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Half-Life - (2013/01/30 (水) 13:32:46) の編集履歴(バックアップ)

HλLF-LIFE

【はーふらいふ】

ジャンル FPS
対応機種 Windows
メディア CD-ROM
発売元 エレクトロニック・アーツ
開発元 Valve Software
発売日 1998年11月19日
定価 $9.99 USD（Steam）
配信 Steamにてオンライン販売中


ニューメキシコ州ブラック・メサ　ブラック・メサ研究施設
対象：ゴードン・フリーマン　男（27歳）
学歴：マサチューセッツ工科大学（MIT）理論物理学博士課程修了
役職：研究員
所属：特異物質研究所
通関許可：第3級
管理保証人：機密
緊急時優先任務：自由対応


ブラック・メサの山岳地帯をくりぬいた巨大研究所。ゴードン・フリーマンのそこでの初仕事は、特異物質分析実験の実行役だった。
特殊防護服を着用して装置を動かすゴードンだったが、突如として装置は暴走。ゴードンは異次元の世界を垣間見る。
現実世界に帰還したゴードンが目の当たりにしたのは、半壊した研究施設と、異次元から現れ、人間を襲うエイリアンの群れであった。

ゴードンは生き残りの研究員や警備員と協力して地上を目指そうとするが、地上からは事件のもみ消しのために海兵隊と、大統領直属の暗殺部隊が送り込まれてくる。
地下研究施設で繰り広げられる地獄のサバイバル。果たしてゴードンはこの混乱を生き延びることが出来るのか。


目次

『HλLF-LIFE』という作品

それまでのFPSは、群がる敵をひたすらにやっつけていくドンパチものが主流であり、全てだった。
しかし「HλLF-LIFE」は違った。ユーザーをゲームに引き込むための徹底したこだわりをもって世に出たこのValveの処女作は、50以上もの賞を受賞し、総出荷本数800万本を数える大ヒットとなる。
その最大の要因は、FPSに明確なドラマ性と論理的なパズル要素を盛り込み、単なるガンアクションだったFPSをホラーアドベンチャーへ進化させたところにあった。
勿論、ガンアクション部分の出来も十分な高品質を確保しており、更にMOD（Modification）による高い拡張性は幾多のスピンオフ作品を生み出すに至った。

本作以降に発売されたFPSのほとんどが影響を少なからず受けていると言っても過言ではない、まさにSTG史に残る傑作。
それが『HλLF-LIFE』なのである。

基本システム

  • オーソドックスなライフ＋ダメージ軽減のアーマー式。それぞれの上限は100%。
  • 武器は格闘用のバール、ハンドガン、ライフル、重火器、エイリアンの生体兵器と、バリエーション豊か。
    • 大抵の武器には「セカンダリショット」というサブ攻撃機能が備わっている（サブマシンガンならグレネード発射、ショットガンなら2点バーストといった具合）。様々な使い分けが楽しめる。
  • ストーリーは、全てゴードン（プレイヤー）の主観視点を通して進行する。
    • ゴードンは一言も喋らず、プレイヤーの操作によって周囲の人々の反応も変化する。「ゴードン＝プレイヤー」という図式が強く打ち出されているのが特徴。
    • イベントムービーも一切なく、全てがリアルタイムデモとして進行する。アドベンチャーゲーム的な感覚が没入感を高める。
  • いつでもどこでも任意にセーブ・ロードが可能。クイックセーブ・ロード機能も実装しているのでトライ&エラーがやりやすい。オートセーブ機能も実装されている。

評価点

ドラマチックアドベンチャーFPS

  • ムービーを介することなく、その全てをゴードンの視点を通してプレイヤーに認識させるデザイン、及びその完成度は素晴らしいの一言。
    • 冒頭、ゴードンは地下トラムで職場へ通勤する。普通のゲームならばその光景をムービーとして見せる所だが、本作はいきなりトラムに乗るゴードンの視点から始まり、トラム内を（任意に）動き回って、外で動いている人物や機械を自分で目撃しながら到着まで過ごす。初っ端から否が応にもゲーム世界へ引き込み、没入させる工夫が成されている。
    • 徹底してリアルタイム・主観視点に拘る（というか一人称以外の視点が存在しない）ことで、予期せぬ爆発・崩落する通路・吹き出す水・遠くから聞こえる叫び声や発砲音といった、ともすれば「ごく当たり前」と切り捨てられそうな演出が一気に現実味を帯びてくる。それまでのゲームでは考えられないことであった。
  • 先に進むにはアクションだけでなく、謎解きが求められるのも特徴。その謎解きも「論理・解法の筋道」を考えて作られており、理不尽なトラップは存在しない。
    • 例えば「スイッチを押せばダメージ床が消える」というところを「水たまりに千切れたケーブルが接触して漏電しているので、電気の元栓を切らなければいけない」と表現しているように、全ての謎には原因と解決法が明確に設定されている。
      • そうした所には踏み台用の動かせる箱が置いてあったり「感電注意」といった張り紙があるため、直感的に解決法を導くことが出来る。
    • 取得するアイテムについても、ただ無造作に落ちているのではなく、保管庫や輸送ケースの傍に置いてある、あるいは死体から分捕るというように「そこにそれがあるのは何故か」という疑問が出ないように配置されている。
      • 格闘武器として"ナイフ"でもなく"ハンマー"でもなく"バット"でもなく、よりにもよって実用本位の"バール"がチョイスされている点も見逃せない。
  • リアリティを出す要素の一つとして、素晴らしい音響効果を外すことは出来ない。
    • 足音は地面の材質によって変わり、閉所では音が反響する。立体音響によって、音で異常や敵の存在・位置を知ることが出来る点も見（聞き?）逃せない。
    • 劇中ゴードンが着用する安全服・HEVスーツは、着用者の体調をチェックして自動的に応急処置を行う機能が搭載されている。特徴的な電子音声のアナウンスはどこか中毒性がある。
    • BGMは垂れ流しではなく、要所要所に差し掛かると挿入される。この映画的な演出の出来も良い。

良好なステージ・レベルデザイン

  • 「一介の研究者が念力を使うエイリアンやプロの軍人と戦う」というストーリーを踏まえて、難易度は高めに設定されている。回復アイテムは少ないし、序盤は弾薬不足に神経を使う。しかし、落ち着いてトライ＆エラーを繰り返せば誰でも必ずクリアできる、理想的な調整が行われている。
    • 基本的に一本道の本作だが、「敵の無限湧き」や「大軍を全滅させないと先に進めない」シーンは存在しない。仕掛け爆弾を仕掛けておびき寄せてもいいし、逃げたいなら逃げればいい。真正面から戦うだけではないステージデザインが行われている。
    • 難易度は3段階から選択でき、更にゲーム本編から独立したチュートリアルモードも存在すると、初心者への配慮も怠っていない。
  • グラフィック面から見ても、ステージのデザインは多彩。無機質な研究所、狭く暗いダクト、下水処理施設、断崖絶壁と、先へ進むにつれて新たな発見が待っている。
    • これらのステージは全てシームレスに繋げられており、あたかも自ら冒険しているような感覚が味わえる。
  • この手の3Dゲームで怖いのは「ハマり（進むことも戻ることも出来なくなる状態）」だが、極力そうならないようにする配慮が行われている。
    • 警備員や研究者の協力、またはとある装置が必要となる場面では、彼らが死亡する、装置が破壊される等すると自動的にミスになるようになっている。
    • ほとんどのスイッチは押すと何らかの反応が返ってくる＝フェイクが存在しないので迷いづらい。「指定の順番通りに操作しないと失敗する」場面も存在しない。
  • 敵のデザインも千差万別で、様々な攻撃方法を引っさげて向かってくる。「敵によって対応を変える」ことが重要となり、戦略性の向上に寄与している。

出来の良いAI

  • 敵味方問わず、全てのNPCは同年代のゲームから頭抜けた精度のAIを持っている。
    • プレイヤーについてくる味方はまずスタックしない。狭い通路では率先してどいてくれるなど、遊ぶうえでストレッサーにならない工夫が施されている。
    • 敵海兵隊のAIは特に俊逸。プレイヤーが反撃すれば一時後退し、弾込めも安全な場所で行う。障害物越しに手榴弾を投げ込んでくるし、回り込みや挟み撃ちといった高等戦術も駆使する厄介な相手だ。
      • 敵兵士とエイリアンが遭遇した場合、彼らは勝手に（イベントではなくリアルタイムで）戦い始める。漁夫の利を狙うもよし、逃走するもよしである。

高い拡張性

  • CD-ROMにはマップ作成機能（というより、本作のゲームデザイン機能）が標準搭載されており、MOD製作が非常に行いやすい。これを使用して多彩な独自シナリオやマップが製作された。
    • 時には「あるMODを目当てに本作を購入する」というケースも出るほどに広範囲の人気を博した。中でも『カウンターストライク』は対戦FPSとして高い評価を獲得し、遂にはスピンオフ作品として販売された。

その他

  • グラフィックの描写は非常に細かい。蛇口をひねると水が出るなど、簡単な仕掛けも随所に用意されている。
    • 自販機のボタンを押すと出てくるジュースを取得すれば、体力をわずかながら回復させることが出来る。
    • 弾痕や衝突痕は消えずに残り続ける。これを目印に利用するのもよい。
  • 上述したAIの他にも、味方NPCの動きはよく作りこまれている。劇中多彩なモーションを見せる彼らに注目するのも面白い。

難点

  • シームレスデザインの弊害として、道を進んでいくと突然「ロード中」の表示が出てフリーズし、数秒後に操作再開、という形式がとられている。うまく区切りとなる部分で仕切られてはいるのだが、せっかく盛り上がった気分に水を差された気持ちになることもしばしば。
    • 最大の問題はBGMがぶつ切りになってしまうところ。音楽がかかるタイミング、BGMそのものの質両方が高い完成度を誇るだけに、この点は非常に惜しい。
  • リアルタイム描写の都合上、明確なデモシーンが存在しない本作では銃を撃つ必要が無い部分が定期的に発生する。2回目以降のプレイではストレッサーとなりがち。
  • 難易度は非常に高く、死因が敵の強さよりも転落死や障害への接触死を避けるため、精密操作を要求される場面がいくつか存在する（特に後半に多い）、しかもこのゲームは滑るような挙動をする。この部分は難易度選択も関係ないため、純粋に高い操作技術が要求される。
  • マップが広くギミックも細かいため、次の目的地を見失う場合がある。
  • やたらと弾のブレが激しいサブマシンガン、「スコープが無いスナイパーライフル」として使えるハンドガン、何故かズーム機能搭載&マガジン式のクロスボウなど、冷静に考えると各武器には突っ込みどころが見えてくる。
  • ゲーム自体の問題点ではないが、現在のところ日本語版は存在せず、有志が作成した日本語字幕挿入MODに頼る必要がある。MOD導入自体はそれほど難しくないので*1、是非尻込みせずにプレイして頂きたい。

まとめ

以上、評価点の項で書き並べた要素が寄り集まって、単なる「FPS」ではなく、非常に没入感の高い「物語」が形作られている点こそが本作の最大の特徴である。
スーツのアナウンスを聞き流しながら不気味な研究所を進み、バールで南京錠を破壊し、襲いくる海兵隊やエイリアンを迎え撃ち、時には頭をひねって先へ進む道を探す。「映画的」という表現が陳腐に感じられるほどの演出力、そしてプレイヤーを「その気」にさせるゲームデザインは、それまでのゲームとは一線も二線も画した画期的なものだったのだ。
各GOTY、個人サイトで絶賛され、その内容については既に語り尽くされ、STGの歴史において本作が発売される前と後で区別されるといった所からもわかるように、STG史において大きな位置を占める傑作であることに疑いの余地はない。
多彩なMODの存在もあり、ハマれば非常に長く遊ぶことが出来る作品である。

日本ではイマイチ馴染みの薄いFPSというジャンル故か、国内での知名度が低い点が惜しまれる。一人称視点のアクションアドベンチャーということで「実際に遊んでみなければ分からない良さ」が大きい点も、一見さんを遠ざけている感もある。 クレジットカードを所有しているならばSteamで格安（定期的なセールでさらに安くなる）購入でき、昔のゲームということでPCの要求スペックも低い。一度クリアまで進んでみれば、何故ここまでの賞賛を受ける作品であるかが分かるはずだ。

パッケージ情報

今からHLを遊ぶなら

今から本作を始めるのであれば、Steamにて『Half-Life 1 Anthology』を購入すると良いだろう。
『Half-Life』本編に加え、後述する『Blue Shift』と『Opposing Force』、更に『Team Fortress Classic』が付属している（定価$14.99 USD）。

また、続編『Half-Life2』のゲームエンジン・Sourceを流用したバージョンアップ作『Half-Life:Source』も存在する。
モデリングの強化（『2』と同じではなく、あくまですこし綺麗になった『1』）・物理演算の一部実装・チャプター選択機能の実装が行われているが、オリジナル版のMODに対応しないという難点も。
こちらは定価$9.99 USDの単品版か、Half-Lifeシリーズ10作がセットになった『Half-Life Complete』（定価$39.99 USD）を購入する必要がある。

Half-Life：Opposing Force / Half-Life：Blue Shift

『Opposing Force』は1999年にリリースされた、ブラック・メサ研究施設に派遣された海兵隊員、エイドリアン・シェパードを主人公とした拡張パック第1弾*2。
本編中では手ごわい敵として登場した海兵隊員となり、多彩な重火器を操ってエイリアンたちと戦いぬいていく。
様々な新要素が登場し、ボリュームも本編に匹敵する良作品。ただし、一部の設定に本編と矛盾するところも存在する。

『Blue Shift』はブラック・メサの惨劇を、警備員のバーニィ・カルフーンの視点から体験する拡張パック第2弾。
本編と殆ど変りないシステム・状況の中、ゴードンとは異なる場所で起こった物語が語られる。
2001年リリースの割に尺が短く、『Opposing Force』の新要素もないのが痛いが、それ以外に目立った欠点はない秀作である。

現在はどちらもSteamにて$4.99 USDで販売されている。問題はこの2作、現状共に日本語化MODが存在していない。プレイには攻略サイトの参照がほぼ必須となる。

大型リメイクMOD『Black Mesa』

『Half-Life:Source』とは違い、完全に『Half-Life2』のSourceエンジンに基づいて作られたフルリメイクMOD、それが『Black Mesa』である。
現在は最終チャプターの手前までしか完成していないが、今後もMOD開発は続けていく、と制作者は発言している。興味のある方はここから始めてみるのも一興だろう。
公式サイトで絶賛無料配信中（「無料は気が引ける」という方はサウンドトラックを買って開発に貢献しよう）。Steamでの配信も予定されている。