「ねえ美千花、夢精ってしたことある?」
 テレビゲームの画面を凝視したまま、まことがおもむろに切り出した。
 雑誌に落としていた視線をあげて、美千花は「はあ?」と目を丸くする。あまりに藪
から棒な質問だったため、彼女の声は妙に上ずっていた。
 しばしの間、沈黙が落ちる。
 エアコンの吐き出す乾いた風音と、テレビゲームのBGMが狭い室内を満たしていた。
二人はいま、梅雨の湿気から逃げるために、まことの部屋で気だるい土曜日の午後
を過ごしているさなかであった。
 続きを待ってもまことはなにも話さないため、美千花が流れを継ぐ。
「なに言いだすのよ、いきなり」
「こないだ友だちとそういう話をしたんだ。夢精って、寝ている間に射精しちゃうことなん
だって。すごく気持ちいいんだって。美千花、知ってた?」
 そこまで言って、ようやくまことは画面から目を離す。
 口にしている言葉はとても同い年の女の子に向けるべき言葉ではないのだが、まこ
との表情にはまったく邪心というものがない。まるで偶然発見したゲームの裏ワザをこっ
そり教えてあげているような、そんなおもむきがあった。
 美千花はバツが悪そうに、肩にかかった髪に手櫛を入れる。
「……したことない。興味もない」
「えー、ウソだあ」
「ウソじゃないっ。なんでウソつかないといけないのよ!」
「だって美千花って、ウソをつくときいっつも髪の毛イジるんだもん」
「!!」
 慌てて髪から手を離す美千花。慌てふためいたその姿を見て、まことは心底楽しそ
うに笑う。
「お姉ちゃんに教えてもらったの。美千花のクセとか、いっぱい」
「むう」
 クセ"とか"、の部分に一抹の不安を覚えつつ、美千花は沙織の顔を思い浮かべる。
同時に、彼女に良いように翻弄されている自分の姿も。美千花の頬が、さっと朱をさ
した。

「で、夢精したことあるんでしょ。どうだった?」
「どうって……。どうもしないよ。起きたら出ちゃってた、それだけ」
「えっちな夢とか見た? キモチよかった? 教えて、教えてっ」
 キラキラと顔を輝かせてまことが美千花につめよる。
 こういう表情をしているときのまことは、どれだけ断ってもしつこく食い下がってくるとい
うことを、美千花は痛いほど知っている。
 まことはどこまでも純粋で、言動にまったく悪意がない。それが彼の長所であり、短
所でもある。美千花の好きな部分でもあり、翻弄されてしまう部分でもあった。
「もう、仕方ないなぁ。どうしてもって言うなら、教えてあげなくもない、けど」
 美千花は芝居がかった仕草で溜め息をつくと、雑誌を閉じた。そして、やはり今回
もまことに翻弄されてしまうんだな、と苦笑する。いつだって最後は美千花が折れて、
まことのペースに合わせてしまうのだ。
「でも一つだけ約束してくれる? このこと、絶対に他の人に喋っちゃダメだよ。沙織ち
ゃんにもね。まーちゃんだから、話すんだよ」
 いつの間にか二人は肩がつくほど身を寄せ合って座っていた。ナイショ話をするみた
いな美千花のささやき声に、まことは溢れんばかりの笑顔で頷いた。



 よく覚えているわ。
 それはちょうど一年ほど前、夏休みを目前に控えた蒸し暑い夜のことだった。
 冷房のついていない部屋で寝ているわたしは、その晩、寝苦しさのあまりウトウトし
たり目を覚ましたりを繰り返していた。
 だからかな。そのときに見た夢を、わたしは夢なのか現実なのか判断できずにいた。
なにしろ、ほとんど寝ているんだか起きているんだかわからない状態だったから。
 夢のなかで、わたしは学校の教室にいた。
 目の前には、先生がいる。ううん、本当は先生かどうかわからない。知らない女の
人、って言ったほうが正しいかな。奇麗な顔をした、おとなの女の人がいたの。
 突然わたしは、その先生に抱きしめられた。ひょっとしたら、自分からしがみついたの
かもしれない。ともかく、先生の身体はすごく柔らかくて、あったかかったのを、覚えてい
る。
 わたしは「先生、先生」って甘えた声をあげながら、先生の胸に顔をすり寄せた。
服の上からでもわかる、おっきな胸にさわってみたくてね。
 女の子なのに、おっぱいに夢中になっちゃうなんて、へんでしょ。でもその時のわたし
は、目の前の女の人の身体にさわりたくてさわりたくて、仕方なかったの。
 ――服、脱ごうね。
 はあはあ息を荒げてお乳を揉みくちゃにしているわたしに、先生が言った。頭を撫で
てくれる感触がすごくリアルで、わたしはくすぐったさのあまり身体を震わせてしまった。
 わたしたちは剥ぎとるみたいにお互いの服を脱がせた。ボタンをはずすのももどかしく
て、わたしは先生のブラウスを無理やり引きちぎった。
 ぶるん、って。誇張でもなんでもなく、先生の大きなお乳が弾みながら出てきた。ブ
ラはつけてない。わたしはママ以外のおっぱいなんて見たことなかったから、思わず見
惚れてしまったわ。
 ――おっぱい好きなんだね。好きなだけさわっていいのよ?
 先生にそう言われたわたしは、"おあずけ"を解かれた犬みたいに、先生のお乳に
吸いついた。

 とろけそうなほど柔らかいお乳のさわり心地は、いまでも手に残っている気がする。
 まっ白な肌に指を食い込ませて、わたしは先生のお乳を思う存分揉みしだいた。む
にむにとカタチが変わる様子を楽しみながら、乱暴にまさぐった。
 唾液で濡れ光っちゃうくらいお乳を舐めまわして、ちくびを口に含んで吸いたてもした。
まるで、赤ちゃんに戻ったみたいに。
 ――ふあっ、あ……!
 お乳に夢中になっているわたしの股間に、いきなり鈍い感覚が走った。それが「快
感」だとわかるようになったのは、もう少しあとのことだけど。わたしはその未知の感覚に
囚われて、お乳を弄ることも忘れてしまった。
 ――美千花ちゃんのおちんちん、もう固くなってる。悪いコね。
 そう言った先生の顔は、とってもキレイで、とってもエッチだった。そのまま、わたしたち
はキスをした。映画なんかで出てくる、おとなのキス。
 女の子同士じゃれあってほっぺにするチューしか知らなかったわたしは、先生にあわ
せるように、くちびるをくちびるで甘噛みして、舌で舌を舐めた。
 夢のなかなのに、やけに生々しい唾液の味とぬめりが口中にひろがったのは、現実
のわたしも舌を動かしていたからかもしれない。
 ――先生、おちんちんがムズムズするよぅ……!
 キスの間にも、おちんちんに絡められた先生の指はずっと動いてて。
 おちんちんの皮の上から、くにくに先っぽをイジられていたわたしは、おちんちんの付け
根に溜まっていくむず痒さに耐えられなくなって、思わず泣いてしまったわ。
 ――もう我慢できない? それじゃあ、もっとすごいことしちゃおっか。
 いつの間にか、わたしは夢のなかでも汗でびっしょりになっていた。先生にうながされ
るまま横たわった教室の床は、背筋が凍るほど冷たかった。


 先生の体重がわたしにかかってくるにつれて、わたしの背中はそれに反発するみた
いに身体を持ち上げていった。
 顔を上げると、腫れあがったおちんちんが、ズブズブと先生のお股のなかに隠れていく
のが見えた。先生のなかは、狭くてきゅっておちんちんを締めつけてきて。そしてとろとろ
したものが、いっぱいいっぱい詰まっていた。
 ちょうど、生温かいゼリーに無理やりおちんちん突っ込んでいったら、あんな感覚にな
るかもしれない。もっとも、エッチの知識なんてほとんどなかったわたしが、どうしてそん
な感覚を夢のなかで空想できたのか、今考えてもわからないけれど……。
 ――んああぁ……!
 とにかく、わたしの脳みそと身体はソレを楽しんでいたのは事実ね。
 先生におちんちんを食べられちゃったわたしは、自分の声とは思えない吐息を漏らし
ながら、腰を使いはじめたの。
 ――んっ、いいわ……美千花ちゃん上手よ……。
 一体なにが上手なのかわからなかったけれど、わたしは先生に褒められたのが嬉し
くて、そして、おちんちんをくすぐるお肉の感触がキモチよすぎて、バカみたいに腰を弾
ませた。
 先生もわたしの上に跨ったまま、身体を躍らせていたのを覚えている。ぐっぷぐっぷと
湿った音を立てさせて、先生のおまんこがわたしのおちんちんを呑みこんだり、吐き出
しているのが、やけに鮮明に見えていた。
 ――先生、ダメだよ、わたし、わたし……!!
 たぶんわたしは、そのとき本当に叫んでいた。ベッドを揺すりながら、勃起したおちん
ちんを突き上げていた。耳をつく喘ぎ声と、頬を撫でる吐息と、身体の昂ぶりは、あま
りにも生々しかったから。
 ――きゃ、ふううぅん!!
 先生の身体がわたしを押さえつけるように沈むと、おちんちんがありえないくらい熱く
火照った。わたしは身体を硬直させて、初めて味わう強烈な感覚に身も心も委ねた。

「はあ、はあ、はぁ、はあ、は、あ、なに、これ……? え、なに……これ?」
 おちんちんの奥から何かをまき散らした瞬間。わたしは意識を取り戻した。
 身体中が、したたるほどの汗で濡れていて、パジャマがぴったり肌に貼りついていた。
怖いくらい動悸が激しくて、息も完全にあがっていた。
 そして、パジャマの内側で肌にへばりついている、"キモチ悪いなにか"に気がついた
わたしは、恐る恐る寝乱れたパジャマのなかに手を入れた。
 おちんちんが吐き出したソレはネバネバしてて、とても生臭くて……。その気味の悪
いものが、自分の身体から漏れ出たモノだと気づいたわたしは、それまでの高揚感が
一気に冷めて、途端に自己嫌悪と不安に陥ってしまった。
 去年の今頃は、いちおう保健の授業を受けていたはずなのだけど、まだ寝ぼけてい
たわたしは、それが精液であること、精通という生理現象だとは思いつかなかった。
 わたしは泣きながら飛び起きて、大急ぎで精液をティッシュで拭った。
 幸いまだ夜明け前で、家族も寝静まっていたから、精液を染みこませたパジャマもこ
っそり洗うことができた。
 そのままわたしはシャワーを浴びて、だらしなく垂れたおちんちんを丁寧に洗った。正
直いうと、あんなことのあとだったから、そこにさわるのは怖かったのだけど……おちんち
んの皮のなかにも、ネバネバがたっぷりこびりついているのがキモチ悪かったの。
 全部終わったあと、わたしはそれまでの寝つきの悪さがウソみたいに、眠りこけたわ。
 その日は学校を休んだ。
 そんなことがあったってこと、ママには言わなかった。ううん、言えなかったの。
 だって、「エッチなことをする夢を見て、ネバネバしたおしっこを漏らしちゃった」なんて
言ったら、怒られると思ったのだもの。



 話し終えた美千花の表情は、羞恥といくらかの興奮にあてられて、上気していた。
それはまことも同様だった。
 美千花は自分の肩に頭をあずけて、自分の顔を見つめている男の子の股間に目
を向ける。彼のハーフパンツの前は、すでに恥ずかしい小山を作り上げていた。
「……でもね、この話には続きがあるの。聞きたい?」
「うん、聞かせて」
 ふたりは奇妙なほど真剣な面持ちで、互いの視線を絡めあう。美千花は潤んだ瞳
をまことに向けたまま身体を横たえると、彼の膝の上に寝転がった。そして、張りつめ
た布地に顔を近づけていく。
「美千花、コーフンしてる?」
「まーちゃんだって。わたしのえっちな話を聞いて、おちんちん勃起させちゃってる」
 ぢぢぢぢ、とかすれた音が鳴った。ファスナーを口で咥えた美千花が、ハーフパンツの
前をゆっくりと開けていく。
「美千花……続き、聞かせてよ……」
「んふ。待ってね。このコを窮屈にさせたままじゃ、かわいそうだもん」
 汗で蒸れた股間のニオいに目を細めた美千花は、歳に似合わない妖艶な仕草で
顔に落ちてきた髪を払うと、まことの股間に顔をうずめた。すでに彼の性器は限界ま
で膨張している。美千花はブリーフの合わせ目をくちびるで引っぱり、舌を使って布地
を分けていくと、まことの青い欲望を器用に露出させた。
 褒めて、と言わんばかりに上目遣いで見つめる美千花。まことは愛しいガールフレン
ドの頭を優しく撫でて、淫らな遊戯の労をねぎらってやる。そして、ちょうど右腕側に
横たわった可愛らしいおしりに手を這わせる。

「ん……それでね。わたし、精通した次の日、学校の保健室に行ったの……」
「うっ、ん……」
 まことの勃起した性器を指先でイジりまわしながら、美千花が話の続きを始めた。
 呻き声とも返事ともつかない声を漏らしながら、まことは美千花のスカートのなかに
手を忍ばせていく。絹のようになめらかなふとももを指先でなぞっていくと、だんだんと
肌が湿り気を増していくのに彼は気がついた。
 汗とは違うぬめりの源泉に指先が至り、その上部、まことと同じ形状の器官にふれ
た途端、美千花は引き笑いに似た悲鳴をあげて、彼の陰茎に反射的に爪を立てた。
「いたっ」
「あ、ゴメン。だってまーちゃん、いきなりおちんちん握るんだもん……」
「ううん、いいよ。それで、続きは?」
「そうそう、えっとね。保健室の先生って見たことある? わたしほとんど保健室に行っ
たことなくて、あんまり保健の先生の顔を覚えていなかったんだけど、保健室の先生
は、なんと夢に出てきた先生にそっくりだったのよ」
「え……、そう、なんだ……。ぼくもよく知らない、んだけど……っ」
 思い出を語りながら、美千花はまことの先端に顔をすりつけたり、竿を手のひらでさ
すったりして玩んでいる。ぬるい愛撫を受けたまことは、彼女が動くたびに言葉を詰ま
らせてしまう。
「知ってるかな。両性具有の子は、保健の先生と一対一で性教育を受けるんだよ。
本当はその学年の秋に受ける予定、だ、ったんだけ、ど……。わたし、わたしはその
日、あっ、んく……ちょっと早めに、個人授業を、待、まーちゃん、待って。いま、話し
てるところ、なのにっ」
 さっきのお返しとばかりに、まことの手がスカートのなかでうごめいていた。スカートのな
かがどうなっているのか、美千花にもまことにも見えないが、粘ついた音が漏れ出てく
るところから察するに、すでに彼女の下半身が相当乱れていることは想像にかたくな
かった。
「はっ、あう! わたし、先生に、オナニーの仕方、教えてもらったの……っ」
 息を切らしながら、美千花は叩きつけるように言葉を吐き出す。
 非難めいた視線をまことに送りつつも、美千花の足は彼の手を求めてしどけなく広
げられていた。



「わたしの身体、ヘンなんでしょうか」
 放課後、保健室を訪れたわたしは、先日の早朝に起きたことを包み隠さず保健の
先生に話した。
 起きているのか寝ているのかわからない状態のこと。いやらしい夢を見たこと。そして、
おちんちんから臭くて粘ついたおしっこをもらしてしまったことを。ただし、その夢に出てき
た相手が先生にそっくりだった、ということはさすがに言えなかった。
「よく勇気を出して、先生に話してくれたわね、美千花ちゃん。そんなに落ち込まない
で、顔をあげて。だいじょうぶ、それは全然恥ずかしいことじゃないし、ましてやあなた
の身体がヘンというわけでもないのよ」
 気まずさのあまり、顔を俯かせていたわたしを、先生は落ち込んでいると勘違いした
みたい。先生はわたしの頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。
 少し乱暴な手つきだったけど、わたしは不思議と心が穏やかになっていくのを感じた。
「うんうん。せっかく可愛いんだから、落ち込んだ顔は似合わないよ。笑っていようね」
 そう言ってにっかり笑顔を作ってみせた先生のほうが、とても可愛らしかった。
 歳はたぶん、20代の後半くらい、だと思う。夢のなかで見たよりもいくらか髪は長くて、
背中のなかほどまである髪を細く一本にまとめていた。眠そうなタレ目を彩る泣きホク
ロが、少しハスキーな声によく似合う。スタイルは……夢で見たとおり。学校の先生に
してはセクシーすぎるな、と思った。
 そんなつぶさに観察する余裕がよくあるな、ですって? そこは、その。わたしもまー
ちゃんと同じで、精通してから良くも悪くも男の子らしさを備えちゃったのかも。

 先生は身体の変化に悩むわたしに、男女の身体の違いを改めて教えてくれた。
「本当は夏休みが終わったら、あなたの学年から両性具有の子に特別授業が組ま
れていたのだけど。それを待つのは大変だよね」
 また、あんな目にあったらつらいよね? と先生はたずねてきた。わたしは頷いた。
「美千花ちゃん、口は固いほうかな。いまから先生があなたに教えること、他の子には
言わないって約束できるかしら。悪いことじゃないんだけど、ちょっと指導計画を乱すか
ら、あとで先生が怒られるかもしれないの」
 わたしは再び頷く。元々こんな話、とても他の人には話せないもの。
 探るようにわたしの顔を見つめていた先生は微笑むと、保健室の扉に鍵をかけて、
クリーム色のカーテンをさっと閉めてまわった。その途端、薄手のカーテンを透かした強
い西日が、淡黄色の光で保健室をぼんやり染めあげた。
「手っ取り早く言うと、オナニーをすれば夢精は起こらないわ」
「オナニー?」
 聞きなれない単語に首をかしげるわたしの手をとって、先生は備えつけのベッドに座
らせた。わたしの真横に先生も腰を下ろす。かすかな香水の香りに鼻をくすぐられて、
わたしは意味もなくドギマギしてしまう。
「そう、オナニーよ。美千花ちゃんくらいの歳のふたなりちゃん……じゃなくて両性具有
の子は、精子をいっぱい作りすぎちゃって、それをおもらししちゃうことが多いの。それを
防ぐためには、溜まった精子を自分で抜いてあげればいい、ここまでは、わかるかしら」
「は、はい」
 わたしが答えると、先生は満足げに肩を叩く。そして、その手をゆっくり滑らせていき、
わたしの手に重ねた。
「それじゃあ、オナニーの仕方を教えてあげる。恥ずかしいかもしれないけど、我慢して
ね。まずは服を脱いでくれるかしら」
 先生の言葉に、わたしは素直に従った。


 グラウンドから、遊び回る児童たちのけたたましい声が聞こえてくる。遠くから、午後
6時を報せる『夕焼けこやけ』のメロディが流れてくる。保健室のなかで鳴るのは、衣
服を脱いだわたしがベッドの背もたれに身体を預ける音だけだった。
「おちんちん、自分で大きくできるかな」
「わかりません……どうすればいいのかも……」
「えっちなこと、考えてみて? たとえばこないだ見たっていう、夢の内容とか」
 さらさらしたシーツに素足をすりつけながら、わたしは目をつむって先日の体験を思
い出す。それは身体を熱く火照らせたけれど、夢のなかの人物が前にいると、どうして
も気まずさで心が一杯になってしまう。
「ダメです、なんだか恥ずかしいばかりで」
「やっぱり想像だけでさせるのは無理、か。教員はさわってはいけない決まりだし。…
…うーん、あまり使いたくなかったけれど、これならどうかしら」
 そうひとりごちた先生は、ベッドの対面にあるデッキにDVDを挿しこんだ。そのパッケー
ジはイラストも写真もないシンプルなもので、『特定指導用映像教材』とだけ書かれ
ていた。
「これ観たってこと、ナイショよ? いまだに賛否両論あるデリケートな代物だから」
 先生はそう言って、苦笑する。先生が渋ったわけを、わたしはすぐに理解した。
 『文部科学省/厚生労働省共同制作』とかお堅い言葉がたくさん並んだオープニ
ングのあとに流れたものは……。
「あの、先生これって」
「うん。両性具有児童の自慰行為を助けるための映像教材。平たく言えば、まあ…
…官製AV?」

 でもソレは、性に目覚めたばかりのわたしには、あまりに刺激的で。画面のなかで
繰り広げられている生殖行為の映像に、わたしはたちまち目が釘付けになった。
「先生、先生……わたしなんか、ヘンです……おちんちんが……」
「いいのよ、美千花ちゃん。それが普通なの。えっちな気持ちになると、おちんちんはそ
うなっちゃうの。さあ、怖がらないでおちんちんをさわってみて。最初は優しく、ね」
 先生に促されるまま、わたしはカチンコチンになったおちんちんを手でつまんだ。そうい
う状態になったおちんちんを、なにか目的を持ってふれるのは初めてだった。
「先っぽの部分を指先で揉むようにして。そう、そのまま皮を上下にシコシコして、こす
りつけるの。うん、オナニーのやり方、とっても上手だよ美千花ちゃん」
「はあ、はあ、先生、……はぁ、はぁ、胸がドキドキするよぅ……」
 手を動かすたびに、おちんちんが甘く痺れた。下腹部に溜まった疼きがじわじわと身
体中に広がって、息苦しくなってくる。
 おちんちんの先っぽからは、おしっことは違う透明なおつゆがいっぱい溢れてきて、そ
れをまぶしながらおちんちんをイジると、キモチいい感触はますます強まっていく。
 先っぽを濡らすヌルヌルを使って包皮を滑らせるたび、上下にめくれた皮がくちゅくち
ゅとエッチな音をたてた。
「……あぁ、小っちゃいふたなりちゃんのオナニー、やらしくてたまらない……。これだか
ら、これだから、あたしはこの職に……!」
 先生がうわごとのようになにか言っているけれど、わたしは、足をせわしなく開いたり
閉じたり突っ張ったりしながら、身体のなかで育っていく快感を育てることに没頭して
いた。
 映像のなかでは、ちょうどおちんちんが女の人のなかを出たり入ったりしているところ
がアップで映っている。ぬめったおちんちんの動きに、わたしは知らない間に自分の手
の動きを合わせていた。
「おちんちんシコシコするの止まらないよおっ、あっ、ふうっ、これ好き、これ好きなの、オ
ナニー好き……オナニー止まらない、ふぁ、ん、出ちゃうぅ……なんか来ちゃうぅ!」
 先日の夢で味わった、お肉のなかをかき回すあの感触と、先生のおなかのなかにド
ロドロした体液を注ぎ込んだ感覚を思い出した瞬間。わたしは、快楽を味わうため
の射精を初めて経験した。
 びゅーびゅーと音を立てながらぶちまけられる白濁液は、暴れまわるおちんちんに合
わせてあっちこっちに飛び散った。
 先生がいつの間にか用意してくれていたビニールシートもあまり役に立たず、射精が
終わるころには、わたしは身体中を自分の精液でベトベトに汚してしまっていた。



 射精するくだりに合わせて、まことが切なげな呻き声をあげた。
 びくんびくんと痙攣を繰り返す陰茎が野太く膨れたかと思うと、さんざん焦らされてき
た精子が勢いよく噴き出してくる。
「は、ああぁ……美千花、あぅ……!」
 話の最中、上手にまことの射精をコントロールしてきた美千花は、幼馴染のかわい
いイキ顔を堪能しながら、自らの顔面で彼の精子を受け止めてやる。
 つい最近産まれ始めたまことの精子は、つまめば垂れ下がって千切れないほど濃
厚だ。量は多くないが、美千花はそのこってりとした重みを直接肌で感じとって、うっと
りとした様子で恍惚にひたる。
「先生もね、おちんちんついていたみたい。スカートの前がパンパンに膨らんでたもん」
 語り終えた美千花が、まことの陰茎を口に咥えて頬をすぼめた。ちゅっ、とストロー
みたいに細い肉棒を吸ってやると、まことはだらしなく顔を弛緩させて、尿道に残って
いた精液を全て美千花の口内に譲り渡す。
「これ、みんな本当の話だよ? ウソじゃないからね」
「うん、わかってる……」
 顔をザーメンでべっとり汚したまま、すり寄る美千花。たまらなく淫らで可愛らしいそ
の姿を前に、まことの性器は萎えることを忘れてしまっている。
「すっごく恥ずかしい話をしちゃったんだから。まーちゃん、ごほうびくれる?」
「ごほうび、って……ぼく、そんなスゴイもの持ってないよ」
 心苦しそうにうつむくまことに口づけをすると、美千花は楽しそうに笑って衣服を脱い
でいく。彼女の太ももと下腹は、すでに透明なおつゆで濡れきっていた。話中ずっとイ
タズラをされていた彼女もまた、こらえきれないほど欲情していたのである。
「わたしのこと、たくさん可愛がって……っ」

 背中を向ける形で、美千花がまことの上に腰を下ろしていく。後ろから抱きかかえら
れる格好だ。濡れそぼった淫唇はぱっくり口を開いており、まことの幼い肉棒を簡単に
飲み込んでしまう。
「ふあぁ、あん……っ」
 喉を晒して嬌声をあげる美千花。最近、どことなく女らしさを増した細腰が、まこと
の上でびくりと跳ねた。
「ぁ、あはあっ……、ダメ、わたしすぐイッちゃいそう……」
 ぷるぷると小刻みに肢体を震わせながら、美千花は身体を抱きしめてくれるまこと
に背中をあずけた。そして動きづらい彼に代わって、腰をくねらせる。オスを求めていた
彼女の肉壷は、よく馴染んだペニスを歓迎して、ねっとりと淫らなおもてなしを始める。
「美千花も、気持ちよくしてあげるね……っ」
 腰が砕けそうになるほどの快感に囚われながらも、まことは愛しい幼馴染のために
一生懸命尽くしていく。小ぶりな乳房を揉みしだき、腰が動くたびにひょこひょこ揺れ
る陰茎を握りしめてやる。これ以上ないくらい屹立した彼女のペニスは、触れるだけで
打ち震えて、薄い精液をだらしなくおもらしした。
「はっ、はふぅ、まーちゃん、まーちゃん、シコシコして、わたしも出したいようっ」
「いいよ、いっぱい出して。部屋が汚れてもいいから、全部ぴゅっぴゅしちゃおうね」
 優しさ溢れるまことの言葉と、肉茎を包む暖かな感触にあてられて、美千花はあっ
という間に射精に至ってしまう。
「ふぁあ、で、出りゅうう……っ!」
 背筋をこわばらせて、絶頂に達する美千花。その小さな身体と陰嚢のどこに溜め
込んでいるというのか、おびただしい量の精液がところ構わず吐き出されていった。
 それだけで交わりは終わらず、まことがなかにたっぷり精液を注ぎ込むまでの間、美
千花は後背位で犯されながら、二度の射精を繰り返した。

「ただいま~。あら、美千花ちゃん来てるのかしら?」
 ちょうど青々しい交尾を二人が終えたころ、聞きなれた少女の声が階下から響いて
きた。美千花はまことと顔を見合わせると「今日ママたちは帰ってくるの?」と尋ねた。
「お父さんは出張、お母さんは友だちと旅行中」
 まことが顔を赤らめながら答える。今日と明日は休日だ。
 これから始まる淫らな肉の宴に思いを馳せて、二人はくすくすと笑った。
「沙織ちゃんの初体験の話、聞かせてもらわなくっちゃね」

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最終更新:2011年05月21日 17:22