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天使達の午後SS版 【投稿日 2005/12/27】

カテゴリー-斑目せつねえ


部室の扉のドアノブに手をかけて回すと、鍵がかかってることに気付いた。

斑「ありゃ、今日はまだ誰も来てないのか!」

部室のスペアキーをポケットから出し、部室の鍵を開けた。本当は卒業の時
点で保安上の為、大学に返却しなければならない事になっている。当然、ス
ペアキーの事は部員全員知っている。知っているがまあ・・・。

(誰もいない・・・)
あたりまえの事を考えながら、一番奥の席に座った。そこは無言の約束で会
長の席と決まっている。かつては初代会長の席だった。それが斑目の席とな
り、笹原の席となり、今では大野さんの席になっている。そしてまた無言の
約束で、現会長が不在の場合には前会長が座る事になっている。そして現会
長が来れば、やはり無言の約束でその席を現会長に譲る事になっている・・・。

コンビニで買った弁当を袋からガサガサ音を立てて出し、バクバクと食い始
めた。弁当箱のへこむ音、箸を鳴らす音、そして弁当を噛む音、それらだけ
が静寂の部室に鳴り響く。

やがて食べ終わり、やはりコンビニで買ってきたお茶を一服し、フーと大き
く息を吐き、窓際に目をやった。

(今日は席を移動する必要はなさそうだな・・・・)
物思いにふけりながら、ぼんやりと窓からの景色を眺めていた。遠くでは昼
休みの時間を割いて球技に熱狂する人たちの歓声が聞こえてくる・・・。春
の日差しは次第に強く感じられるようになってきた。部室の側の木々には小
鳥たちがさえずって、巣づくりをしている。

(我らが雛鳥たちはどうしてるかな・・・朽木君は知らない・・・)
ふと、反対側の校舎に目をやると、児童文学研究会の部室が目に入った。
(そういえば今年も新人ゼロって言ってたな。しばらくあの『儀式』もやっ
てないな・・・。児童研の知り合いも卒業したし、もう廃れちゃうのかな・・・。
荻上さん以来か・・・その前が笹原・・・。)
斑目はあの二人の『儀式』の光景を思い出し、一人クスクス笑った。

急に雲間から強い日差しが斑目に差し込み、思わず斑目は目がくらんで立ち
すくんだ。キーンと耳鳴りがして目眩(めまい)がした。はっと部室を見る
と、大勢の部員たちのにぎわう姿が目に浮かんだ。耳鳴りがやみ、静寂から
外の球技に興じる人たちの歓声が再び聞こえると、その残像は消えた。

斑「まあ、そういう日もあるさ・・・」
と斑目は一人言をつぶやき、ごみを片付け、誰もいない部室を後にし、再び
鍵をかけて職場に戻っていった。