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天外魔境II 卍MARU - (2013/11/10 (日) 00:17:01) の編集履歴(バックアップ)
天外魔境II 卍MARU
【てんがいまきょうつー まんじまる】
ジャンル
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RPG
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高解像度で見る 裏を見る
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対応機種
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PCエンジン スーパーCD-ROM2
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発売元
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ハドソン
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開発元
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ハドソン、レッドカンパニー、アルファ・システム
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発売日
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1992年3月26日
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価格
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7,800円(税抜)
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分類
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良作
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天外魔境シリーズリンク
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概要
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前作『天外魔境 ZIRIA』(以下、ZIRIA)の続編。日本をモチーフにした架空の国ジパングのうちZIRIAでは描かれなかった、中部地方~西日本(九州・四国を除く)が舞台となっている。
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主人公は「火多の国」に住むイタズラ好きだが根は優しいガキ大将「卍丸」。自分が「火の一族」の末裔と知ってからは各地にいる「火の一族」の末裔を探し、暴虐の限りを尽くす「根の一族」と戦い、各地に開花した7本の暗黒ランを斬る事が目的となっていく。
特徴
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30分に一度はイベントが発生する・24名の声優起用とCD容量をフルに生かした部分がウリ。プレイ時間もやりこみ無しで70時間前後というボリューム。
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前作同様キャラクターの数やイベント時のアニメーションは健在。
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ミュージックコンポーサーには久石譲、福田裕彦と言った名前が乗っている。
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妻を殺された憎しみが徐々に卍丸への歪んだ愛へ代わって行くデューク・ペペや、人を豚に変えて村人に世話をさせ、時にはそれを知らない人にも食わせた地獄釜の肉助、生まれたままの姿を見せてやると言って物凄い豹変をとげるはまぐり姫等、キャラクターのインパクトは相当なもの。
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「肉の夢」「満開地獄」「人間牧場」「超絶真珠男」「夜の右手」「官能の横笛」等と敵の雑魚キャラ名が凄まじい。子供には分からないと思われるあたりも絶妙だ。
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他にも、「人肉切包丁」や「抗夫の腹巻」等の武器・防具の名前のインパクトも相当なもの。特に豚装備は事情を知ると…
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戦闘自体の難易度は高めだが、あれやアレのような凶悪なものではなくライトユーザーでも馴染み易い程良い難しさである。
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全滅してもお金が減らされない等全滅のリスクがなく(前作は金半減だったが)、希少な非売品回復アイテムが所持していなければ宝箱から何度でも取れる等、救済措置がある。知らないと分からないが…。
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ハドソンからの唯一の指示が「制作費はいくらかけてもいいから発売日だけは守るように」だったという逸話がある。
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P.H.チャダの『FAR EAST OF EDEN』を原作としている。ただし、この作者や文献の名が他所で確認されたことはない。
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この件について公式の説明はないが、原作の存在自体がフィクションであり、「外国人から見た間違った日本観」というコンセプトを明確にするための一種の演出であるという解釈が一般的である。
評価点
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当時の常識をはるかに超えた、充実したビジュアルとサウンド。
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頻繁にフルボイスのアニメイベントムービーが挿入され、またムービーのないイベントでもキャラクターが頻繁に喋る。
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ボス戦ではテレビ画面の半分ほどの大サイズでボスの姿が映し出され、常に動きつづける。ボスの攻撃時の演出もよく動く。戦闘前後の台詞はフルボイスである。
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ちなみに戦闘後のセリフには勝利後だけでなく敗北時のパターンも用意されている。負けるとボスにフルボイスで愚弄される。再戦時にも専用のメッセージで愚弄される細かさ。
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にもかかわらず、ロードに関するストレスが少ない
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例えば、頻繁に繰り返されるザコ戦闘では背景を黒くし、エフェクトやBGMなども簡素にすることでCD読み込みを排除。カートリッジ媒体並に快適なロード時間を実現している。町や村の中でも、基本的に町を出るまでノーロード。
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その一方で、イベントシーンやボス戦の直前では長めのCDロードが発生する。だがこれらは一過性のものであり、またこれからワクワクすることが起こる直前でのロードであるため、プレイヤーにもたらすストレスは少なくて済んでいる。
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百鬼夜行の箱と言う文字通り「敵100体と戦う」ぶっとんだイベントがある。最後が強いのはお約束。
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最強の武器は卍丸の現在の体力に応じて威力が変わる。この武器の誕生時のイベントも見せ場。
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個性豊かで魅力的な仲間達。またその個性が、特技やアイテムの所持量などのゲームシステムによっても現れている。
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主人公卍丸はプレイヤーの分身であるため、ほとんどセリフを喋らない。とあるイベントを除けば「母ちゃんおかわり!」「我が道に敵無し!」の二つだけ。その分卍丸が長台詞をしゃべる唯一のイベントは印象深く、天外魔境IIで最も感動したシーンに挙げるファンも多い。性能は直接攻撃よりだが平均的。各地で根の城から聖剣を解放するたびに新たな奥義を覚えていく。ラスボス戦では攻撃の要になる。通常プレイではあまり目にしないが、実は限界まで段を上げると素の素早さが1番高くなる。
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卍丸が初めて出会う火の一族であるカブキ団十郎は、当初は自己中心的な性格で、卍丸が直接頼んだ時に「苦労するのは嫌だ」といった理由で仲間にならない上に、卍丸が名を上げると勝手な発言と共に勝手に仲間になる。仲間になっても自分勝手な理由でパーティを離脱、各地で女を作る、天狗の巻物を盗む等ユーザの頭を悩ましてくれる。しかし卍丸に助けられる場面から自己のうぬぼれに反省しつつ、終盤は人に対する気遣いも見せるようになっていく。天才肌という設定の通り性能は万能型で、直接攻撃と術の両方をこなす。ただし後半は卍丸はおろか絹にすら総合攻撃力で抜かれてしまうため、補助系の術によるサポートや凍竜での追加効果による行動不能、奥義・悪態で敵の攻撃をひきつける係になる。ユーザからは圧倒的な人気だったようで、次回作の主人公に抜擢された。
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極楽太郎は典型的なパワータイプで、体力と攻撃力が非常に高いが、最終盤まで術が一切使えない。図体がでかいため道具(武具以外のアイテムの分類)の所持最大数が多いが、巻物はほとんど持てない。さらに極楽のみ、かばうコマンドが味方全体を対象になる。これは同社の新桃太郎伝説の寝太郎にも受け継がれた。極楽も一応、状況に余裕があればラスボス戦での攻撃の要になれる。見た目に反してパーティで一番の常識人。声を当てた赤星昇一郎氏の渋い名演もあって印象深いセリフが多い。ちなみに図体がでかすぎるため卍丸やカブキが装備するような普通の武器・防具は使えず、たらいや信楽焼きなどいろいろ変なものを装備して戦うことになる。
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パーティの紅一点である絹は、儚げな印象通り体力と素の守備力が極端に低く道具を3つしか所持できない。しかし巻物を大量に装備可能で技(MPと同義)も高く、絹専用の防具の守備力が高い。両親の死によって相手を傷つけることを恐れているため、両手を純潔の鎖(道具として使うと敵の攻撃力を下げる「月読」の効果)でつないでおり、なんと直接攻撃と攻撃系の術が一切使用できない(ただし攻撃アイテムや特定の乗り物に乗ったとき専用の攻撃コマンドは使用可能)。しかしその代わりに、愛犬のシロが戦闘に参加して直接攻撃をしてくれるため足手まといという印象はない。ラピュタやトトロの主題歌を歌う井上あずみ氏が声を当てており、本職の声優さんとは違った透明感のあるか細い声がキャラにマッチしている。
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それ以外の登場人物(脇役とか敵とか)も非常に個性的である。
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絶妙な戦闘バランス。
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全滅のペナルティが宿に戻されるだけということもあってか、雑魚は強めに設定されており、特に終盤の吉備地方以降は更に強くなる。一戦一戦全力で戦う必要がある代わりにフィールドを歩いているだけで徐々に体力、技が回復し、段が上がると全回復する。
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本作のボスキャラは、体力と守備力に定評がありほとんどが長期戦。敵の体力とこっちの技力を見て、ペース配分を考えないとあっさりとジリ貧負けになる。
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特に名無しの十八番は体力が4000と桁外れに高く(その前に戦う根の将軍(その地域を支配する大ボス)はまぐり姫の3倍強!)、しかも体力1200以下になると使用する『守りを捨てて…』では下手したら一発死級の強烈なダメージを出すという、中盤最大の壁ボスになっている。
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しかし奥義と術をうまく駆使することで戦闘を有利に運ぶことができ、このあたりのバランスが絶妙。例として、
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凍竜等で敵を行動不能にさせた後、静乱斬(一騎打ちを行ない自分の攻撃、相手の攻撃を2~5回繰り返す技)で一方的に必中の連続攻撃を叩き込み
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城壁(物理系攻撃を無効化)もしくは結界(術系攻撃を無効化)をかけた極楽でかばうを実行して味方全体を守る
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赤影(術使用者の分身が1~3体出現)で出現させた影に体力消費技を使わせたり、防御面で的として敵の攻撃を分散させたり等
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各キャラが持つ奥義は大半は無制限に使用可能だが、ほとんどがメリット・デメリットがはっきりしておりバランスブレイカーになっていない。与えるダメージは通常の4倍だが使用者の体力を半減させる、攻撃力・守備力・素早さを大幅に上昇させる代わりに体力がどんどん減少する、等々。そのため使いどころを見極める必要もあるが、戦闘中は常に敵のHPが表示されている(ラスボスですら!)ので、慣れてくれば相手と自分の状態から最適な行動を導き出すことができる。
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これらの要素により、雑魚・ボス共に術・奥義をうまく使用すれば低段状態でも勝てる、経験値稼ぎをして段を上げれば誰でも簡単に勝てるという絶妙のバランスに仕上がっている。
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おまけに戦闘のテンポも良く、オプションでメッセージ速度を上げればさらに速くなる。ノーロードと合わせて段(レベル)上げもさほど苦にならない快適なプレイが楽しめる。
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乗り物が豊富である。船(たらい舟や落書きが実体化した舟、というものもある)やトロッコなどといった普通なものから空飛ぶ岩や巨大蜘蛛が牽く馬(?)車といったファンタジー的な乗り物、更には初期は戦車だが変形して飛行機や潜水艇にもなる万能移動機械、大仏ロボ(奈良の大仏の正体である)、空飛ぶ巨大要塞などなど挙げていくとキリがなく非常にバリエーションに富んでいる
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乗り物の登場シーンも印象的なものが多く、落書きが実体化する場面や、光とともに登場し、格納庫を吹っ飛ばして移動を開始する場面などがムービーで表現されている。搭乗中もモノによっては豪快なアクションをやらかしてくれる。主砲で砲撃できたり、問答無用で敵を踏み潰したり、望むところへ一瞬でワープしたり……
桝田省治節あふれる猥雑で生々しいイベントの数々
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ゲームデザインを行った桝田省治自身が本ゲームのキーワードを「もっと下世話に、もっと猥雑に。」であると語っている。そのキーワードの通り、桝田省治節ともいうべきどこかエロティックなイベントの数々がこのゲーム独特の雰囲気を醸し出している。
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このゲームの目的は根の一族が各地に出現させた暗黒ランという巨大な植物を全滅させること。暗黒ランの目の前に行くと卍丸が暗黒ランに断ち切るビジュアルシーン(1本目と7本目の時のみ)が入るのだが、このとき卍丸は聖剣を暗黒ランに突き刺す(斬るのではなく突き刺す)。ちなみに蘭という花はその形状から女性器に例えられることもある。つまりこのシーンの意味するところは・・・。ちなみに作者自ら公式攻略本でこれを語っている。
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余談だが、 同社のボンバーマン'93では暗黒ランならぬ残酷ランがボスとして登場する。
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菊五郎という歌舞伎者のボスキャラがいて、和歌山城を乗っ取っているのだが、城内に謎の予定表が貼り出されていて、月:三 火:六 水:二 木:八 金:四、七 土:九 日: と書かれている。同じく和歌山城には女性が何人も捕まっており、「夜がこわい! このままでは体がこわれてしまう」「やつはケダモノよ………」という情報が聞ける。ちなみに女性たちは菊五郎に番号で呼ばれている。城中には男性もおり、「私はもう世の中に怖いモノなんか一つもありませんよ」とつぶやく(女性からは月曜日に割り振られている三番は女性たちの中にはいない、誰だろう?という情報が聞ける。ということは他の女性たちと同じく酷い目にあっている)。
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所々で敵側が侵略地に起こす容赦ない仕打ち。
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桝田省治はこのゲーム製作にあたり、犯罪者や精神異常者に関する本を読み漁ったといわれている。それが「根の一族」の容赦ない仕打ちなどにも繋がっている。
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そんな「根の一族」の将軍たち(いわゆる中ボス)は、いずれも忘れられない強烈なキャラクターばかり。コミカルな者もいれば、プレイヤーの心胆を凍らせる、恐ろしい物語を展開してくれる者もいる。
総評
要所に挟まれるムービーイベントや、表情豊かなCGとフルボイスで描かれる魅力的なキャラクターなど、現在のRPGでは当たり前とされる要素はほとんど、ZIRIAが先駆である。
本作では、ロードのストレスを最小限に抑えた上で、前作を正統進化させたボリュームと派手派手しさと胸に響くシナリオやキャラクターたち、そして当時のRPGではレベル上げ重視のスタイルに対し、レベル上げをしなくてもやり方しだいで低レベルでもクリア可能なゲーム性を実現した。これにより本作の提示したスタイルは高評価になった。
後の展開
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この後、天外魔境は風雲カブキ伝、ZERO、第四の黙示録と続く。
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その内のどれも正規ナンバリングタイトルでなく外伝扱いであった。今作のラスボス・EDの性質上直接の続きは作りにくかったのかもしれない。正規ナンバリングタイトルであるIIIはPCエンジン末期に雑誌で取りざたされており、現在開発中! となっていた。
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が、PCEがダメになってしまったのでPC-FXにて開発中! と情報が変わり、PC-FXも振るわなかったためIIIはお蔵入りしてしまう事になった。
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13年を経た2005年、待望のIIIが出ると言う事で大いに期待を寄せられたが、登場した『天外魔境III NAMIDA』はキャラクターデザインが当時公開していた物から大幅に変更され、シリーズを通して手がけてきた桝田省治が関わっておらず、ファンの期待にそぐわぬとんでもない怪物であった。ちなみにI,IIとの関連は特にない。
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ちなみにIII用のシナリオ原案を元に桝田省治自らが執筆した小説「ハルカ 天空の邪馬台国」「ハルカ 炎天の邪馬台国」がある。
移植版
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PS2、GC、DS、PSPに移植/リメイク版がある。
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PS2/GC版はグラフィックの3D化をはじめ、随所に手が加えられたリメイク版。凄まじいまでの低難易度化(段が上がりやすいためクリアまでのプレイ時間も大幅に短縮された)や、頻繁にロード読み込みの入るテンポの悪化、残虐表現をわずかに弱めたなどの変化により、評価は良くない(オリジナルではノーロードだったザコ敵との戦闘前後や町での散策中にも、長めのロードが頻繁に発生する、プレイ総時間は大幅に低下したが)。
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DS版はタッチペンによる弱・中・強攻撃や、2画面に対応した画面表示追加などを加えた移植版で、プレイ感覚はオリジナルに近い(タッチペンを一切使用しない操作も可能)。
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PSPには、オムニバスソフト『天外魔境コレクション』として移植(『ZIRIA』/本作/『風雲カブキ伝』/『カブキ一刀涼談』の4作を収録。2008年7月31日発売、2,940円)。また「PCエンジンアーカイブス」として単体でDL販売もされている。どちらも(一部表現の変更を除き)オリジナルプログラムをエミュレータでそのまま動かした内容。
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CEROレーティングは、PS2/CG/DS版がA(全年齢対象)、PSP版がB(12歳以上対象)。
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今からプレイするのであれば、DS版かPSP版を推奨。
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なおこれらの移植版はいずれも、タイトルが「卍MARU」から「MANJI MARU」に変わっているほか、一部表現がオリジナル版と異なっている。詳しくはWikipediaの「各機種版における違い」を参照(ネタバレなので要注意!)。
余談
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中井貴一主演のTBSのドラマ「運命の逆転 盗まれた企業秘密!」ではあれがDQなみの超人気RPGで、本作がそれを越えるソフトという設定になっている。このドラマには高橋名人もゲスト出演しているが、名人曰く台詞のミスを発見したもののすでに修正不可能な状況になっており、やむなくそのまま放送したとのこと。