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MOTHER - (2013/03/09 (土) 10:46:52) の編集履歴(バックアップ)


MOTHER

【まざー】

ジャンル ロールプレイングゲーム
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 任天堂
開発元 パックスソフトニカ、エイプ
発売日 1989年7月27日
価格 6,500円
MOTHERシリーズリンク

プロローグ

1900ねんだいの はじめ

アメリカのいなかまちに くろくものようなかげがおち

ひとくみの ふうふが

ゆくえふめいに なりました。

おっとのなは ジョージ。 つまのなは マリア。

2ねんほどして ジョージは いえにもどりましたが

どこにいっていたのか なにをしていたのかについて

だれに はなすこともなく

ふしぎなけんきゅうにぼっとうするようになりました。

つまの マリアのほうは

とうとう かえっては きませんでした。

1988年・アメリカの平和な田舎町「マザーズデイ」で突如起こる不思議な怪事件。
動物は何かに操られるかのように暴れ、墓場から屍が蘇り人を襲い出します。
町はずれに住んでいたとある一家の家でも、物が飛び交い家人に襲いかかる怪現象が起きました。

怪現象に遭遇した一人の少年は、ある決意をします。
手元にあるのは曽祖父の残した日記、地図、ボロボロのバット。それと不思議な力―――「PSI」。
家族を守るため、この不思議な事件の原因を突き止めるために。
少年は、勇気を出して冒険の旅にでました。

忘れないで。
合言葉は勇気と友情、そして愛。


概要

  • 任天堂初のコマンド式RPG・MOTHERシリーズの第1作目。
  • 現代・アメリカの架空の地域を舞台に、1人の少年とその仲間たちが各地で起こる異変の真相を突き止めるため旅立つというジュブナイルストーリー。  
  • ゲームデザインを手掛けたのは、コピーライター・エッセイスト・タレント・作詞家の糸井重里。
  • 糸井重里のシナリオと小粋なセリフ回し、現代風の世界観を表現した斬新で美しいフィールドグラフィック、鈴木慶一(ムーンライダーズ)と田中宏和のコンビが生み出したメロディアスな音楽等は今現在でも非常に評価が高い。
    • あまり知られていないが、キャラクターデザインはイラストレーターの南伸坊。

特徴・評価点

世界観

  • 当時珍しかった、1980年代当時の現代アメリカを舞台としたノスタルジックな世界観と児童文学的なジュブナイル風のシナリオ。
    • 多くのRPGでは、ゲームの舞台は昔であったり近未来であったり独自の異世界設定であることが多い。しかし今作では現代のアメリカがモデルであり、かなり特徴的な世界観を持つ。
    • 武器はフライパンやバット等の日用品、回復アイテムがパンやジュースなどの食料品。
    • アイテムを売っている店はデパート、宿屋はホテル、ステータス異常の治療は病院、セーブはパパとの電話。敵を倒してもお金はもらえず、お金はパパに銀行口座に振り込んでもらって入手する。
      • 主人公を騙してライブチケットを高額で売るダフ屋がいたり、未成年である主人公が飲酒をすると捕まったり、殆どの家には勝手に入れない*1など妙にリアリティのある世界観である。
    • 敵はエイリアンや架空の怪物だけでなく、悪しき侵略者の影響を受けた普通の動物や乱暴な人間等も多く見られる。
      • 敵がロボットや物であれば「倒した」とメッセージで表示されるが、動物や人間の場合は「おとなしくなった」「我に返った」など、一般的なRPGのように殺伐とした雰囲気を漂わせていない点も特徴的。

音楽

  • 音楽を中心に据えたストーリーは非常に評価が高い。音楽がただのBGMに留まらず、物語においても非常に重要な役割を果たす。
    • 各地を転々とする中で、人間以外の様々なものからメロディを教わることができる。8つのメロディを集めると、一つの曲「EIGHT MELODIES」が完成。その後の物語の展開はまさに「MOTHERらしさ」とも言える、独特の切なさや感動を与えるものとなっている。
      • この「EIGHT MELODIES」は、小学校の音楽の教科書に合奏譜としてアレンジされ掲載されたことがある。
  • 一人時フィールド曲「POLLYANNA(I Believe In You)」・パーティ時フィールド曲「Bein' Friends」・雪の街の「SnowMan」・・・魅力的なBGMを挙げていけば枚挙に暇がなく、どれもが現在までもファンに愛され続けている。
  • 本作のサウンド・トラックCDは、本作のBGMを英語の歌詞をつけて収録し、本編のBGMは1つのトラックにまとめており、それがゲームのタイトル画面のBGMからEDまで流れゲーム本編での足取りを回想するような珍しい仕様になっている*2
    • プレミアがついて入手が困難だったが、2004年に再販された。

キャラクター

  • 他のRPGと比べると、脇役や敵キャラクターの個性が際立っている。
    • パワーアップやパワーダウンのしかた、通常攻撃に至るまで各キャラごとにテキストの書き分けがされており戦闘にリアリティを持たせている。
    • ゲーム上何の意味も無い行動やむしろ損な行動をするキャラクター、ギャグ臭いキャラクターもおりユーモアに溢れている。
    • 一般の敵キャラでもBGMが3種類ありそれぞれの雰囲気に合ったBGMが流れる。これだけでも当時は珍しい仕様だった。
  • その他イベントキャラやモブキャラまで、糸井氏のセリフ回しのおかげで単なる「街の住民A」では済まないほどいきいきと動いている。
+ 主要キャラクター紹介

括弧内はデフォルト名。

  • ぼく(ニンテン*3)
    • 主人公。ある日突然起こった怪事件を解決する為に家を飛び出した、野球好きの少年。常に野球帽をかぶっており、武器もバットを使用する。
    • 不思議な力「PSI(サイ)」を使えるが、最初はテレパシーしか使えない。戦闘をこなす事によって、主に回復・補助系のPSIを覚えていく。
    • 軽い喘息持ちであり、車系の敵キャラから排気ガス攻撃を受けると喘息スプレーを使うまで行動不能になってしまう。
  • おんなのこ(アナ)
    • 雪の町「スノーマン」にあるアイテムを持っていく事で仲間になる(仲間にしないでもクリア可能)。武器は主にフライパンを使用。
    • 体力と攻撃力が低いが、戦闘をこなす事でぼくには覚えられない強力な攻撃PSIをどんどん覚えていく。
    • 終盤にある山小屋のイベントは、音楽も相まってこのゲーム屈指の名シーンの一つ。
  • おともだち(ロイド)
    • 大都会「サンクスギビング」の学校で仲間にできる。メガネをかけた、いじめられっ子の気弱な天才。武器は主に銃を使用。
    • ステイタスが基本的にイマイチだが、兵器系の攻撃アイテムは彼にしか扱えない。また攻略ポイントに彼が必須な点が2つ存在する。
    • 後述の通り戦闘で活躍できる場面は少ないが、後半の彼のイベントは心を熱くしてくれる。
  • もうひとりのおともだち(テディ)
    • 腐敗都市「バレンタイン」に屯する不良グループ「ブラックブラッド団(通称ブラブラ団)」の年齢不詳のリーダー。日系人疑惑がある。武器は主に刃物を使用。
    • 彼を仲間にしなくてもクリア自体はできるが、後半のイベントが丸々カットされる形となる。
    • ぼく以上の攻撃力とスピードで、直接攻撃しかできないものの戦闘では頼りになる。
  • ピッピ
    • 序盤の少しの間だけ仲間になる、ぼくのご近所の女の子。実はステータスの成長率が最強に設定してある。
  • ぼくの家族
    • ママと双子の妹・ミニーとミミーがマイホームに、パパがどこか遠くにおり電話を通じて会話できる。
    • 家に帰ればママが「好きな食べ物(プレイヤー入力)」で回復させてくれ、ミニーが不要な道具を預かってくれる。
  • クイーンマリー
    • 世界のどこかに入口があるという不思議な国「マジカント」の女王。大切な「歌」を忘れてしまい、苦しんでいる。

システム

  • 他にも、当時としては珍しい仕様が多く見られる。
    • 攻撃魔法を敵に使用した際の耐性は、当時の他RPGの殆どが「一定ダメージ」「確率で(しばしば100%)無効化」という2種類だけの単純な仕様が多かったが、本作では当時としては採用率の少なかった「半減」の概念も採用されている。ただし、本作では味方側で攻撃系PKを習得するのは登場の遅い「おんなのこ」だけとなる。
    • ゲームを進めていくとプレイヤーの名前を聞かれる。
      • このとき入力した名前がスタッフロールの最後に使われる。プレイしているうちに名前を入力したことを忘れ、スタッフロールに急に自分の名前が出てきて驚くユーザーも少なくない。プレイヤーの存在を意識した演出というのは、当時のゲームとしてはなかなか凝ったギミックだともいえる。
      • 続編の『2』や『3』では、より効果的な演出としてこのギミックが使用されている。
    • フィールドと町がシームレス(境目がない)になっていて、世界の広がりを感じられる作りになっている。
      • ドラクエのように街の内外で縮尺が違うのではなく街も含めたフィールド全体が広大な一枚絵になっている。
    • 視点は斜投影図*4で描かれているので立体感があり、これにあわせてプレイヤーは斜め歩きができる。もっとも斜め歩きはとあるクソゲーが3年ほど先に導入していたが…。とはいえ、二大RPGであるFFやDQですら斜め歩きはプレイステーションからとなっているので、先進的な試みともいえる。
      • FFではスーパーファミコン時代、Vでイベント時のみ斜め歩きが導入されたが、それでも先進的と話題になったほどである。
    • 他の拠点に文字通りテレポートする「テレポーテーション」は一定距離助走をつけて離陸するというもので、助走中に物にぶつかると自爆して失敗するというアクション要素を持っている*5
    • 長時間続けて遊んでいるとお父さんから急遽電話がかかり休むように注意される。当時気づく人は多くなかったが、エミュレータが普及し正規のセーブ手法を使わずステートセーブで済ませて遊ぶ人が増えたことから近年判明した。

問題点

  • プレイヤーが迷子になったり、進行に詰まってしまうことが多い。マップが広大な上、次にどこへ行って何をすればいいという明確な順序や、そのヒントがほとんど存在しないため*6。逆に言えばかなり自由である。
    • このような手探りでゲームを進める仕様は、賛否両論になりやすい。
    • 主人公を足止めする関所となるポイントも少ないので正式(?)な順序を無視して攻略することもできる。
      • ちなみに糸井氏は「時間をかけてゆっくり楽しんで欲しい」との旨をパッケージ裏でコメントしている。
  • 一部のパラメータ強化アイテム(ファイトカプセルやスピードカプセル等)はあまりメリットが無い
    • レベルアップ時にファイト上昇=オフェンス、スピード上昇=ディフェンスで上がるようになっており、強化アイテムで上げるとオフェンスとディフェンスが上がらず、レベルアップだけで大概最大値255になる為。
  • ゲーム中でアイテムの説明がなく、特に装備品はどういう効果なのかさっぱりわからない。
    • 他のゲームには見られない個性的すぎるアイテムばかりなのが拍車をかける。あまり意味の無いお遊びアイテムも少なくない。
    • GBA版では「せつめい」が付いた。しかし癖の強い説明文であり、一部説明として役に立たない物もある。
  • 一歩ごとにエンカウントの判定をしているため、敵との戦闘が非常に多い。
    • MOTHER1+2では一歩ごとに各種乱数を発生しているが、バランス的にはむしろGBA版のほうがエンカウント率は悪化している。
  • マップの広大さの反面、ダッシュができず、操作できる乗り物等の高速移動手段がほぼ無い為、移動が若干面倒。
    • 電車やテレポート等、特定地点への移動手段は用意されている。砂漠にはイベント限定ながら、エンカウント無しで移動できる乗り物もある。
    • テレポートを覚えた後なら走ってから衝突までの間は、一切敵が出ないのでワープする直前に障害物にぶつかりながら移動という荒業もある。
    • GBA版ではダッシュボタンが実装された。
  • 防具を買える施設が「マジカント」にしかない。更に銀行からお金を下ろすための設備もない。
    • このため物語序盤でストーリー上の都合によりマジカントへ行く際、事前にお金を下ろしておかないと防具が購入できない。「めのうつりばり」入手後なら何時でもマジカントにいける様にはなるが、購入しないままストーリーを進めると後々買えなくなってしまうので、防具が無いままラストまで進むこともありうる。
    • GBA版では「おたすけじいさん」というキャラに頼んで、お金を下ろせるように修正されている。
  • ラストダンジョンである「ホーリーローリーマウンテン」に突入すると敵が半端なく強くなる。
    • 通常初めて訪れるタイミングでの平均レベルが20後半~30前半に対し、平均レベル50は無いと心許ないという代物(最終パーティ時)。
    • 作者によるとレベル調整を省いてしまったらしい。PSIやアイテムなどによる救済策や回避策はあるが、初見殺しなところはある。*7
    • さらに一度ホーリーローリーマウンテンに入ると拠点は無料で全回復ができるだけの山小屋しかなく、他の場所からホーリーローリーマウンテンへのテレポートもできない。そのためアイテムを補給しに山を出るともう一度麓から歩いていき入り口のダンジョンを抜けないといけない。
      • GBA版ではホーリーローリーマウンテンへテレポートできるアイテムが追加された。
    • とはいえ適度な救済策があるのでクリアが非情なほど困難というようなゲームバランス崩壊はおこしていない。
      • 一時的に味方になるテディやイブが強いので経験値稼ぎのチャンスになり一種の救済にはなっている。
  • 仲間の一人である「おともだち(ロイド)」の性能が低い。
    • PSIが使えない・スピードが最遅・通常攻撃力も4人中3番目・一人だけ最強武器が市販・・・と明らかに不遇である。
    • 専用攻撃アイテムが複数存在し、一つ一つは中々強力だがほぼ全てがドロップアイテムであり調達しにくい。またアイテム欄が8つしかないのも使いづらさに拍車をかける。
      • GBA版ではこれらを購入できるポイントが増やされており、若干緩和されている。
    • 糸井氏は「MOTHER百科」中で彼を意図的に弱くしたと取れる発言をしている。
  • エンディングのシーンが味気ない。
    + ネタバレ
    • FC版ではラスボスを倒すとそのまま*8スタッフロールが流れてエンディングとなってしまう。
      後述の海外版及びGBA版では主人公たちのその後もビジュアル付きできちんと語られている。
      FC版エンディングの最後のあるギミックがカットされる形になった為、FC版を支持する人も少なくなく賛否両論。

「名作保証。」「エンディングまで泣くんじゃない」の真意

+ 重要なネタバレになるので見たくない方は注意!
  • キャッチコピーの通り、暖かく、そして切なく、悲しい場面が散りばめられている。主人公たちを守る使命をもって生まれ、そして死に行くという彼らの生き様を描いているドラマティックなシーンがあり心を揺るがすような、考えさせられる場面もある。
    • フライングマンの存在。
      • ストーリー通りに進めると主人公は一人でマジカントに迷い込むのだが、上記にある「フライングマン」は一人ぼっちの主人公を支える為に力を貸す。本人は主人公の力になる。そのために生まれてきたという。戦闘時に共闘してくれる上に、ダメージを受けるときは身代わりになってくれる心強い存在なのだが、なぜか彼をアイテムやPSIで回復することはできない。そしていずれモンスターに倒されて力尽きてしまうのだが、その時に立つ墓にあるメッセージが…
        (主人公)の血と肉。勇敢なフライングマン戦士、ここに眠る。」と墓に刻まれており*9、残った兄弟が
        兄は美しく倒れたと聞きます。ハカを立てて手厚くとむらいました。次は私の番です
        と兄弟を死なせたのに関わらず、続いて力を貸してくれる健気な様子に心を打たれたプレイヤーは少なくないだろう。不器用なやり方だとフライングマンの家の脇に5つもの墓標が立ってしまうことになるのだが…。ここまでとなると何も思わない者はいないはず。
      • 異世界の住民という設定なのか、仲間になったフライングマンを連れて元の世界に戻ると彼は消えてしまう。そして彼らの家に行くと消えてしまったフライングマンの分の墓標が立ってしまう。
    • 主人公を守る存在、イヴ。
      • 終盤になると主人公一行は「イヴ」というロボットと出会う。イヴは主人公の曽祖父であるジョージに作られ、イヴもまた主人公を守るという使命を与えられており力を貸す。冒険を進める主人公一行を遥かに上回る威力で敵たちを一網打尽にするのだが、その最中突如現れた敵のロボットに襲われてしまう。敵のロボットはイヴを圧倒するが、イヴもフライングマン同様主人公一行に一つもダメージを与えることもなく身代わりになり、そして敵側のロボットを巻き込み爆発する。これによって壊れたイヴは2度と動くことはなかったが、残されたメロディーだけが流れていた。という切ないシーンがある。その後驚くべき急展開を迎えることになり、おそらく作中最大の見せ場になる場面になるのだが、ここでは明かせられない。実際にプレイして見て感じていただきたい。
    • 他にも、3人目の仲間(おともだち)がいじめられっこでごみ箱に隠れて人間不信に陥りそうになる場面。住民の発言から4人目の仲間(もうひとりのともだち)の両親がホーリーローリーマウンテンの化け物に殺されてしまったことからグレてしまったという設定。親が一人もいなくなり子供だけとなってしまった町に不安を抱えながら町を一生懸命守ろうとする子供たちの姿など思わず同情してしまうような面もある。穏やかで牧歌的な雰囲気も多い中でのこの表現は本作の醍醐味とも言えるだろう。

続編となるMOTHER2、3と違いこれらの要素はゲーム中で詳しくつらつらと語られる事は無い。自由度が高く手探りで進められるゲーム性故にプレイヤーの自身の手によって掘り出されるものである為、想像に任せている部分も多々ある。
住民一人一人のセリフを耳にしたり細部までやりこんで記憶に留めておけば後々その全容が明らかになった時、えもいわれぬ感情を抱くだろう。そこに糸井重里氏のセンスが光る。
そしてエンディングを迎える事が出来たあなたは、きっと「MOTHER」というタイトルの意味が理解できるはずだ。


総評

現代のアメリカをモデルとした世界観は当時としては物珍しく、どこかノスタルジックで温かみのある雰囲気が全体に漂っている。テキストなどの独特の言い回しや個性的なキャラクター達、小粋な演出の利いたエンディング、メロディアスで耳に残りやすい音楽など、細部の作り込みの丁寧さに惹かれてファンになる者も多い。
恐らくは容量などの制約上か、ストーリーについては説明不足といっていいが、物語の幹となる「メロディ」にまつわるエピソードは切なく、美しい。
ゲームバランスの悪さなどといった少々目立つ難点があるにも関わらず人を惹き付ける様々な魅力に溢れた、「名作保証。」*10の逸品。

  • 現在も続く任天堂と糸井氏の交流のきっかけとなった作品。またMOTHERシリーズに関わっていたスタッフが後の任天堂に与えた影響は大きい。
    • ゲームフリークの田尻智氏がMOTHERシリーズに影響され、後の任天堂の主力作品となる某有名RPGを生み出すことになるのは有名な話である。

海外版『MOTHER』及びGBA版『MOTHER1+2』版について

なお、海外では『EARTH BOUND』のタイトルでMOTHER2が正式にSNESに移植されているのだが、シリーズの初代である本作品は未発売となっている(この未発売となったNES版「EARTH BOUND」のROMデータが後に海外に流出し、それを基に海外のファンがタイトル画面を『EARTH BOUND ZERO』に変更したハック版も作られた)。

こちらのNES版では一部のテキストやイベントの進め方などに変更点があり、国内版にはなかったエンディング(主人公たちのその後)が追加されている。 ROM容量も日本版と比べ128KB、つまり1Mbit増えているので日本版は容量不足でこれらの演出がカットされたようである。 後に移植されたGBA版『MOTHER1+2』ではこちらのNES版を基にしているようで、変更点は継承されているものの任天堂側は海外版の移植であるとは正式に認めていない。

GBA版全体の出来としては、ダッシュ機能やLボタンによるチェック・会話機能・キャッシュカード使用の簡易化、マジカントでお金の引き出し可能、仲間専用の攻撃道具購入可能、一部マップやダンジョンの縮小による易化など、ハードとリリース当時の時代に合わせた改善がなされているものの、移植元の変更点に伴うテキストの違い、ハードの変更に伴うBGMや効果音の劣化(ただしこれは2の方が顕著である)、戦闘中における味方の攻撃時の効果音と敵の攻撃時の効果音が反対になっている、エンカウントがFC以上に頻繁に起きやすいなどの問題点が存在する。 またFC版ではマス目ごとだった移動が『2』『3』のようなマス目無視の移動になっている。

参考リンク: Lost Levels - Spotlight: Earthbound/Feature: EarthBound Timeline


余談

  • 「エンディングまで、泣くんじゃない。」「名作保証。」等のキャッチコピーが有名な本作だが、これらは糸井氏のものでなくCM担当の一倉宏氏によるもの*11
  • ラスボスの倒しかたは独特のもの。ここでは倒しかたは明かせないがラスボスの倒しかたが変わっている点は『2』にも引き継がれた。
  • 関連書籍『MOTHER百科』と原曲とボーカルアレンジ収録の音楽CD『MOTHER』はネットオークションで高額取り引きされていた。現在ではいずれも復刻されているため、入手は比較的容易になっている。
    • ただし最終トラックの原曲メドレーの構成がオリジナル版と異なっているほか、なぜか次作『2』のデモ曲が収録されているため、オリジナルと完全に同一ではないので注意。
    • 『MOTHER百科』はゲーム攻略情報は薄く、作中で詳しく語られていない設定を解説したり登場する街を観光ガイド風に紹介したりトリビアを紹介したり様々な分野の人からのコメントや糸井重里からのメッセージを載せたりと、ゲームの攻略本というよりはファンブック・データブックに近い。
  • 新潮社から『MOTHER~The Original Story~』のタイトルで小説版が出ている。作者はドラクエシリーズのノベライズもした久美沙織。
    • 開発途中のROMや開発初期の設定資料に基づいて執筆されており人物像やストーリーがゲーム本編とは異なっている。*12主人公はアナであり、少年たちの精神的成長を見守る『母親』としての心に目覚めていくアナの成長物語といった趣きになっている。また、性的描写をほのめかすような大人向けの表現も多くあるため、本作のファンからの反応は芳しくない。
  • 糸井氏はMOTHERの構想をまとめた企画書を宮本茂氏に見せ、絶賛されるだろうと思い込んでいたら氏から手厳しい批評の声が返ってきて凹んでしまったという。宮本氏曰く「いくつか新しいアイデアもあるみたいだけど、この程度じゃなんともないんですよ」。(小学館発行「ゲームデザイナー入門」でのインタビューより)
  • 砂漠にいるおじさんが「昔埋めた地雷が見つからない」という発言をしているが、砂漠には本当に地雷が埋まっているマスがひとマスだけあり(地雷だけに表面から見えず位置はまったくノーヒント。)踏むと爆発し、とある特別な画面を見られる。しかも踏んだ後は一部キャラの台詞が変わる。探してみてはいかがだろうか。(といっても自力で見つけ出すのはほぼ不可能だろうが...)
    • この手の砂漠ギャグは『2』にも引き継がれ、『2』の砂漠には1ドットしかない胡麻とコンタクトレンズが落ちている。
  • RPGには珍しく戦闘の「引き分け」が存在する。
    • 256ターン目になると何らかの数値がカンストするためか「勝負がつかない」というメッセージが表示され戦闘が強制終了する。イベント戦やラスボス戦ですら引き分けがある。
    • バグや不具合は少ない本作であるがイベント戦で引き分けにするとフラグ管理がおかしくなるバグは存在する。
      • とはいえ意図的にやらない限り256ターンも引きずることはまずない。
  • 印象的な本作のキャラクターフィギュアを制作した「トットリ」氏は糸井氏の弟子であるイラストレーター・タレントのみうらじゅん氏*13の友人。ほぼ無名の人物だが、みうら氏のイベントに度々登場してる有名な「つっこみ如来」は彼の制作。
    • 本作のフィギュアは20年後の2010年にプライズ限定で商品化された。
  • 上記の通りゲーム『ポケットモンスター』は、本作品(シリーズ)の影響を受けている。例として以下のことが挙がる。本シリーズをプレイしてからポケモンを遊んで共通点に気づいた者もいるだろう。
    + ...
    • フィールドマップがシームレスであること。同時に主人公の出発点が田舎町(の町外れ)でもある。
    • ポケモン恒例の敵組織「○○団(○○は作品によって異なる)」の元ネタは本作の「ブラックブラッド団(通称ブラブラ団)」。
    • ストーリー上のカギが「8つ」存在すること。『MOTHER』で集めるメロディは「8つ」で、ポケモンで集めるジムバッジの数も「8つ」。
    • 似たアイテムの存在。「きずぐすり」、「どくけし」、「じてんしゃ」(『MOTHER2』より)など。「じてんしゃ」に乗ると専用BGMが流れる点も同じ。
    • アイテムの独特のランク表記。いい○○(いいバット=いいきずぐすり、いいつりざお)、ボロの○○(ボロのバット=ボロのつりざお)など。
    • 「帽子をかぶりリュックを背負った子供」という主人公のデザイン。ポケモンでは初代から最新作まで一貫している。
    • 悪者たちのアジトがゲームセンター。(『MOTHER2』より)
    • 主人公の母親の存在。そして父親が基本的に不在(偶然にも両シリーズ本家3作目同士で主人公の父親キャラが登場し作中で姿を見る事も出来る)。…など共通点は多い。