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*ARMORED CORE MASTER OF ARENA 【あーまーどこあ ますたーおぶありーな】 |ジャンル|カスタマイズメカアクション(TPS)|&amazon(B00005OV6X)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売・開発元|フロム・ソフトウェア|~| |発売日|1999年2月4日|~| |定価|6,090円(税込)|~| |廉価版・配信|PlayStation the Best:1999年2月4日&br()PS one Books:2002年1月1日/1,890円(税込)&br()ゲームアーカイブス(PS3専用):2007年11月28日/600円|~| |>|>|CENTER:BGCOLOR(#fed):''[[アーマード・コアシリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/307.html]]''| #contents(fromhere) ---- CENTER:&font(130%){'' ≪Wanna Be The Raven?≫――レイヴンに成りたいのか?''} 『大破壊』と呼ばれる最終戦争によって、人類が地上を追われ、その居住を大地の底に移して半世紀。&br() 「国家」という概念は既に無かったが、それに代わって台頭した「企業」同士の争いは終わる事はなかった。&br() 総てが「企業」に管理される世界で、唯一、それに含まれない存在があった。~ 報酬によって依頼を遂行し、何にも組みしない傭兵。彼らは「レイヴン」と呼ばれていた。~ &br() 地下世界有数の規模を誇る複合都市『アイザック・シティ』において、2つの巨大企業が市の支配権を巡る争いを繰り返していた頃、テロリストによる大規模な事件が発生。~ 一般の住民を巻き添えにし、事態は最悪の状況を迎えることとなった。~ 飛び交う銃弾の中を逃げまどった一人の青年が騒乱の後に見たものは、いつの間にかはぐれてしまった家族の無残な亡骸であった。~ 『レイヴン』 『赤と黒の機体』 『ナインボールを模ったエンブレム』~ テロリストもろとも彼の家族を殺害したという憎むべき相手に関して、彼が知り得た情報はそれだけしかなかった。~ 数ヵ月後、青年はネットワーク上である人物の存在を知る。その女性、ラナ・ニールセンは元レイヴンであり、今はそのレイヴンを志す者へのマネージメントを行っていた。~ 家族を殺したレイヴンを探し出し殺す。青年は自らもまたレイヴンとなることを決意する。~ ここにまた、数奇な運命のもとに一人のレイヴンが登場したのであった。~ &br() ---- **概要 1997年に発売され、当時類の無かった''「パーツを組み替えて自分だけのロボット(AC)を作り、レイヴンと呼ばれる傭兵となって薄汚い依頼を遂行する」''斬新な内容でヒットを飛ばした『[[''ARMORED CORE''>アーマード・コア]]』(以下、初代)。&br() ストーリー面の演出を強化、多用なNPCが駆るACと対戦できる「アリーナ」という新要素を加えて半年後にリリースされた『[[''プロジェクトファンタズマ''>アーマード・コア プロジェクトファンタズマ]]』(以下、PP)もおおむね好評を博し、発売元のフロム・ソフトウェア主宰の全国大会も開かれ、ユーザー独自の対戦会も盛り上がりを見せていた。&br() そして、『PP』発売から一年の間をあけてリリースされた本作『''マスターオブアリーナ''』(通称MoA)は、『初代』と『PP』で培われた技術をフルに生かした『アーマード・コア』の集大成と呼べる作品であった。&br() 『初代』のストーリー補完と謎への解答・全国大会上位入賞者のデータを含む圧倒的な数のアリーナ参戦機体・多彩な追加パーツ・簡易AIによるオリジナルアリーナ作成機能・通信対戦を念頭に置いたディスク二枚組仕様…。&br() 現在でもなおシリーズトップクラスのボリュームを誇る本作は、後に『PS三部作』『初代三部作』と呼ばれるプレイステーション作品の集大成として愛され続けている。 &br() ---- **システム 基本的なゲームシステムは『初代』と変わりない。ここでは本作の追加・新要素を中心に述べる。 ***パーツ関連 -''パーツのバランス調整'' --前作『PP』では大した性能調整が行われていなかったパーツパラメータに修正が入った。これによって使いにくかった一部の武器パーツが対戦でも使用されるようになり、壊れた性能の多かった『PP』追加パーツも大幅に弱体化され、まともな性能となっている。 --この作品から、カタログスペックでは真の性能を把握できない「おもしろパーツ」が増えてくることになる。 -''多彩な追加パーツ'' --続編でパーツが追加されるのはシリーズの通例であるが、今作の追加パーツは『PP』のそれと比べ、一風変ったものが多かった。 ---例:「エネルギーマシンガン・スナイパーライフル」(要するにビーム弾)、着弾時に燃焼し連続ダメージを与える「火炎砲弾」、着弾時に敵機のロックオンを妨害する「特種ロケット」、強力なエネルギー波を発射する「光波射出型ブレード」など。 --これらのパーツも後作に引き継がれていく。変わり種が多いのは、ゲーム性が煮詰まっていた当時の状況を象徴していたのかもしれない。 -''前作隠しパーツの販売解禁'' --『初代』の隠しパーツは『PP』単体では入手できず、入手したデータをコンバート(引き継ぎ)しなければならなかった。今作では『初代』と『PP』それぞれの隠しパーツは最初からショップに陳列されており、新規ユーザーを考慮した仕様となっている。 ***アリーナ関連 -''総数200以上のランカーACと、10+1種類のアリーナ'' --『PP』の49機を大幅に上回る機体数。現在をもってシリーズNo.1の収録数である。 --シナリオにかかわってくる「アリーナ」「サブアリーナ」、脚部制限がかかる四つのアリーナ、ゲスト参戦者の3つのアリーナ、上級者向けの「スペシャルアリーナ」と数も多い。 -''多彩な参戦者'' --全国大会での上位入賞者15名、ゲーム雑誌出版社5社30名、代表取締役の神直利氏を含むフロム・ソフトウェア社員9名の機体データを収録。 ---大会入賞者のエンブレムはどれもクオリティが高い。エースとは美にもこだわるものなのか。 ---俺設定、中二設定丸出しの各参戦者のプロフィール文も一度は見ておきたい。全体的に入賞者はシリアスか中二系、雑誌社はネタ丸出しという方向性を持つ。 ---入賞者の中で唯一ネタに走った「ビッグ・ザ・将軍」、キワモノ揃いのPSmag系の中でも一際輝く「場末の木製AC」、なにやら哀愁を誘うファミ通PSの「コゲタ兄弟」は爆笑必至。 --なお、このゲスト参戦が実現しているシリーズは『[[フォーミュラフロント>アーマード・コア フォーミュラフロント]]』と[[ポータブルシリーズ>http://www23.atwiki.jp/ksgmatome/pages/428.html]]のみ。 -''ランカーACのAI調整'' --『PP』では開発期間の短さもあり、強化人間補正と強力な武器にものを言わせただけのお粗末な動きのランカーが多数を占めていた。本作ではその点が若干改善され、歯ごたえのある戦闘が楽しめる。 -''オリジナルアリーナ'' --本作のみに実装されているモード。自作の機体に簡易AIを設定し、ユーザーオリジナルのアリーナを作成できる。 ---本モードは設定の自由さ、お手軽さが高く評価されており、今なお他作品での実装を求める声も多い。 ***対戦関連 -本作はディスク二枚組であり、ソフトが一つ・本体二つ・テレビ二つ・通信ケーブルがあれば通信対戦が行える。 &br() ---- **BGM・グラフィック ''BGM'' -BGMは前二作からの引き継ぎと、数曲の新曲で構成されている。いずれも評価は高いが、とりわけナインボールのテーマ曲ともいえる「⑨」が絶大な人気を誇っている。惜しむらくはその新曲の一部がサウンドトラックに収録されていないこと。 -ナインボールのテーマ曲「⑨」はナインボールのテーマ曲と言うともあり、後のゲスト出演の際にも使用された。 ''グラフィック'' -ゲーム中のグラフィックは前二作から変化はない(元々高い水準ではある)。だが… --オープニング・エンディングムービーのクオリティは前二作を完全に凌駕、PS2初期レベルの水準に達している。前二作と比べると「何が起こったのか」とでも言いたくなる域。 --演出力も格段に上昇しており、オープニングの戦闘シーンには幾多のユーザーが魅了された。 --このムービーが後々、「変態企業フロム」(褒め言葉)という称号をユーザーから贈られるきっかけになっているのかもしれない。 参考動画(youtube)。少々実機より滑らかではなくなってしまっている。ニコニコ動画アカウントをお持ちの方には[[こちらの動画>http://www.nicovideo.jp/watch/sm8119977]]をお勧めする。&br() #region(MoAオープニング) &youtube(http://www.youtube.com/watch?v=tde8wGMl3_8&feature=related){425,350} #endregion &br() ---- **シナリオ・ミッション -今作のシナリオは先述したストーリーの通り、「一人の青年の復讐劇」を軸にしながら、『初代』で提示された疑問である「レイヴンズ・ネスト」と「ナインボール」の謎が明かされるという構成となっている。『初代』のストイックな雰囲気と『PP』のヒロイックなストーリーを融合させた、シリーズファンのツボをついたものだった。 --シリーズの通例通り、キャラクターの風体等は全く描写されず、その人物を表現する要素は声・メールの文面・機体の動きのみ。しかしそれ故に各キャラクターの印象は強烈にプレイヤーの心に残りやすい。ミッションでさりげなく登場する他のレイヴンにもファンがいるというありさま。 ---ナインボールを駆る最強のレイヴンであり、主人公の仇でもある「ハスラーワン」と、復讐に燃える主人公をサポートする「ラナ・ニールセン」の人気は非常に高い。 ---なお、やはりシリーズの例にもれず声優は豪華。ハスラーワンは檜山修之氏、ラナは渡辺久美子氏。お二人とも他作品ではなかなか見ることのできない性質のキャラクターを演じている。 ---頭部コンピュータシステムボイスの三石琴乃氏、田村ゆかり氏も続投しているが、今作では主にラナがオペレーティングを担当してくれるため、前二作ほどその美声を聞く機会は少ない。ちなみにシステムボイスには今作から軽くエフェクトがかかり、よりコンピュータボイスらしくなった。旧式タイプは在る意味必聴。 -今作ではシリーズでも異例の、ミッションとアリーナがリンクしたシナリオ進行の方式をとっている。アリーナで何勝かすると新たな依頼が出現してシナリオを勧められたり、逆にアリーナ出場を強制的に禁止され緊急の依頼を受諾するなど。 --これは主人公の目的が「アリーナランク1であるハスラー・ワンへの復讐」であるため。他にも「アリーナ参戦のためのスポンサー企業」など、本作独自の要素が多い。 -ミッションの難度は高め。対AC戦闘が多いのと、変わった構成のマップが多いため。 --中でもシリーズ初の海上戦闘となる「潜水艦護衛」、巨大兵器と対峙する「地上戦艦撃破」、放棄された宇宙船内を探索する「廃棄宇宙船探索」は幾多のレイヴンを苦しめた。 --最終ミッションは難易度 ・ 演出合わせて今でもファンの間で語り草となっている。過酷な道中、明かされる真実、そして最後に待ち受ける、常軌を逸した火力と機動性を持つPS三部作最強の敵「ナインボール=セラフ」……。トリを飾るミッションとしてはこれ以上ないほどの完成度であった。 &br() ---- **難点 -''PS三部作最小のミッション数'' --ミッション個々の内容は濃く、またアリーナと連動するシステムのおかげでボリュームが薄いとは感じないのだが、逆に「ミッションとアリーナを往復する(させられる)のが面倒」という指摘も。 -''対戦バランスの悪化'' --タンク型脚部の防御力下方修正 ・ 着弾すると相手に反動を与え、一瞬硬直させる「反動武器」の仕様変更 ・ 『PP』で反動対策として有効だったバグ「風」の廃止等、被弾率の高い重量級・四脚型脚部が不利なゲームバランスになっている。 ---反動の仕様変更でハンドガンが凶悪化し、当時の大会参加機体の半数はほとんどの機体から硬直をとれる「WG‐HG1」を装備していた。 --通信対戦時には、2P側のロックオン時の照準補正が向上する通称「2P補正」なるバグが必ず発生する。端的に言えば「完璧に公平な対戦は不可能」。 ---「2P補正」自体はPS三部作全てで働くのだが、今作では特にその影響が大きいと言われている。画面分割対戦では回避可能。 --マップ数の減少。しかも面白いと評判のマップが中心に削られてしまっている。 --こうしたことから、皮肉なことにもコアな対戦派は、第一作にしてシリーズでも随一の対戦バランスを誇る『初代』を対戦ツールとして用いる傾向にある(正確には「『初代』のデータを対戦環境の整った『PP』に移してから対戦」する、「イエローアセン」と呼ばれる方法を用いている)。 -''強化人間能力獲得の方法'' --「公式チート」とでもいうべきシリーズ恒例の「強化人間」だが、『PP』と同様に本作単品ではその能力を得ることは出来ない。『初代』からデータを引き継いでくる必要がある。 -他、初代の難点の幾つかを引き継いでいる。 --パラメータ表記が英語と数字で少々とっつきづらく、一部のダミーパラメータもそのまま。 ***批判点とまではいかないが気になる点 -ミッション中に入手できる隠しパーツの凶悪な隠し場所 --三種類いずれも隠し場所が凝り過ぎ。「くまなく探す」だけではなく「頭を使う」必要がある。 -前二作から全く進歩の無いゲーム中グラフィック --ただ、そもそも『初代』の時点で「このボリュームとしては十分すぎるクオリティ」の品質であり、収録機体やステージが更に増えた本作でグラフィックの向上を求めるのは酷だとする意見が大半である。 -ミッション中に登場するランカーACの仕様 --『初代』から続く仕様として、ランカーACはアリーナでは本来のパーツの組み合わせ通りの戦闘力を発揮するが、ミッション中で登場する場合には無条件で防御力が0とされ、実際よりもかなり脆くなってしまっている。 -PS2使用時のフリーズ --本作はPS2登場以前に発売されたため、ゲーム自体と製作元には何の責任も無いのだが、Best版までのソフトではPS2で遊ぶと高確率でフリーズする。PS one Books版、ゲームアーカイブス版では修正済み。 &br() ---- **余談 -本作の主人公はシリーズでは珍しく、レイヴンを志した経歴と生い立ちが詳しく(シリーズの基準で言えばこれでも詳しい)描写されている。後に、彼には(機体名と合わせ、あくまで小説の独自設定であるが)ファミ通文庫からのノベライズ版『マスターオブアリーナ』((著者は篠崎砂美。フリーソフト『マッチメーカー』の考案者としても知られる。))にて「フリッツ・バーン」の名が与えられた。 --本作パッケージに描かれ、OPムービーでも登場するACはファンの間で「アナイアレイター(殲滅者)」と呼ばれているが、この呼び名はフリッツの乗機に由来している((ちなみに構築・命名者はゲームにも登場する技術者・エラン。小説後半では脚部と武装を換装した「アナイアレイター+」となる。))。『初代』の看板機体である「アンファング」を新鋭パーツで再構成した正当進化系のデザインは歴代でも特に評価が高い。 //流石にゲーム本編とは関係ないオリジナル展開の小説の中身を細々説明するのはどうかと。それから書くにしても文章の推敲はしてくれ。 --小説という触体ならではのストーリーや、ゲームをよく研究していることが読み取れる描写など、随所に見るべきところが多い作品でもある。現在絶版であり入手困難だが、ファンならば抑えて損はない。 -OPムービーで主役機が使用するレーザーブレードは、シリーズでは数多いムービーのみの登場武器。ゲームで再現するならばLS-99-MOONLIGHTで代用しよう(重量過多であり、全ミッションクリア特典の重量過多制限解除までは使えないが…)。 ---- **総評 本作の時点で『アーマード・コア』という作品は、ゲーム性が煮詰まった様相を呈してきていた。その点からいえば本作は見事に『PS三部作』のトリを飾り、次世代機PS2でのシリーズ展開の夢を託したと言えよう。&br() 新たな方針の新武装・待ち受ける無数のランカーAC・第一作から続く物語の決着・最強の敵・・・・&br() 少々難易度が高めであり、初心者がいきなりプレイするにはハードルが高いタイトルではあるが、その内容はレイヴンのみならず、全てのロボットモノ好きに進められる作品である。&br() 本作と同じくアーカイブスで配信されている『初代』の後にプレイするのがよいだろう。両作共にPS one Booksで再版されており、また中古品の出回りもよく、2作(場合によっては『PP』も合わせた3作を)まとめて1,000円未満で調達することもできる。&br() この作品でアーマード・コアシリーズは一区切りを迎え、[[次なる舞台>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/616.html]]へと飛翔する。&br() 「進化する戦闘メカアクション」の一つの終点を、ぜひ体験してみてほしい。&br() &br()&br() #center(){{ &font(130%){''修正プログラム 最終レベル&br()全システムチェック終了&br()戦闘モード起動&br()ターゲット 確認 排除開始''} }} &br()&br() ---- 一部情報出典:[[RAVENWOOD.jp>http://www.ravenwood.jp/index.php?Entrance]] ---- &br()&br()
*ARMORED CORE MASTER OF ARENA 【あーまーどこあ ますたーおぶありーな】 |ジャンル|カスタマイズメカアクション(TPS)|&amazon(B00005OV6X)| |対応機種|プレイステーション|~| |発売・開発元|フロム・ソフトウェア|~| |発売日|1999年2月4日|~| |定価|6,090円(税込)|~| |廉価版・配信|PlayStation the Best:1999年2月4日&br()PS one Books:2002年1月1日/1,890円(税込)&br()ゲームアーカイブス(PS3専用):2007年11月28日/600円|~| |分類|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |>|>|CENTER:BGCOLOR(#fed):''[[アーマード・コアシリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/307.html]]''| #contents(fromhere) ---- CENTER:&font(130%){'' ≪Wanna Be The Raven?≫――レイヴンに成りたいのか?''} 『大破壊』と呼ばれる最終戦争によって、人類が地上を追われ、その居住を大地の底に移して半世紀。&br() 「国家」という概念は既に無かったが、それに代わって台頭した「企業」同士の争いは終わる事はなかった。&br() 総てが「企業」に管理される世界で、唯一、それに含まれない存在があった。~ 報酬によって依頼を遂行し、何にも組みしない傭兵。彼らは「レイヴン」と呼ばれていた。~ &br() 地下世界有数の規模を誇る複合都市『アイザック・シティ』において、2つの巨大企業が市の支配権を巡る争いを繰り返していた頃、テロリストによる大規模な事件が発生。~ 一般の住民を巻き添えにし、事態は最悪の状況を迎えることとなった。~ 飛び交う銃弾の中を逃げまどった一人の青年が騒乱の後に見たものは、いつの間にかはぐれてしまった家族の無残な亡骸であった。~ 『レイヴン』 『赤と黒の機体』 『ナインボールを模ったエンブレム』~ テロリストもろとも彼の家族を殺害したという憎むべき相手に関して、彼が知り得た情報はそれだけしかなかった。~ 数ヵ月後、青年はネットワーク上である人物の存在を知る。その女性、ラナ・ニールセンは元レイヴンであり、今はそのレイヴンを志す者へのマネージメントを行っていた。~ 家族を殺したレイヴンを探し出し殺す。青年は自らもまたレイヴンとなることを決意する。~ ここにまた、数奇な運命のもとに一人のレイヴンが登場したのであった。~ &br() ---- **概要 1997年に発売され、当時類の無かった''「パーツを組み替えて自分だけのロボット(AC)を作り、レイヴンと呼ばれる傭兵となって薄汚い依頼を遂行する」''斬新な内容でヒットを飛ばした『[[''ARMORED CORE''>アーマード・コア]]』(以下、初代)。&br() ストーリー面の演出を強化、多用なNPCが駆るACと対戦できる「アリーナ」という新要素を加えて半年後にリリースされた『[[''プロジェクトファンタズマ''>アーマード・コア プロジェクトファンタズマ]]』(以下、PP)もおおむね好評を博し、発売元のフロム・ソフトウェア主宰の全国大会も開かれ、ユーザー独自の対戦会も盛り上がりを見せていた。&br() そして、『PP』発売から一年の間をあけてリリースされた本作『''マスターオブアリーナ''』(通称MoA)は、『初代』と『PP』で培われた技術をフルに生かした『アーマード・コア』の集大成と呼べる作品であった。&br() 『初代』のストーリー補完と謎への解答・全国大会上位入賞者のデータを含む圧倒的な数のアリーナ参戦機体・多彩な追加パーツ・簡易AIによるオリジナルアリーナ作成機能・通信対戦を念頭に置いたディスク二枚組仕様…。&br() 現在でもなおシリーズトップクラスのボリュームを誇る本作は、後に『PS三部作』『初代三部作』と呼ばれるプレイステーション作品の集大成として愛され続けている。 &br() ---- **システム 基本的なゲームシステムは『初代』と変わりない。ここでは本作の追加・新要素を中心に述べる。 ***パーツ関連 -''パーツのバランス調整'' --前作『PP』では大した性能調整が行われていなかったパーツパラメータに修正が入った。これによって使いにくかった一部の武器パーツが対戦でも使用されるようになり、壊れた性能の多かった『PP』追加パーツも大幅に弱体化され、まともな性能となっている。 --この作品から、カタログスペックでは真の性能を把握できない「おもしろパーツ」が増えてくることになる。 -''多彩な追加パーツ'' --続編でパーツが追加されるのはシリーズの通例であるが、今作の追加パーツは『PP』のそれと比べ、一風変ったものが多かった。 ---例:「エネルギーマシンガン・スナイパーライフル」(要するにビーム弾)、着弾時に燃焼し連続ダメージを与える「火炎砲弾」、着弾時に敵機のロックオンを妨害する「特種ロケット」、強力なエネルギー波を発射する「光波射出型ブレード」など。 --これらのパーツも後作に引き継がれていく。変わり種が多いのは、ゲーム性が煮詰まっていた当時の状況を象徴していたのかもしれない。 -''前作隠しパーツの販売解禁'' --『初代』の隠しパーツは『PP』単体では入手できず、入手したデータをコンバート(引き継ぎ)しなければならなかった。今作では『初代』と『PP』それぞれの隠しパーツは最初からショップに陳列されており、新規ユーザーを考慮した仕様となっている。 ***アリーナ関連 -''総数200以上のランカーACと、10+1種類のアリーナ'' --『PP』の49機を大幅に上回る機体数。現在をもってシリーズNo.1の収録数である。 --シナリオにかかわってくる「アリーナ」「サブアリーナ」、脚部制限がかかる四つのアリーナ、ゲスト参戦者の3つのアリーナ、上級者向けの「スペシャルアリーナ」と数も多い。 -''多彩な参戦者'' --全国大会での上位入賞者15名、ゲーム雑誌出版社5社30名、代表取締役の神直利氏を含むフロム・ソフトウェア社員9名の機体データを収録。 ---大会入賞者のエンブレムはどれもクオリティが高い。エースとは美にもこだわるものなのか。 ---俺設定、中二設定丸出しの各参戦者のプロフィール文も一度は見ておきたい。全体的に入賞者はシリアスか中二系、雑誌社はネタ丸出しという方向性を持つ。 ---入賞者の中で唯一ネタに走った「ビッグ・ザ・将軍」、キワモノ揃いのPSmag系の中でも一際輝く「場末の木製AC」、なにやら哀愁を誘うファミ通PSの「コゲタ兄弟」は爆笑必至。 --なお、このゲスト参戦が実現しているシリーズは『[[フォーミュラフロント>アーマード・コア フォーミュラフロント]]』と[[ポータブルシリーズ>http://www23.atwiki.jp/ksgmatome/pages/428.html]]のみ。 -''ランカーACのAI調整'' --『PP』では開発期間の短さもあり、強化人間補正と強力な武器にものを言わせただけのお粗末な動きのランカーが多数を占めていた。本作ではその点が若干改善され、歯ごたえのある戦闘が楽しめる。 -''オリジナルアリーナ'' --本作のみに実装されているモード。自作の機体に簡易AIを設定し、ユーザーオリジナルのアリーナを作成できる。 ---本モードは設定の自由さ、お手軽さが高く評価されており、今なお他作品での実装を求める声も多い。 ***対戦関連 -本作はディスク二枚組であり、ソフトが一つ・本体二つ・テレビ二つ・通信ケーブルがあれば通信対戦が行える。 &br() ---- **BGM・グラフィック ''BGM'' -BGMは前二作からの引き継ぎと、数曲の新曲で構成されている。いずれも評価は高いが、とりわけナインボールのテーマ曲ともいえる「⑨」が絶大な人気を誇っている。惜しむらくはその新曲の一部がサウンドトラックに収録されていないこと。 -ナインボールのテーマ曲「⑨」はナインボールのテーマ曲と言うともあり、後のゲスト出演の際にも使用された。 ''グラフィック'' -ゲーム中のグラフィックは前二作から変化はない(元々高い水準ではある)。だが… --オープニング・エンディングムービーのクオリティは前二作を完全に凌駕、PS2初期レベルの水準に達している。前二作と比べると「何が起こったのか」とでも言いたくなる域。 --演出力も格段に上昇しており、オープニングの戦闘シーンには幾多のユーザーが魅了された。 --このムービーが後々、「変態企業フロム」(褒め言葉)という称号をユーザーから贈られるきっかけになっているのかもしれない。 参考動画(youtube)。少々実機より滑らかではなくなってしまっている。ニコニコ動画アカウントをお持ちの方には[[こちらの動画>http://www.nicovideo.jp/watch/sm8119977]]をお勧めする。&br() #region(MoAオープニング) &youtube(http://www.youtube.com/watch?v=tde8wGMl3_8&feature=related){425,350} #endregion &br() ---- **シナリオ・ミッション -今作のシナリオは先述したストーリーの通り、「一人の青年の復讐劇」を軸にしながら、『初代』で提示された疑問である「レイヴンズ・ネスト」と「ナインボール」の謎が明かされるという構成となっている。『初代』のストイックな雰囲気と『PP』のヒロイックなストーリーを融合させた、シリーズファンのツボをついたものだった。 --シリーズの通例通り、キャラクターの風体等は全く描写されず、その人物を表現する要素は声・メールの文面・機体の動きのみ。しかしそれ故に各キャラクターの印象は強烈にプレイヤーの心に残りやすい。ミッションでさりげなく登場する他のレイヴンにもファンがいるというありさま。 ---ナインボールを駆る最強のレイヴンであり、主人公の仇でもある「ハスラーワン」と、復讐に燃える主人公をサポートする「ラナ・ニールセン」の人気は非常に高い。 ---なお、やはりシリーズの例にもれず声優は豪華。ハスラーワンは檜山修之氏、ラナは渡辺久美子氏。お二人とも他作品ではなかなか見ることのできない性質のキャラクターを演じている。 ---頭部コンピュータシステムボイスの三石琴乃氏、田村ゆかり氏も続投しているが、今作では主にラナがオペレーティングを担当してくれるため、前二作ほどその美声を聞く機会は少ない。ちなみにシステムボイスには今作から軽くエフェクトがかかり、よりコンピュータボイスらしくなった。旧式タイプは在る意味必聴。 -今作ではシリーズでも異例の、ミッションとアリーナがリンクしたシナリオ進行の方式をとっている。アリーナで何勝かすると新たな依頼が出現してシナリオを勧められたり、逆にアリーナ出場を強制的に禁止され緊急の依頼を受諾するなど。 --これは主人公の目的が「アリーナランク1であるハスラー・ワンへの復讐」であるため。他にも「アリーナ参戦のためのスポンサー企業」など、本作独自の要素が多い。 -ミッションの難度は高め。対AC戦闘が多いのと、変わった構成のマップが多いため。 --中でもシリーズ初の海上戦闘となる「潜水艦護衛」、巨大兵器と対峙する「地上戦艦撃破」、放棄された宇宙船内を探索する「廃棄宇宙船探索」は幾多のレイヴンを苦しめた。 --最終ミッションは難易度 ・ 演出合わせて今でもファンの間で語り草となっている。過酷な道中、明かされる真実、そして最後に待ち受ける、常軌を逸した火力と機動性を持つPS三部作最強の敵「ナインボール=セラフ」……。トリを飾るミッションとしてはこれ以上ないほどの完成度であった。 &br() ---- **難点 -''PS三部作最小のミッション数'' --ミッション個々の内容は濃く、またアリーナと連動するシステムのおかげでボリュームが薄いとは感じないのだが、逆に「ミッションとアリーナを往復する(させられる)のが面倒」という指摘も。 -''対戦バランスの悪化'' --タンク型脚部の防御力下方修正 ・ 着弾すると相手に反動を与え、一瞬硬直させる「反動武器」の仕様変更 ・ 『PP』で反動対策として有効だったバグ「風」の廃止等、被弾率の高い重量級・四脚型脚部が不利なゲームバランスになっている。 ---反動の仕様変更でハンドガンが凶悪化し、当時の大会参加機体の半数はほとんどの機体から硬直をとれる「WG‐HG1」を装備していた。 --通信対戦時には、2P側のロックオン時の照準補正が向上する通称「2P補正」なるバグが必ず発生する。端的に言えば「完璧に公平な対戦は不可能」。 ---「2P補正」自体はPS三部作全てで働くのだが、今作では特にその影響が大きいと言われている。画面分割対戦では回避可能。 --マップ数の減少。しかも面白いと評判のマップが中心に削られてしまっている。 --こうしたことから、皮肉なことにもコアな対戦派は、第一作にしてシリーズでも随一の対戦バランスを誇る『初代』を対戦ツールとして用いる傾向にある(正確には「『初代』のデータを対戦環境の整った『PP』に移してから対戦」する、「イエローアセン」と呼ばれる方法を用いている)。 -''強化人間能力獲得の方法'' --「公式チート」とでもいうべきシリーズ恒例の「強化人間」だが、『PP』と同様に本作単品ではその能力を得ることは出来ない。『初代』からデータを引き継いでくる必要がある。 -他、初代の難点の幾つかを引き継いでいる。 --パラメータ表記が英語と数字で少々とっつきづらく、一部のダミーパラメータもそのまま。 ***批判点とまではいかないが気になる点 -ミッション中に入手できる隠しパーツの凶悪な隠し場所 --三種類いずれも隠し場所が凝り過ぎ。「くまなく探す」だけではなく「頭を使う」必要がある。 -前二作から全く進歩の無いゲーム中グラフィック --ただ、そもそも『初代』の時点で「このボリュームとしては十分すぎるクオリティ」の品質であり、収録機体やステージが更に増えた本作でグラフィックの向上を求めるのは酷だとする意見が大半である。 -ミッション中に登場するランカーACの仕様 --『初代』から続く仕様として、ランカーACはアリーナでは本来のパーツの組み合わせ通りの戦闘力を発揮するが、ミッション中で登場する場合には無条件で防御力が0とされ、実際よりもかなり脆くなってしまっている。 -PS2使用時のフリーズ --本作はPS2登場以前に発売されたため、ゲーム自体と製作元には何の責任も無いのだが、Best版までのソフトではPS2で遊ぶと高確率でフリーズする。PS one Books版、ゲームアーカイブス版では修正済み。 &br() ---- **余談 -本作の主人公はシリーズでは珍しく、レイヴンを志した経歴と生い立ちが詳しく(シリーズの基準で言えばこれでも詳しい)描写されている。後に、彼には(機体名と合わせ、あくまで小説の独自設定であるが)ファミ通文庫からのノベライズ版『マスターオブアリーナ』((著者は篠崎砂美。フリーソフト『マッチメーカー』の考案者としても知られる。))にて「フリッツ・バーン」の名が与えられた。 --本作パッケージに描かれ、OPムービーでも登場するACはファンの間で「アナイアレイター(殲滅者)」と呼ばれているが、この呼び名はフリッツの乗機に由来している((ちなみに構築・命名者はゲームにも登場する技術者・エラン。小説後半では脚部と武装を換装した「アナイアレイター+」となる。))。『初代』の看板機体である「アンファング」を新鋭パーツで再構成した正当進化系のデザインは歴代でも特に評価が高い。 //流石にゲーム本編とは関係ないオリジナル展開の小説の中身を細々説明するのはどうかと。それから書くにしても文章の推敲はしてくれ。 --小説という触体ならではのストーリーや、ゲームをよく研究していることが読み取れる描写など、随所に見るべきところが多い作品でもある。現在絶版であり入手困難だが、ファンならば抑えて損はない。 -OPムービーで主役機が使用するレーザーブレードは、シリーズでは数多いムービーのみの登場武器。ゲームで再現するならばLS-99-MOONLIGHTで代用しよう(重量過多であり、全ミッションクリア特典の重量過多制限解除までは使えないが…)。 ---- **総評 本作の時点で『アーマード・コア』という作品は、ゲーム性が煮詰まった様相を呈してきていた。その点からいえば本作は見事に『PS三部作』のトリを飾り、次世代機PS2でのシリーズ展開の夢を託したと言えよう。&br() 新たな方針の新武装・待ち受ける無数のランカーAC・第一作から続く物語の決着・最強の敵・・・・&br() 少々難易度が高めであり、初心者がいきなりプレイするにはハードルが高いタイトルではあるが、その内容はレイヴンのみならず、全てのロボットモノ好きに進められる作品である。&br() 本作と同じくアーカイブスで配信されている『初代』の後にプレイするのがよいだろう。両作共にPS one Booksで再版されており、また中古品の出回りもよく、2作(場合によっては『PP』も合わせた3作を)まとめて1,000円未満で調達することもできる。&br() この作品でアーマード・コアシリーズは一区切りを迎え、[[次なる舞台>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/616.html]]へと飛翔する。&br() 「進化する戦闘メカアクション」の一つの終点を、ぜひ体験してみてほしい。&br() &br()&br() #center(){{ &font(130%){''修正プログラム 最終レベル&br()全システムチェック終了&br()戦闘モード起動&br()ターゲット 確認 排除開始''} }} &br()&br() ---- 一部情報出典:[[RAVENWOOD.jp>http://www.ravenwood.jp/index.php?Entrance]] ---- &br()&br()

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