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第25回勉強会 発表要旨

発表要旨


仲村祐哉(首都大学東京)

「大磯丘陵西縁部に位置する菊川東岸地域の地質構造と国府津・松田断層の断層崖出現時期」
神奈川県の大磯丘陵西縁部は,プレート境界であり活動度が高い国府津・松田断層の影響を受け,極めて複雑な地質構造を持っている.本研究では,調査地に与えた国府津・松田断層の影響を把握するために,地質構造を調査し,国府津・松田断層の断層崖出現時期を推定した.
地質調査により,調査地における礫層の分布を把握し,テフラとの層序関係から,下位より曽我山砂礫層,巨礫層,T-b礫層,T-a礫層の4層に区分した(図2,図3).調査地中央部の沢に沿う東西の縦断面(図4)から,西側と東側でT-b礫層堆積面に標高差があることがわかった.このことから,本調査地では北東―南西方向に走向を持つ断層が推定され,T-b礫層堆積以降に活動したことがわかった.ただし,断層の活動履歴や国府津・松田断層との関係については明らかでない.
また,国府津・松田断層の断層崖出現時期は,巨礫層の起源とT-b礫層中の巨礫の存在を考慮すると,巨礫層堆積期~T-b礫層堆積期であると推定される.
図1 調査地域周辺図

図2 先行研究との地層区分対比
   巨礫層の層位を右側に示す.

図3 菊川東岸地域の礫層地質図

図4 菊川B沢の縦断面図
   断面図a-bの位置は図3に示した.



林奈津子(名古屋大学)

「液状化現象による地変の分布と地形・地質条件との関係―1948年福井地震を事例に―」
I. はじめに
 地震時に発生する液状化現象は,地下水で飽和した砂層が,地震動によりその堆積を縮めようとする結果,間隙水圧の上昇をうけて砂粒子同士を押し付けあう力(有効応力)がゼロになるというメカニズムで説明される(Lee and Seed 1967).砂粒子同士の結びつきが失われることにより,地表に砂や水が噴出するといった噴砂sand volcanoesがみられ,著しい場合には,建造物が沈下・傾斜する,地下埋設物が浮き上がるといった様々な被害を引き起こす.
 噴砂が生じた場所は,液状化した地点として見なせることに着目し,草野(1989),若松(1993)などは,地震で噴砂が発生した地点と,沖積低地の堆積物の粒度条件を反映する微地形との関係について論じている.これらの研究によると,液状化現象は,地下水位が高く,ゆるく堆積した砂層により構成されるという特徴をもつ,旧河道,自然堤防・ポイントバー縁辺部,砂丘・砂州の外縁部などに対応するとされている.しかし,噴砂などの液状化発生地点の分布を調査した小笠原(1949)や若松(1991)などで,微地形との対応関係を検討すると,上述の微地形に対応しない場合も数多く認められるが,この点について従来は言及されてこなかった.
 上述の課題を踏まえて,本研究では,福井平野を対象地域として,空中写真判読に基づき1948年福井地震の際の「地変分布図」を作成し,地変の分布と微地形・浅層堆積物との関係を考察した.なお,液状化現象により生じる地変として,噴砂,地割れ,陥没,地下構造物の浮き上がりなどが挙げられるが,本研究ではこれらのうち噴砂を指標として代表させる.

II. 調査方法
1) 地変分布図の作成
 福井平野では1948年福井地震直後に米軍により数多くの空中写真が撮影され,被害の様子が記録されている.これらの写真を用いて,小笠原(1949)ならびにGHQ(1949)は福井平野全域を対象とした,地変分布図を作成している.ただし,これらの図は小縮尺であるため,沖積低地の微地形との対応関係を検討しにくい.したがって,本研究では,縮尺1/5,000-1/10,000の地震直後の空中写真を用いて,新たに地変分布図の作成を行った.なお,微地形および地変のトレース作業は,広範囲を高精度に判読する目的から,地理情報システム(SIS Map Modeller)を用いた.判読の基準スケールは縮尺1/1,000である.
2) 堆積物の認定
 本研究では,建設工事などに伴う試錐資料・ハンドボーリング・遺跡での露頭観察の,異なる精度を有する地質資料を併用して,堆積物の認定を行う.異なる空間的スケールの地質資料を用いて,堆積物の特徴を整理することにより,局所的に観察された地変を規定した地質条件を,平野全体の中で位置づけることが出来ると考えられる.

III. 福井平野における地変の分布を規定した要因
 作成した地変分布図から,平野内には,帯状に集中する噴砂(これ以降,「地変集中帯」と定義する)が認められた.さらに,地変集中帯は,いくつかの空間的パターンにより構成される.つまり,地変集中帯と空間的パターンには階層構造が認められるといえる.
 噴砂が集中する帯の幅は,九頭竜川の蛇行の幅に相当し,帯内の空間的パターンは,九頭竜川およびその名残川の蛇行の規模と調和的である.また,これらの空間的パターンを規定したと考えられる微地形は,地表の粗粒堆積物からなる微地形とは対応しない.
 いくつかの空間的パターンを横断する掘削調査を行った結果,現在の後背湿地を構成する細粒堆積物の下位から,噴砂の分布と対応して,シルト質砂-砂礫の粗粒堆積物が得られた.これらの粗粒堆積物は,いずれも河川の蛇行により堆積したと考えられ,これらの堆積物が母材となり噴砂が形成されたと考えられる.
 さらに,噴砂の空間的パターンを地変集中帯間で比較すると,その規模に違いがみられる.これらの空間的パターンの差異は,九頭竜川・名残川の存在時期および規模に規定された可能性が高い.

参考文献
小笠原義勝(1949)「福井地震の被害と地変 ―特に地震と断層運動について」地理調査所時報特報2
草野郁(1989)「関東地震における東京平野の液状化履歴」土木学会論文集406Ⅲ(11)、213‐222
若松加寿江(1991)『日本の液状化履歴図』東海大学出版会
若松加寿江(1993)「わが国における地盤の液状化履歴と微地形に基づく液状化危険度に関する研究」早稲田大学学位論文
Lee, K.L. and Seed, H.B. (1967) “Cyclic Stress Conditions Causing Liquefaction of Sand”, J.; SMFD, ASCE, 92, SM1, 47-70
Office of Engineer, General Head Quarters, Far East Command (1949) “The Fukui Earthquake Hokuriku Region, Japan, 28 June 1948”

佐藤 善輝(名古屋大)

「珪藻分析の手法とその応用 ~浜名湖沿岸の沖積低地を事例に~」
珪藻分析について
珪藻(Diatom)はジュラ紀初期(約2億年前)に出現した単細胞の藻類で,珪酸質の殻を持つ特徴がある(図).太陽光が届くところであれば,海水中や干潟,河原の石など,様々な水域に棲息している.大きさは1mmの100分の1~10分の1程度(10~100μm程度)で,殻の形状に基づいて属種が細分されている(渡辺2005).
珪藻は水質の違い(塩分濃度,pH,汚れ具合など)によって棲み分けをしている.そのため,堆積物中に含まれる珪藻化石の属種を特定して種構成を調べることによって,堆積物が堆積した当時の環境を知ることができる.さらに,現生の珪藻の生態分布を詳しく調査し,その結果を応用することによって,詳細な古環境の変化を明らかにすることもできる(鹿島1986,小杉1989,安藤1990).

浜名湖沿岸の沖積低地の環境変化
浜名湖沿岸の沖積低地で掘削調査を行い,層相や珪藻化石などの分析結果や14C年代測定結果から,完新世中期から後期にかけての堆積環境の変遷を明らかにした.その結果,両低地で共通した環境変遷が認められた.すなわち,5000~6000calBP以降3800calBP頃までは低地の発達に伴って海水の影響が減少する傾向が見られるが,3800 calBP頃に砂質干潟・泥湿地の再拡大が認められ,一時的に海水の影響が高まったことを示す.その後,3500~3400 calBP頃に淡水の沼沢地あるいは後背湿地へと急速に変化した.3500~3400 calBPの環境変化は,浜名湖の湖底試料の分析から復原された湖水環境が急速に淡水化した時期と近い.このことから湖岸低地の堆積環境の変遷は湖水環境の変遷と連動して起こったことが示唆される.

参考文献:渡辺2005. 『淡水珪藻生態図鑑』内田老鶴圃./鹿島1986. 地理学評論, 59A: 383-403./小杉1989. 第四紀研究, 27: 1-20./安藤1990. 東北地理, 42: 73-88.

図.浜名湖沿岸で得られた主な珪藻化石
1:Cyclotella hakansoniae, 2:Achnanthes sp., 3:Achnanthes haukiana, 4:Cocconeis scutellum, 5:Amphora ventricosa, 6:Tryblionella lanceolata, 7:Tryblionella granulata, 8:Staurosira construens,9:Rhopalodia gibberula,10:Aulacoseira granulata,11:Eunotia spp.,12:Tabellaria fenestrata,13:Frustulia rhomboides,14:Co


橋爪護(信州大学)

近年、地理の履修率・人気の低下が報告されている。日本の地理教育の現状を解決し、地理の人気獲得や充実、発展を図ることが必要である。そのためには様々な地域の地理教育に目を向け、他地域の地理教育を活用していくことが考えられる。もちろん海外での地理教育はその国の特有の文化を反映したものであるので、そのまま導入することは適切ではない。しかし、日本の地理教育にはなにが足りていないかを認識するためにも、海外の地理教育の特徴を探ることの意義は大きいように思われる。そこで私自身が1年間留学し、高校教育の現場に関わっていたニュージーランドの地理教育の特徴を知ることで改善へのアプローチを考えていきたい。
ニュージーランドの地理の特徴は、地理的知識の深さ、専門性にあるといってよい。日本でならば大学での学習に当たる内容がニュージーランドでは高校の段階でフィールドワークやグループ活動を通して学習している。大学に入ってから専門的分野に進んでいくのではなく、高校の段階で自らが選択した科目を専門的に学習していく。このことが大学に入った後でも専門性の深さに差が出てくると考えられる。また試験が実践的なものであるために知識を知識のままにしておくのではなく、実践的に使わなくてはいけない。このことが地理的なスキルを地理だけに留めず、その後の生活に有効性を示すことにつながっている。

渡会浩佳(名古屋大学)

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最終更新:2010年03月20日 10:09
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