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グランツーリスモ - (2010/10/22 (金) 23:30:20) の編集履歴(バックアップ)


グランツーリスモ

【ぐらんつーりすも】

ジャンル レースゲーム
対応機種 プレイステーション
メディア CD-ROM 1枚
発売元 ソニー・コンピュータエンタテインメント
開発元 ポリフォニー・デジタル
発売日 1997年12月23日

概要

次世代ゲーム機で様々な新機軸のゲームが出現する中、それまでの「ゲームとしてのカーレースを表現する」レースゲームのスタンスに飽き足らず、自ら称する「リアルドライビングシミュレーター」の文字に違わない、徹底してモータースポーツの再現を追求したリアル志向のレースゲームとして本作『グランツーリスモ』は誕生した。

「リアリティ」を追求したレースゲームは本作が始めてというわけではないのだが(セガの『バーチャレーシング』『セガラリーチャンピオンシップ』など)、当時としては珍しい環境マッピングの搭載、専用物理エンジンによる非常にリアルなマシンの挙動、多数の実在機種を登場させた本作は、それらから抜きん出た大ヒット(国内だけでも250万本、世界的には1000万本以上)を記録し、「GTの登場がレースゲームの在り方を一変させた」とも言われるまでの作品となった。以後も続編が多数登場しシリーズ化、現在では日本を代表するゲームの一つとして認知されている。


評価点

  • 独自開発された物理エンジンにより、車の挙動は現実の物理現象を忠実に再現している。
    (物理演算エンジンとは質量・速度・摩擦・風といった古典力学的な法則をシミュレーションするソフトの事。自動車で例えるなら、カーブでの遠心力や路面のグリップ力)
    • それまでのレースゲームでは事前に車種ごとのプログラムを組んで疑似的に車の挙動を再現していた(端的に言うなら「それっぽく車体を傾けて挙動を重くしていた」)のだが、本作はそれ以上、当時においては最も「リアルな挙動」を獲得することに成功している。 同時期に発売されたナムコの『リッジレーサー』は大ジャンプや無茶なドリフトなど、リアリティ無視の爽快感がウリの作品だったが、本作ではそんな芸当はできない。アクセル全開でコーナー突入など当然不可能。おまけにブレーキングを誤るとすぐにグリップを失いスピンする。
      • ただし、細かい点では実際とは異なる「ゲームらしい部分」は多数存在する。
    • このゲームエンジンはゲーム用の独自開発ということで、マシンの正確な寸法や重量、性能等をデータ入力すれば(基本的には)ほぼ現実に近い挙動が簡単に再現できる仕様になっている。 これによっていちいち車種ごとにプログラムを組む手間が省け、収録車数の増加にも一役買っている。
  • 登場する(運転できる)車は全て実在するもので、その数なんと100種以上。「実車を操作できる」ということも当時は珍しかったのだが、その圧倒的な収録数はユーザーの度肝を抜いた。
    • トヨタ、日産、本田、マツダ、三菱、富士重工、ゼネラルモーターズ、クライスラー、アストンマーチン・ラゴンダ、TVRとライセンス契約が結ばれており、ゲーム制作面でも連携している。車のモデリングはもちろん、エンジン音なども緻密な取材によって再現しており、多くのマシンには解説テキストも用意されている。
    • 国産機種が多めのラインナップとなっているが、作品の大ヒットに伴い、「この作品で日本国内専売(当時)の高性能スポーツカーは世界的な知名度を上げた」とまでいわれるようになった。
  • 美術面でもハード性能をフルに引き出してリアリティが追求されている。 中でもゲームとしては初めて導入された「環境マッピング技術」が特徴的。
    • 「環境マッピング」とは、車体に光沢をつけ、表面に周囲の背景のオブジェクト等を映り込ませる効果を表現する技術。 これによって視覚的にも現実感がより伝わりやすくなり、単純なグラフィック描写の面から見ても美しく、ユーザーから絶賛された。
    • どんな走り方でも格好良く見えてしまうほど、レース後のリプレイ映像のカメラワークが洗練されているのも特徴。この点も幾多の車好きを魅了した。
    • テーマソング「Moon Over The Castle」をBGMに、実機のゲーム映像を組み合わせたオープニングも特徴。
  • ゲームモードは「クイックアーケード」と「グランツーリスモ」の二つ。
    • 「クイックアーケード」はあらかじめ用意された車を選んで、手軽にカーレースを楽しむためのモード。
    • 「グランツーリスモ」はモータースポーツライセンスを取得して一人のレーサーとなり、レースに参加して賞金を獲得し、そのお金で車の売買や車のセットアップ・チューニングを行っていく循環構造を取り入れた、カーライフを楽しむためのモード。
      • 国内A級など「ライセンス試験」を受けライセンスを取得することでレースに参加できるようになるのだが、その試験課題の前に説明される文章は現実のドライビングテクニックに通ずる内容。これらを一つずつ身につけていかないと本作を楽しむことはできない(逆に言えば、ユーザーが自然にゲームを楽しめるように作られている)。
      • 車のセッティング内容も多岐に渡り、ギア比やブレーキの利き方、サスペンションなど数値による細かい設定が可能。空力・バンパーなど、素人目にはわからない様な部分の違いも物理エンジンによって表現されている。

難点

  • とにかく「リアリティ」を追い求めた結果、操作・レース・カスタマイズ・ライセンス、いずれにおいても難易度は高くなっており、レースゲームとしての敷居は高い。 レースゲーム初心者は購入に覚悟が必要。
  • 「実車」にこだわっているため、ライセンス許可が下りた企業の車種しか登場しないことは未参戦企業のファンから残念がられる点としてよく挙げられる。
    • それをカバーするためか、この後のシリーズではどうみてもレース向きではない一般乗用車までもが参戦するようになり「夢の愛車と現実の愛車を一緒に楽しめる」と話題を博した。 徐々にライセンスの数も増え、最新作『5』では遂にフェラーリが参戦するまでになった。
  • ゲーム開始時にオートロードがされないため、注意しないとロード前のデータで上書きしてしまう危険がある。この点は自作でオートロード機能が付き改善された。
  • レース場は全て架空のもの。この点も後作からは徐々に現実のレース場が登場していくこととなる。

総評

徹底したリアリティの追求は他のゲームの追随を許さず、まさに一種の仮想現実を作り出している。車や背景の美しさには誰もが魅了される一方、ゲーム部分では現実における「難しさ」までも忠実に再現しているため、敷居は高い。
しかしそのクオリティの高さは、プロのモータースポーツが興行され車社会が全世界に浸透している現在、ゲームという区引きを越えて多くの車好きを虜にしたまさに「車好きのためのゲーム」と言える作品となっている。車好きでない人にもモータースポーツの面白さを伝えられる本作は、まさに「リアル系レースゲーム」のさきがけとしてゲーム史に名を残している。

余談

  • 「グランツーリスモ」(イタリア語:Gran Turismo)、通称「GT」とは自動車の1カテゴリ。「セダンかクーペタイプで、出力の大きめなエンジンを搭載し、快適なキャビンと大旅行に十分なラケッジスペースを備えている」というのが大まかな定義だが最近ではあいまいとなっており、「典型的なスポーツカーからは外されるタイプの車」「普通のファミリーカーよりはスポーティな車」という認識が一般的なものとなっている。
  • CMは「制作に協力した各自動車会社の営業担当者が会議室に集合、自社の車を売り込み、その後は実際にその車を選択して遊ぶ」という、ある意味SCEらしい風変わりな、しかし妙なインパクトのあるものだった。