年間暖冷房負荷をなるべく低く抑えたい。まずは、Q値、C値から暖冷房費用を試算してみる。
Q値(熱損失係数)
屋外と室内の気温差が1℃のとき、屋内から逃げる熱量を、単位面積当たりで割った数値(W/㎡・K)。厳密には外気と接する壁、窓、扉等の性能から求めるが、ここでは三井ホームの公称値である2.0を使う。家の述べ床が110㎡なので、220W/Kとなる。
例1:冬で外気温度が0℃、室内温度を20℃とする
220W/K × (20-0) = 4,400W → 5kWのエアコンがフル稼働すると20℃をキープできる計算
消費電力はCOP値3とすると、4400 ÷ 3 ≒ 1500 W(電力使用量)
電気代を単価22円で計算すると、1時間あたり40円の電力消費。30日間だと28,000円。
換気の考慮
上記の計算は、屋内が密閉されていることが前提。実際には換気が行われ、室内の空気の半分が1時間で入れ替わる。まず、入れ替わる空気の量から見た、損失熱量を計算する(厳密には空気の比重は気圧、温度で変わってくるがここでは一定で考える)。
空気の重さは1.2kg/㎥(1気圧、0℃のとき)、空気の比熱を0.24kcal/kg・℃として、家の中の空気量は、
110㎡ × 2.5m(階高) × 1.2kg/㎥ = 330kg
3種換気でこの中の半分が入れ替わる。先の例の条件で考え「165kgの空気を0℃から20℃に1時間で暖める必要がある」計算を行う。まずは、乾燥空気部分。
165kg × 0.24kcal/kg・℃ × (20℃ - 0℃) = 792kcal = 921.1Wh (1kcal = 1.163W・h)
1時間で暖めるので、921W の暖房装置が必要。
4.4kW + 0.9kW = 5.3 kW のエアコンが必要
湿気の考慮
とりあえず、外気0℃の際の湿度を40%とおく。0℃の飽和水蒸気量は4.8g/㎥で、湿度40%から含む水の量は1.92g/㎥。先の計算と同様で、
110㎡ × 2.5m(階高) × 1.92g/㎥ = 528g
528gの水を、0℃から20℃に温める熱量は、水の比熱が1kcal/kg・℃であることから、
0.528kg × 1kcal/kg・℃ × (20℃ - 0℃) = 10.6kcal = 12.3Wh
なのでほぼ無視できる値。
余談となるが、20℃の飽和水蒸気量は17.3g/㎥なので、1.92g/㎥ ÷ 17.3g/㎥ = 11%。20℃の際の湿度が11%まで下がる。エアコンで暖房すると空気がからからになるのはこのせい。
例2:夏で外気温度が35℃、湿度70%、室内温度を25℃、湿度60%とする。
熱損失:
220W/K × (35-25) = 2,200W換気(乾燥空気)の冷却:
165kg × 0.24kcal/kg・℃ × (35℃ - 25℃) = 396kcal = 460.5Whここまでは暖房と同じだが、冷房の場合は、水蒸気が水に変化することを考慮する。25℃の飽和水蒸気量が23.1g/㎥で湿度60%のとき、23.1g/㎥ × 60% = 13.86g/㎥。
27.72g/㎥ - 13.86g/㎥ = 13.86g/㎥ 。これだけの水蒸気が水に変化(液化)する。液化は気化の逆で、584.1cal/g の熱を奪う必要がある。
110㎡ × 2.5m(階高) × 13.86g/㎥ = 3811.5g
3811.5g × 584.1cal/g = 2226.3 kcal = 2589W・h換気(水蒸気)の冷却:
水蒸気を冷却する対象は、液化する以外の、13.86g/㎥ 。
110㎡ × 2.5m(階高) × 13.86g/㎥ = 3811.5g
3811.5kg × 1kcal/kg・℃ × (35℃ - 25℃) = 38.12kcal = 44.3Wh以上を合計すると、
2200 + 460.5 + 2589 + 44.3= 5293.8W・h
例1の冬の暖房(+20℃)と夏の冷房(-10℃)の空調負荷は同等となる。