・・・さん」
「私は忍ちゃんを受け入れた。それは、忍ちゃんが望んだからじゃない。私が、忍ちゃんを受け入れたかったから。
 忍ちゃんと一つになりたいって、そう願ったからだよ。でも忍ちゃんは、まだ私のことをそう思っていないよね。
 それが判っていてできるほど、私は無神経じゃないよ」
 気まずくうなだれた少女の頭を見つめながら、よしみは傍らのチェストに手を伸ばした。
 二段目の引き出しを開き、隠してあった玩具を取り出す。
「それは・・・」
 男を象った棒と、女を象った筒。
 それは、男女の性欲を満たすためだけに作られた、淫らな玩具だった。
 オナホールを取り上げ、指先で柔らかなシリコンを開くと、それは女の体そのもののようにゆがみ、内側の造形を見せ付ける。
「体の満足なら、これで十分だと思ってる。人間同士のつながりは、もっと違うものじゃないかな」
「・・・ごめんなさい」
 何に対して謝っているのか、忍にも判らない。
 だが、何となく、口に出来るのはその言葉だけのような気がした。
 忍の心情はわかっているのだろう。よしみはふっと表情を緩め、二つの道具を持ち上げた。
「私、毎日これを使ってる。女の子をかき回して、頭の中を忍っ白にしながら、男の子の欲望を満たしてる。
 だから、よく知っているの。体が望む通りにすると、どれだけ気持ちいいかを」
 握り締めたバイブを見せつけ、スイッチを入れる。
 淫猥な薄ピンクの擬似男根が、真ん中から先をくねらせた。
 それが自分の中で暴れる様を想像したのだろう。忍がおびえた目を向ける。
「私はそれを伝えたいの。それを知って、それでも女を捨てるなら、それは正しい選択だと思う。
 でも、知らないで、知ろうともしないで決めるのはダメだと思う」
「そう・・・ですね」
 よしみを傷つけたという引け目が、忍にそう答えさせた。
 そしてそれを口にしたとたん、不意に気持ちが楽になる。
 自分の中の願望を抑え続ける苦しさから、ようやく解放されていた。
「教えてくれますか?」
「もちろん」
 にこやかに頷き、少女を抱き寄せる。
 細身の体をベッドに押し倒し、唇を奪う。
 経験など無いはずなのに、その動きは淀みなく、手馴れたものだった。
 独学でどれほどの修練を積んでいたのかと、つまらないことを考えてしまう。
「私たちには、女の子の一番敏感な場所が無いから。膣内で感じるしかないの」
 キスだけで気持ちを奪われた少女の耳にそう囁く。
 呆けた瞳を間近から見つめ、頬を撫でたよしみは、唇を薄い胸の上に這わせた。
 柔らかさよりも、微妙な曲線と肌の滑らかさを楽しむ。
 そのままゆっくり下へと進み、そり立っている男根を横目に更に下を目指していく。
「んふ、もうとろとろになってる」
 嬉しそうに目を細め、指先で秘唇を撫でる。
 吸い付くような柔らかさに笑みを浮かべ、一本だけ立てた中指を、ゆっくりと忍の中へともぐりこませる。
「んっ!」
 忍が体を固くしたのが判った。
 負担をかけないようにと気遣いながら、指を根元まで埋め込んだよしみは、
 初めての異物を追い出そうとするかのように締め付ける壁を、奥から少しずつ広げていく。
 男を知らない神聖な場所を指先に感じながら、傷つけないよう、苦しめないよう、細心の注意で壁を撫でる。
「はうぅ・・・、よしみさんが・・・、ボクの中に・・・」
「うん、お邪魔してるよ」
 忍の声には拒絶が含まれていなかった。
 安堵を浮かべたよしみが微笑み、指を二本に増やした。
 中指と人差し指で少女の中を探り、淫らな音を零させる。
「は・・・うぅ・・・、ん・・・あ・・・」
 声も湿り始めていた。指の背を噛み、押さえているが、それゆえに却って艶かしい。
「おつゆが零れて来てる。いただいちゃうね」
「ひあっ!」
 熱く柔らかなものが、秘密の泉の入り口を撫でた。
 初めての感触に、体が勝手に反応する。
 意地悪く音を立て、忍の雫を吸い上げながら、よしみは女の穴に舌を潜らせた。
 体を内側から舐め上げられ、忍が腰を震わせている。
「んふ・・・」
 忍の中を味わいながら、よしみが上目で窺った。
 シーツを逆手で握り締める姿に、自然と笑みが零れる。
 舌を戻し、二本の指だけを残したよしみは、忍の中をかき混ぜながら、その傍らに寝そべった。
 初めての快楽を必死に堪える横顔に、ふっと息を吹きかける。
「気持ちいいでしょ?」
「う・・・ん・・・」
 躊躇いがちに頷く。優しく頭を撫でながら、よしみは更に言葉を繋げる。
「素直になっていいんだよ。気持ちが良いって認めれば、受け入れちゃえばいいんだよ」
「でも・・・、あぅ・・・」
「正直になろうよ。気持ちがいいって、男の子の方も言ってるよ」
 頭を撫でている手が、股間に向かって下ろされた。
 皮をかぶったままでそり立っている、ささやかな男に、しなやかな指が絡む。
「言ってごらん。気持ちが良いって」
「はう! う! き、気持ち・・・いいっ!!」
 男までも同時に責められ、堪えきれなくなったらしい。忍の口から押さえつけていた言葉が放たれた。
「はい、よく出来ました」
「うああっ! ひっ! いっ、いくううぅっ!!」
 女の中で指が暴れ、男の先端をいじっていた指が皮の上から鈴口を撫でた。
 忍が悲痛なほどの叫びを上げ、腰を跳ね上げる。
 皮の袋から溢れた精が指に絡み、女を覆う手のひらが潮に塗れた。
 腰を浮かせて喘いだ忍が、力尽きてベッドに落ちる。
 フタナリとして得られる本当の快楽を知った少女は、何も考えられない様子で喘いでいた。
 体を起こしたよしみは、それを見下ろしながら、異なる体液に塗れている左右の掌を比べた。
「ん・・・、こっちもおいしい」
 女の雫に塗れた指先を舐め、満足そうに頷く。
 左右の指を口で拭ったよしみは、動けないほど疲れ果てた少女の股間をティッシュで清めた。
 服を着せないまま、その体をシーツで覆い、その傍らに潜り込む。
「もっと覚えていこうね。女の子の、ううん、私たちだけの喜び」
 気絶するように眠りに落ちた少女に口付け、よしみもまた目を閉じた。
 翌朝、目覚めた忍を待っていたのは、困った現実だった。
 既に目を覚まし、忍の寝顔を眺めていたよしみの股間が、腰をつついている。
 困惑を浮かべて目を逸らすが、問題はもう一つあった。
 忍自身の股間で固くなっているモノ。
 男としての生理が、ごく当たり前の現象を示していた。
「おはよう、忍ちゃん」
「あ、おはようございます」
 頬を赤らめながら俯く少女に、容赦をする気はないらしい。
 体を覆っていたシーツを剥がし、互いの体をあらわにした。
 よしみは朝立ちしている股間を誇らしげに示しているが、忍は慌てて手で隠す。
「隠さなくってもいいのに」
 くすくすと笑いながら、隠している手の甲を突く。
 体をよじり、背中を向けた忍は、深紅に染まって俯いた。
「もう、ちゃんとこっちを見てよ」
 肩から腕を回し、そっと抱きしめる。
 背中に柔らかいものと固いものが当たり、忍の鼓動が跳ね上がった。
「昨日見せてあげられなかったこと、見せてあげる」
 艶かしく囁きながら、忍の前にバイブを差し出す。
 反対からはオナホールを持った手が伸ばされ、よしみが何をしようとしているのかを雄弁に語った。
「あ、朝から・・・、そんなこと・・・」
「だって、このままじゃ困るもの。私は毎朝こうやって鎮めているよ」
 明るく言い放ち、左右の手を引く。
 忍の背後で、ごそごそと身動きする気配があり、少し遅れてモーター音が響いた。
 鼻にかかった呼吸が乱れ、次第に早まっていく。
「んっ、あっ!」
「・・・あ、よしみさん」
 肩越しにそっと振り返った忍が、言葉を失った。
 そこでは、体の中にバイブを埋め込んだよしみが、いきりたった男根を擬似性器につつみ、一心にしごいていた。
 清楚でたおやかないつものよしみではなく、性欲におぼれる淫らな両性具有がそこにいる。
 忍の視線に気づきながらも、それを気にした様子は無く、むしろ誇らしげに自分の淫らさを晒していた。
「ん、ふぅ・・・。気持ちいい、気持ちいいよ、忍ちゃん」
「あ、ああ・・・」
「女の子の中が熱くって、男の子が火照ってて、頭がまっ白になるの。気持ちいい、気持ちいいよおっ!」
「す・・・ごい。こんなに・・・」
 男はこれ以上なく膨らみ、女は激しく濡れそぼっている。
 昂ぶりきった二つの性の有様に、忍は息を呑んで見入っていた。
「ね・・・え、忍ちゃん。動かして。忍ちゃんが動かして」
「え、え・・・?」
「忍ちゃんにして欲しいの。私の男の子、しごいて欲しいの。私の女の子、抉って欲しいのっ!」
 よしみの渇望に、忍は抗いきれなかった。
 昨日よしみを受け入れなかったことが、負債のように感じられる。
 震える手が、よしみの股間に伸ばされた。
 女の雫に濡れている棒を右手がつかみ、男の欲望を包む円筒を左手が握る。
「動かして! 動かしてっ!」
 押さえ切れない性欲に振り回されているのだろう。
 自由になった両手で、豊かな胸を揉みしだきながら、貪欲に求めてくる。
 その迫力に気を飲まれながら、忍はたどたどしく手を動かし、よしみを抉り扱いた。
「んああっ! もっと強くっ! もっと激しくしてっ!」
 ローションに塗れている男根から、男の臭いが漂い始めた。
 秘裂から零れる女の匂いも強く濃く、溢れる雫がシーツを汚している。
 男として、女として、余すことなく快楽をむさぼる姿に、忍の体も熱くなる。
 痛いほどに股間を膨らませ、溢れる雫を下着に吸われながら、いつしか夢中になって両手を激しく動かしていた。
「はっ! あああっ!!」
 胸から離した両腕で、よしみが頭を抱えた。
 激しく身悶え、最後の一線を前に堪えていた体が、一瞬硬直する。
 オナホールを握る手の中で、よしみが大きく膨らんだように感じられた。
 思わず向けた目の先で、よしみの男が暴れるようにのたうち、溜め込んでいた欲望を一気に吐き出した。
 女の穴はバイブをしっかりとくわえ込み、喜びの雫を控えめに噴き出している。
「あ・・・は・・・ぁ。すご・・・かったぁ・・・」
 あまりの激しさに、恐るおそる顔を覗いた忍に、よしみは満ち足りた笑みを向けた。
 うっとりと目を細め、くたっと体の力を抜き、余韻を楽しんでいる。
「忍ちゃんもしたら? 我慢しなくていいよ?」
「あ・・・」
 よしみの姿に昂ぶった気持ちが、まるで鎮まらない。
 男も女も昂ぶりを示し、頬の火照りも乱れた呼吸も収めようがない。
 そんな姿に微笑を浮かべ、よしみが気だるそうに手を伸ばした。
「よかったら、してあげようか? 楽しませてくれたお礼に」
「いえっ! い、いいですっ!」
 とんでもない提案に激しく首を振る。
 だが、よしみはそんな拒絶を意に介さず、ゆっくりと体を起こすと、忍の股間を凝視した。
「遠慮しなくていいよ。そんなに苦しそうじゃない」
 精一杯いきりたち、びくびくと脈打っている忍の男。
 はしたなく口を開き、情欲の雫を垂れ流している忍の女。
 どちらも、満足するまでは収まらないと語っていた。
「してもらうの、気持ちいいでしょ? 感じることに集中できるから」
 昂ぶりすぎた体が、腰の力を奪っていた。
 動けず、逃げられず、忍はあっさりよしみの腕に包まれた。
 豊かな胸に顔を挟まれ、その柔らかさにどぎまぎと目を泳がせる。
「気持ちよくなろうね」
「・・・はい、お願いします」
 そっと頭を撫でられると、頑なな気持ちが消えていった。
 誘いの言葉に自然と頷き、体を任せてしまう。
 よしみは忍に後ろを向かせると、しなやかな背中に張り付いた。
 胸と股間のものを押し付けながら、両手を忍の股間に伸ばす。
「んふ、すごく固い。触っただけで出ちゃいそうだね」
「は・・・い。もう・・・出ちゃう・・・」
「我慢してね。女の子の方がまだだから」
 暴発寸前の男根から手を引いたよしみは、昨日と同じように、二本の指で忍の少女を攻め立てた。
 準備を終えているその場所は、何の抵抗も見せずによしみを迎え入れ、歓迎するように緩く締め付ける。
 少女の暖かさを指先に感じながら、中指をくねらせると、腕の中で細いからだがびくりと反応した。
 それを恥らうように口を引き結び、頬を赤らめる様が愛らしく、思わず体を押し付けてしまう。
「んー、かわいいなぁ。ほんと、たまらない」
「ひ、い・・・。あ、あぁ・・・ボク、もう・・・」
 自分を見失った声と共に、よしみの指が激しさを増す。
 いじられることに不慣れな場所で暴れられ、忍が限界を訴えた。
 もとより男はぎりぎりのところにまで追い詰められている。
 これ以上じらすのは、さすがに酷いと思ったのだろう。
 よしみの右手が包皮を包み、絞るように数度指先を動かした。
「んんっ!!」
 忍が息を詰め、唇を尖らせた。
 掌の中で小さな男が跳ね回り、皮が精で膨らむ。
 女の穴は昨日と同じように潮を吹き、シーツを容赦なく汚していた。
「あ・・・はぁ・・・」
 朝一での重労働に、忍がぐったりとうなだれた。
 よしみは小さな額を掌で包み、そっと胸に抱き寄せた。
 柔らかな枕を得た少女は安らかに微笑み、甘えた目を向けてくる。
「気持ちよかった?」
「・・・うん」
 男だけでなく、女をまさぐられての快感に、昨日までだったら反発していただろう。
 だが、今日の忍は、はにかみながらも素直に頷いた。
 よしみは優しく微笑み、ご褒美のように忍の頭を撫でた。


 色々と汚れたシーツを洗濯機に放り込み、遅めの朝食を終えたよしみは、忍を誘って買い物に出かけていた。
 長めのスカートを揺らして歩くよしみの傍らに、タイトなジーンズ姿の忍が並び、傍からは美男美女のカップルに見える。
 だらだらと歩き、気になる店を見つけては飛び込む。
 そんな無計画な買い物の末に、よしみはいくつもの紙袋をぶら下げていた。
 それでも足りないのか、また違う店に飛び込み、女物の服を嬉しそうに見て回っているよしみを、忍はどこか醒めて見ている。
「よしみさんは、女なんですね」
「ん?」
 どこか不機嫌な呟きに、よしみが振り返った。
 周りに他の客がいないのを確かめ、緩やかに首を振る。
「今は女の子なの。買い物の時は、その方が楽しいでしょ?」
「今はって・・・」
「男の子でいるほうが良い時にはそうするよ」
「そんな、軽く・・・」
 常に思い悩んでいる自分が馬鹿馬鹿しくなるほど朗らかに言い切られ、忍が言葉を失う。
 そんな少女に小首をかしげ、よしみはにこやかに頷いた。
「せっかくこんな風に生まれたんだもの。両方を楽しまないともったいないじゃない」
「もったいない?」
 それは忍にはない発想だった。
 自分の体を呪い、こんな体に産んだ父母を恨み、周りの目を恐れて生きてきた。
 早く男になり、この苦しみから解放されたいと、そればかりを考えていた。
 それなのによしみは、この忌まわしい体を楽しんでいるという。
「嘘です、そんなの」
 そうであってくれなければ、自分があまりに報われない。
 そんな気持ちが顔に出ていたのだろう。よしみは寂しそうに頷いた。
「うん、嘘だよ」
 あまりにあっさりと肯定され、忍はまた言葉を失った。
「だけど、そうとでも思わないと辛いだけだもの」
 ぽつりと漏れた本音は、あまりに悲しいものだった。
 ひた隠しにしていただろう気持ちを暴いた後悔が、忍に襲い掛かる。
 後悔と困惑に包まれる少女を助けるように、よしみはぱっと表情を切り替えた。
「忍ちゃんも楽しもうよ。女の子らしく、好きな服を見せ合ってはしゃごうよ」
「あ・・・はい」
 作られた明るさが、胸に染みる。
 それでも、忍は精一杯の明るさでそれに答えようとした。
 よしみと共に服を選び、試着し、褒めあう。
 最初は意識してのことだったが、いつしかそれが楽しくなっていた。
 思い切って、スカートも試着してみようか。
 そんな気持ちにもなり、気に入ったスカートの一つに手を伸ばしかける。
(でも、今更・・・)
 制服以外でのスカートは、頑なに拒み続けてきた。
 男になろうという決心が、女であることを拒み続けてきた。
 今になって、スカートを選ぶのはどうしても躊躇われた。
「好きなものを選べばいいのに」
 肩を竦めるよしみの声を聞きながら、忍は伸ばしかけていた手を戻した。
 三時を過ぎてよしみのマンションに戻った二人は、ポストに入れられていた包みを荷物に増やして部屋に入った。
 買ってきた袋を隅に置き、届いていた荷物を手に寝室へと向かったよしみが、いたずらっぽい笑みでそれを忍に差し出す。
「これは・・・」
 箱から出されたものの姿に、忍が赤らむ。
 よしみが使っていたものよりも、一回り小さいオナホールがそこにあった。
 即日配達のサイトででも注文したのだろうが、それはあまりに露骨なプレゼントだった。
「ねえ、使って見せてよ」
「ここで・・・ですか?」
「うん」
 嬉しそうに頷かれても困る。
 もじもじと体を揺すり、なんと断ればいいのかと困惑する忍の前で、よしみが企んだ笑みを浮かべた。
「えいっ!」
「な、何するんですかっ!」
 いきなり服を脱ぎ、豊かな胸を露にする。
 誇るように掌で胸を支えたよしみは、咎める声を気にも留めず、たゆたゆと揺すって見せた。
「あははははっ、おっきくなってきた」
「し、仕方ないじゃないですか! そんなの、見せられたら」
「うん、仕方ないよね。だから、はい」
 なにがだからなのか判らないまま、忍は思わずそれを受け取っていた。
 淫猥な形をした穴を見つめ、ごくりと喉を鳴らす。
「ほぅら、しちゃっていいんだよ」
「でも、は、恥ずかしい・・・です」
「なんで? 今更じゃない」
「嫌ですよ! 自分でしてるのを見られるなんて!」
「もう、仕方ないなあ・・・」
 不満げに呟き、下も脱ぎ捨てる。
 全裸になったよしみは、既に勃起している股間を揺らしながら、自分用のオナホールを持ち出した。
「じゃあ、見せ合いっこしよう。いっしょにオナニーしよう」
「ええっ!?」
 何の解決にもならない提案に、忍が驚愕を浮かべる。
 よしみは構わずにベッドに上り、取り換えられたばかりのシーツの上であぐらをかいた。
 そそり立つ巨根の下に、熟れた女が口を開き、忍を誘っている。
「ほら、こっちだよ」
 体の向きを変え、正面をぽふぽふと叩く。
 おずおずとベッドに登った忍は、よしみの正面に正座し、相手の出方を伺った。
「んふ、お先に」
 つまらない駆け引きなどするつもりは無いのだろう。
 よしみはすぐにローションを垂らし、オナホールを自分に被せた。
 ずちゅずちゅと淫らな音を響かせながらそれを動かし、うっとりと宙を見上げる。
 空いている手は当たり前のようにバイブを握り、飢えた穴を満たし始めた。
「ふぅ・・ん、見てる? 忍ちゃん、見てる?」
「うわ・・・、うわ・・・うわぁ・・・」
 昨日も見せられた光景だが、その迫力に気おされずにはいられなかった。
 呼吸に合わせて出し入れされるバイブと、同調して動くオナホール。
 それは次第に速度を増していき、不意に緩む。
 切なげに眉を寄せながらも、更なる快楽を求めるよしみの姿に、忍は自分を押さえる無意味を感じていた。
「ん・・・ふぅ・・・う・・・」
 忍の手が、握っていたオナホールを自分にあてがった。
 先っぽに柔らかな抵抗を感じながら、人工的に作られた女陰を割り開いていく。
 貫通した先に突然の弛緩を感じ、堪えきれずに息を吐いた忍は、締め付けを求めて筒の中へと自分を戻し、改めて突き上げた。
 男の昂ぶりに女が同調するのはよしみと同じで、忍もまた、空いている手を股間へと伸ばしていく。
 覚えてしまった快楽に、逆らうことはできなかったのだろう。
「は・・・ああ、すごい、よしみさん、すごい」
「忍ちゃん、かわいい・・・。いっしょうけんめい動かして・・・」
 互いの股間だけをじっと見つめあいながら、一心不乱に手を動かす。
 不毛といえばあまりに不毛なその行為は、忍が先に限界を訴えた。
 眉を寄せ、息を詰めたかと思うと、オナホールを突き抜けた先端が、ぶくりと膨らむ。
 遅れて皮の間から白い涎を零した忍は、速さを恥じるように俯き、上目でよしみを伺っている。
「はあ、かわいい・・・。待っててね、すぐに追いつくから」
 まだ余裕があるのだろう。
 よしみがオナホールを持つ手を早めた。
 精を零しながら脈打つ少年と、その根元で涎を零す幼さを残した女。
 最高のおかずを前に、一心に自分を高めていく。
「んっ! はああっ!!」
 息を詰めた一瞬、よしみの先端から精が迸った。
 勢いよく飛び立ったそれは、正面に座る忍の胸を汚し、シリコンの筒に挟まれている少年に降り注いだ。
 自分の出したものが、忍を汚すその様に、感極まったのだろう。
 よしみは呆けた顔で倒れ掛かり、自分と忍が混ざり合っている精を、嬉しそうに口に含んだ。
「うあ・・・」
 体を汚している精を拭い去ったよしみは、そのまま忍のものへと向かった。
 オナホールから顔を出している先端だけを口にし、舌で皮の中をさぐる。
 出したばかりのところをいじられ、忍が顎を仰け反らせた。
 堪え切れなかった精があふれ出し、よしみがすぐに吸い取っていく。
「まだ、大丈夫だよね?」
 さらに二回精を絞った上で、よしみは股間を開いて忍を誘った。
 淫猥な肉の色に唾を飲み込んだ忍は、四度の射精を経ても勢いを失っていないものを握り、ゆっくりと頷いた。

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最終更新:2009年11月14日 11:09