中村 優太(駒澤大学・学)
Ⅰ.はじめに
四日市市西方に位置する四日市断層は,標高70m程度の丘陵と東側の沖積面とを画する東落ち逆断層である.これまで,三重県北中部では太田・寒川(1984)や吉田(1984)らによって地形・地質が論じられてきた.近年では,須貝ほか(1999)や鳴橋ほか(2004)によって,四日市断層の北に位置する桑名断層の活動履歴が明らかにされた.また,粟田・吉田(1991)は四日市断層の北部と中部において沖積面の撓曲地形を見出した.大上・須貝(2006)は四日市市大井出において撓曲地形周辺の地下層序を再現し,過去2000年間に2回の変位があったことを示した.
兵庫県南部地震や新潟県中越地震では,伏在断層や地表地震断層といったものが注目された.四日市断層周辺においても,明瞭な地形境界を有する一方で,沖積面のわずかな変位が確認されている.
本論では,これまで四日市断層の北中部において確認されていた撓曲地形が,南部でも確認されるのかを検討する.
Ⅱ.ボーリングデータによる地下層序
本調査地域の地下層序は下位から東海層群(T),後期更新世海成シルト層(LPM),熱田層上部相当層(LPS),濃尾平野第一礫層相当層(BG),下部砂層(LS),中部泥層(MM),上部砂層(US),最上部層(TM)であり,桑名断層周辺および四日市断層周辺の地下層序と非常によく似た層相を示し,大局的には桑名断層周辺と似た堆積環境にあったと考えられる.
四日市断層上盤側の地下層序は,大上・須貝(2006)によると,下位より濃尾平野第一礫層相当層(BG),下部砂層(LS),中部泥層(MM),上部砂層(US)に分けられている.さらに,USは細分され,US1,P1,US2,P2,US3となる.
しかし,小古曽周辺の断層上盤側ではMMは見られず,標高-4m付近でTが見られる.
本調査地域では,大井出地区の地下層序よりも桑名断層周辺の地下層序に近い.
Ⅲ.撓曲地形
図1に本調査地域の日永と小古曽,調査地域外の北部にあたる大井出において実施した実測断面を示す.
大井出地区の撓曲地形と小古曽の撓地形は形状がよく似ており,共に徐々に比高を増して行く.一方で,日永は水平距離110m付近より急激に比高を増す.これらは,河川による堆積物の供給の有無,基盤地形(東海層群)の違いによるものと考えられる.
文 献
粟田泰夫・吉田史朗 1991.桑名断層および四日市断層の完新世における活動.活断層研究9:61-68.
大上隆史・須貝俊彦 2006.後期更新世以降における四日市断層の活動性評価.第四紀研究45:131-139.
太田陽子・寒川旭 1984.鈴鹿山脈東麓地域の変位地形と第四紀地殻変動.地理学評論57:237-262.
須貝俊彦・粟田泰夫・下川浩二 1999. 三重県・桑名断層及び四日市断層の活動履歴調査.地震予知連絡会61:456-460.
鳴橋龍太郎・須貝俊彦・藤原治・泰夫 2004.完新世浅海堆積物の堆積速度の変化から見た桑名断層の活動間隔.第四紀研究43:317-330.
吉田史郎 1984.四日市地域の地質.地域地質報告(5万分の1地質図幅).地質調査所:49-65.