アンダルク×セネカ(エロ無)

紋章砲・・・邪眼に関する情報。それを少しずつ本に綴っていく事が、アンダルクの日課になっていた。
隣にセネカがやって来て他愛の無い会話をするのも、日常茶飯事となりつつある。
今夜もかがり火を頼りに見聞きした事柄を書いていたのだが、左肩に重みがかかってきた。
「・・・どうしたんだセネカ」
作業を中断させる事無く、重みをかけてきている人物へ声をかける。
返事を待っているのだが、一向に返ってくる気配は無い。

男は、一度ペンを本の中へはさみ、横に居る女を覗き見る。彼の目に入ったのは、自分の左肩を支えとして寄りかかっている頭部。
「・・・セネカ? まさか寝てるのか?」
目を丸くして再度声をかけるのだが、やはり反応は無い。話さなくなったとは思っていたが、眠り出してしまうなど夢にも思わなかったのだ。
別の場所に移してやりたいのだが、一人で抱え上げられる力は無い。起きている仲間も自分たちの近くには居ない。
キリルを起こしに行くのは論外だし、他の仲間を起こすのも気が引ける。
自分が枕役を甘んじるしか道が無い事をアンダルクは痛感し、夜空を仰ぎ見た。

ほんの少しセネカを見遣り、目を細める。その後、アンダルクは中断していた作業を再開する為に本に向き直りペンを手に取った。
「・・・私で無くとも、他に枕になる物があるだろうに」
諦め混じりの溜息と共にこぼした言葉は、誰も聞いていないと分かった上での独り言だったのだが。


「・・・・・・かいしょ~なし~」
「―――なっ!?」
突如聞こえた声に青年は身をこわばらせる。拍子にペンが手から転がり落ちてしまうのだが、それを拾う余裕があるわけも無く、慌てて声の主を凝視した。

声の主は頭を起こし、つまらなそうな顔でアンダルクを見ていた。その表情に眠気の欠片も存在しない。
「お、起きていたのか・・・?」
「当たり前でしょ。そんなに無防備じゃ無いわ」
狼狽している青年にもすました声でセネカは答える。
「あーあ、キスの一つくらいさせるかと思ったんだけどなぁ」
「だ・・・!!」
冗談めかして出される言葉に大声で反論しそうになり、慌てて口を閉ざす。何事かと仲間たちが置きだしたら、ややこしくなりそうだからだ。

一度咳払いをして、青年は眼鏡をかけ直す。
「・・・・・・誰がそんな事をするか」
「えぇ、あなたはそんな事する人じゃないって分かってる」
言いながら、セネカは立ち上がっていた。
「あなたをからかえた事だし、私は休むわ。アンダルクもあまり遅くまで起きていないようにね」
「分かっている」
「あ、今日の事、日記に書くのは止めてよね~」
「分かっている・・・っ!」
ムキになって言い返したものだから、セネカは笑い出す。
「・・・はいはい。じゃ、おやすみなさい」
「あぁ」
プラプラと手を振る彼女の背に、不機嫌な声を当ててしまうのは仕方の無い事だった。
「・・・まったく、良く飽きもせずに私をからかっていられるものだ」
ぼやきを一つ入れ、今度こ作業を再開させる手始めとして、地面にまで転がってしまったペンを探し始めた。


****

・・・まぁ、確かに、彼があんな状況でキスするなんて、天地がひっくり返ったってありえない事だっていうのは、分かってる。
からかいたかったのが本音だけれど、

『・・・私で無くとも、他に枕になる物はいくらでもあるだろうに』

あんな言葉が聞けるなんて思わなかったわ。
仕方ないって感じで言ってたけど、滅多に聞けないような優しい声だった。
嬉しかったのは本当だけど、癪だったから意地悪してしてやったわ。
あーあ、素直じゃないわね、私ったら。

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最終更新:2008年10月29日 10:54
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