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ファイアーエムブレム 封印の剣 - (2013/12/09 (月) 10:04:41) の編集履歴(バックアップ)


ファイアーエムブレム 封印の剣

【ふぁいあーえむぶれむ ふういんのつるぎ】

ジャンル シミュレーションRPG
※)ぼったくり業者に注意!
対応機種 ゲームボーイアドバンス
発売元 任天堂
開発元 インテリジェントシステムズ
発売日 2002年3月29日
定価 4,800円(税別)
分類 良作
ファイアーエムブレムシリーズ関連作品リンク

概要

 SRPGというジャンルの火付け役となった『ファイアーエムブレム』のシリーズ6作目。
FEの産みの親である加賀昭三氏が任天堂から離れた後の作品であるということもあり、シリーズの転換点とも言える作品となった。
今作は初代作のシステムをベースとしながらも、聖戦の「武器の三すくみ」や「支援システム」、
トラキアの「担ぐ」をアレンジした「救出システム」、外伝ステージへの分岐など、過去作の集大成を目指した作りとなった。

評価点

  • 簡単すぎず難しすぎない難易度
    • 前作『トラキア776』に比べればずっと易しくなったため、当初古参ファンからはあまり良い印象を持たれなかったが、発売当時はスマブラ人気のおかげで参入して本作を購入したGC・GBA世代の小中学生のユーザーが多数おり、むしろ程よい難易度調整との批評を受けている。
      • ただし、その中でクリアできない人も少なくなかった事実からか、続編である『烈火の剣』ではチュートリアルを大幅に強化している。
  • クリア後も遊べる要素の充実
    • クリア後に挑戦できる「トライアルマップ」の追加。これまで育てたキャラの活躍場所がクリア後にもできている。
      • 周回プレイを重ねると、トライアルマップ限定ではあるが、本作のボスキャラ達やストーリー上での重要なキャラが味方ユニットとして使えるようになる。これにより初代からあった「あの敵将が使えたら…」という願いが叶えられた。
    • GBAの仕様を最大限に活用した「通信闘技場」の追加。育てたキャラ同士を様々なルール上で対戦させるというものであり、シンプルなルールでありながら本編とは違った意味で中々戦略性がある。
    • 2周目からは難易度が上がった「ハードモード」が選べるようになっている。
      当然ながら敵の能力が凶悪になっており、ガチパワー勝負になっているのだが、一般プレイヤーからは好評であった。
      そのため本作以降も「ハードモード」はずっと受け継がれている。
  • 「支援システム」の追加
    • 「特定のキャラ同士が近くにいると能力アップ」という仕様はシリーズ2作目の『外伝』にて実装されており、その後シリーズを重ねていくにつれ発展していったのだが、本作にてその集大成と言えるシステムが確立された。
    • 支援を組めるユニット同士を隣接させてターンを終えるとポイントが貯まり、それが一定値に達すると会話イベントが行え支援効果が発生するようになる。
      • 支援は同じ国のユニットや同時に登場したユニットで組む事ができる他、まったく接点がないユニット同士で発生する事もある。
      • 支援レベルはABCの三段階で、一つのキャラに最大五つの支援をつけられる。例えば支援Aがついているユニットには、支援Bを一つか支援Cを二つつけられる。
      • 「トラキア」まではキャラの組合せが固定であったが、本作では1人のキャラに対し複数の支援発生枠が存在し、その中からプレイヤー側で支援効果を発生させる組合せを選べるようになった。
      • 一線級のユニットに集中してつけて大幅に強化するもよし、効率度外視でキャラ設定に準じて付けるもよしと、選択の幅がこれまでの作品よりも大幅に広がった。
      • 支援発生時の会話イベントはバリエーション豊かで見ていて楽しい。空気になりがちだった脇役キャラ達の個性が増し、見せ場ができたという点でも非常に好評であった。
    • また、主人公含む一部のキャラは、支援キャラの組み合わせに応じてエンディング後の後日談も変化する。
  • 従来の炎雷風魔法の系統は全て「理」魔法の1種類に統一された。
    • 特に今作は従来は実質敵専用魔法であった「遠距離魔法」の要求武器レベルが下がり、性能的にも味方側が利用しても十分実用レベルに改良された。更には光魔法にも遠距離魔法が登場した。
    • 逆に前作では猛威をふるっていた状態異常杖は、射程に制限が入る、命中率の低下、状態異常が自然回復するなどで弱体化された。
  • 戦闘アニメーションのクオリティの高さ
    • 中割カット数こそ少ないがメリハリが効いており、スピーディかつダイナミックに動くため、今なおファンが多い。

問題点

今作はGBA作品の1作目であり、そのためであろうか、いろいろと荒削りな部分も存在する。

ゲームバランスの練り込みが甘い

  • 『聖戦の系譜』より続く回避ゲー。むしろ支援ゲー。
    • 実は本作以降、乱数の変化と命中の値はかみ合っておらず、「実効命中率」という隠し仕様によって、ゲーム中表示されている命中率が50%以上なら表示されている命中率よりも当たりやすくなり、逆に50%以下は当たりにくくなる補正をなされている。これはどちらかといえばプレイヤー側に有利な補正である。
      • GBA作品はマップの大きさの割に敵が多めなので、無かったら無かったで不利である。勿論、これがあっても当たる時は当たるのだが。
    • 問題なのは武器全体の命中率がシリーズ全体を見ても最低クラスに入ること。
      • 特に、敵の方はステータスが高くない割には「はがねシリーズ」「てやり・ておの」といった更に低命中な武器*1を好んで使う傾向にあり、プレイヤーは各種要素を活用したり、下記のユニットを活用すれば敵の命中率を50%以下に持ち込みやすいため、攻撃を回避して敵を次々と薙ぎ倒す「地雷キャラ」が誕生しやすい。
      • その結果、回避率に高い影響を与える速さなどの能力値が高い剣士系とかのユニットが優遇、その逆のアーマー系とかのユニットが冷遇と言う回避率高い者勝ちのバランスが批判されやすい。
    • また、各種確率や一部ステータスは支援を組めば上げる事が可能で、支援はターンさえかければ組む事が可能であるため*2、上げてさえしまえば難易度が大幅に下がる。
      • 例として、1章から使えるロイとアレンを支援A、ロイにウォルトかマーカスを支援Bにすれば、ロイの回避率が25%、アレンの回避率が15%、ウォルトかマーカスの回避率が10%上がり、他の確立やステータスもアップする。更にアレンにウォルトやマーカスの支援をつければよりアップする。
      • 唯一これの弱点を挙げるならば、支援効果は周囲三マスに支援を組んだユニットがいないと発動しないため、騎馬や飛行ユニットに歩行ユニットを組ませるのは救出が必須である。
      • 回避ゲー支援ゲーで難易度が低めなのはGBA三作が抱える問題となってしまい、ずっと後の『蒼炎の軌跡』になるまで何の対策も調整も行われなかった。*3
  • 昔からの「初見殺し」の要素がある
    • 初代から本作まで、敵軍の増援ユニットが出現と同時に行動する。
      そのため「増援で寝返りキャラが出現し、そのユニットをうっかり反撃で殺してしまう」「友軍NPCが同時に出現した敵増援に1ターンで殺される(=そのNPCを守る時間すら与えられない)」という事態が発生する。
      • ハードモードどころかノーマルモードでも、7章に登場するNPCユニットのトレックが登場と同時に敵に突っ込んで死亡すると言う笑えない事態が多発した。もし生きていても加入や救出が難しい。
      • 自軍の近くに出現した場合初見では対策がほとんど取れないと言う問題もあってか、『烈火の剣』以降(の通常難易度)では増援が出現と同時に行動することは基本的に無くなった。
    • 本作で真のエンディングを見るためには、全ての外伝マップをクリアしたうえで「神将器*4」を全て集める必要がある。
      • 神将器を全て集められなかった場合、また持っていたキャラが途中で死亡or使いすぎてロストしていた場合(使い過ぎた武器を直せるアイテムはあるが)、特定のステージ以降に進むことはできなくなる。
      • 外伝マップへ行くためには条件を満たす必要があるのだが、特定ユニットの生存が条件だったり、ターン制限などで難しい章もあるし、外伝マップ自体の難易度も高いことが多い。
      • 途中エンドの場合もエンディングは用意されているのだが、どうにも内容はスッキリしないし、「条件を満たさないと真のラスボスとエンディングは見られない」という仕様は新規ユーザーには辛いものがあった。
      • さすがにこれはマズイと思われたか、『烈火の剣』以降の作品では一応普通のプレイで終章までいけるようになっている。
    • 一部の寝返りキャラに「仲間にするのがめんどくさい」「誰で説得していいかわかりにくい」というキャラが存在する。
      • 前者は、何度も登場するので登場するたびに話しかければ三回目で仲間になる、ガンガン攻撃してくる敵ユニットを殺さずにマップをクリアするなど、かなり気力が必要。
      • 後者は各章の会話イベントやそのキャラの出自(今作ではステータス画面で確認できる)などのヒントも用意されており、大半のキャラはほとんどわかるようになってはいる。…これは今までのFEにも同じことが言えるのだが。
  • ハードブースト
    • 難易度ハードでは「増援で登場する寝返りキャラ」に対し能力上昇補正がかかり、章が進むほど普通に仲間になるキャラよりも頭一つ抜けた強さになる。これがいわゆる「ハードブースト」と呼ばれる現象である。
      • これにより難易度ハードではキャラの格差が更に広がってしまい、「お気に入りのキャラを育てて攻略する」という本作の王道的な楽しみ方を否定してしまっている。
      • とはいえハードモードの敵キャラの能力値はブースト対象者と匹敵する程の高さなので、*5一種の救済措置であるとの見方もある。
      • ちなみに、イベントで敵ユニットとして扱われるが、敵として戦闘する前にイベントで仲間になるミレディにも何故かハードブースト対象である。これのせいでただでさえ強力なドラゴンナイトが更に強力になり、結果としてペガサスナイトの存在を奪ってしまった。
    • なお開発スタッフはこのことを「設定ミス」と言っているため仕様ではない。「最初から出現している寝返りキャラ」にハードブーストが適用されないのもこれを裏付けている。
    • しかし、救済処置としては優秀だったのか、『烈火の剣』でも引き続き採用となった。
      • あくまで設定ミスであった今作のように「最初から出現している寝返りキャラ」に補正がかからないということも無い(そのかわり補正値は控えめになっている)。
  • クラスのバランス
    • ソードマスターと遊牧騎兵などが異様に強い。
      • ソードマスターは「必殺発生率に常に+30%のボーナスがかかる」という鬼仕様。しかも仲間になる3名のうち2名はハードブースト対象、残り1名も最終盤の救済キャラ故に凄まじい元値を持つ(こちらにはブーストがかからず一回しか成長させられない)。
      • バーサーカーにも前述の必殺率補正とハードブースト(2名)がかかり、「高い山」(回避+40)という強力な地形効果が生かせるため強力な性能を持っていた。ただし命中率も素の回避率も高くない上に命中率が悪い斧しか使えないため、運用はやや考えないと難しい。
      • 遊牧騎兵も弓と剣が使える・一部ステータスの限界値はソードマスター並・進入可能地形と移動コストは優秀と、従来のクラスであるスナイパーが霞む性能となっている。
      • ドラゴンマスターも移動が飛行である上、攻撃と守備のステータスが非常に高い。ドラゴンや飛行であるため、特効*6が気になるものの、ドラゴン特効は通信対戦以外で縁がないし、デルフィの守りを持たせれば飛行特効もなくなる高性能ユニット。
      • 攻略本のユニット評価では、勇者がソードマスターの完全劣化扱い、飛行ユニットもドラゴンマスターになれるミレディのみで十分とまで言われている。
      • しかしながら一概に他のユニットは弱いというものでもなく、上記のユニットが強すぎるだけで割を食っているだけである。
    • 下級職の光魔法使いがいないので光魔法が育て辛い。
      • 光魔法は上級職の司祭限定で、司祭になれるユニットは二人いるし、どうにもならなかった場合は終盤で司祭が加入する。ただしその司祭はレベルが最大に達していながら光魔法のレベルが最大でないため、最強の光魔法を使うには戦って武器レベルを上げなければならない。
      • また、前情報なしでプレイすると魔力のステータスこそは低いものの、回避と移動に優れるトルバトールというユニットが序盤で加入するため、そちらを育ててしまいやすい。
      • 光魔法については次回作の『烈火の剣』で専門の下級職である「修道士」が登場、『聖魔の光石』では賢者とヴァルキュリアが光魔法を使用できるようになった。
  • その他
    • 主人公のロイは能力値、成長率自体は平均的なのだが、クラスチェンジが遅すぎるため長いこと足を引っ張る。
      • しかしクラスチェンジと同時に手に入る専用武器「封印の剣」は使用回数が20回しかないものの破格の性能を誇る。
      • 終章のラスボスはロイがある程度育っていればラスボスに特効のある封印の剣の2回攻撃によるたった一度の戦闘で沈むこともザラであり、シリーズ最弱ボスと言われる理由にもなっている。
      • 真のラスボスでない方が弱点もなく、間接攻撃も可能な威力の高い武器も持ち、特殊効果のある玉座にいるため、そちらの方が強い。
    • 終盤のある章で能力強化アイテムが秘密の店で購入できるため、それ以降はバランスが崩壊してしまう。
      • これ自体は最初期からあったのだが、問題は通信闘技場。カンストキャラのぶつかり合いになって面白みの欠ける試合になってしまう。ただ、裏を返せば廃人の様に能力値の伸びに拘る必要が無いというメリットはある。
    • 闇魔法の攻撃エフェクトが無駄に長い。これについては次回作で闇魔法のみモーションが高速化されある程度改善された。

総評

メインスタッフの加賀昭三が途中で抜けた事もあり、ゲームデザイン自体は過去作の範疇を抜け出さない保守的な作風となった。
しかしシリーズ最高難易度を誇る前作『トラキア776』を踏まえ、本作は高めながらもライト層でも馴染みやすい難易度のバランスに仕上がっている。
また、大好評を博した支援会話システムや難易度設定搭載など、既存の枠組みから脱却しようとする意欲的な面も見られる。
三作に渡るGBAシリーズの土壌を作った点では、一つの岐路といえる作品となった。
SRPGというジャンルの火付け役でありながらハード末期にひっそりと商品展開されるなど、比較的機会に恵まれないFEシリーズであったが、
GBAというハードの時流に乗って発売された事や、主人公のロイが本作の発売に先んじてスマブラに出演した事、事前に漫画版とのコラボレーション展開が用意されるなど、シリーズの中でもとりわけ売り込みに力の入った作品であると言える。

余談

  • 旧タイトルは『ファイアーエムブレム 暗闇の巫女』であった。
    • これが没作画像である。ちなみにこの少女の台詞は次回作で使われている。
  • 発売と同時期に漫画『ファイアーエムブレム 覇者の剣』が連載を開始。ゲーム版をベースとしながらもオリキャラ登場や独自の展開*7を進めた。
    • 漫画とのコラボの一環として、「アルの剣」「ガントの槍」「ティーナの杖」がゲーム中に登場する。これらの人名は漫画の主役の3人組である。性能的には大したことは無く、序盤戦のお助けアイテムといったところ。
    • この漫画自体はなかなか好評であったのだが、意外なことにこれ以降FEシリーズの漫画化は無くなった。
      • ちなみに作者の山田孝太郎氏は連載を経て凄まじく画力が向上しており、初期と終盤で「これ書いたの本当に同一人物か!?」と思えるほど絵のタッチが変わっている。