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三國志IX - (2012/09/20 (木) 22:43:23) の編集履歴(バックアップ)


三國志IX

【さんごくし ないん】

ジャンル 歴史シミュレーション
対応機種 Windows 98-XP
発売・開発元 コーエー
発売日 2003年5月14日
パワーアップキット:2003年8月19日
定価 12,800円
三國志シリーズリンク

概要

コーエーの古き良き看板『三國志』シリーズの9作目。Win版で発売後、PS2やPSPに移植されている。
発売年は2003年だが、その後パワーアップキットが登場してから廉価版や移植として10年近く何度も再販されており、実に12個もの別パッケージがある。

前作・前々作で推し進めた「全武将プレイ」からシリーズ元来の「君主プレイ」に回帰したが、システムは1枚マップなど新要素が多い。
また、政治よりも戦略に重点を置いている点でも、シリーズでは異色の部類に入る。
その評価は高く、何度も再販されているにも関わらず最新のPSP版は携帯機で遊べることもあり中古市場では高値が付いていたり、
動画サイトで『X』以降の作品以上に多数のプレイ動画が投稿されているなど、今なおプレイヤーは多い。


システム・特徴

シリーズで初めて1枚マップを採用。 今までは地図上に都市がいくつもあり、戦争では別個の戦場マップが呼び起こされる形だった。 これを完全に俯瞰視点の広い地図1枚に一元化し、戦争や部隊の移動もこの上で行うような形となり、現実の雰囲気に近い形でゲームを進められる。

完全なターン制であり、戦略フェイズで指示を出した後、進行フェイズで10日にわたって武将がそれを実行する…というのを繰り返す。 遠方の都市を探索したり外交に行ったりすると、距離に応じた日数を消費するため、それを見越した上で指示を出す必要がある。 それぞれの合戦が独立していないため、たとえば「西側で起こった戦闘に南西の都市から援軍を送ったら、手薄になった南西の都市に攻め込まれる」などといった事が起きる。

進行フェイズでマップ上を部隊が行軍している間は、自分は基本的に指示を出す事ができない。 出城する部隊には戦略フェイズで「命令」を各個出すことが出来、それに従う形で行動する為、時間経過を見越した指示が必要となる。 このような(ある意味では現実の一国の君主に近い)命令をしての委任リアルタイム戦闘は三國志シリーズでは現在本作のみである。

「異民族」(マップの隅に存在する漢に属さない民族)や「建造物」(城塞や砦などリアルタイムで建造し、橋頭堡として使える)などの要素が重要なのも今作の特徴。 また戦争においては兵法の「連鎖」というシステムがあり、弱い兵法しか持っていない武将でも集めて連鎖を起こせば予想以上の力を発揮したりといったことがある(もちろん強力な兵法を持っている関羽や馬超や呂布といった一部の武将たちは、弱い兵法を回避しやすいこともあり敵を圧倒できる力を持つ)。 また軍団の「陣形」によっても発動しやすい兵法が異なり、これらの軍団の部隊編成がとても重要。


評価点

  • 1枚マップ&リアルタイム戦闘による戦略性が非常に高い。
    • 今までの「便宜上、戦場マップのみを毎回呼び起こしていた」システムと違い、今作のリアルタイム戦闘は現実に近い戦略が機能する為、かなり面白い。
      • いくら兵数があろうとマップを行軍して目標にたどり着かないと攻撃しないので、今までのように兵数の多寡ですぐ優位が決まるというわけではない。
      • どんな大軍も遠くの場所へすぐ援軍に行くのは不可能であり、今までとは違った切り崩し方が生まれている。
    • 史実で言う曹操や孫策のような「勢力拡大に積極的な英雄を模したプレイをする」という点においては、シリーズの全作品の中でも屈指のシミュレーション度である。
  • 戦場の地形や要所などの再現度が高い
    • 易京の要塞や各種の関所など、今までのシリーズ作品では表現しきれなかった要素も違和感なく溶け込んでおり、要塞を建造して守りを固めたり、関所があればそれを利用したり逆に迂回して攻めたりといった戦略が機能する。
    • 今までは結局のところ「数遊び」であり、領土を増やしても勢力の強大化が実感しにくかったが、今作は領土が増えれば攻める道も増える。また、長江や剣閣などの要害を利用できる都市は守りやすいし、それを衝ける(益州へは北からより東からの方が攻めやすいなど)土地を確保すれば攻めやすくもなる。
    • 全体としてゲーム化のためのデフォルメ感が薄く、現実味が強いのである。
  • 「クリック連打ゲー」からの脱却
    • 今までの数字いじりと違い、そのゲーム性から、一歩引いて大局的に戦略を考えるゲームとなった。
    • いちいちクリックして全ての数値を決めなければならなかった今までと違い、このシリーズの遊び方の基本である長時間プレイにおいて今作は単純に楽な面がある。
    • 特に前作は戦争一つに非常に時間がかかるゲームだったので、それに比べると展開がスピーディ。かといってゴリ押しゲーかというとそうではなく、上述通り物量を溜めて圧殺するゲームにはなりにくく作業度は減った。
  • ムービーなど演出が良好。
    • 非常に雰囲気がある。一説にはシブサワ・コウが監修していた最後の三國志シリーズのムービーらしい。
    • ちなみにナレーションは故・郷里大輔氏が担当しており、重厚な歴史シミュレーションの雰囲気を形作っている。
    • 音楽が生楽器なのも中華的で良い。
  • 各種バランスの良さ
    • 官位の細分化(部下にきちんと官位を与えて権限を持たせられる)。
      • 今までだと丞相や三公以外は割とテキトーだったが、今作では史実を知っている人ほど楽しく官位を設定できるだろう。
    • 非現実的な兵・物資の集中化のしにくさ
      • 今作では兵糧や人口などが限りがあるため、いわゆる非現実的な1勢力・1都市最強状態にはなりにくい。
    • 次回作に見習ってほしい史実イベントのバランス
      • 理不尽にイベントが起こるわけでも、全く起こらないわけでもなく、史実に近い戦況になったら違和感なくイベントが起きてくれる。
    • 前作に見習ってほしい幻術などの一部チート兵法のバランス
      • 妖術や幻術で部隊壊滅、どんな戦でも楽勝、などといったことはない。
    • 何気に説明書が親切。

賛否両論点

  • 「魅力」の武将パラメータが無い。
    • 今作の基本武将パラメータは統率・武力・知力・政治の4つであり、魅力は無くなった。
    • プレイしてみると分かるが、確かに本作のシステムにおいて魅力はあまり必要ない。ただし魅力をウリにしていた一部の武将の合計能力値はかなり下がってしまっている。
      • 一応その代表格の劉備についてはある隠しパラメータがあり、救済されている。その他の武将は割を食っていると言わざるを得ない(特に劉禅は悲惨)。
  • 内政はあまり力が入っていない。
    • 基本的に今作の政治は「戦争のための政治」であり、特別内政における注目点はない。
    • それでも政治と資源は全ての戦略の元であり、過去作並みの重要度はあるが。
  • 異民族が強すぎる。
    • ある意味では史実通り((中国史は内戦だけでなく異民族との戦いも大きなポイントであり、三国時代を終わらせた晋を滅ぼしたのは異民族である。))なのだが、今作の異民族は大軍を擁し、好戦的で極めて厄介。
    • その兵数は開始時なんと50万。ちなみに正史では蜀の人口は70万~90万ほど。戦闘員が50万と考えると蜀や呉よりよほど強大な勢力ではないのか…?
    • 一応、異民族がいることによって隅の勢力の緊張感が増しているため*1、バランス取りにもなってはいる。しかし、ただでさえ兵力を集めにくい本作において「50万」という数字はさすがにやりすぎだと言える。
      • ちなみに異民族は1都市しか本拠を持たないため、衝車などで攻城戦にして都市を落としてしまえば実は割と簡単に倒せたりする。だが兵力は純粋に迎撃力に値するため、中途半端な兵力で挑めば衝車でも蒸発する。
    • 一応、攻略できれば異民族プレイができるようになるのだが、武将全員が脳筋タイプ計略にものすごく弱いため、どう考えてもボーナスになっていないのも賛否両論。

問題点

  • 敵CPUの思考が拙い。
    • シリーズ初の1枚マップと言う事から来る弊害なのか、非常に敵CPUが弱い。はっきり言って、1枚マップに対応できていない。
    • 兵1による陽動に全力で反応したり、兵数が上限の25万に達した港にさらに兵を輸送し続けたり、文官を一人で最前列に立たせて出陣させてきたり、自分の支配都市が一つしかなく、かつその都市が優勢な敵に攻められていると言う状況であるのに、遥か彼方にある別の都市を攻めるために出陣したり、徴兵のし過ぎで兵糧が切れて勝手に自滅して行ったり、と数々の奇行でプレイヤーの腹筋を破壊してくれる。
    • PK版になってある程度は改善されたが、それでも中盤以降はほぼ負ける要素が無いほどにゲームの難易度は低い。
  • 「抜擢」システムの存在。
    • 今作(一応PK版のみだが、逆に言えば初期版以外すべて)には「兵士抜擢」というシステムが存在する。これは戦闘の際に自軍の武将が発見した有能な兵士を鍛え、武将として登用することができるもの。だが、優秀な武将を指導係に任命すると能力値90近くの武将が簡単に作れてしまうため、ゲームバランスが崩れるとしてユーザーの間では批判意見が強い。
    • 曹操や劉備で始めた際、抜擢して育った架空の武将が譜代の夏候惇やら関羽やらを凌駕して活躍するのは釈然としないものがある。かといって能力のある抜擢武将を窓際族にして冷遇するのはそれはそれでシミュレーションとしては不自然。抜擢武将ばかりの虚構軍団が史実の猛将相手に無双していたりすると、人によっては寒いと感じるであろう。
      • この仕様はPS2版のみ、プレイ中にオフできる。一応この仕様を切るパッチも有志で作られていたりもする。
    • この仕様自体は初心者救済でもあり悪くないが、どのソフトverでもオフできるようにするべきだったというのが大方の見解。
  • 「探索」コマンドの仕様
    • 今までは都市単位で行っていた「探索」だが、本作では1都市の中でもさらに地域が細分化されており、1武将につき1地域しか探索できない。そのため、何の知識もなしに在野武将を探し当てるのがシリーズ他作品に比べてかなり面倒。
  • 戦略ゲームなのに戦闘が半自動という矛盾
    • 戦闘の簡略化は評価点でもあるが、「そこに価値を置いていたプレイヤー」にとっては戦略性や自由度の欠陥に過ぎない。戦闘に入る前に多少の戦略を練るものの、戦闘開始後はコンピューター任せの自動となる。このため難易度が低くなるとともに、相手の出方に対して、この部隊であの部隊をこう攻めるという知恵を持った途中での対応、切り替えが不可能*2
      • ただし完全ランダムであるからこそ生まれるドラマもある。兵法では時に一撃で部隊が壊滅し、一騎討ちは他作と比べて非常に高い頻度で起きる…など、バランスを取りつつ、とても見栄えのいい戦闘が実現出来ているのも事実。他シリーズと比べ動画投稿サイトでの投稿件数が非常に多いのも、このあたりが要因だと思われる*3

総評

1枚マップ&リアルタイム戦闘という面でシリーズでも異色の作品ながら、評価は高い。全体的なテンポの良さもシリーズ屈指である。
ただし今までのシリーズのような熟考しての数字遊びが好きなユーザーや、『VII』『VIII』のような全武将プレイ派には受け入れられないかもしれない。
基本的には政治よりも戦略が好きなユーザーにお勧めできる。


余談

  • 現在、PSP版は中古市場で高騰している。
  • Macで発売されなくなったソフトとしてはシリーズで初めてである(これまではwinだけでなくMac版も出ていた)。