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俺の屍を越えてゆけ - (2011/11/15 (火) 22:00:03) の編集履歴(バックアップ)
俺の屍を越えてゆけ
【おれのしかばねをこえてゆけ】
ジャンル
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ロールプレイングゲーム
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対応機種
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プレイステーション
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発売元
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ソニー・コンピュータエンタテインメント
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開発元
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アルファ・システム
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発売日
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1999年6月18日
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価格
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5,800円
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概要
『天外魔境II 卍MARU』『リンダキューブ』などで知られる桝田省治が製作に関わった世代交代型RPG。
平安時代を舞台に、都を荒らす悪鬼「朱点童子」により短命・種絶の呪いを掛けられた一族が、神々と交わりながら子を残すことで悲願である朱点童子打倒を目指す。
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能力の高い神と交わって優秀な素質を血筋に組み込み、それを何世代もわたって繰り返すことで優秀な子を作っていく。
『ダービースタリオン』のシステムと類似点があり、「人間ダビスタ」の異名をもつ。
特徴
主人公一族の基本設定にある「呪い」の存在が、キャラクター育成重視RPGとしてのゲームシステムの根底を支えている。
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短命の呪い:成長が著しく早い代わりに、短くて1年半・長くても2年ほどで寿命を迎えてしまう。
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若い時期(1歳以下)は身体能力がよく伸びる。年を取ってくるとそれらの成長は陰り、技や知能面が伸びやすい。
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死亡したキャラクターは生き返らない。戦いで深く傷つけば、パラメータが下がったり、寿命より早く命が尽きたりする。
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種絶の呪い:同種族である人間同士では子供を生むことが出来なくなる。それゆえに神々と交わることに。
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キャラクターのパラメータには心・技・体のカテゴリがあり、それぞれに火・水・土・風の4属性の遺伝情報が設定されている。各パラメータ成長率(素質)は、親の遺伝情報から算出されて出生時点で確定する。
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神々にも属性があり、それぞれ遺伝的な得手・不得手がある。育成方針に合わせて相手を選ぶ事も大事。
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子孫は両親から遺伝情報を受け継いで生まれて来る。父親・母親どちらの遺伝情報が素質に反映されるかは運次第だが、基本的に優秀な親から優秀な子孫が生まれる。
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親である神とも普通に子作りできる。やろうと思えば下記の氏神システムを使って兄弟姉妹とも子作りができる。
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血が近い(=似た遺伝情報を持つ)者同士で子孫を残すと、寿命が短くなる代わりに高い素質を持つ「天才」が産まれやすくなる。早い話がインブリードである。
ゲームは月単位で行動を決めて進行。ダンジョン探索にも月当たりの制限時間が設定されている。
一族の屋敷がある京の都で戦闘準備を整え、迷宮探索に出かけて経験値やお金を稼ぎキャラクターを強化していく。
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「あっさり」から「どっぷり」まで、4段階の難易度が用意されている。これは、戦闘中以外ならいつでも変更可能である。
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難易度が高いほど、敵の強さが上がる・獲得経験値が少ない・子孫の能力が低いという厳しいバランスになるが、ダンジョンでの滞在可能時間だけは、難易度が高いほど時間経過が遅く、長時間滞在していられる。
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きつい部分だけ難易度を下げたり、ダンジョン移動中は時間進行が遅くなる「どっぷり」にして、戦闘に入るときや子作りのときのみ「あっさり」にするなどで楽をしたりといったこともできる。
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職業は全8種類。
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最初に名前をつけた主人公の職業は、主人公の父親と同じ剣士である。プレイ開始直後は、この他に薙刀士(こちらは母親の職業)と弓使いを選択可能。
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これ以外の職業は、レアアイテムの職業指南書を手に入れる事で、新しく就けるようになる。
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戦闘には前列・後列の概念があり、各職業は装備の種類やパラメータ傾向の他に、それぞれ得意とする射程範囲が異なる。基本的に後列には攻撃が届きにくく、命中精度も落ちる。
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シンボルエンカウント制。敵シンボルの背後をとると先制攻撃権を獲得、逆もまた然りである。
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戦闘で手に入るドロップアイテムは戦闘開始時のスロットで決まる。
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戦闘の勝利条件は「敵陣営の全滅」と「大将の討伐」の2パターンがある。敵大将は配下がいなくなると逃走する場合があるので、欲しい戦利品が出た時は捕り逃さないような戦いを心がけなければならない。
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ダンジョン探索中、一定確率で火時計の中に赤い炎が混じる。これはドロップ確率の高低が逆転するボーナスタイム。
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一部のレアアイテムは、スロット目で存在を確認できるものの実際は確率依存ではなく、所定の条件を満たさなければ手に入らない。
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ダンジョンマップはクォータービューの3D描画、戦闘シーンのグラフィックは山海経のような雰囲気であり、いずれも和風で統一されている。
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戦闘シーンは桝田氏の意向で快適性を優先した結果(参考リンク)、敵キャラのアニメーションなどの無い質素な仕上がりとなっている。
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戦闘やダンジョン探索で得たお金を投資に回し、荒廃した京都の町を復興させるという仕組みがある。
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復興度合いに従い、ショップの品揃えや各種施設が充実していく。本作はゲーム進行に応じてどんどんキャラロストする忙しいシステムだが、ここに関しては一度ランクアップしたら退行したりしないので安心してよい。
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ただし「商業」のレベルについては、後述する店のラインナップの問題に関わってくるので注意。
波乱万丈の運命
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短命の呪いを受けた主人公一族のキャラクターは、次々と容赦なく天寿を全うしていく。初代当主も例外ではなく、一族の者で一番最初に死ぬことになる。
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しかしその当主の名前は代々の当主が(男女関係なく)受け継いでいく。
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また職業別の奥義は最初に習得した一族の者の名前が入ったり、高い遺伝情報と素質を残した者は氏神となって昇天したりするのでそういう意味でも名を残せる。
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キャラの臨終の際には、そのキャラの戦歴や子作りなどの経歴が表示されたあとに「遺言」を言う。この遺言も印象深いものが多く、キャラをプレイヤーの記憶に残すのに一役買っている。
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その遺言の代表的なものが「俺の死を悲しむ暇があるなら、一歩でも前へいけ。決して振り向くな。子供達よ…俺の屍を越えてゆけッ」
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シナリオ面の特徴(鬱展開・鬱設定について)※ネタバレ注意
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ゲーム中盤、大江山で朱点童子を倒したあとから本当の意味での鬱展開は始まる。
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これまで討伐先に突入する前に助言を与えていた「黄川人(きつと)」が本性を現し、自分が真の「朱点童子」であることを告白する。ここからの黄川人は高山みなみのCVも相まって非常に印象的。
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しかし、その「黄川人」もある意味被害者ともいえる欝設定が大量にある。詳細はここでは語らない。
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なお、上記の討伐前にくれる助言は上記の事実を知った上で聞くとものすごく含みのある言い回しであったことが分かる。言葉回しが絶妙。
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もっとも、黄川人もその欝設定を帳消しにして余りあるような非道なことを主人公一族に対して行なったため、まったく同情出来ない。ラスボス戦前のイベントについては冗談抜きで殺意を覚えたプレイヤーも多いだろう。
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攻略本や小説に書かれている設定周りに至っては、本編に登場するほとんどのキャラに対して不興を抱くほどのレベル。欝という域を超えている。
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そもそも、味方が家族や神の使いであるイツ花以外にろくにいないという四面楚歌な展開が最大の欝展開であると言えるかもしれない。
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神々は一見味方のようだが、実はある思惑があり…。どちらかというと共犯関係に当たる。純粋に人間に対する善意で協力する神は実質2名のみとされている。
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その神にも悲惨な経歴を持つ者がいる。
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不老長寿の妙薬という言い伝えで、本当はただの迷信なのに人間に捕まり生きたまま肉を刻まれ喰われ続けた人魚の少女。
効果がないと分かると売られ、他の人間の手に渡りまた喰われ、最後は飢えた犬の群れの中に放り込まれた。主人公達と戦う時には体中の肉が削ぎ落とされたゾンビになっている。
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大昔に飢えや寒さに苦しむ人間達を哀れみ、人間に火と風の使い方を教えた優しい雷神と風神。
禁忌に触れる行ないだったために、他の神々によって地上のとある塔に幽閉された。だが、塔の中に飢えや寒さに苦しむ人間の声ではなく、火と風を使って豊かな生活をする人間達の笑い声が聞こえてきたため、二人の神は後悔しなかった。 ただ、後悔しなかったのは、人間が火と風を使って互いに殺し合いを始めるまでの、たったの1年だけだった。
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しかし、これまでの展開に耐えられれば感動のエンディングが待っている。これまで志半ばに散った子孫に、誰一人として無駄死の存在がなかったと分かる描写は必見。
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ちなみにスタッフロールで流れるBGMは鬱というよりはむしろ躁である。
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問題点
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知識がないと、装備品関係できつい目にあう可能性がある。
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ある程度町の商業レベルが上がると、店のラインナップから軽防具がなくなり入手が困難になる。あらかじめ確保しておかないと、軽防具しか装備できない職業は初期装備(最低防御力)の初陣シリーズで戦場に出る羽目になる。
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装備品は全体的に女性が優遇されている。特に防具は女性専用のものは装備制限が緩い軽防具などが多く、男性専用のものは装備制限のきつい重防具が多い。
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同じ前衛職の槍使い・薙刀士と比べて、剣士が使いにくい。
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一般的なRPGよりも「ダメージを負う事」がハイリスクであるゲーム設計上、前列1体にしか攻撃できないという剣士の特性は不利に働く。序盤のつなぎ・奥義埋めに使われて終わり、になりがち。
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とはいえ、重防具を装備可能な点や優秀な奥義の存在もあるため単純な下位互換というわけでもない。使う気になれば前衛として十分に利用可能。
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「術」の効果バランスが非常に悪い。多数の「術」が用意されているが、使うのはごく一部のみである。
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攻撃系の術の威力がかなり弱いため、種類・数は豊富だがほとんど大半が使用できない。
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ターゲットを行動不能にする術が異常に強い。成功率がとても高いうえに継続時間も長く、行動不能→行動不能とできる設計である。しかもそれを雑魚敵も連打してくるので、大味な"運"展開になることも。
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仲間の能力を上昇させる術・アイテムが異常に強い。はっきりいえば、わざわざ交神(交配)で苦労して強力なキャラを作り上げたりせずとも、全員の攻撃力を上げる術・アイテムを全員で使ってから"複数回攻撃できる奥義"を全員でかますだけで、大半のボスを倒せる。
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一部のボスの物理攻撃力・術攻撃力が異常に高く、最高レベルの能力・装備でもごっそり体力が減るうえ、インチキくさい能力を使う。
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インチキくさい能力は、「味方を勝手に退却させる。もちろんそいつは戻ってこれないし、残った味方は退却もできない→全滅」とか「100%の確率で味方一列をしばらく行動不能にする。しかも何も消費しないので無限連打。たまに連続で打ってきて不可避的に全滅」というレベルである。
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そのため後半のボス戦は、プレイヤーは「攻撃力上昇の重ね掛け+複数回攻撃奥義」の超火力一撃必殺、敵のボスは「インチキ能力発動!」のインチキ一撃必殺のハイパー勝負になりがち。こう書くと愉快そうに思えるかもしれないが実際はそうでもない。アレである。
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本作のゲームシステムは、時に作業ゲーと批判されることがある。
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キャラを強くするためには奉納点稼ぎと世代交代のループになる(子作り→子供で奉納点稼ぐ→稼いだ奉納点でさらに上位の神と子作り…)わけだが、子孫を増やして一軍に組み込むには数ヶ月の準備期間がいる。通常のRPGよりも多くの手間をかける分、面倒くささを感じやすいのが要因の一つである。
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ゲーム中盤以降や、「じっくり」以上の高難度モードで特に顕著である。もっとも、難易度を下げるなどの措置で軽減できる点ではある。
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非常に特徴的なシステムを持っている本作だが、基本のシステム面にはあまり新鮮味はない。
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動きの少ない地味めのグラフィックは、人によっては旧世代機さながらに古臭く感じることも。
総合評価
RPGで親の能力を子に引き継がせる事を次々と繰り返してキャラクターを育成していくという異例・異色のシステムが目を引くものの、そのシステムや世界観設定と調和したシナリオも、本作における見過ごせない魅力の1つである。
あまりにも短い命を志半ばに散らしていく主人公一族や、システム上は「子作りのお相手」である神々。そんなキャラクターたちの一人一人も、決して軽々しく扱われてはいない。地味なグラフィックなどの第一印象から受けるそっけないイメージからは意外なほどに、深い味わいを持つゲームである。
ただし、常に寿命に追い立てられるという本作特有の育成システムは、非常に好みが割れやすい。
ファミ通のレビューでも指摘されたグラフィックやシステム面の古臭さをどの程度重く見るか、またキャラクターが死ぬまでの期間を適切と見るか短いと見るか、ここの判断が本作の最終的な評価を大きく左右するだろう。
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ゲームアーカイブス100本突破記念で行われたゲームメディア関係者8名によるアーカイブスから1本を推薦するという企画において2名がこの作品をあげた。複数の人物が推薦した作品はこれのみであり、はまる人間ははまる作品というのは確か。
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売れ方が極端に変わっていることでも有名。
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発売日に2万本しか出荷されなかったのに毎年1万本コンスタントに出てアーカイブスに登録されてからも継続的に売れ続けている。
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1月も経てば中古が出回るゲームソフトで総本数10万本以上の超ロングラン型の売れ方をするなど誰も想像できないだろう。
余談
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当初の発売分に付属していたマニュアルが非常にページ数が多くゲーム説明以外の内容が多い。ベスト版などでは大幅に内容が削られている。
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アーカイブス版ではPS one Books版のものが使われている。
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桝田省治氏のライトノベル『鬼切り夜鳥子』『ハルカ』には本作との繋がりを示唆するような描写が散見されている。
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これを踏まえてか、PSP版には追加の神様にこれらの小説のキャラが登場している。
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PS版・PSP限定版のパッケージに使用されている子供の写真は桝田氏の子供という噂があるが、氏本人が大っぴらに「違う!」と否定している。
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ツィッターで桝田省治氏が2の開発を示唆。
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本作のPSP版移植に伴い、『俺屍2』が世に出る可能性が高くなっており、続報が期待されている。
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祖父の葬式を終えた息子に父が「俺の屍を越えてゆけ」という祖父の遺言を伝えるという、当時のソニーらしいセンスの印象的で味わい深いCMが有名。
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さらに12年越しで発売されたPSP版のCMは、全く同じキャスト&同じ構図で「俺の屍を越えてゆけ」という言葉を思い出して語りかけるという当時のCMを知るものにとってはとても感慨深いものとなっている。
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なお、当時息子役をしていた人物は業界を去っていたが、わざわざこのCMのためだけに探し出して出演交渉をしたという。