なんとなくの予感は、いまや逃れようもない現実だった。
 今朝。目が覚めると。
「……あ」
 掛け布団が引っぺがされていて、パジャマの下がぱんつごと下ろされていて、それによって朝勃ちした私のおちんぽが剥き出しになっていて。
 彼女が、今、まさにそこに、大口を開けてしゃぶりつこうとしている瞬間だった。
 膝蹴り。前蹴り。
「痛い! わあっ!」
 倒れた彼女に、ついげきのストンピングを加える。
「やめっ! いやっ! やめてくださいみのりさん! ごめっ、ごめんな……痛あっ!」
 見た目の派手さの割に力を込めていないのは、別に手加減とか優しさではない。あまり強く痛めつけると、彼女は逆に悦んでしまうからで、それが面倒なだけだ。
「あんたの寝る場所は押し入れだって言ってるでしょうが」
 びしっと、親指で、まさにそのまま、それ以外の何物でも有り得ない押し入れを指差す私。
「寝てませんよ! みのりさんがあんまりにも苦しそうにめすちんぽをお勃起させているのが忍びなくて、だからぺろぺろしたりちゅぱちゅぱしたりはもはもしたりしてご奉仕してあげたく……痛あっ! み、耳! 耳を足の指でつねっちゃダメですー!」
「擬音を多様すると誤字チェックが面倒なのよ。やめてよね」
 というか耳だったのか。彼女の頭についている小さな羽は。
 そして、その感触と彼女自身が『痛い』とコメントしたように、それは生きている彼女の器官だ。故に、このような人外の器官を持つ彼女は人間ではありえない。
 本人いわく悪魔であるそうだが……疑わしい限りである。
「私はここにいますよ? 確かに今、みのりさんのおみ足で踏ん付けられていますよ? あぅん! もっと踏んで下さい!」
「いや、あんたの実在性は疑っちゃいないわよ。ついでに、変態性も」
 私は彼女から足をどけて、ベッドから降りた。そのままクローゼットに向かい、パジャマを脱ぎ始める。
「ほう? では、私の何を疑われているのですか?」
 彼女が私の背後へ擦り寄り、しかし着替えの邪魔にならない距離で止まってから、私に尋ねる。彼女は、こういった距離の取り方が上手いのだ。
「例えそんな姿をしていとも、人間でないとしても、あんたが『悪魔』と定義される存在なのかはわからないわ。故に、あんたの言うことにも現実性があるとは言えない」
「あー。そこからですか。勢いでなんとかなると思ったのですが」
「勢いで信じるわけがないでしょう」
 私は半身だけ振り向き、ばつが悪そうに頬をひっかく彼女を見た。
「天使が、人類を滅ぼそうとしているなんて」
 私がそんなことを言っても、表情に変化はない。
 突如現れ、当然のごとく居座った彼女が、やっと話した真の目的。
 彼女達『悪魔』が『天使』と呼び敵対している存在が、人類をこの世界から一掃しようとしている。
「やっぱり、逆って感じがするわ。世界を滅ぼすのは悪魔の仕業でしょ? なんで天使が世界の敵で、悪魔がその手から守ろうとしてるのよ」
「世界ではなく人類ですよ? 人類がいなくなっても、世界は滅びたりしません」
 人は死せども神は生きますから。と彼女は付け加える。
「私達悪魔は、悪を為すこと、それを語られることによってこの世界に『在れる』存在です。故に、それを観測する現存在たる『人間』や『神』は必要不可欠なのです。世界を滅ぼすだなんてとんでもない!」
「なら天使はどうなの? そいつらは、人間が必要ないって言うの?」
「彼らは……」
 彼女はそこで一度口ごもり、逡巡し、それでも意を決したという風に言葉を続けた。
「彼らは、現在の人類を『劣悪種』と呼び、不完全な存在として蔑視しています。無論、すべての天使がそうだというわけではないのですが、最近になって天界のトップが入れ代わり、人類を滅ぼそうという考え方が支配的になってしまっているのです」
「何を勝手な……人を害虫みたいに……」
「彼らにとっては、人類とはそれそのものなのですよ。世界を劣化させ続ける、愚かで猥小な存在……いえ。私は全く、そのようには思っていませんが」
「自称悪魔にフォローされてもなんの慰めにもならないわよ」
「そうですか……ですよね。すみません……」
 珍しく、しおらしく、彼女はしゅんとして目を伏せた。彼女なりに、思いやりのようなものは持ち合わせているらしい。
「別に。気にしないから良いわよ。他人の評価は参考にすべきだと思うけど、それに流されてるようじゃやってられないわ」
 思わず、私の方がフォローを入れてしまう。どうも私は、彼女に対しドライになりきれないようだ。
 いや、実際は甘いと言われても良いくらいだ。押し入れの中とはいえ、私は彼女に居場所を与えてしまっているのだから。
「そうですか。ですよね!」
 私の言葉に顔を明るくする彼女を、かわいらしいと思えてしまうのだから。
 でも、えっちなアプローチはマジでやめてほしいというのは事実。
「で? 天使は人類を滅ぼしてどうしようって言うの? 人類を悪魔ごと滅ぼして、世はこともなしって?」
「いいえ。天使もまた、神の愛を現存在たる人間に伝えることでこの世に在れる存在。人類がいなければ、悪魔と同じく滅んでしまいます。ですが……」
「ですが?」
「天使は、現存の人類を滅ぼした後、自らの手で新たな人類を生み出そうとしています」
「……?」
 話が少しややこしくなってきた。
 天使は人間を劣悪種だとして、一掃しようとしている。しかし悪魔は人間がいなくなると存在を維持できず、これはまた天使も同じ。ゆえに天使は一掃するだけでなく、新たに人類を生み出そうとしている。
 つまり悪魔が止めようとしているのは、人類が新たに生まれること……ということになるのか?
「……ま、まあ。この話の続きはまた今度にしましょう。それより――」
「――あ」
 彼女の視線を追って、気付いた。目覚まし時計に表示されている時間が、ずいぶん進んでしまってる。
「早く行かないと、学校に遅刻してしまいますよ? みのりさん。まさか、悪魔といちゃいちゃしていて遅れましただなんて、先生には言えないでしょう?」
 そう言って、彼女は、やはり悪魔的に笑いかけるのだった。

 前回までのあらすじ。
 ふたなりであること以外は特にこれといった特徴もない女子高生である私――立木みのりの前に、悪魔的な耳と尻尾を生やした悪魔的な美少女が現れ、家に居着いた。そして、それからしばらく後、私は半透明の不気味な生物に襲われた所を、悪魔的な彼女に救われた。
 そして今朝、悪魔的な彼女の言うことには、私にあの半透明を遣わせたのは、悪魔の敵たる天使であるらしい。
 うーん。
「まるで漫画ね……」
 それも、掲載順位では最下位をうろつくタイプの微妙な感じの。
 落ちモノでえっち風味でしかも悪魔だなんて、安直すぎるぞ。まあ風味もなにも、すでに露骨で逃れようもなくえっちな目に遭ったのだけど。
 そこはそれ、美少女たる彼女が護ってくれるのだろう。というか、あんな目に遭うのは一回で十分だ。そうそうあってたまるもんか。
 大体、なぜ私が襲われなければならないのだろう。彼女は結局、肝心要のその部分を説明していない。知らないというわけではなさそうだが……
「んー」
 やばい。思い出してしまう。
 半透明に与えられた感触。快感。彼女に私が抱く妄想。それらが混ざって合わさり、下腹部に流れてくる。
 描写していないが、あえてしなかったが、その時は意図して無視していたが、今朝の彼女も下着姿だった。
 それも、かなり際どい、いわゆるベビードールとかいう、魅せるためのものだ。
 赤い色をしているにも関わらず、その薄い生地の上からは、彼女の乳首の桜色すらはっきり確認できた。
 やわらかくて、白くて、その一番高い所で尖っていた、かわいらしい乳首。
 触りたくて、つまみたくて、こねまわしたくて、しゃぶりつきたくてたまらない、それ。
 かわいいよう。かわいいよう。かわいすぎるよう。
 たまらないよう。
「……だめ」
 膝蹴り。前蹴り。
 突き放す。切り離す。意識の外へ追いやる。
 それはダメだ。ダメなのだ。
 彼女は許すだろう。彼女なら受け入れるだろう。彼女なら甘えさせてくれるに違いない。
 でも、私は。私には、許せない。
 私はごく普通の女の子なんだから。
 女の子に、こんな妄想を抱いてはいけない。私は普通なのだ。
 でなければ。そうしなければ。
「痛っ!」
 衝撃。
 バランスが崩れる。立て直せない。転ぶ。手を。
 妄想に気を取られすぎた。曲がり角の向こうから飛び出して来た誰かに、まともにぶつかってしまったようだ。
 そしてそれを理解した時、私は『彼女』を押し倒してしまっていた。
「う……うぐ……」
 銀髪。だなんて初めて見た。
 なのに、肌が黒い。健康的で、コーヒーゼリーのような褐色だ。年齢は私と同じくらいか。いや、そう見えるのは服装のせいかもしれない。
 ともかく、白いセーラー服を来た真っ白な女の子。ついでに、眼鏡もかけている。
 そんな彼女を、私は押し倒してしまっていた。両手を彼女の頭の横につく形で、覆いかぶさるような体勢。
「ご、ごめんなさいっ、よそ見していて……」
 少女は仰向けに倒れていたが、頭は打っていないだろうか。もし怪我をしていたら……
「問題ない」
 ほとんど唇を動かさないまま、少女は答えた。するりするりと私の下から抜けて、何事もなかったかのように立ち上がる。
 四つん這いになった私だけが、取り残された。
「あの、本当に大丈夫?」
 そういえば、この銀髪で褐色の子。痛がっている様子がない。悲鳴を上げたのは、私だけだ。受け身すらとっていなかったかもしれない。
 さっき私の下から這い出た時も、動きがなめらかすぎた。『溜め』とか『癖』が全くない、出来の悪いアニメのような、無駄のなさがぎこちない。そんな動きだったような……
「鞄。返して」
 しかし、私の思考はそこで中断する。少女のものと思しき鞄が、足の間にあることに気がついたからだ。
 私がそれを差し出すと、少女はありがとうとだけ言い残し、すぐに踵を返し、去って行ってしまった。
「……うーん?」
 いざ少女がいなくなると、抱いたはずの違和感が霧散していく。あんなに目立ちそうな恰好なのに、受ける印象はひどく曖昧だった。
 まあ二度と会うことはないだろう。制服違うし。そういえば普通に日本語を喋っていたけど、帰国子女だったのだろうか。
 とか。だなんて。そんなことを考えていた。
 暢気すぎた。
 その時の私は、自分を取り巻く現実がどれほど変貌したかについて、あまりにも無頓着だったのだ。

 その少女と二度目に会ったのは、その十数分後だ。
 朝のホームルーム。少女は黒板の前に立ち、担任の先生から紹介されていた。
 つまり、転校生だったのだ。
 なるほど。白いセーラー服なんてこの辺りでは見ないなと思っていたら、前にいた学校の制服だったのか。そして、偶然にも、私と同じクラスに転入してきた。そういうわけか。
 などと、私は暢気に構えていた。
 だから、その直後に起こった異常について、気付くのが遅れた。
「結界の構築を完了。目標達成まで、能力使用限定解除を要請」
 いや。そうだ。
 少女は、最初から、自己紹介などしてはいない。勝手に教室に入ってきて、ぶつぶつと何かを呟いていただけだ。
 担任も、他の生徒も、その呟きを聞いた途端、様子がおかしくなっていた。
 まるで背景の一部であるかのように、現実味がない。動いて、生きてはいるけど、触れる気がしない。
 なんだこれは。何が起こった。
 これでは、まるで。
「要請、承認。これより、作戦を開始する」
 気付いた時にはもう遅い。すでに少女は飛び出していて、そのたった一蹴りで私の机に着地して、
「はも」
 唇を、私のそれに、押し付けて来た。
「!?……!?」
 反応する余裕もない。
 そしてそれだけではなく、少女は舌を舌を突き出して、ねじ入れてきた。私の舌と絡めて、吸い上げる。
 いつのまにか、少女の手は私の頭の後ろに回っていて、頭を完全に固定されていた。逃げ場はない。
 ちゅう。ちゅ……ぷちゅ……
 それは、キスというには乱暴すぎた。しかし、にも関わらず、私はいつしか、自分から少女に舌を絡めていた。
 やわらかな少女の舌の味を確かめる度、背筋がぞくぞくと波打つ。止まらない。
 舌だけでなくて、もっと。頬の裏、歯茎。唾液と一緒に、味わう。貪る。
 他人に舌を入れられることも、他人に舌をねじこむことも初めてなのに、気持ちが良くて止まらなかった。
 どうしてこんなことになったのかなどという思いは、すでにどこにもない。
「……グライダー注入。侵入開始」
 そんな呟きが聞こえた気がしたが、たいした問題ではない。
「第一圏に接触」
 それよりも、体が熱い。すべてが脈打っている。息が乱れる。整えられない。
 そんな私の前で、少女はおもむろに服を脱ぎ始めた。教室のド真ん中でだ。
 いいや、関係ない。そいつらはもう、ただの背景だ。
 意味がない、存在だ。
 少女がボタンを外して、セーラー服の前をはだける。すでにブラジャーの類はつけていなくて、褐色の肌が露になった。
 豊満とは言えないが、やせぎすというわけでもない。乳房のふくらみは掌ですっぽり包める程度で、乳輪は小さく、乳首も桜色をしていた。
 私は、そこへ唇を寄せ、しゃぶりついた。
 抱き着くように。縋り付くように。
 唇ではみ、舌で転がす。柔らかく、尖った感触と体温を貪る。
 少女は、声一つ上げることはなかった。人形のように微動だにせず、私を受け止めていた。
 不意に、舌に甘い何かを感じた。少女の蕾を舐める度に、その味が濃くなる。
 信じられないことに、それは少女の乳首から漏れた母乳だった。
 私はさらに夢中になって、少女に吸い付いた。吸えば吸うだけ、それは私の口に広がっていく。
 その甘さは、舌をゆっくりと侵し、脳髄にまで染み込み、すべてを痺れさせていく。
「合体型ウィルスの注入に成功。第二圏から第五圏までのゲートを無力化」
 いつのまにか、私は少女を床に押し倒している。馬乗りになって、少女の顔へ、自分のおちんぽを押し付けていた。
 すでに、血管が浮き出るほどに勃起している。痛みすら感じるその猛りへ、少女は躊躇なく唇を寄せる。
 亀頭をくわえると、少女の舌はまるで別の生き物であるかのように激しく動き、私にからみついてきた。
「うあっ……ああ!」
 あまりの刺激に、思わず腰を引いてしまいそうになる。
 が、私の尻に回された少女の手がそれを許さなかった。そればかりか、少女の指は私のぱんつの隙間から潜り込み、尻肉をじかに揉み始める。
「あう……! ううっ……あみゃあ!」
 おちんぽを舐められるのも、尻を揉まれるのも、初めてだった。
 だから、こんなに気持ち良いとは思わなかった。
 他人に、触れてもらえることが、こんなに。
『第六圏に侵入。ウィルス有効。潜航を続行』
 声が、頭の中に響く。
 あるいは、それは私の声かもしれない。わからない。区別がつかない。少女は私の思うままに私を愛撫し、私は少女の思うままにその指を唇を舌を受け入れる。
「は……うあ……!」
 少女の舌が、おちんぽの鈴口に触れた。入口を、ほじくられる。
 記憶。半透明に、そこを犯された。
 けれど心に浮かんだのは恐怖ではなく、ただただひたすらに快楽だった。
 私自身すら触れたことのない場所に、触れてもらえる。
 もっともっと。私に。私に。少女に。
「第8圏に接触。エスの反応を確認」
 もはや、私には、まともに事態を認識する力は残っていなかった。いつ服を脱いでいたかも、いつ少女が私の下から抜けて、逆に私が倒されていたかも、いつから少女の頭を腿で挟み、抱えるように白い髪をしきりに撫で続けているのかも、わからない。
 刺激があって、快感があって、それを求める本能がすべてで、私と言う意識はどろどろに溶けて、合わさっていた。
「うゅ……ゅ……ゅあ!」
 少女が、きゅうと私を吸い上げてくる。その口にあるすべての肉がおちんぽに絡み付き、絞り上げてくる。
 私は舌を突き出して、来るべき時が近いことを感じていた。
 吸って。吸って。吸って。
 私のおちんぽ。もげちゃうくらいに吸い上げて。
 舌でぺろぺれして、唇ではもはもして、しこしこしてちゅうちゅうして、いっぱいイかせて。
 いっぱい出すから。いっぱいあげるから。私もいっぱい出すから。出ちゃうから。
 もっと、もっと、もっと。
「おおっと! そうは問屋が下ろしませんよ! 天使さん!」
 ちゅぽん。
 不意に、唐突に、いきなり、前フリなく。
 少女が、私から離れた。
 いや。離された。
 少女を私から離し、背後から捕まえたのは、彼女――悪魔の、彼女だった。
 背後から少女の乳首をつまみ、両足を器用に使って少女の足を開かせ、スカートの中へ手を差し込んでいる。
「結界内に魔の存在を検知……どうやってここに」
「正面から堂々と、ですよ。中々面白い防壁迷路でしたが、少々手段が古い。半分まで解除できれば、後はアンカーを打ち込んでそこまでですよ」
「……状況K。敵対存在を伝承レベルの魔物と推定。プランDを発動」
「おや? いわゆるピンチってヤツですか? しかし……逃げられませんよ。あなたは」
 悪魔の彼女は、少女のスカートをつまみ、持ち上げた。少女はぱんつもはいていなかったので、それだけで局部がまる見えになる。
「わあ……」
 そこには、女の子のそれとは別に、私と同じもの――おちんぽが存在していた。
「全く。一気に第八圏まで侵入するだなんて。普通なら正気を失っていますよ? それとも、それが天使のやり方ですか?」
 いや。しかし。少女のおちんぽは私とは違っていた。肌の色と同じ褐色の皮で先端までが覆われていたし、大きさも私の半分くらいしかない。これではまるで、子供のそれだ。
 何、これ、かわいい。
 触って、揉んで、こねて、いぢめてみたい。その情動を止められない。
「自分でやったことの落とし前くらいは、つけて貰いますよ? 今のみのりさんを、止めることは難しいですし」
 構わず、今度は、私が少女へしゃぶりついた。
 子供みたいに小さくてやわらかいおちんぽを、舐めて、はんで、吸い上げる。
「いくら天使といえど、人間に侵入するとなれば、対象の影響から逃れることはできますまい。みのりさんからの侵入に対しては、あなたは無力なのですよ」
 ああ、ごめんね。ごめんね。
 おちんぽ寂しかったよね。触って欲しかったよね。いぢめて欲しかったよね。
 裏筋をちろちろされるのが好き? 皮ごとしこしこされたい? さきっぽを舌でほじくった、根本から全部くわえこまれて、全部を吸って欲しいの?
 わかるよ。我慢しなくていいよ。遠慮しないで?
 あなたが気持ち良いと、私も気持ち良いから。
「確かに。これから全人類を滅ぼさんとするあなたがたにとって、人一人の正気などどうでも良いのでしょうが……それにしても、杜撰なやり方です。第九圏まで侵入してセフィロトの実を手に入れたとしても、そこから帰ってこれなくなる可能性もあるのに……」
 少女が少しずつ大きく、固くなる。私の口と舌を、喜んでくれる。それと同調して、私のおちんぽまでもがびくんと跳ねた。
 私は両手を回して、少女のお尻を掴んだ。やわらかいその肉を、思うままに弾ませる。
 少女の脚が、私の頭をかき抱いた。より私を、密着させる。
 一体、それはどちらが望んだことなのか。
 いいや。もうそんなことは、どうでも良いんだ。
「私は……実験体の……五号でしかなく……他にも、同様の個体が……」
「グッジョブです。みのりさん。上手いこと逆侵入に成功しましたね……しかし、実験体? あなた、まさか……」
 ふと見上げると、少女は舌を突き出して、頬を赤く染めていた。いつのまにか、人形のようだった少女に表情がある。
 いや、しかし。なぜだろう。鏡を見ているようだ。少女は、きっと私と同じ顔をしているだけだ。あるいは、私が少女と同じ顔になっている。
 それもこれも、先程から少女の女の子に指を入れ、掻き回している悪魔の彼女の仕業なのだ。私にはわからなくても、少女の方がそう理解している。
「創造物……やはり、天使もどきですか……しかし、不完全だ。そうかだから直接みのりさんを……」
 びくん。
 少女が、体をのけ反らせた。
 同時に、私の口の中で、熱がはじける。脈動とともに、少女の精液が私に注ぎ込まれる。
 苦い。
 しかし、私はそれをすべて飲み込んだ。少女は、そうされたがっていたから。
 悪魔の彼女も、絶頂に震える少女を抱きしめている。
「んは……は、はあ……!」
 苦さより強きは、匂い。
 少女の精液の匂いが、自分の体の内側に染み込んでいく。
 たまらず私は立ち上がり、絶頂にほうけている少女の顔にむけて、おちんぽをしごき始めた。
「おや。日本の文化、ぶっかけですか。みのりさんなのか、この天使もどきなのか、どちらのシュミなのですかね」
 悪魔のように笑みを浮かべて、彼女がはやしたてる。
 少女は舌を突き出して、じいと私を見ていた。私の放つ精を、確実に受け止めるために。
 私の匂いを、あなたにあげる。私を、もっと感じて。
 私に触れて。
「あうう……っう!」
 びゅくん。びゅくん。どく。どく。
 一度止められてしまったからか、いつになく量の多い射精となった。指でつまめるほどに粘った私の精液が、少女の美しい褐色を白く汚していく。
 まるで。私の情欲そのものが吐き出され、飛び出し、じかに少女にとりついていくかのようだった。
 少女もまた、それを悦んだ。指でのばし、舌でなめとり、私の匂いを体に取り込もうとする。
 私は。
 それを見ながら。
「はい。リンク終了。天使もどきの精液が、注入されたグライダーを分解していたようですね」
 絶頂に達した衝撃で、意識すらをも白く塗り潰し。
 糸が切れるように、気絶した。

「今日から転校してきた、九十九二三だ。ツクモフミな。京都の探偵みたいな名前だからといって、いじめたりするなよ」
 気絶から覚めると、そこはいきなり朝のホームルームだった。
 ……状況が読めない。
 あの少女は、さっきまで私と交わっていたのに。そんな様子が全くない。
 ではあれは、あれすら、単なる私の妄想なのか。
 白昼夢なんて、初めて見た。
「それと、転校生はもう一人いる」
 しかし少女は私に襲い掛からないし、クラスの子も背景のようになったりはしない。
 それに、少女の顔に、ほんの少し表情があるような。
「百合ヶ丘りりむ。入って来て良いぞ」
「はーい」
 元気良く、頭の羽や尻尾やらを振り乱し、制服姿の彼女が教室に現れた。
 ……え?
「はじめましてー! 私、悪魔のりりむでーす! あくまで女子高生でーす! あくまでも仲良くしてくださいねー!」
「ちょ、ちょっと待てー!」
 私はさすがに立ち上がり、指摘する。
「さすがにそれはマズすぎない!? ていうか、アリなの!? 自分から正体バラしていいの!?」
「大丈夫ですよ。ちょっとこの学校の世界律を書き換えただけですから。私が悪魔と認識されるのはこの学校内だけであり、この学校の外には『りりむちゃん』は居ないことにされます」
「うん! 意味わからないけど、すごくチート臭い裏技なのはわかった!」
 一瞬で現世に魔界を打ち込める彼女のことだ。この学校を魔界にしてしまうのも、簡単なのかもしれない。
 チートっぽいが。とんだご都合主義だが。
「おお。そういえば立木の後ろと隣の席が空いているな。そこに座っておけ」
「ちょ……先生? ここは確か空席じゃなくて……あれ? 思い出せない! 誰かいたはずなのに、誰がいたかわからない!」
 とんだ改変がなされていた。
 混乱する私を尻目に、自称悪魔の彼女が私の隣に、天使もどきの少女が私の後ろの席に座る。
 二人とも、私を見ていた。
「一応、天使もどきさんのリンクは切断しました。しかし、天使がそれで諦めてくれるわけもないでしょう……これからはもっと大変になりますよ。みのりさん」
「……わかってるわよ」
 私の心の有様など意にも介することなく。
 世界は、理不尽に加速を続けていた。

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最終更新:2010年10月28日 12:41