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ウィザードリィ外伝III ~闇の聖典~ - (2012/12/07 (金) 21:30:31) の編集履歴(バックアップ)


ウィザードリィ外伝III ~闇の聖典~

【うぃざーどりぃがいでんすりー やみのせいてん】

ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 ゲームボーイ
発売・開発元 アスキー
発売日 1993年9月25日
Wizardryシリーズリンク

概要

アスキー謹製ウィザードリィ外伝シリーズの第3弾。
BCF以降の新規追加要素を、#5以前のシステムに上手く落としこんでいる。

ストーリー

とある王国の城下に、アガン・ウコーツという青年がいた。
才気にあふれた彼は将来を嘱望されていたが、ある日恋人のダリアが何者かによって殺害されてしまう。
蘇生の魔法でも彼女を復活させることができないと知ったアガンは絶望したが、
高位魔族の力を借りれば彼女を復活させられるかもしれないことを知り、苦渋の選択の末
禁断の技「魔族召喚」に手を染めた。
召喚の儀式は成功し、次元を超えて次々と魔族が押し寄せてきたが、彼の望む高位魔族は現れなかった。
王国は現れた魔族により地獄絵図と化し、アガンは負の力によって何処かへと飛ばされた。

それから十数年の時が経った。
異国に飛ばされたアガンは、そこで王となって君臨していた。才覚によって国を統一したアガンは
近隣諸国に手を伸ばし始めたが、そんな中彼は「莫大な財宝の眠る呪われた城」の噂を耳にする。
アガンは兵をまとめて呪われた城を目指したが、そこはかつてアガンによる魔族召喚によって
滅んだ王国の城であった。魔物の跳梁跋扈する様を見たアガンは、この地から魔族を一掃し、
自らが犯した罪を償うことを決意する。
アガンはこの地に拠点となる城砦都市を建設し、その都市にかつての恋人の名「ダリア」と名付けた。

城砦都市ダリアを拠点に魔族との戦いを続けていたアガンであったが、ある日旅の商人から贈られた
黄金の仮面を身につけたところ態度が豹変。一言も発せず部屋に閉じこもるばかりとなってしまった。
以降、「仮面の呪いを解き、アガン王を正気に戻した者には褒章が与えられる」というお触れが発せられ、
町には褒章目当ての冒険者が流れ込むようになった…。

特徴

  • ROM容量の増加に伴う、大幅なボリュームアップ。
    • 従来シリーズでは1つの迷宮を探索するのみであったが、今作は洞窟に限らず森、墓地、教会、山脈など、フィールドをすべて擬似3D形式で表現するという、本家#6以降に準拠したマップ構成となった。
    • それまでのウィザードリィ外伝をベースに、BCF以降追加された種族や職業、呪文を取り入れた。ただし容量不足だったのか、BCF以降の種族&職業のうち、フェルパー、サイオニック、モンクが漏れている。これらは後作の外伝IVまでおあずけとなった。
      • アルケミスト呪文(外伝IVのサイオニック呪文も)はオリジナルでは英語であったが、外伝シリーズでは#5までの法則を使って命名され直されている。これらはエンパイアやエクスシリーズでも採用されている。
    • 死体回収屋の登場。一人につき10000G必要だが、迷宮で死んでしまった冒険者を探し出し、寺院まで送ってくれる。
  • 少なくともクリアまでのバランスは悪くない。多くの追加要素こそあるがこれによるバランスの破綻というものはなく、よほど極端な編成をしない限りは戦闘バランスで詰まる、ということは少ない。一部謎解きや凶悪なザコモンスター(「ブロブアイ」「ジャイアントクラブ」)に泣かされることはあるかもしれないが…。
    • しかし、クリア後に侵入可能な隠しダンジョン「ドラゴンの洞窟」が登場。ここからは一転して、敵の能力が凄まじいインフレを起こす。
      • 「ラスボスを上回る強さの敵が」「複数匹のグループを組んで」地下1階から出現する。全3階層だが、階層を降りる度に前の階の敵が赤子に見えるほどの敵が出現するインフレ具合。マップ構成もかなり極悪。
  • 外伝III以降、裏ボスとして君臨し続ける「ダイアモンド○○」が初登場。
    • 由来は本家ウィザードリィ#2(FC版は#3)のサブタイトル「ダイヤモンドの騎士」で、以後アスキー製外伝シリーズの裏ボスはダイアモンドキング→ダイアモンドナイト→ダイアモンドドレイクと進化を遂げていくこととなる。
    • 「ダイアモンドキング」は最高のダメージ呪文の威力が最大150のウィズ世界においておよそ5000~6000のHPを持つ(まずありえない確率だが理論的な最大値としては1万を越える)、当時としては圧倒的なHPを持つ敵であった。ただし攻撃力が同階層の他のモンスターに比べて低く(とは言えクリアレベル程度ならオーバーキル)、首刎ねも持っていないこともあって、ドラゴンの洞窟最下層で互角以上に渡り合えるレベルならば負けることはまずない。LVを大幅に上げる、敵を瀕死にする呪文「ラバディ」が通用するなど対処がしやすいぶん、後のシリーズ(特に『ディンギル』)のインフレぶりよりはマシである。
    • 以後、アスキー製のに限らず国産ウィズ、およびそれに準ずる作品において「クリア後の隠しダンジョン=インフレ」が定番となる。外伝I、IIでもこの傾向は見受けられたが、外伝III以降その傾向が加速するようになった。
  • おまけ要素として、他プレイヤーとの対戦が行える「闘技場」が追加された。
    • 制限時間内に迷宮をクリアする「迷宮」および他のプレイヤーの冒険者と戦える「対決」モードが楽しめる。
    • 冒険者同士の対戦要素は今作が初。だが単純にプレイ時間が強さに直結するシステムであることもあってか、以降のシリーズでは搭載されていない。
  • 「アガン・ウコーツ」という人物を中心にしたシナリオも印象的。ただし初見者が高確率でバッドエンド(=裏ダンジョンへの移動が困難になる)になる最終部分は不評。また、グッドエンディングは普通に見れば悪くないのだが、後述のプロデューサーへの批判のせいか一部には不評も。
    • そのため一部のファンからは「バッドエンドこそ真のエンディング」と揶揄され、中には意図的にバッドエンド(アガン埋葬エンド)の道を選ぶ者も(一応裏技で裏ダンジョンへは行けるため)。

短所

  • 全体的に処理スピードが遅くなり、ゲームテンポが悪化。特に戦闘開始時と逃走時は1秒ほどの「間」が毎回発生する。慣れれば気にならない程度の遅延ではあるが…。
  • 外伝I・II同様、相変わらず敵が強めでリセットプレイ必須。加えて本作には各ダンジョンに明らかに能力違いの地雷モンスターが登場している。
    • 序盤のフライングティースや中盤のジャイアントクラブ・終盤のブロブなど。特にジャイアントクラブは守備性能が異様に高く一度に大量に登場する上、攻撃手段が「即死攻撃もしくは仲間呼び」の2択しかないため、裏ダンジョンを除くと事実上の最強モンスターであり、そのあまりに場違いな登場はwizファンの語り草となっている。
  • 今作登場の種族の一つドラコンはなぜか逃走できない。
    • この種族のみブレス攻撃が可能と言う特徴があり、おそらくこのコマンドの追加のために逃走が削られてしまった為だと思われる。
  • 新職業の使い勝手の差が激しい。前項の通り破綻してはいないのだがやはり今作も職業の差がある。
    • BCF(#6)にて「ロードの存在価値を奪う」と問題視されていたバルキリーの強さは相変わらず。作りやすいうえにもともと早かった成長速度は僧侶よりも早くなり、専用装備も充実しているので使い勝手がより一層増している。ただし、本作ではロードも十分強い。
    • レインジャーは使いづらいため「劣化版忍者」と呼ばれている。初心者やレインジャーに思い入れの無いプレイヤーは存在を無視したほうが良い。
    • バードは楽器(バードのみが使えるマジックアイテム、使用回数は無限)を演奏でき、盗賊の技術と魔法使いの呪文を使え、成長も早い。しかし楽器がイマイチなものが多く、盗賊の技量も未熟なので後半は息切れする。
  • 一部のダンジョンに存在する鍵のかかった扉の存在
    • 今作の盗賊技術(宝箱と扉の開錠、シークレットドアの感知、隠れる、奇襲の成功率)の技量は盗賊>忍者>>レインジャー、バードとなっており、必要レベルも技量に準じて必要になってくる。
    • しかし、適正レベルでその場所にたどり着いた時には、施錠された扉は盗賊でないとほとんど開けられない。もし他の職業で扉を開けようとするなら、さらにレベル上げを行う必要が生じるため、ゲームのテンポが悪くなってしまう。これにより「盗賊技術を持った職業が増えたが、結局効率面を考えると盗賊を使う」と言った展開になりがち。
  • ドラゴンの洞窟以降のゲームバランスは決していいとは言えない。
    • エンディング後すぐにドラゴンの洞窟に乗り込むと、たいていは返り討ちにあう。
      • ラストダンジョンでもそこそこの経験値が入手可能で、そこで経験を積んでから訪れれば互角に渡り合えるようにはなるのだが、かなりダレやすい。
    • ドラゴンの洞窟では攻撃魔法がほとんど役に立たない。
      • ドラゴンの洞窟に出現する雑魚敵はだいたい100~300、トップクラスの敵は数百ものHPを有しており、呪文無効化率もそれなりに高い。一方最強攻撃魔法「ティルトウェイト」で与えられるダメージは大体100前後で、それも呪文が無効化されずに通ったら、の話。攻撃呪文は前述のラバディや即死呪文以外ほとんど役に立たない(即死呪文もレベル100程度にならないとイマイチ効いてくれない)。

「アガン・ウコーツ(=徳永剛氏)」への賛否

このゲームのキーパーソン「アガン・ウコーツ」は、このゲームのプロデューサー・シナリオ担当の徳永剛氏の苗字をアナグラムしたものが由来(「Tokunaga」→「Agan ukot」)。これは本家1作目から存在する、ウィザードリィ伝統の言葉遊びに准えたものであり、「アガン=徳永氏」を意味する暗喩ととらえられなくもない。しかし、一部のプレイヤーからはアガン(徳永氏)は批判の対象となっている。以下にその批判の一部を挙げる。

  • 批判1:ストーリー上でウィザードリィでは御馴染みの舞台「リルガミン」を壊滅させた。
    • 外伝3の段階でははっきりと壊滅させた都市の名前は示されていない。だが曖昧な表現ではあるものの、この時点でリルガミンに関わるアイテム、キャラなどが配置されている。そして外伝IVの展開と照らし合わせると、この都市がリルガミンであることが明白となる。
    • 特に腐った杖やドラゴンゾンビ、魔法の魔除け等(どれも旧作のシナリオの鍵を握る存在)の扱いは今までのシリーズに思い入れのある人には冒涜とさえ思えるだろう。
    • 今作のシナリオ面で批判される最大の原因は滅んだ故郷をリルガミンにする必要性が見つからない事である。城下町も失った恋人の名前でリルガミンと関連性がないように見えるので、滅んだ故郷も架空の名前にして出しても特に問題は無かった筈。
  • 批判2:シナリオの中核が徳永氏の自己満足ではないか?
    • 若かりし頃のアガンの目的は、死んだ恋人を蘇らせることであった。前述のリルガミン崩壊もその影響である、と描かれており、一部からはウィズの世界観を巻き込んで自分の世界に浸るな、という批判もあった。
      + ただし、シナリオ上でのアガンの扱いはというと…(ネタバレ注意)
      • シナリオ上でアガンは「恋人のダリアがアンデッド化(しかもミイラのような姿)」「冒険者と戦って殺され、その後のシナリオ進行によってはロスト(消滅)してしまう」など散々な目に合う。trueエンドでは「アガンとダリアが再会してハッピー?エンド」となるが、決して手放しで喜べる状況とは言い難い。
  • 批判3:ウィザードリィに過剰なインフレを持ち込んだ。
    • 敵のHPと攻撃ダメージ増加、そして高い呪文無効化率を敵が備えるようになり、事実上攻撃魔法はドラゴンの洞窟では無意味。完全に物理攻撃偏重のバランスとなっており、「Wizardry(魔法)」というタイトルにそぐわない、という声もある。
    • ただし敵のパワーインフレは既に外伝IIの時点で現れており、外伝2の実質的な製作者のベニー松山も「敵の強さが足りなかった」という旨の発言をしている。
  • 批判4:ペーペーの時に(Wiz界では著名な)ベニー松山氏をコキ使い、外伝IIの成功をさも自分の功績のように振る舞った。
    • 詳細は外伝IIの「余談」参照。
  • とは言え、本来外伝IIで終わってしまうかもしれなかった国産ウィザードリィに新たな風を吹き込み、現在に至るまで日本においてウィザードリィという作品を存続させるきっかけを作った功績は評価すべきであろう。
  • 外伝III以後、アスキー製の外伝シリーズでは、アガンが何らかの形でゲスト出演している。
    • 外伝IVのスタッフロールでは徳永の部分だけが「アガン・ウコーツ(阿癌雨香津)」名義となっており、以後徳永はファンからは「アガン先生」、アンチからは「阿癌」「癌」などの俗称で呼ばれている。

総評

シナリオ#5以前とは異なる方向へと進化していった本家シリーズとは違い、この作品は本家を含む色々な要素を取り入れながら#5以前のシステムを伝統として残していく、という和製ウィズの方向性を決定付けた。
外伝Iが和製ウィズの先駆者、外伝IIがそれまでの日本におけるウィザードリィの集大成とするならば、外伝IIIは和製ウィズに新たな血を取り入れた作品と言えるのではないだろうか?

余談、その後に与えた影響

  • ウィザードリィ外伝IV ~胎魔の鼓動~』が後に発売された。ハードをSFCに移したおかげで全体的にボリュームアップされたが、東洋を舞台とした独創的世界観は評価が分かれた。
  • 外伝III以降のゲームバランス(特にインフレ要素)、リルガミンの歴史に対する後付は、他社製のウィザードリィにも少なからず受け継がれている。
  • 本作Wiz外伝IIIは、かつてゲームボーイ用ソフトの中で最もプレミアのついたソフトであった。定価を超えることはザラ、時には2倍近い値がつくことさえあった。この状況は1999年に復刻版が発売されるまで続き、それ以降はそれなりの値段に落ち着いた。