「パワプロクンポケット9」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

パワプロクンポケット9 - (2013/07/01 (月) 20:23:31) の編集履歴(バックアップ)


パワプロクンポケット9

【ぱわぷろくんぽけっときゅう/ないん】

ジャンル 野球バラエティ
対応機種 ニンテンドーDS
発売元 コナミデジタルエンタテインメント
開発元 コナミデジタルエンタテインメント(パワプロプロダクション)
発売日 2006年12月7日
定価 5,229円
分類 良作
実況パワフルプロ野球シリーズリンク

概要

  • 本家とは似ても似つかないシナリオや彼女、サクセスで人気を集めてきたパワプロクンポケットシリーズの10作目(ダッシュ含む)。
  • キャッチコピーは「こんなゲームがあったのか!!」。『8』からジャンルが「野球バラエティ」となったが、パッケージ裏では「男が街を救う」「RPG」「少林寺の修行」の3サクセスに加えて「格闘ゲーム」や「レース」をイメージしたミニゲームなどせわしない紹介になっている。
    • どれをとっても普通に野球をしていない。だが普通ではなくても野球をしている。実に「野球バラエティ」と呼ぶにふさわしい一作となっている。

ストーリー

  • 『さすらいのナイスガイ編』(表サクセス)
    遠前町にあるブギウギ商店街。かつてお客で賑わっていたブギウギ商店街は、突然駅前に現れた大型外資系スーパー・ジャジメントスーパーによって客を取られ、多くの店のシャッターが閉る寂れた商店街となっていた。商店街の自慢だった野球チーム・ブギウギビクトリーズも連戦連敗。商店街の人々の士気は徐々に消えようとしていた。
    風来坊として各地を旅する主人公は偶然この街に立ち寄ったとき、元プロの選手を使ってまで商店街を潰そうとするジャジメントのやりかたに違和感を覚え、ブギウギビクトリーズに助っ人として入団し、商店街の復興に協力していくこととなる。
    しかしジャジメント側に主人公のかつての相方・椿がつき、商店街とスーパーの抗争はヒートアップしていく。
  • 『スペースキャプテン編』(裏サクセス)
     宇宙最強の『帝国』に立ち向かう、スペースオペラRPG。主人公は規定日数までにワクチンと仲間を集め『帝国』の侵略に備える。
  • 『少林寺編』(ミニサクセス)
    主人公は夏休みに間違って少林寺に入門してしまう。そこでの訓練は野球にどう役立つのか。
    元は体験版用に配信されていたミニサクセスだが登場人物の一人の「寺門」が『ナイスガイ編』の仲間キャラとして登場する。

評価点

ゲームシステム

  • 今まで野球パートが微妙だった『パワポケ』の中では格段に遊びやすくなった。この流れは試合が3D化した次作『10』で昇華される事となる。
  • パワポケダッシュで起用された「カード野球」が逆輸入。
    • アクション野球が苦手な人でも遊びやすくなった。このシステムは『12』までサブで入れられる事となる。
  • アクション野球が遊びやすくなった。
    • 打者が打った瞬間、どの守備位置に打球が飛んでいくかが表示される「かけ声」が追加。このシステムは後に本家『パワプロ』シリーズに逆輸入される。
    • 打球が飛びやすくなる「バンザイ」が登場。
    • ミートカーソルの形がパワポケ甲子園のような楕円になる。
  • サクセスが遊びやすくなった
    • 難易度選択やカード野球でのプレイが可能となり、試合前に能力アップを実行するインターミッションが組み込まれた。
    • サクセス時のキャラメイク時にオートで勝手に名前が付けられるシステムが追加された。
    • 投手は最初に変化球の方向を選べるようになった。

各サクセス

  • 『ナイスガイ編』は往年の日本映画風ヒーローモノを意識しており、本筋は昭和の下町風な人情ドラマが展開される。
    • 佐和田監督やカニ怪人のように『7』からの再登場キャラや『8』のキャラと関わりを持つ武美や城田といった人物も居るが、基本的には1作だけで完結したストーリーを展開している。
    • 敵のスーパーである「ジャジメント」は『10』以降の裏社会編で深く関わり賛否両論だが、本作のジャジメントスーパーは裏社会の要素があまりなく敵キャラの支店長も「思い込みの激しさから商店街に嫌がらせを仕掛け、野球勝負の敗北でやけっぱちになり暴走する」というだけの人物である。
    • 「流れ者の風来坊」である主人公は精神年齢の高いカッコよさと、傍目から見ると女性の家に転がり込む住所不特定者のヒモにしか見えないマヌケな所を併せ持つ。普通ではない設定ではあるが野球への情熱は本物。
    • 『7』とは話の流れが似ている所もあり、「助っ人がバッティングマシーンを独占して元居たメンバーと溝を深める」「元居たメンバーがひそかに特訓をして助っ人チームに紅白試合を挑む」などの流れは『7』を彷彿させる。
    • しかし『7』の時には果たせなかった「助っ人組と元のメンバーの対立を通した和解と団結」も本作では果たしており、マイルドになりつつも人情ドラマとしての側面が強まっている。
    • ファンの中では『7』の逆視点版ではないかという説もある。
      • また本作の主人公は『7』のヒーローのリーダーであるレッドの生まれ変わりではないかという説もある。細かい言動が元人外である事を匂わせ、佐和田監督や湯田(『7』の花丸高校のメガネ君)の事を知っている節があり、『維織』のシナリオでは彼女にヒーローの話をしてあげたりしていることなど。
      • 『14』ではレッドが再登場して重要な役割を担うが、『7』のレッドが再登場したというよりも「商店街のために草野球で戦った人物」として登場していることから『9』主人公の延長線のように描かれている。
      • なお公式ではノーコメントではある。
  • 彼女シナリオは好評。当初の主人公は野宿をしているが、その状態だとゲリや栄養失調などバッドステータスになりやすいので女性キャラと交流をして家に転がり込むヒモとなる事が攻略のカギを握る。
    • 広川武美は得られる能力は平凡であるものの流れ者の主人公に当初から好意的で序盤から居候しやすく攻略しやすい。『8』のサイボーグ同盟と関わりがある人物でファンからの人気も高い。
    • 神田奈津姫は本作のメガネポジションの「カンタ」の母親でカレー屋をしている未亡人。武美と共に攻略しなくてもある程度は本筋に関わるが、パワポケポイントを使って隠し彼女を出すと攻略可能。商店街の情報がスーパーに何故筒抜けだったのか真相が分かる。
    • 温水ちよは劇団員の少女。劇団員の恋愛を交えたドロドロのドラマが展開される。
    • 霧生夏菜はレストランで働いている少女で当初主人公を浮浪者のオッサンとして呼ぶが親しくなっていく。父親が考古学者でありながら「8」に登場した雪白家に仕える暗殺者の裏切り者であり、野球の仲間キャラになる「城田」がカギを握る。
    • 山下貴子は道端であった女子高生。米屋の父親と二人暮らしをしている。だがその正体はパワポケお馴染みの幽霊ヒロイン。
    • 野崎維織は喫茶店に流れ込んできた主人公を餌付けするいつも本を読んでいる無口な女性。博多氏による「緑髪伝説」の一人。
    • 夏目准は維織が通ってる喫茶店で働くメイド。腹黒で維織のヒモになっている主人公に嫌味を言うが好意は持っている模様。どちらかというと博多氏の緑髪キャラに近い漫才要員で人気も高いが攻略不可能。
      • なお後の作品の「しつもんコ~ナ~」では「准が攻略できないのはバグですか?」という質問があり、攻略不可能なヒロインが居る事をバグと呼ぶネタが生まれた。なお「緑髪ヒロインのお供キャラ」で攻略可能になったのは『13』に登場した川田ゆらり(緑髪娘「あさみ」の親友だが彼女のルートも存在する。実は維織の腹違いの妹)まで待つ事となる。
      • 『14』では准は一応攻略キャラになっているのだが、相手は小学生でシナリオの流れも恋愛感情というよりも「野球少年を見守るお姉さん」という関係性で終わっている。
  • 本筋は基本爽やかなシナリオだが、彼女キャラのBADエンドは重い。
    • 悔し涙も流せず爆死、主人公に何も言わず失踪、暗殺、悪徳プロデューサーに枕営業をして遠い世界へ行ってしまう残酷な結末、成仏してしまうなど。
    • その分、GOODエンドでは主人公とヒロインが共に「幸せ」になる結末も確かにある。
      • 余談だが『7』でレッドが押し付けていた間違った「しあわせ」とは真逆の性質のものである。武美と維織のGOODエンドは特に「別の道を行くことがあってもお互いに好きでいられる」という側面が強調されている。
  • 仲間キャラも「面白変人」が多く憎めない。
    • 『少林寺編』からのゲストキャラでトラブルメーカーの「寺門」、『7』でレッドに改造された「カニ怪人」、『8』の彼女キャラの雪白冬子の専属コックとして彼女を溺愛する『城田』、准に惚れ込む自称新世界の神である「電視」と「野ピエロ」、甲子園出場者で実力がありながら陸で泳ぐ「水間」、主人公の知人である胡散臭い「白」、過去に犯した罪で彷徨っている「ムシャ」など。そりゃ元居たメンバーも反乱を起こすのも無理はない。
  • ミニゲームもバランスがいいとはいえないが『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズを彷彿させる対戦アクション、「ブギウギ商店街」をダチョウに乗って駆け回るレースなど純粋に遊んでて面白いモノがある。
    • 完全クリアにミニゲーム攻略が必須だった『8』ほど難易度が高いわけでもなく、サクセス中に失敗しても能力が下がるリスクの代わりに再挑戦出来たりするので親切とさが増している。
  • 『スペースキャプテン』編は『スター・ウォーズ』を初めとしたSF映画のノリ。
    • 仲間キャラのイベントが濃く、それぞれの星の政治や貿易にちなんだイベントの世界観が風刺が効いていて素晴らしい。
  • またRPGパートだけでなく3DSTGのパートもある。
    • なお『スペースキャプテン』編は裏サクセスでは珍しく最後の重要な局面でイベントオンリーとはいえ「野球」が絡んでくる珍しいシナリオである。
  • 『少林寺編』は元々は体験版としてイベントで配信されたミニサクセス。ストーリー性はあまりない。
    • だが「パワポケポイント」を稼ぐのに有用なサクセス。

賛否両論点

  • 野球パートは確かに良くなったものの『10』以降の3D野球に比べると見劣りする。
    • この辺は近作の『7』が酷過ぎ、『8』が荒削り過ぎという側面もなくもないが。
  • 他作品との繋がりがあくまで匂わせるだけではあるものの、人によっては「外伝っぽい」「地味」という意見もある。
    • 主人公がレッドではないかという説も嫌うファンも少なからずいる。
  • 『スペースキャプテン』編は普通にプレイすると日数が少なくワクチンを集めにくい。
    • そこで日数をあまり消費しない「ワームホール」で貿易する事でお金を溜めるのが基本戦略となるのだが、ここでお金を集めやすい惑星の組み合わせになるかどうかは運任せ。良い組み合わせが出るまでリセットする事になる。
    • だがお金を溜めなければ最終ミッションに挑む事も野球人形(登録できる選手)を強くする事もままならない。溜めてしまえば表より強い選手が作れるのは変わらず。
  • イベントの合間に戦闘があるという形でRPGとしてはおまけレベルといえる。
    • 以後、『10』から『13』までの裏サクセスはRPGとしての側面をより掘り下げていく事になる。

総評

(『10』以前のパワポケ全般に言えることだが)野球ゲームとしては、はっきり言って今から遊ぶべきソフトではない。しかしDS『パワポケ』の中では一作でシナリオが完結している事は大きく、主人公も彼女キャラも人気が高くパワポケの中では初心者向けの一作となっている。粗削りながら遊びやすい各ミニゲームの存在もあって「野球バラエティ」として好き放題やっているお祭りゲームとしての側面が強く、『パワポケ』らしい魅力が詰まっている。もし、なんでもありな「野球バラエティ」の気分を味わいたくなったら手に取ってみるのもいいかもしれない。

余談

  • 本作に登場した「ブギウギ商店街」は約10年後の『14』ではインターネットショッピングの発達によってシャッター商店街になってしまっている。そうした無常さもパワポケらしいといえばパワポケらしいのかもしれない。