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*事後 【投稿日 2006/02/26】
**[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]]
目が醒めた。見慣れない天井が視界に飛び込んでくる
ズキッ・・・!
「うっ・・・」
右肩が痛い。ついでに言えば右腕にザリザリとしたものが乗っている。
痛みの方向に顔を向けると、笹原を腕枕に荻上がクゥークゥーと穏やかな寝息を立てながら寝ていた。
彼女は今、髪を下ろし、生まれたままの姿でいる(無論笹原もだが)
--あぁ、そうか。オレ、ヤっちゃったんだな。
笹原は荻上との行為を思い返す。
とにかく夢中だった。
ヤるたびにどんどん自分ももちろんだが、荻上さんも良くなってきたらしく・・・
5回目から先はもう覚えていない。いつの間にか寝入っていたようだ。
自分でもよくここまで攻めたものだと思う。
時計を探してみたが、暗くてよくわからない。だいぶ時間が過ぎているようだ。
日はもうすでに落ちている。
再び時刻を確かめようと時計を探すが、荻上を腕枕した状態ではなかなか難しい。
--確か、脱いだ衣服はベッドの下に投げ捨てたんだっけ・・・
ズボンの中に携帯電話がある。
ベッドの下に目を向けると、少し遠いが身体をずらして手を伸ばせば届く距離にある。
笹原がベッドの下にある自分の衣服から携帯電話を取ろうと、身体を捻--
「んっ・・・」
ろうとしたら、荻上がそれを許さない、というようにギュッと笹原の身体に密着するよう抱きついてきた。
「荻上さん?」
起きているのか? と思ったが
「スゥ・・・スゥ・・・」
寝ているようだった。どうやら無意識下にいても、今は一時一寸たりとも離れたくないらしい。
--オレもだけどね
笹原は密着してきた荻上をやさしく包み込むように抱いてやる。
腕枕していた右腕は頭を。残っていた左腕は彼女の背中に回してやる。
胸に当たる荻上の寝息がくすぐったかった。
だが、ものすごく心地よかった。。・・・ついでに言えば、笹原の胸から腹にかけての部分に当たっている彼女の柔和な胸も心地よかった。
「・・・荻上さん。胸、当たってるんだけど」
某漫画の笹原は台詞を吐いてみる。
「・・・あててんのヨ・・・くぅ~・・・」
荻上も寝ぼけながら答える。
「ははっ・・・」
--時間なんて気にしたらもったいないな。すごく幸せだし
笹原は荻上の寝顔を見ながらそう思った。
やがて、笹原も再びまどろみの中へと落ちていった。
できたばかりの最愛の人を抱き枕にしながら。
--時間なんて気にしなくていいか。すごく幸せだから
-end-
*甘い話 【投稿日 2006/03/01】
**[[カテゴリー-笹荻>http://www7.atwiki.jp/genshikenss/pages/47.html]]
「デート、ですか?」
食器を片付けながら荻上が聞き返す。
「うん。俺たちがその、付き合いだしてからずいぶん経つけど、そう言うことをしたこと無いな~って思って」
笹原の声を背中に聞きながら、考える。
(確かに一緒に買い物したり、マンガ喫茶で作品談義をしたり、手料理を食べたり、…「する」ことはあっても、デートか?と聞かれれば微妙かも。でもデートってどういうの?と言う事になると…そんな経験ないし…)
「…俺も『研修』とかで忙しかったけど、今度の日曜に丸一日休みが取れたんだ。だから、行きたいところとかあれば、教えてくれる?」
「いえ、笹原さんの行きたいところならどこでも…」
荻上の内心の葛藤に気付かない笹原の問いに、とりあえず無難な答えを返す。
「それじゃ困るんだけど…考えておいてくれるかな?」
笹原は軽く苦笑を浮かべると、荷物を持って立ち上がり、玄関へ向かう。荻上は慌てて手を拭くと、エプロンを外して追いかけた。
「本当は泊まっていきたいけど…ごめん」
「いえ」
答えと裏腹に浮かべた寂しげな表情に、笹原は思わず彼女を抱き寄せ、キスをした。
「おやすみ…千佳」
真っ赤になりながらそう言うと、逃げるように出て行く。荻上は黙って見送る。
「…おやすみなさい……完士…さん」
彼以上に真っ赤になった荻上の返事は、それからずいぶん後だった。
「こんにちわ~♪」
「…」
「ちわーす」
翌日、部室で荻上がノートを前にぼんやりしていると、妙にご機嫌な大野、不機嫌な咲、いつも通りの恵子がやって来る。話を聞いていると、どうやら卒業式後の「春日部咲コスプレ大会」の為に、最終的なサイズ合わせをしたいらしい。
「…だから、咲さん。一度合わせてみないと。恥ずかしいなら、私も一緒に着ますから」
「そう言う問題じゃないの。当日ちゃんと着ればいいんだろ?」
「そうはいきません。着る以上、きちんとしたものを着るべきです!」
「な~、ねーさん。いいかげんあきらめたら~」
「じゃあ、お前が着るか?」
「死んでもヤダ」
「私だってあなたには着てもらいたくありません」
「あの…皆さんはデートしたことってありますよね?」
「え」「へ」「ハァ?」
険悪化しつつあった空気を破ったのは荻上の場違いな質問だった。他の3人は顔を見合わせると、にんまりと笑って向き直る。
「そりゃありますけど」「なんでそんなこと」「聞くのかなあ~?」
荻上は失敗を悟ると、「聞いてみただけです」などと言い逃れようとしたが果たせず、洗いざらい話すはめになり…結果、3人を机に突っ伏させることになった。
「人に聞いておいてなんですか、その態度は」
「あのな、おぎー。自分がものすごい『のろけ話』してるって自覚…聞くだけ無駄か」
いち早く立ち直った咲が、苦言を呈しようとしてやめる。バカップルにつける薬無し。しかし、二人の仲を取り持った以上、放り出すには気が引けた。
「とにかく、笹原は『荻上の行きたいところ』を聞きたいんだから、思ったところを言えば?」
「私は笹原さんとならどこでも…」
「わかったから、ちょっと黙れ。大野!恵子!起きろ!!なんか言え!」
「…だったら定番のコースでも行ったらどうです?動物園でも遊園地でも…」
「うわ、古っっ!!それなんて80年代!?」
恵子の突っ込みに大野のこめかみに青筋がたつ。
「だったら恵子さんならどうするんです?」
「やっぱ買い物!全部アニキ持ちで。こういうときぐらい『かいしょー』見せてもらわないと!」
「そんな事できるわけが無いでしょう!!」
荻上がいきり立つ。
「まあまあ…だったらこういうのは?」
あーでもないこーでもないと話は続く。内容が2巡ほどしたころ、恵子が疑問を投げかけた。
「でもさ、なんで今更デート?べつに改まってするような事じゃねーじゃん」
咲と大野も気付く。確かに今更、だ。そこには何か目的があるはず…。
「「「プロポーズ?」」」
「!」
ボン、と音を立てそうな勢いで赤くなる荻上。
「でも、付き合い始めて…ヶ月だろ?」
「そんなの関係ないって」
「手を出したから責任取らないと、とか」
「!!」
「でもそこまでするか、普通」
「結構堅いからな、うちのアニキ」
「妊娠させた、とか」
3人の視線が荻上に向かう。
「わ、わたし帰ります!!!」
荻上は慌てて荷物をまとめると、バッグを胸に抱いて部室を飛び出した。
結局、「どこでもいいです」とメールで送るのが精一杯だった。
返事は次の日の朝だった。了承と日曜日まで会えないことと、そのお詫びが記されていた。
Q.デートは結局どこになったのですか?
A.水族館でした
「「ただいま」」
言いながら荻上のアパートの玄関をくぐる。
「なんかほっとしますね。家に帰ってくると」
「ごめん、疲れた?」
「そうじゃありません。とても楽しかったです」
そんなやり取りをしながら笹原は思う。
(自分のアパートより、ここの方が『帰ってきた』って感じるようになったなあ。いや、部屋じゃなくて、『彼女』がそうなのか。『彼女』さえ居てくれればどこでも…って何考えてるんだ、俺!?)
顔を赤くして首を振る。荻上が不思議そうにこちらを見つめていた。
ソファーに並んで座り、今日の思い出を語り合う。そして、思い出したように笹原はポケットから小さな箱を取り出し、荻上に渡す。
その瞬間荻上の脳裏に部室でのやり取りが浮かぶ。顔が赤くなる。鼓動が早くなる。期待と不安で何も考えられない。
恐る恐る小箱を開けると、そこにあったのはシンプルな細い銀の鎖。少なからず気落ちしながら鎖を引くと、その鎖にはこれもシンプルな銀の指輪が通してあった。
思わず振り返ると、照れくさげに笹原が頬を掻いていた。
「あの。これはどう言う…」
「本当はちゃんとしたやつを送りたかったけど…無理だったのと、あと…他の誰にも渡したくないのと、こんな事言うと怒られそうだけど、『予約』ということで…」
指輪と笹原を交互に見た後で、荻上は微笑む。
「馬鹿ですね、笹原さんは…物よりも、はっきり言葉にしてくれれば良いんです」
そう言って指輪を笹原に返すと、左手を差し出す。笹原はひとしきり慌てた後、咳払いをすると尋ねた。
「荻上千佳さん。結婚してください」
「喜んで」
荻上が応える。彼女の薬指に指輪を通す。口付けを交わす。
そのまま覆い被さろうとする笹原の目の前に左手をかざす。そこにはぶかぶかの指輪。
「う」
「今度は『ちゃんとした』のをくださいね?」
しぶしぶ笹原は体を起こす。荻上は立ち上がると鎖を首に回す。胸元の指輪を押さえながら尋ねる。
「…泊まっていきますよね?」
翌日、荻上が部室を訪ねると、なぜか「荻上御懐妊」の噂が流れていて、大騒ぎになったのはまた別の話。