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*ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙 【へらくれすのえいこうすりー かみがみのちんもく】  |ジャンル|RPG|&amazon(B000068HE7)| |対応機種|スーパーファミコン|~| |発売・開発元|データイースト|~| |発売日|1992年4月24日|~| |定価|9,900円|~| |配信|バーチャルコンソール:2007年4月06日/800Wiiポイント|~| |>|CENTER:''[[ヘラクレスの栄光シリーズリンク>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/1645.html]]''|~| ---- #contents(fromhere) ---- *概要  ゲームとは操作性、グラフィック、インターフェース、ゲームバランス、システム、シナリオといった様々な要素が集まることで成り立っている。中でも名作・良作というものは多少の欠点こそあれど、それらの要素の多くが優れているからこそ呼ばれるのだ。逆にそれらの要素の多くが劣る作品は凡作・駄作・クソゲーといったレッテルを張られ、プレイヤーの心に決していい意味で残ることがないのが常である。~  ところが世の中には、「発売当時の状況を考えても、多くの要素が凡作以下」と言う他ないにも関わらず、当時遊んだプレイヤーが何年にもわたって「素晴らしい」「感動した」という思い出を持ち続けている作品がある。~ ~  その名作の名は''『ヘラクレスの栄光III 神々の沈黙』''。~ ~  システムは劣化ドラクエの域を出ない。操作性はスムーズとはいえず、インターフェースも洗練されていない。ゲームバランスはきついし、グラフィックは当時の作品群と比べてみても粗いと言わざるをえない。~  しかしそれらの点を「シナリオ」というほぼ一点だけで挽回しきり、遂にはシリーズ自体の評価までも高めてしまった。~  シナリオを手掛けたライターの名は野島一成。後に歴史的名作『[[ファイナルファンタジーVII]]』のシナリオを手掛ける人物である。~ ~ ---- *ストーリー ~ 古代ギリシア。~ 何百年とつづく平和な世界。人々の心の中には、「苦しみ」、「悲しみ」などという感情が、何代もの祖先にまでさかのぼらなければ見出せないほどに、安穏な時代はつづいていた。~ 天界に住まう神々も、人々が平和に暮らす地上の楽園を眺めるにつけ、自分たちが創造した世界が正しい歴史を刻んでいることに、大いに満足していた……。~ ~ しかし、そのような時代にも、常に地上に、そして、そこに暮らす人間たちにじっと目を凝らす神がいた。オリンポスの神々の最高神であり、全世界の偉大な創造主である大神ゼウスである。~ 彼はその見開いた目で片時も離すことなく地上を見降ろし、たとえ小さな変化といえども見過ごすことなく、常に地上界を注目していたのだった。~ そしてゼウスの目は、平和の楽園に徐々にではあるが変化の兆しが訪れていることを見逃さなかった……。~ ~ 生命のほかにも、人間たちは'愛'、'夢'、'希望'、'勇気'といった多くのものを神々より授かった。しかし、人間の心を揺るがし、動かしていたものは、'欲望'であった。そして、その行きつく先は……当然のことだが、神々自身はよく知っていた。~ ~ 神々の一柱である、大地の女神「ガイア」。外に「生の世界」を、内に「死の世界」をもつ母なる大地は、人間の欲望のために病み、傷つき、その結果、二つの世界の境界を維持することが困難になりつつあった。~ 傷ついたガイア!?~ 激しく動揺する大地。地上にはいくつもの穴があき、それはいつの間にか「死の世界」にまで届いてしまっていた。そして、そこから這い出した魔物ども…彼らは「死の世界」の住人!? が人々を襲い始めたのだった!!~ ゼウスは地上を見降ろしながら、思いを巡らせていた。~ 「人間たちへの愛情は否定できない。しかし、それは母なる大地ガイアがあればこそのこと。 ガイアは今、傷ついている。そしてそのガイアを傷つけたのは、他ならぬ人間である。ならば……~ 心を決めたゼウスは、オリンポスの神々を集め、話を始めた。~ 「今、もっとも重要なこと、それはガイアを救うこと。人間はもう一度創造(つく)ればよい!!」~ 「ガイアを救うのだ!!」~ 一方地上では、記憶を失った青年が妖精たちの隠れ里で介抱されていた。~ 彼はある日地上に開いた穴から転落し、命を落としたかに見えた。~ だがその体には傷一つなく、自分が不死身であることを知った。彼は自分が何者であるかを知るために旅立つことを決心した。//主人公が記憶を失ったのは転落したからじゃなくてゼウスの雷に打たれたからだったはずなので修正~ 唯一の手がかりは、時々見る夢の中の光景。~ 奇妙な異国の建物が立ち並ぶ場所に「アトラスの子孫」と名乗る老人と子供がいる。また、それとは別に自分以外にこの夢を見ている者たちもいた。~ 目指すは夢の中の光景と人物たち。~ だが、その旅の結末と彼の記憶の真実は、人類の未来を左右する、重大で残酷な宿命であった……。~ ~ ---- *特徴 「ドラクエライクシステムのRPG」、「ギリシャ神話をモチーフとした世界観」である点は従来シリーズ通り。 -ただしまるっきりドラクエの模倣というわけでもなく、細かい部分でなんとか差別化しようと頑張っている点も見られる。 --魔法を覚えるにはレベルを高めるだけでなく、対応した魔法が覚えられる神殿の泉に入っておかなくてはならない。 --当時の自動戦闘と大差ないAIに比べると優秀なAI。ただ数字的状況に対応するのではなく、キャラクター個々の性格付けに基づいている印象を与えてくれる。 --パーティーキャラクターには得意な武器を3つまで指定することができる。それには各地にいる達人のもとを訪ね、その武器の扱い方を教えてもらう必要がある。 --錆びついたアイテムを正常なアイテムにしてくれる研磨屋、竪琴を奏でて結果に応じて報酬がもらえるミニゲームなど細かいところでおまけ要素が充実している。 --仲間を連れている時に街にある壺やタンスのアイテムを手に入れようとすると仲間が制止しようとしてくる。それでもなおアイテムを盗んでしまうと信頼度のパラメーターが減少する。 --普通にお金を払ってアイテムやお金を預けられる預り所もあるのだが、それとは「別に増えたアイテムを地面に穴を掘って保管する」というシステムがある。 --また、冥界へと通じる各地の大穴から冥界に飛び降りて強いモンスターと戦ったり、アイテムを手に入れたりできる。 -シナリオや世界観の面では、ギリシャ神話のエピソードや神々、地名、用語などを駆使している。 --空飛ぶ凧を作ってくれるダイダロスや太陽を運ぶ馬車を扱うパエトーン、石化した巨人アトラス、トロイの木馬に乗って怪物と戦うなど、元ネタとなった神話のエピソードが大胆にアレンジされてシナリオに取り入れられている。 ---- *評価点 **素晴らしいシナリオ  概要でも述べたが、本作が名作扱いされているのはこの一点に尽きる。~  加えて演出、世界観設定、キャラクター、場面に溶け込んだ音楽など、シナリオを取り巻く要素一つ一つの完成度が高い。 -主人公と彼にまつわる伏線 --記憶喪失であるため、最初はこの世界のことを何も知らない白紙の状態である。そのためこのゲームを初めて遊ぶプレイヤーと情報を共有しているということでもある。 --プレイヤーはシナリオを進めるごとに「あれ?」と思える疑問点や「なぜ?」と思える人物・神々の行動などの体験を主人公とともに共感し、情報を蓄積していく。その結果主人公への感情移入度はおのずと高くなる。ドラクエ型の喋らない主人公の利点を生かし切っている。 --街の人の何気ない話や、一見してシュールでコミカルな箸休めのイベント、ちょっとしたお使いイベントから街の建物の形や大陸の形状に至るまで、作中のあらゆる点に伏線が紛れ込んでいる。回収される時点で「これが伏線だったのか!?」と思わされるものも少なくない。そして、一つの伏線が回収されたと思ったら、また新たな疑問や伏線が沸いてくるなど、プレイヤーをグイグイとストーリーに引き込んでいく。 ---何故地上に怪物がはびこっているのか?、地上の危機に対し、神々が「沈黙」している理由は?、神々が主人公に真実を教えないのは何故なのか?それらの理由が全て主人公に絡んでくる。 ---そして主人公は終盤になってついに記憶を取り戻す。その回想シーンは今まで積み重なった伏線全てを昇華したもので、まるでパズルのピースが一気に組みあがるような盛り上がりが感じられる。正直「怒涛」とか「感動」とかいう表現では足りなさすぎる。実際にプレイした者でなくては分からないカタルシスがそこにある。 --エンディングは現在のゲームに比べると実にさっぱりとしているが、これまで関わった人物や神々、仲間たちの台詞に込められた味わい深いメッセージ、あるキャラクターとの切ない別れ、そして主人公の衝撃的な末路など「未だに忘れられない」「号泣した」というプレイヤーは多い。 -深く、それでいて押し付けがましくないテーマ性 --大地の恵みや信仰を忘れ、平穏のうちにエゴイズムにまみれてしまった人間たちを戒めるような内容は、現実のプレイヤー達に対しても決して他人事ではない。終盤で神々が人類に対して行った行動などはそのテーマの結論ともいえる。 --ちょっとしたお使いイベントや街の人の会話からうかがい知れる類の表現が多いため、「作り手の主張が鬱陶しい」と思わせることが無い点もさすがである。 -しっかりした個性と思想を持つキャラクター --生き生きと個性的に描かれたパーティーキャラクター達もさることながら、NPC一人一人の行動原理や思想が少ない情報量でもはっきりと伝わってくる。 --特に神々の考えに関してはそれが顕著である。ゼウス、ウラノス、ハデス、プロメテウスの4柱は、それぞれが同一の目的を持つにもかかわらず、それを実現させるための方法が各々異なっている。そしてそれらは人類の運命を如実に左右していく。 --筋金入りのドケチであるクノッソス一の金持ち爺さん、死んだ隊長の無念を晴らそうとするスパルタ兵、国民のことを第一に考え試行錯誤するアテネ王など、名前すらつけられていないモブキャラですら個性豊かで印象深い。 --ラスボスの思想や行動原理は実は主人公と関連の深いものであり、決して理解できないものではない。 -シナリオを取り巻く演出も何一つ手抜かりがない。 --音楽はシーン一つ一つを盛り上げることに貢献しており、音源こそ粗めであるもののクオリティは高い。 --「不死身」という設定以外の人物も仲間になることがあるのだが、そういったお助けNPCは戦闘で倒れると容赦なく死亡してしまう。死なせても特にペナルティはないが不死身と普通の境界線をはっきりと示しており、不死身設定を際立たせることに成功している。 ---そういったNPCは主人公が高いところから飛び降りようとすると「自分にはできない…」と制止してくる。 ---「高い所から飛び降りる」というアクションはシナリオのあちこちで見られ、天界、地上、冥界間への移動や、不死身であることを証明するために飛び降りる、など重要な軸に据えられている。 --レイオンの日記や神話辞典などのデータベース的な要素も充実しており、テキストも面白く読んでいて飽きない。  以上の理由から各種レビューサイトやamazonの評価を見ても、多くの問題点が指摘されていながらも、「シナリオの良さ」ただ一点で名作扱いされている。シナリオ重視のプレイヤーは是非とも実際にプレイしてこれらの内容を自分の目で確かめてほしい。 -ただしある程度伏線が出揃う中盤までは上記の問題点の数々が邪魔をしてストレスの溜まるプレイになりがちである。そのためきつい序盤を耐え抜けるかどうかがこのゲームが名作か駄作かを決定付ける分岐点だろう。 -また終盤の展開がこの作品のシナリオの肝であるため''ネタバレは絶対に避けること''。wikipediaはおろか攻略サイトでもネタバレ記述が多いので未プレイ者は十分に注意するように。 ---- *問題点 **操作性、インターフェースなど -全体的にもっさりしている。また、メッセージ速度はデフォルト設定だとゆっくりしていてテンポが悪い。コンフィグで最速に設定してやると大分改善はされる。 -移動速度が遅い。中でも中盤に熱波で画面がうねる場面では処理落ちも発生するため、本当に遅くてイライラする。 --本作発売と同じ年に『[[ファイナルファンタジーV]]』が発売され、その「ダッシュ」と比較されてしまったのも不運だった。 -グラフィックはSFC初期相応の粗さ。特に天馬やカイトに乗っている時は地上の光景が拡大されるため、ドットがもろにくっきりと見えてしまう。ただし、敵が全員アニメーションしたり、演出面を凝ることで見栄えを良くするなど、スタッフの努力の跡は伺える。 -魔法やアイテムの効果は使ってみなければわからない。後半ではそれらの有用性を知っているかどうかで攻略難易度が劇的に変わる。 -既に使用し終えたイベントアイテムを預り所に預けられないため、初めは余裕の多かったアイテム所持数が終盤ではじわじわと圧迫される。 **きつめのゲームバランス -ゲームバランスがキツい最大の理由、それは「[[FF8>http://www23.atwiki.jp/ksgmatome/pages/155.html]]方式(味方のレベルアップに伴い敵の能力も上昇する)」を採用しているためである(実はJRPGで「FF8方式」を採用したのは本作が最初)。 --それゆえレベルが上がると雑魚の打撃が異様に痛くなり、道中の移動が茨の道となる。しかも敵の強さが変わっても得られるお金や経験値は変わらず、味方のレベルアップに必要な経験値もFF8のように固定ではない。 --かといって道中ガン逃げでレベルアップを避けても、今度はボスに歯が立たなくなってしまう。戦闘方式がほぼDQ方式で、他RPGのような「抜け道」や「能力補正」も限られているため、結局レベル上げを余儀なくされる。 -序盤の仲間が1,2人しかいない時でも敵が4体も5体も頻繁に現れてタコ殴りにしてくる。 --主人公一人で行動するシーンでは流石に敵の数は抑えられているが、1,2発受ければ瀕死になるような魔法を使う敵が出てくるなどきついことには変わりない。 -回復魔法やバッドステータス、仲間を呼ぶ行動をする敵がやけに多く、情け容赦がない。 --一部の敵はあまりにしつこく仲間を呼んでくるため、ドラクエで例えるなら「デフォルトでマドハンド狩りをするような状態」になることも。 -ボスも補助魔法の有用さを認知していないとかなり苦戦するものが多い。特に終盤のボスは一撃でキャラのHPを半分以上削り取るのに複数回数攻撃してくるものが多い。 -こちらは不意打ちができないのに、敵が割と頻繁に不意打ちしてくるため気が抜けない。操作可能になったらパーティーが半壊していた、などということがけっこう起きる。 -とはいえ補助魔法やアイテムの有用さ、追加効果のある武器、耐性を持った装備品などを知った上で攻略するならほどよく歯ごたえのあるバランスに変わる。インターフェースの不味さと戦闘難度がかみ合わなかったのが惜しい点だろう。 -エンカウント率が高い。ダンジョンによっては面倒な仕掛けや難解な謎解きを強いられるため頻繁なエンカウントが思考の阻害になりやすい。 --ダンジョンはどれもそう広くないので割と魔法を連発してもボスまで余力が持つのが幸いではある。 **その他 -キャラデザが洋ゲー臭いガチムチなデザインでかなり人を選ぶ。実際むさいパッケージとゲームバランスの悪さ、序盤の平凡な展開のために発売当初はほとんど評価されていなかった。 -魔法を覚えるために神殿の泉に入っておかなくてはならないシステムは、終盤に仲間になるキャラに魔法を覚えさせようとするとこれまで行った神殿全てを順々にめぐらなければならないため、非常に面倒くさい。 --次回作では一度行った神殿同士にワープすることができるため改善された。 このように、あらゆる点でまんべんなく問題を抱えている。これでストーリーが神でなかったら、人によってはクソゲー扱いにされても仕方がない作品なのだ。 ---- *総評  評価点と問題点の落差こそ激しいものの、それでもなお「シリーズ最高傑作である」と推すプレイヤーが多い作品。~  シナリオとそれを取り巻く要素の素晴らしさは、同シリーズどころかゲーム史上においてもほとんど見当たらないハイレベルなものである。問題点の方もスタッフが手抜きをしたわけではなく、データイーストのお家芸といえる挑戦的・先鋭的すぎる理解不能な要素を入れていること、技術やノウハウが発展途上の段階であったために生じただけなのだろう。~  本作は「ドラクエのパクリ」と揶揄されてきた同シリーズの評価を確固たるものにし、シリーズのアイデンティティーを確立した功績からも紛れもなく名作と呼べる作品である。~ ---- *余談 -本作のシステム面の不備に対する批判をスタッフは重く見たのか、次回作の『[[ヘラクレスの栄光IV 神々からの贈り物]]』では徹底的に改善されている。 --また本作のインターフェースへの批判は、転じて本作の翌年に発売された『[[メタルマックス2]]』にも反映され、これでもかというほどのインターフェースの充実につながっている。結果として知る人ぞ知る存在だったメタルマックスシリーズをRPG史に残る名シリーズへと昇華させるに至った。 -携帯アプリ版ではメッセージの漢字表示化・グラフィックおよびインターフェイスの大幅な改善・全体的なスピードの向上など移植元の不満点がかなり解消されているが、今度は容量等の都合によりダンジョンやイベントがかなり端折られてしまった。また、ゲームバランス面も改善されたとは言えず、今度はあっという間にレベルが上がるためボスも簡単に倒せるヌルゲーと化してしまった。このため不満を持つファンは多い。
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