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風雨来記 - (2013/06/13 (木) 09:19:45) の編集履歴(バックアップ)


風雨来記

【ふうらいき】

ジャンル 恋愛アドベンチャーゲーム
対応機種 プレイステーション
プレイステーション2
発売・開発元 フォグ
発売日 【PS】2001年1月18日
【PS2】2006年6月28日
価格 【PS】6,090円
【PS2】5,040円
レーティング 【PS】未審査
【PS2】CERO:C(15歳以上対象)
配信 ゲームアーカイブス:2011年3月25日/600円
分類 良作

概要

 駆け出しのルポライターである主人公が、過去の仕事による実績を認められて、出版界のオリンピックというべき大会のブログ部門に契約している旅行雑誌の代表で出場する事になった。その題材として選んだのが北海道野宿旅行のレポート記事だった。コンテストでトップを取るべく、己の夢を叶えるべく北の大地を巡る28日間の旅が始まるという内容の旅をテーマとしたギャルゲー。
 北海道を旅するギャルゲーにはハドソンの『北へ。』が上げられるが、風雨来記は企画の浅野氏が北海道ツーリング歴十年以上のベテランで、このゲームを作るにあたって綿密な取材を敢行した。制作者たちの経験と体験、そして想いが籠もった作品だといえる。

システムの解説

 一日の流れとしてはキャンプ場で起床し、バイクに乗って出発。釧路以東、旭川以北の北海道の大地を駆け巡り、ポイントについた取材、やる事を終えたら指定のキャンプ場で野営をし、記事をネットにアップして反応を確認して就寝という形になる。

 ツーリングモードはまずバイクからの前方風景が一枚絵として表示され、少ししたら数km進んだ先の風景へと切り替わる。交差点に差し掛かれば最大で3枚のサムネイルが上部に表示され、カーソルで選んで方向を決める。感覚としては強制スクロールの3Dダンジョンと捉えられるかも知れない。スナミナゲージがあり、尽きたらそこで取材は終了である。
 移動する際に表示される絵は、現地で取材した写真を利用しており実際に北海道を旅しているような臨場感を味わえる。実際に北海道を旅したことがある人間ならニヤリとすること請け合い。よ~く見ると景色を使い回している部分があちこちに散見されるが、これは仕方がないだろう。
 また、途中で体力が尽きたり、駅前などキャンプできない場所でキャンプする場合にはオートでキャンプ場に移動するというのも芸が細かい。

 ポイントについたらアドベンチャーモードに移項。ここでは複数あるマップを散策して写真を撮るのが目的であり、ヒロインと一緒の場合にはヒロインをモデルにした写真撮影も行える。

 取材を終了してキャンプに場につくとまずは記事の作成。ポイントを巡って得られたネタから一つを選び、文章を作って適切な写真を選んでアップロード。記事には読者がコメントを書き込んでくれる。HPやブログを作った事がある人間には嬉しい仕様である。

キャラクター

+ クリックで開閉
  • 相馬轍(そうま・てつ)
    • 主人公。名前変更可能だが、イベント絵ではイケメンな姿を遠慮無しに晒してくれるので逆に感情移入の邪魔になる。
    • 幼い頃からワイルドな青春を送ってきたおかげで、キャンプの達人。キャンプマスターといってもいいぐらい。
    • 父親はカメラマンで大会の写真部門で二位を取ったことがある。このため、父親のように「最高の一枚を撮りたい」と思っている。
      + ネタバレ
    • 家族運がなくて両親とは既に死別。そして、無二の相棒だった「アイツ」とも死に別れてしまい、その死を引きずっている。
  • 時坂樹(ときさか・いつき)
    • 摩周湖で出会った寂しそうなお嬢さん。
    • 大学でカヌーサークルに入っていて、親友と一緒に下見にやってきたというが…
      + ネタバレ
    • それは実は10年前の話。その親友と先輩との三角関係のもつれで、自殺とも事故死ともつかない死にかたをしてしまった幽霊さん。
    • その結末は……ご想像の通りです。はい。
  • 滝沢玉恵(たきざわ・たまえ)
    • 免許取り立てバイク買ったばかりで北海道ツーリングに挑戦した天然能天気爆裂娘
    • 制作者にも人気で、続編の『風雨来記2』でもおまけキャラとして出演。ラポートのアンソロジーでも暴れまくっていた。
      + ネタバレ
    • 大金持ちのお嬢さんだが、父親が強権的。子供のことを駒とか思っていないか、あるいは愛情を注いでいたとしても、自分の敷いたレールを黙って進ませることがその子にとっては幸せ、と考えるタイプの人間だった。
    • 実は結婚が決まっていて、独身最後のワガママということで旅に出してもらったという経緯がある。
    • その父親に自分を認めてもらうべく、主人公は大会のトップを狙うために北海道でのオーロラの写真を撮ろうと玉恵と2人で奮闘するのだが。
    • ちなみに玉恵シナリオは企画者の浅野氏の体験からきているようで、途中のやりとりが妙に生々しかったりする。
  • 斉藤夏(さいとう・なつ)
    • 双子の斉藤姉妹の妹の方。
    • 気が強くて意地っぱりだが、ちゃんと優しさを合わせもっている。
      + ネタバレ
    • 実は夏ルートはない
  • 斉藤冬(さいとう・ふゆ)
    • 双子の斉藤姉妹の姉の方
    • 大人しくて心優しい少女
    • 病弱で、病室で旅行雑誌を読みふける日々を送っていた。このため主人公のファンであり、旅行中はメールでデートの申し込みをしてくる。このため、攻略が一番楽。
    • 謎味覚の持ち主
      + ネタバレ
    • この斉藤姉妹。実はゲーム中では2人同時に登場することがない。
    • つまり、二重人格の同一人物。本物のの斉藤冬は夏の不注意から事故死してしまい、ここで登場する冬とは、冬の死に耐えられなかった夏が無意識のうちに演じている仮想の人格である(でも、作中では演じているというよりは冬の霊が取り憑いているように見えるのだが)。
    • 冬が存在していることによって、夏が生きられなくなってしまったので消滅することに。
  • 森岡由美(もりおか・ゆみ)
    • 隠しキャラとして登場するヒロイン。
    • 姉作にあたる『みちのく秘湯恋物語』のヒロインで、花札勝負に勝たなければ写真を撮らせてくれないという仕様。クリアするとミニゲームとして花札が遊べるようになる。
      + ネタバレ
    • 実は人妻。
    • 大好きだった彼を癌で失い、由美とその彼の兄貴分でもあった森岡隆幸と結婚。旦那の海のように深い愛情に浸りながらも旦那の事は愛せず、それでいて未だに彼への熱い想いを捨てきれない現状に暴発してしまった。色々と言いたいことはあるのだけと何も言うまい。
    • 凄いのは旦那で、別の男(死別した彼)を愛していることを知りながらも、その男ともども見守ることを選んだ。主人公と対峙した時には旦那である事を武器とはせず、逆に主人公に譲るような素振りも見せた……漢だろ。この人
    • しかも、斉藤夏の主治医で夏の治療もしつつ妻を捜していたというのだから……相当大変だったと思われる。
  • ちなみに由美以外のヒロインたちにはモデルとなった人物がいるとのことである。

評価点

テキストの量が豊富

  • 朝、目が覚めたら目が覚めたで主人公が感想をいい、記事を書くという目的で旅をしているのでポイントに到着すると美味しい料理を頬張る山岡士郎のごとく感想を述べてくれる。さすがに10回以上行ったら無言になるが、複数回行かないと評点の高いネタを仕入れることができないので差分も美味しい。
  • 企画者がベテランのハチミツ族ということもあって、キャンプの時の描写も実に細かい。
  • ちなみにスタッフロールのシナリオの項目に卑影ムラサキという名前があるのだが、まさか、バルドシリーズの?

個性的な旅人たち

  • 北海道では多種多様な人々が旅をしている。このため、ポイントについた時やキャンプ時にはランダムでイベントが発生する。一回のプレイでコンプするのは不可能で、彼らが織りなすイベントが実に楽しい。
    • これらの旅人達は、実際に浅野氏がツーリング中に出会った旅人がモデルで、イベントの内容もほぼノンフィクションであるという。

自由度の高さ

  • テキストの豊富さと遭遇するキャラクターの面白さと相まって、単独行動でも作業にはならない。行けるところまで行く、やれる範囲だったらなんでもやれる自由がある。
  • ヒロインのことを無視して一人旅で記事を書き続ける旅も可能で、最後まで一人だったとしても納得できるエンドを迎えることが出来る。……ギャルゲーなのにギャルがいらないギャルゲって。

ギャルゲー史上に残る強烈な演出(問題点でもある)

+ ネタバレ
  • この作品は、『恋をしたどのルートのヒロインと結ばれても、最後には必ず別れる仕様になっている』という演出でギャルゲー史にその名を刻んだ。
  • 愛していた人と死に別れて、隙間を埋めるためだけのむなしい旅を続けていた主人公が、出会いと愛と永別を体験する事によって成長するというのが主な筋書きで、ハッピーエンドが存在しない点については賛否が分かれる作品である。その流れは極めて秀逸かつ説得力があるもので、いい意味で切なさが炸裂する見事なものである。ただ、やはり人を選ぶ傾向にはある。
  • また、前述の通り主人公がどのヒロインとも出会わなくてもゲームは進行するが、その時主人公に訪れる、“アイツ”との時を越えた呼応を描く展開は評価が高く、「どのヒロインとも結ばれないほうが感動的なシナリオになる」と評価する者もいる。

問題点

範囲

  • 周遊できる範囲が北海道の東半分に限られている。もっとも、範囲を増やせばクオリティがそれだけ減るので仕方がないといえば仕方がないのだが
  • メインは道東で、道北はおまけに近い扱い。

ツーリングモード

  • 臨場感を優先して、使い勝手が悪くなってしまった感がある。特にオートナビ機能がついていないのが痛い。
    • 3Dダンジョン同様に現在位置を把握しづらく、方向音痴の人ならば迷い続ける危険性すらある。
    • 地図が用意されていて、これで現在位置を確認しながら移動するのだが、交差点が右上左と整然と曲がっていないので、何処を選択したら何処に行くのか分かりづらい。
    • プレーヤーが認識している方向とシステムが認識している方向が食い違っている。プレイヤーは東だと思っていた方向が、システム的には北に進むほうが正解だったり、まっすぐに進めるかと思いきや途中で曲がらなくてはいけない…など。
  • 細かい交差点が続く道東と、直線ばかりの道北では歩幅が違う。周回を重ねる毎、特にルートが固定される後半になると面倒臭く思えてくる。
    • 続編では移動方法が変わって便利になった分、臨場感も減っているので何とも言えないのだが。
    • 色々と問題はあるけれど、これはこれで正解というべきだろう。

総評

  • 若干肩透かし感のあるエンディングには賛否両論があるものの、この手のゲームでは異質な展開ゆえ名作と呼ばれている作品。旅ゲーの分野では最高峰ともいえるので、北海道北部と東部に興味がある人はプレイしても損はない。
  • PS2版はイベントやスポットの追加がされ、キャラクターのCVが変更されている。
  • PSアーカイブスでも配信されている。

余談

主人公が北海道往復で乗っているフェリーは近海郵船のサブリナ(もしくはブルーゼファー)だが、採算性の悪さからゲーム発売前に旅客営業を廃止し、RORO船に転換した。このため、フェリーファンとしては貴重な映像だといえる。