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ミスティブルー - (2012/06/30 (土) 00:37:32) の編集履歴(バックアップ)


MISTY BLUE

【みすてぃ ぶるー】

ジャンル ADV
対応機種 PC-8801mkIISR、PC-9800VM/UM
発売・開発元 エニックス
発売日 1990年4月2日
定価 8,800円

概要

  • 当時としては、ほとんど見なかったキャラクター心理に重点を置いたADV。流れとしてはミステリーだが、内容は青春恋愛劇となっている。
  • 演出に力が入っており、グラフィック、BGMのレベルが高い。
  • スタッフとして外部から著名な人材を採用している。
  • システムは会話に重点を置いたもの。

ストーリー

アメリカでの音楽付けの生活も終わり、水上和哉は日本に戻ってきていた。新居での引越しの片付けはまだまだなのに、彼は憂鬱そうにずっと座り込んでいた。その視線の先にはチケットがあった。日本のトップバンド、オルフェの解散コンサートのチケットだ。実はこのチケットは、人と合うために手に入れたものだった。
開演時間も迫り、和哉は意を決して会場へと向かう。そして会場での喧騒の中、目的の人物と合う。高校の先輩、松宮進。彼は今、音楽関係のプロデューサーをしている。オルフェも彼がプロデュースしたのだった。和哉が彼と会う事になったのは、デビューの話を持ちかけられたからだ。だが話は物別れに終わり、最後は罵り合うように和哉は会場を後にする。
仕方なくバイクで帰ろうとすると、後ろから声をかけられた。女性の声だ。振り向くと懐かしい顔があった。藤木麻衣子。高校時代、付き合ってた和哉の彼女だった。四年ぶりの再会に、二人は懐かしむように当時の行きつけの店に行く。そしていい機会だからと、高校時代の友人を呼び出した。夏井エリと森川祐太。ただ高見沢ミッキーだけは用で来れなかった。この五人は高校時代よくつるんで遊びに行った仲だった。久しぶりの顔合わせに言葉を弾ます彼ら。やがて時間も過ぎ、それぞれ帰路へと付く。
翌日、和哉はテレビの音で目を覚ます。画面にはニュースが流れていた。そこに聞き覚えのある名前が耳に届く。松宮進。昨日会った先輩だ。だがニュースは彼が殺された事を告げていた。しかも、重要参考人として会場で罵り合っていた若者を探しているというのだ。和哉はそれが自分だとすぐに気づく。彼は疑いを晴らすため、行動を起こし始める。

特徴とシステム

  • 一応ミステリーの形態を取っているが、物語の中心は青春恋愛劇で登場人物達の心情描写に重きを置いている。また恋愛ゲームのようにヒロイン攻略が可能。しかも、ソフトな描写ではあるがアダルトゲームでないにもかかわらず、ベッドシーンがある*1。ただしEDそのものは、各キャラ別というものはない。
  • システムはコマンド選択式。一方で会話を重視してるため、独特なシステムもある。全部で3つのシステムを併用している。
    • 一つは一般的なコマンド選択式。行動と目的を選択するもの。ただ選択できる行動はかなり少なく、またこのシステムを使うシーンは多くはない。
    • もう一つは複数人で会話するシステム。相手を選択し会話する。4人の内、2人だけや全員と話すというような事ができる。
    • そして本作の最も特徴的なのが二人で会話するシステム。相手の方に好感度ゲージが表示され、会話の内容によってそれが上下する。会話の際の選択システムも特徴的。話しかける台詞そのものを選択するようになっている。この選択枝で重要なのが話の流れ。選択するものが同じでも、話の流れを無視したような選択をすると、好感度ゲージが下がる事がある。ちなみにこの好感度ゲージは相手が男性でも二人で話していると表示される。もちろん攻略出来るわけではないが聞ける内容に影響する。この流れを重視する点は他のシステムにもあり、総当り感覚で適当に選択していると、状況が悪化する場合がある。
  • スタッフに、1980年代のゲームBGMの作曲で知られた古代祐三、Zガンダムの作画監督をした恩田尚之が加わっている。
  • バブル最高潮期のゲームらしく、この時代のどこか浮かれたような空気を感じさせる。登場人物はほとんどが音楽関係者かモデルなど、芸能に関わっている。そして高級住宅住まいも多い。主人公の水上和哉からして、アメリカでの音楽勉強を終えて日本に戻ってきたという設定。さらに作中に出てくるバンド、オルフェのモデルは当時のトップバンドで絶頂期に解散したBOφWYである。当時を象徴するような要素がいくつもある。

評価点

  • グラフィックとBGM、そしてアニメがうまくかみ合って作り出す演出効果は、当時他にはないもの。特にOPとEDはそれが高いレベルで融合しすばらしいものになってる。
    • グラフィックは色彩の少なさを逆手に取ったような見事なもの。本作の対象機種は、同時発色数が少ない。このためどうしても色数が足らない事があった。従来はそれを中間色という複数の色を組合わせた方法で解決していた。ただこの方法は擬似的に色数を増やしてるだけで、実際には増えていない。このため中間色が多い画像はザラついた印象のものとなる。本作はそれを解決するため、可能な限り色数を減らして表現されてる。それが逆にモダンアートのようなシンプルな印象を出しているのだ。また色自体も淡い色を中心にする事で、画面を引き締まったものにしている。
    • アニメが当時としては多く、また使いどころも上手い。要所のアニメがシーンをさらに盛り上げている。
    • BGMは本作の雰囲気にうまく合っている。曲もよく、シーンを印象強くするのに一役買っている。ただ一方で、作中の曲となってるものは、オルフェのモデルのBOφWYやユーロビート等を参考にしてるものの、本職に及ぶべくも無いのは無理からぬ事か。
  • シナリオの心情表現は当時他にはないほど深いもの。本作は脚本やプロデューサーが女性であり、女性らしいアプローチとなっている。本作の結末、特にバッドエンド印象深いもの。
    • ただ、やや古い少女マンガを思わせる部分もある。

問題点

  • BGMも含め音の扱いが微妙。曲自体はいいが、演出としての扱いに疑問点が残る部分も。というのも無音のシーンが多く、BGMのあるシーンの方が少ないのだ。あえて無音にする事で、BGMのあるシーンを強調しようとしたのかもしれないが、全体としてはプラスだったとは言いがたい。さらに効果音も少ない。このため、無音のシーンはやや無機質な感じを受ける。
  • フラグ管理も含め、会話のチェックが甘い。一部ではあるが、会話の繋ぎがおかしくなってるものがある。会話の選択のしかたによっては話が前後したりする。さらに一度出てきたやり取りが後からまた出てくる事も。また、ついさっき話した内容なのに、後の会話ではじめて聞いたかのような返答が帰ってきたり、その逆で話してない事なのに、すでに聞いたかような返答が出るなどもある。
  • ミステリーの形を取ってはいるが構成要素が弱く、ストーリーが進んでも事件の全貌へ近づいているような感じがしない。
  • ラストは印象深いが、一方でいろいろと疑問の余地のあるものに。
    • 物語が終わっても、ミステリーとしての様々な伏線は回収されないまま。それどころか真犯人も分からずじまい。事件の全貌は明らかにされない状態で終わる。
    • 麻衣子の心情が不明瞭のまま終わる。事件との関係もあるため、プレイヤーの解釈に任せたと取るか締めを放り投げたと取るかは、微妙な所。

総評

当時としては卓越した演出のADV。また本作ほど心情描写を丁寧に書いてるものは、それまでなかった。この表現は、後の恋愛ゲームに通じるものがある。ただ一方でミステリーとしては半端な出来。ラストも、その不明瞭さを演出の力押しでやり過ごした感がぬぐえない。
物語として疑問の点があるものの、当時の演出技術を集め、他にはない絶妙な雰囲気を感じさせる青春恋愛ドラマである。