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*この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO 【このよのはてでこいをうたうしょうじょ ゆーの】 |ジャンル|ADV|&amazon(B000069UG7)''写真はSS版''| |対応機種|PC-9801VM/UM以降、セガサターン、Windows|~| |発売・開発元|エルフ|~| |発売日|1996年12月26日|~| |定価|9.600円(PC98版)|~| |レーティング|ソフ倫:18歳未満禁止|~| #contents(fromhere) ---- #center(){&size(35){''WARNING!!!!!!!''}&br();&size(20){''本作は18歳以上のみ対象のアダルトゲームです。''}} ---- **ストーリー 境町学園の三年、有馬たくやは、一学期がようやく終わり明日から夏休みだというのに学校にとどまっていた。そこに、少し前に赴任した女医で新担任でもある武田絵里子が現れる。二言三言の会話の後、たくやは彼女から慰めの言葉を受けた。それは彼の父、有馬広大が死亡した事への彼女なりの気遣いだった。&br(); 二ヶ月前、歴史学者だった広大は研究のため家を出た後に落石事故で行方不明になった。捜索はしたものの結局発見できず、1ヶ月前に死亡と認定された。ただたくやには、父は非常にアクが強くアグレッシブで、その性格が死と結びつかなかったためか不思議と父が死んだという印象が沸かなかった。&br(); たくやは既に実母も幼い頃に亡くしており、父の死後は父の後妻である亜由美と暮らしていた。たくやの父と結婚してからほんの半年で未亡人となってしまった亜由美だが、そんな影を見せないよう気丈に振舞っていた。だが、たくやはそれが演技であるとうすうす感じていた。&br(); 亜由美は町内に勤務先があるジオ・テクニクス社の社員で、現在はその新オフィス建造の総責任者となっている。だが、その工事において最近おかしな事件が起こっていた。工事現場となっている境町の海岸で、三度も落雷死亡事故が起こったのだ。落雷が同じ場所に三度も落ちたことだけでなく、全て死亡事故となっていたことでその事故は「三角山の祟りのせいではないか」という妙な噂が立っていた。「三角山」とは工事現場の海岸の端に立っているまるで塔のような岩のことで、その麓にまだ解明のされていない古代の遺跡の痕跡らしきものが存在した。&br(); そんなある日、たくや宛てに小包が届く。開けてみると奇妙なものが入っており、それは大きめの古代の鏡のような円形のものと、何かをはめ込む穴がいくつもあいた石版のようなものであった。そして石版には二つほど、水晶のようなものがはまっていた。最後には手紙があり、開けてみるとそれは父、広大のものだった。その中には歴史は不可逆だが時間は可逆という理解しがたい一文、そしてなんと広大は生きているということが書かれていた。だが考えてみると、手紙を書いた時点では父が生きていた、という話ならなんの不思議もないように思える。しかし、その手紙には最後に「今日の22時に三角山の麓である人に会え」という奇妙な事が書かれていたのだ。別に手紙に日付指定をしている訳でもないのに、今日とはいつを想定して言っているのか。だが時計を見ると、22時まであとわずかである。やがてたくやは思案の末、その手紙の指示通り三角山へと向かった。だが、そこで待っていたものは…。 **概要 -並行世界をテーマの一つとし、それをシステムに取り込んで見事に表現した傑作AVG。ストーリーも秀逸であり、剣乃作品最高傑作との評価もある。 -SFアドベンチャーゲームの金字塔にして到達点の1つとされている。 -シーズウェア(姫屋ソフト)退社後、エルフに移籍した剣乃ひろゆき(現:管野ひろゆき)が、エルフで作った唯一の作品。 **特徴 -並行世界を具現化したA.D.M.Sシステム --並行世界という概念はSFなどでよく用いられるテーマではある。しかし本作はそれをゲームシステムとして導入する事に成功している。 --本作における並行世界の意味は、いわばADVの分岐による全てのストーリーが世界として存在しているという事である。&br();&br();一般のADVでは、数々の分岐を通り、最終的に一本のストーリーラインにたどり着く。もちろん他の結末もあるのだが、少なくともそのラインに乗ってる限り他のラインは無かった事となる。またこのストーリーラインで最終的に知った情報も、手に入れたアイテムも、他のストーリーラインを回収するため分岐からやり直せば、当然なくなっている。ところが本作はそれを維持したまま、他のストーリーライン、つまり並行世界へ移ることが可能となっている。&br();&br();具体的には、ストーリーが分岐しそうな場面で、「宝玉」というアイテムを使う。これがその世界、ストーリーラインの時間軸でのチェックポイントとなる。やがてストーリーを進めて行く内になんらかの理由から、以前の時間軸に戻る必要が出てくる(例えば分岐ポイントへ戻る等)。その際に宝玉を使用することによって、チェックされたポイントの時間軸へと戻る。そこから別の分岐へ向かうという事も可能となっている。一見タイムマシンのようだが、これは別のストーリーライン、並行世界からも可能である。これによりある並行世界で失われたものを、別の並行世界から持ってくるなどという事ができるようになる。&br();&br();これでは万能のように思えるかもしれない。当然、並行世界の移動には制限がある。まず、あらかじめ宝玉でチェックした場所以外には移動する事はできない。システム的にはチェックポイントに「戻る」のみといった方がいいだろう。つまり、いつでもどこでも好きな並行世界の好きな時間軸に行けるという訳ではない。また、宝玉は1個につき一箇所しかチェックできず、さらに宝玉の数はそれほど多くない。このため使い所を間違うと、同じストリーラインを繰り返すハメになったりと、なかなかストーリーが進まないとなる。この宝玉の使い所は、やや手探りで探っていく事になる。 -ADVとしてのシステムは一般的なコマンド選択式と、特殊なコマンド選択式の二種類となっている。後者は画面中をマウスでクリックするシステム。これにより話す、調べる、使う、移動などのコマンドが実行される。前者の一般的なコマンド選択式は、プロローグ等で使われ、後者は本編で使われる。 -ストーリーは秀逸かつ複雑。並行世界を行き来しながら話が進むため、伏線が意外な所で回収されたりと驚かされる面もある。&br();そしてエンディングは一つのみ。もちろん複数のストーリーラインがあり、それぞれがなんらかの結末を迎えるのだが、悪い展開になろうといい展開になろうと、それぞれが並行世界として存在するのでそれらはエンディングというものではない。真のエンディングが別にあるのである。&br();そして物理・数学・哲学・歴史・宗教の知識を深く取り入れた独特の世界、また剣乃作品に共通するテーマ、愛と別離、これらも本作の評価を高めている。 -キャラクター性や台詞回しにやや古臭さを感じものの、登場人物は魅力的。ツンデレという言葉はない時代だったが、ツンデレキャラも存在する。 --女性キャラの方は魅力的に描かれているが、男性キャラの方は当時のアダルトゲームらしく嫌味だったり下種・小物だったりする場合が多い。&br()現在の、男性サブキャラも魅力的に描かれている作品に慣れている場合は不快に感じるかもしれない。&br()また主人公も前髪で目の部分を隠した、当時に多く見られた(現在ならば非常に古臭い)キャラデザインである。 -通常のADVパートにおけるセーブは、そのゲーム性から一箇所のみ。このゲームの性質上、やり直すという事ができない。(厳密には違うが) -SS版での変更点 --主要キャラクター全員にボイスがついた。なお、その声優陣は非常に豪華である。 --グラフィックが全て描き直されている。 --手に入る宝玉の数が2個追加されている。そのため行き詰りにくくなり、快適になった。 --推奨年齢18歳以上での発売であるが、全体的に性的描写がソフトになった。 --PC-98版のスペシャルディスクに収録されていた追加エピソードが、後編ストーリーに組み込まれた。 **難点 -コマンド式にありがちな無駄なコマンド選択がある。プロローグなどに使われてる一般的なコマンド選択式はそうでもないのだが、本編での特殊なコマンド式はこの頻度が多い。画面中のどの部分をクリックするかハッキリとは記されてないため、別の所をクリックしたつもりでも、同じ結果が出るなんて事もしばしば。また、選択枝が具体的に見えないため、総当りしたのかどうなのかが分かりにくいのも難点。ただ同じストーリーラインをたどる時、フラグを立てるコマンドが分かっていれば、マウスによる操作の方が早い。 -ストーリー展開上回避不能な鬱イベントが多い。 --例えばある女性キャラのルートでは、終盤に存在するイベント中に特定のアイテムを使用したか否かで「主人公とその女性キャラが結ばれる結末」(以下「ハッピーエンド」)と「その女性キャラが死亡する結末」(以下「バッドエンド」)とに分岐するのだが、そのアイテムの入手時期は、よりによって''そのイベントの後''である。そのためプレイヤーがハッピーエンドにたどり着くためには、イベント発生⇒アイテムを所持していないので使用しなかったと見做され''バッドエンドへの分岐が確定''⇒アイテムを入手⇒すでにその女性キャラは死亡しており''バッドエンド突入''⇒宝玉でイベント発生前に飛ぶ⇒改めてイベントを発生させ、アイテムを使用⇒女性キャラの死亡回避⇒ハッピーエンドルートへ…となる。つまり「ハッピーエンドにたどり着くためには、''前提として必ずバッドエンドに行く必要がある''」のだ。このように、普通のAVGでは回避可能であるバッドエンドが、このゲームでは「ゲームを進めるために必須」となっている場合が多い。そのような鬱イベントを見たくないというプレイヤーにはつらいかもしれない。もちろんこの点がA.D.M.Sシステムならではの要素であり、また一度悲惨な結末を見た上でそのキャラクターを救う結末を見ればその喜びもひとしおである。ただしプレイヤーが行うのは「歴史の改変・改竄」ではなく「別の結末に向かう平行世界の創造」であるので、仮にハッピーエンドを迎えたとしても、その世界とは別にその女性キャラを救えなかった平行世界も厳然と存在するという事実もあるのだが…。 -宝玉の使い方を間違えると非常に時間がかかる。このためストーリー重視のADVとしては、難易度が高めである。 -前編に登場するイベント「石棺パズル」が難しい、というより不親切。 --石棺に刻まれたパズルを解くことで先に進めるイベントであるが、このパズルはいわゆる「お絵かきロジック」である。ルールを知っていれば解けるだろうが、知らなければそもそも何をしてよいかすらわからないという事になる。そしてお絵かきロジックはこのゲームをプレイする人なら必ずルールを知っているような類のゲームではないため、ここで多くのプレイヤーがつまずくことになった。 --PC-98版では追加ディスクである「スペシャルディスク」にルールの説明を受けられるヒントコーナーと、同じルールでプレイできる脱衣(?)ミニゲームが収録されているが、それ以外の版では完全にノーヒントである。 -一部伏線を回収しきれてない部分があり、そのため疑問の残る点がある。 -倫理的に問題のある描写(近親相姦・カニバリズムなど)が存在する。 --カニバリズムとなっているが、対象となるのは正確には人間ではない存在であるため適切ではないかもしれない。ただしそれを行う人物にとっては、対象は非常に近しい存在であるため、もちろん重度のショックを受けることになる。 --近親相姦は2組描写されるが、そのうち1組は「得られる情報から判断すれば、2人は肉親である可能性が高い」という表現であり、一応そうだと明言されているわけではなく、またそれらの情報が出そろうのはストーリー進行上Hイベント発生後であるため、当事者の2人(及びプレイヤー)はその時点では近親関係にあるかもしれないという可能性を認識しておらず、男女関係の帰結として結ばれただけである。だが、もう1組は疑いようもなく血のつながりのある者同士であり、しかも当事者はその点をきちんと認識した上で関係を持っている。ただし「18歳以上推奨」であるSS版ではさすがに問題があるのか、「最中」の表現はカットされており、あくまで行われたかもしれない事を匂わせる程度にとどまっている。 -やや強引なラスト近辺 --A.D.M.Sシステムを駆使した現代編に対して、旧来のコマンドシステムを使った異世界編についてはかなり強引な展開が待っている。前述のカニバリズムイベントもこの時点で起こり、しかもそれは主人公が事前に周到な準備を行っていれば回避できていた。故にプレイヤーは「自分の意思とは関係なしにカニバリズムを行わされる」という印象を受けてしまう。 --これが旧来のアドベンチャーでのイベントであればそこまで不満を抱かなかったかもしれないが、非常に自由度の高いA.D.M.Sシステムに慣らされてしまったプレイヤーにはどうにもこのラストの展開は納得し難いものとなってしまう。 -現在ではプレイが困難である。エルフは旧作のダウンロード販売も行っているのだが、本作は販売していない。 **総評 並行世界をシナリオだけではなく、ゲームシステムとして見事に具現化した点は他に類を見ず、この点だけでも評価に値する。また、そのため各世界の出来事が複雑に絡み合う、シナリオ構成も見事である。惜しむらくは伏線の一部を回収し損なっている点だが、それでも本作の魅力はなお余りある。さらにその独特な世界観と、剣乃作品特有の余韻も本作を印象深いものとしている。&br(); いささか古さは否めないものの、特異なADVとしてその評価は非常に高い。 **余談 -製作者、剣乃ひろゆき(現:管野ひろゆき)本人は、A.D.M.Sシステムでゲームのほとんどの部分を構成したかったのに一部で旧来の一般的ADVのシステムを使わざる得なくなったことで、本作を駄作と評していた。だが、その後、プレイヤーからの非常に高い評価を受け、自信を取り戻したそうである。 -本作のキャラクター武田絵里子は、[[THE KING OF FIGHTERS'97>http://www23.atwiki.jp/ksgmatome/pages/1129.html]]のシェルミーのモデルと言われている。 -[[ウィキペディアでの本作の項目>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%93%E3%81%AE%E4%B8%96%E3%81%AE%E6%9E%9C%E3%81%A6%E3%81%A7%E6%81%8B%E3%82%92%E5%94%84%E3%81%86%E5%B0%91%E5%A5%B3YU-NO]]が、アダルトゲームの項目としては異常に充実していることで知られる。考察の部分に難解な点が多々存在することと、ネタバレの記載が存在する点には注意。
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