アットウィキロゴ

第22回 地形・地質勉強会要旨

発表要旨


石村大輔(京都大)

「関ヶ原周辺の活断層の活動性と段丘面の編年」
1.はじめに
本研究で対象とした地域は,近畿三角帯(Huzita, 1962)の北東縁のほぼ中央に位置している.本地域は,南北をそれぞれ逆断層である養老‐桑名‐四日市断層帯・鈴鹿東縁断層帯と横ずれ断層である柳ヶ瀬断層帯などのセンスの異なる断層帯に挟まれた部分である.このため本地域には,横ずれ断層と逆断層が混在し,比較的小規模の活断層が複雑に分布している.岡田・東郷編(2000)では,地形学的に本地域の活断層のほとんどが活動度B級と推定されているが,定量的な議論は,池田山断層(東郷,1980;岐阜県活断層調査委員会,1998など)と宮代断層・垂井断層(杉戸ほか,2002)で行われているだけで,その他の断層ではデータが得られていない.段丘面の編年は,本地域がテフラ稀産地域であり,また地形面の発達が悪いため進んでいない.以上のように,活断層の変位量の記載・変位基準面の年代など,活断層の活動を知る上で必要な情報が十分に得られていない.そこで,本研究では各断層の変位速度,断層変位地形の記載,段丘面の編年を目的とした.

2.研究方法
本研究では,全域で1/20000及び1/10000の空中写真を用いて地形面区分と断層変位地形の解析を行い,現地踏査や火山灰分析を行い地形面の対比や編年を行った.これに加えて,変位量を求めるためEDMを用いて断面測量を行い,火山灰分析試料を得るためパーカッション採土器を用いて段丘面上で被覆土壌のボーリングを行った.これらにより得られた各断層の変位量と段丘面の編年結果から断層の上下変位速度を算出した.

3.結果
火山灰分析により本地域の段丘構成層と上にのる被覆土壌からK-Ah(7.3 ka),AT(26-29 ka),K-Tz(95 ka)(町田・新井,2003)などのテフラを検出し,加えて地形面の形状・分布・比高などから段丘面の編年を行った.各活断層の上下変位速度は,醍醐断層では0.1-0.2 mm/yr以上,大清水断層では0.1-0.4 mm/yr,関ヶ原断層では0.1 mm/yr,門前断層では0.04-0.06 mm/yr以上,宮代断層では0.4-0.6 mm/yr,垂井断層では0.1-0.3 mm/yr,池田山断層では0.5-0.6 mm/yr(最大1.3-1.7 mm/yr以上)という値が得られた.

【文献】
岐阜県活断層調査委員会(1998)池田山断層に関する調査成果報告書,岐阜県,97p.
Huzita(1962)J. Geosci., Osaka City Univ., 6, 103-144.
町田・新井(2003)「新編火山灰アトラス[日本列島とその周辺]」,東京大学出版会,336p.
岡田・東郷編(2000)「近畿の活断層」,東京大学出版会,408p.
杉戸ほか(2002)活断層研究,21,51-57.
東郷(1980)法政大学教養部紀要,35,39-51.


山元貴継(中部大学)

「高蔵寺ニュータウンの開発と地形改変」
Ⅰ はじめに
 名古屋大都市圏の郊外に相当する愛知県春日井市では,その東部に広大に広がる高蔵寺丘陵を造成して,目標人口8~10万人の「高蔵寺ニュータウン」の開発が進められた.1968年に本格的な入居が始まった同ニュータウンは,それまで荒廃した山林が広がり,「砂防地」指定をも受けていた高蔵寺丘陵を造成する際に,もともとの地形を活かした開発を想定していたとされる.すなわち,地形改変を最低限に抑えた上で変化に富む景観が展開する街づくりを行い,かつて谷であったところに幹線道路を,尾根線であったところに歩行者の通行道路を配する全体構造とすることで,同時に,自動車と歩行者との動線を分離し,当時問題視されていた交通事故を防ぐことを目指していた.
 しかしながら,実際にはニュータウンの開発に際してどのような造成が行われたのかについては,造成の完了した後に入居した住民には把握しにくい.また,ボーリング調査結果などの詳細なデータも,一般の住民には簡単に入手できるものではなく,その判断には専門的な知識が要求される.そこで本稿では,一般の住民も入手可能な地形図類の中でもとくに新旧の「都市計画図(国土基本図)」を用いて,ニュータウン開発に際して行われた地形改変を明らかにする手段を検討し,その結果をもとに地形改変の実態を示すことを目指した.

Ⅱ 分析方法
 本研究では,新旧の地形図のほか,春日井市役所で入手できるニュータウン開発前の1959年当時と2002年現在の「都市計画図」の比較をもとに,地形変化を分析した.具体的には,「高蔵寺ニュータウン」とその周辺の「都市計画図」上に50mメッシュを設定して,それぞれのメッシュごとの「最高標高」を判読し,汎用の表計算ソフトMicrosoft Excelを用いた標高データベースを作成した.そして,2時点での「都市計画図」について,同一の場所に相当するメッシュの「最高標高」どうしの差分すなわち標高変化を求めることで,埋め立てや盛り土,切り土の範囲や標高変化の量を分析した.そうして明らかにした標高変化量を再び地図上に重ねて図示し,諸施設の立地との関係を見たり,変化量の著しい箇所については現地調査を行ったりすることで,その課題を考察した.

Ⅲ 結果
 分析の結果,「高蔵寺ニュータウン」の範囲では,2002年現在と1959当時の標高の差分が正,すなわちニュータウンの開発を通じて標高が上昇した,埋め立てや盛り土によって造成された可能性の高い箇所が卓越していることを把握することができた.とくに,同ニュータウン北西側の斜面ではその値が大きいほか,かつての谷沿いに走っているとされる中央の通りも,実際には埋め立てによって造成された可能性が高いことが指摘された.また,埋め立てや盛り土によって造成された可能性が高い範囲は,大規模な集合住宅や,学校などの公共施設が配置されている箇所とも一致しやすい.敷地を広くとらなければならないこれらの施設は,必然的に大きな地形改変を伴いやすいが,地震などの災害時に避難路や避難場所となりやすいこうした場所こそが,埋め立てや盛り土によって造成された可能性が高くなる結果となった.
 なお,こうした結果については住民に対する公開も試みており,住民の多くが,「高蔵寺ニュータウン」の大部分が「丘陵を削って造成された」という認識を持っていることが明らかとなった.とくに開発の時期が古く,居住者の高齢化が急激に進んでいる同ニュータウンは,丘陵地を造成したことによる高低差や,高層住宅が多く,今後の高齢者の生活に多くの懸念が指摘されているが,さらに災害時には,こうしたニュータウンの造成に対する認識が災害時の誤った非難行動にも反映されかねない.「高蔵寺ニュータウン」はその構造自体から,緊急車両の乗り入れも難しく,対策が求められよう.
 ただし今回の分析では,新旧「都市計画図」の測量精度による誤差の可能性や,図法などの違い・地図の伸縮によるメッシュ設定の難しさも指摘された.また,メッシュを細かく設定すれば,より詳細な分析も可能であるが,その一方で危険とされる箇所が特定され,いたずらに不安や,ひいては各住宅の資産価値を下げる可能性もある.分析方法に対する吟味だけでなく,その結果の公開についても,多くの課題が残された.


横瀬 鑑(信州大学)

「黒姫山東部火山麓扇状地の形成過程」
 長野県北部に位置する黒姫山は,最高峰の黒姫山(2053.4m)を含む外輪山と,小黒姫(2046m)と呼ばれる中央火口丘からなる典型的な“二重式火山”である.この火山は,長野県と新潟県の両県にまたがって位置する飯縄山・黒姫山・妙高山・佐渡山・焼山・斑尾山からなる妙高火山群(早津,1976a)の中央に位置し,比較的狭い範囲に6個もの火山が火山列をなして密集している点などから,火山研究の好対象とされてきた.これまで,黒姫山周辺では早津(1976a)や妙高団体グループ(1979)らによって地形・地質学的手法によって編年や形成史が論じられてきた.また近年では,沢田ほか(1992)や早津(1995),早津ほか(1997)によって,黒姫火山が大きく3つの活動期を有することや幾つかの火山灰の年代が明らかにされている.しかし,東部に広がる火山麓扇状地については,その形成過程や形成時期などは明らかにされていない.すなわち,火山活動に引き続いて起こる火山体の解体・開析と関わる火山麓扇状地の形成過程についての研究はまだ十分ではない.
 そこで本研究では,黒姫山東部に広がる火山麓扇状地の形成過程を明らかにし,より詳細な黒姫火山の形成史を明らかにすることである.研究方法は,20000分の1の空中写真をもとに地形分類図を作成し,黒姫山東部に広がる火山麓扇状地を分類する.そこで明らかになった地形面分布をもとに現地調査を行い,露頭の堆積物の層相に基づいて,堆積環境を挟在する示標テフラとの関係から火山麓扇状地の形成時期も考察する.
 現段階では,東部に広がる牛臥山溶岩層と一括されていたものが,地形学的には2つ以上に細分されること,最も若く火山麓扇状地堆積物として一括されていたものが,少なくとも3面に分類できることが明らかとなった.今発表では,これらを中心に報告する.

参考文献
早津(1976a)第四紀研究,15,55-65.
妙高団体グループ(1979) 第四紀,18,1-8
早津(1985)「妙高火山群-その地質と活動史-」,第一法規,48-77.
沢田ほか(1992)名古屋大学加速器質量分析計業績報告書,14,164-176.
早津(1995) 妙高火山研究所年報,3,39-42.
早津ほか(1997)地学雑誌,103,207-220.



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年12月01日 09:10
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。