更新
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技術
文章。三人称一元視点での描写が好みだけど、ある程度の文体なら模写する自信はある。
得意な描写は風景、動作。コメディやエロは恐らく不得手。
作品。
VIPパートスレ、文才ないけど小説書くに『塔』『斑虹』他、いくつかの作品を投下。
ただ、幾分二年前の作品なので、鑑賞には堪えないかもしれない。
連絡方法
ゲ雑に常駐。
文章サンプル
直近の作品の途中まで。
夏の夜の底には粘度の強い空気が沈んでいた。それは満月から零れる柔らかい光に纏わりつき、薄く滲ませていく。溶け出した淡い光は萌黄色の草原を映し出す。時折流れる重い風にしなる草木は、まるで波打つ海原を思わせた。海原を行く一団がいる。規則正しく列を成すそれは、戦車の群れだった。地鳴りを響かせながら進軍する彼らが砲身を向ける先には、煌々と街の灯りが浮かんでいる。海に面したその街は、この国でも有数の商業都市だ。まるで高さを競い合うかのように乱立する豪奢な高層ビルの群れは、夜の底にあっても眠ることを知らない。戦車は虫達の歌を押しつぶしながら、まるで光に惹かれるが如く街へ吸い寄せられていく。
戦車の右側面方向には、僅かに距離を隔て、森が広がっている。温暖な気候に恵まれ、奔放かつ貪欲に広がる森だ。飲み込まれそうな程深い緑の隙間に、双眼鏡で戦車の群れを睨む偵察兵の姿。彼の無線から、商業都市の港に停泊する空母に情報が送られる。情報は瞬時に処理され、スクランブルの下った戦闘機が夜の闇を切り裂いた。静かに戦争が始まろうとしていた。
男はその様子を遥かな高みから見下ろし、満足げに息を吐いた。長時間同じ姿勢でいたせいで、全身の筋肉が凝り固まっているのが自覚できる。立ち上がり、一箇所ずつゆっくりと筋肉を伸ばしていくと、面白いように関節が鳴いた。それに合わせるように、腹の虫も唄いだす。食事も同じように取っていなかったことを思い出した。途端に襲ってきた空腹を満たすため、男は台所へと足を向けた。乱雑に並べられたカップ麺の中から適当に一つを選び、湯を注いでタイマーをかける。
男が住んでいるのは、特筆すべきことなど何もない、六畳間と四畳間の二部屋からなるアパートだ。しかしそこには、無数の別世界が存在していた。レンガ造りの家が並ぶ牧歌的な街に、プロペラ機が手紙を届ける世界。巨大な人型の機械が武器を持ち、廃墟となった近代都市で戦いを繰り広げる世界。そして、先に述べた世界。それらはほんの一握りでしかない。世界はジオラマ呼ばれている。大仰に言えば、男はその世界の神だった。
泣き出したタイマーの息の根を止め、男はカップ麺の蓋を開けた。行儀悪く立ったまま麺をすする。胸中に満ちる達成感とは裏腹に、相変わらず褒めるべきところの見つからない味だった。味わうこともなく早々にそれを胃の中に流し込むと、空になった容器をゴミ袋に放り込み、男はまたジオラマの前に座った。
男のジオラマの製作には、フルスクラッチという手法が使われている。既存の部品などを使わずに、自分で素材を加工し製作するという手法だ。技術的な要求は既存の部品を組み立てるものとは比較にはならないが、しかしそれをこなせるならば、その作品の完成度に上限は存在しない。そして自身の作品は高い完成度を誇っていると、男はそう自負していた。プロにだって負けない自信があった。事実、男の作品をプロの展覧会に紛れ込ませたとしても、誰一人違和感を持ちはしないだろう。
男の眼前にある作品は、その中でも一番の自信作だった。そしてそれは、男にとっては然るべき結果でもあった。向上心は人一倍強い自負がある。それに、新しい作品は今までで一番出来のいい作品にするべく、常に真剣に取り組んでいる。失敗がなかったわけではないが、それでもほとんどが目標を達成してきた。
しかし同時に、男の中で創作に対するネガティブな感情が育ちつつあった。適当な言葉で表すなら、それは『飽き』によく似た感情だ。製作に熱意を失ったわけではない。しかし、自身の向上心を満たすだけの余地がジオラマ製作からは消えつつあることを男は感じていた。
最終更新:2012年08月24日 23:36