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R-TYPE TACTICS - (2010/11/07 (日) 22:10:36) の編集履歴(バックアップ)


R-TYPE TACTICS

【あーるたいぷ たくてぃくす】

ジャンル SFシミュレーション
対応機種 プレイステーション・ポータブル
発売・開発元 アイレムソフトウェアエンジニアリング
発売日 2007年9月20日
定価 5,040円


ストーリー

  • 純度の高い破壊本能で構成される未知の生命体が銀河系ペルセウス腕の中央付近で観測された。
    生命体の群れは驚異的なスピードで増殖移動を繰り返し、太陽系があるオリオン腕に侵入した。
    慌てて算出した生命体群の進路予測に人々は戦慄した。
    広大な宇宙で無限に進路のとりようがあるにもかかわらず、太陽系を横切るような進路をとっていたのである。
    未知の生命体への強い関心は、この時恐怖に変わった。そして、人々は、この生命体を”バイドと呼ぶようになった。
    そして…ついにバイドは太陽系外縁部に到達したのだ。
    人々のバイドへの恐怖は、狂乱を呼び、世論は二分した。
    あくまでバイドを打倒・根絶し、地球を悪魔の手から守ろうとするグループと、また一方ではバイドとの戦いの困難さを訴え、地球を放棄し別の星への移住を優先させようとするグループとに。
    この論争の結論がでないまま、ある司令官に辞令が出された。
    「地球に残る残存兵力を率いて、木星の公転軌道に入りつつあるバイドを討て」と… (公式サイトより引用、抜粋)

概要

「シューティングとしてのR-TYPE最終作」と明言されたR-TYPE FINALの発売から4年、R-TYPEがシミュレーションゲームになって帰ってきた。
今回は1機の戦闘機を操作するのではなく、艦隊を指揮する「提督」となってゲームを進めていく。

  • ヘクス方式のマップ、ZOC、策敵といったウォーシミュレーションゲームの基本的なシステムを押さえつつ、波動砲、フォースといった「R-TYPEならでは」のエッセンスがふんだんに盛り込まれている。
  • ジャンルの移行に伴い世界観の再構築が行われているため、過去の作品との直接的な関係はない。
    • 従来は22世紀、西暦2100年代が舞台となっていたが、今回は年号が西暦ではなく「M.C.」に変更されており、ゲーム開始時点ではM.C.0065になっている。
      このM.C.が何を省略した呼称なのか、またM.C.元年は西暦何年に相当するのかといった点については不明。ただし人類がバイドを発見した時期についてはゲーム中で「22世紀である」と明言されている。

システム

  • シミュレーションではあるものの、「R-TYPEならでは」のエッセンスがふんだんに盛り込まれている
    • 波動砲は発射まで数ターンのチャージが必要な、スパロボで言うところの「マップ兵器」的な設定になった。基本的に強力な波動砲ほどチャージに必要なターン数が長い。また、被弾するとチャージ状況はリセットされる。
    • シリーズ伝統の子機、フォースはR戦闘機とは独立した単独のユニットとして扱われており、状況に応じてR戦闘機と分離・合体が可能。
      • R戦闘機単体では機銃・ミサイル・波動砲しか使えないが、フォースと合体することで各種レーザーが使用可能になる。相手の弱点付近の死角にフォースだけ送り込んで体当たり攻撃させる、といった事も可能。
  • 索敵の概念、そして「亜空間」機能を持つ機体による策敵
    • ユニットには個別に索敵能力が設定されており、索敵範囲外の敵ユニットは見えない。また範囲外から攻撃されると迎撃や反撃も不可能。この条件はCPU側も同じである。
    • 亜空間機能はいわゆるステルス。亜空間に潜行している間は攻撃することもされることも無くなるが、移動速度が上昇し、さらにこちらの索敵は通常通り行われる。中盤以降、この亜空間機能を持つ機体による索敵が重要になる。
  • 攻撃・迎撃・反撃といった武器の「用途」、ミサイル・光学兵器・体当たりといった武器属性による使い分け
    • 武器には個別に「攻撃用」「反撃用」そして「迎撃用」の3種類のうち1、または2種類の用途が設定されている。
      イメージとしては「相手のミサイルを避けきったor耐えきった後で敵機に攻撃を行う」のが反撃用の武器、「相手のミサイルを撃ち落とし、被害を抑える」のが迎撃用の武器と言える。攻撃・反撃に使える武器、攻撃にのみ使える武器などの他、中には迎撃専用の武器もある。

評価点

  • 「昔人気があった作品の名前を持ってきただけ」に留まらない、完成度の高いゲームシステム
    • 索敵しないことには攻撃も迎撃も反撃も出来ないため、必然的に索敵の重要性が非常に高くなっている。中盤以降はお互い索敵されている状態で撃ち合うのではなく、亜空間機能を持つ機体で索敵を行い、いかにして「撃たれる前に撃つ」かが重要となる。
    • 攻撃手段も「迎撃される可能性もあるが命中率の高いミサイル」「迎撃されないが命中率の低い光学兵器」「強力で命中率も高いが、迎撃によってこちらもダメージを受ける体当たり」など、強い武器でゴリ押しするのでなく、状況に応じた使い分けが必要。
    • 波動砲などのチャージ兵器の場合は特別ルールとして「チャージ兵器に対してのみ、チャージ兵器のみで『反撃』出来る」。迂闊に波動砲を撃ち込むと手痛いしっぺ返しが待っている、というわけである。
  • 「Rの系譜」も世界観と共に再構築、「波動砲の威力が上がっただけ」といった程度の違いのものは切り落としてスリム化。機体総数こそ減少したが、各機体の特徴を踏まえた上での使い分けが非常に楽しい。
    • 1発しか撃てない代わりに強力なミサイル「バルムンク」と迎撃専用の「バリア弾」を搭載した機体、俊足な上に強力な「灼熱波動砲」を持つ機体、ヒット&アウェイが可能な機体など、機体毎に尖った特徴が設定されているため、趣味だけでなく攻略の上でも大きな意味を持つ。
    • 機体の開発は(さすがに使用時間などではなく)マップ上のコンテナなどに格納された「トレジャー」の入手によって解禁されていく。「低位亜空間航法システム」の入手によって、亜空間機能を搭載した「ウォー・ヘッド」が使えるように…など、開発可能になる機体が直接トレジャーに関係していることも多い。
  • それぞれのユニットに搭乗するパイロットは戦闘などをこなすことで「熟練度」(今作におけるレベル、上限20)が上昇する。この熟練度に応じて、戦艦であればHPが、攻撃機なら攻撃力、高機動機なら回避率、爆撃機なら命中率…といった具合に、それぞれに特徴的なステータスが強化される。
  • R-TYPEらしくなく、難易度は低め。ほとんどのマップの勝利条件が「制限ターン以内に敵軍の旗艦を撃墜」となっており、またこの制限もかなり余裕をもたせてある。
    • ただし早くクリアするほどマップクリア時のスコア(ゲームには全く関係しないやりこみ要素)が上昇するため、早解き(=スコアアタック)の楽しみもある。
  • 世界観、そしてゲーム性にマッチしたBGM。
    • 『FINAL』に引き続き作曲はWavelink Zealが担当。前回は「これじゃ環境音楽だ」など散々な言われようだったが、今回はバッチリ。名誉挽回である。
  • 言葉は少ないが明快で分かりやすく、プレイヤーの想像する余地を残したストーリー。
    • シナリオ部分は基本的に「航海日誌」という体裁なので、現在の目的は何か・どういった状況なのかといった最低限必要な情報は得られるものの、細かい会話文のようなものはほとんどない。
      • たまには「ある事柄について考えている時に限って緊急連絡が届く」パターンが何度か続いたものだから「いつもならここで緊急連絡が届くのに」のどというメタ的な発言が飛び出たり、その直後に届いて 「結局そうなるのか」 と愚痴ったりすることもある。
  • 『R-TYPE FINAL』をプレイしていればニヤリとできるストーリー、そして哀しくも美しいラストシーン。
    + 以下ネタバレ注意。
  • R-TYPE FINAL F-Bルートで自機がバイド化したように、今回は提督達がバイド化。
    地球軍を操作してバイドの殲滅に向かった前半とは対照的に、後半ではバイド軍を操作して地球に 「帰る」 ことが目的となる。
  • 「航海日誌」は「記憶の残滓」に変化し、普通の人名だったパイロット名も「キガ」「イド」「ドチ」など、一見訳のわからないカタカナ2文字のものになる。
    + 全パイロットがそろった状態で続けて読むと
  • キガ ツク トワ タシ ハバ イド ニナ ツテ イタ
    ソレ デモ ワタ シワ チキ ユウ ニカ エリ タカ ツタ
    ダケ ドチ キウ ノヒ トビ トハ コチ ラニ ジユ ヲム ケル
    『気が付くと私はバイドになっていた それでも私は地球に帰りたかった だけど地球の人々はこちらに銃を向ける』
    だからバイドは「広大な宇宙で無限に進路のとりようがあるにもかかわらず、太陽系を横切るような進路」を取るのである。
  • エンディングではついに地球に辿り着くが、地球上には迎えて入れてくれる人も、場所もない。
    + しばし、たたずむ
    • ダケド チキウノヒトビトハ コチラニジユヲムケル(要ニコニコ動画アカウント)
    • 地球を侵略しに来た悪のバイド軍の兵器が次々と爆発四散していくなか、旗艦とおぼしき大型の機体が高速で急上昇、儚く光ったところでこのゲームは幕を下ろす。
    • 今回のバイドの定義は「純度の高い破壊本能で構成される未知の生命体」ということだったが、それならこの地球という星の超攻撃的文明だって…。

問題点

  • 亜空間システム関係の調整が不十分
    • 上述の通り、亜空間機能を使用したステルス状態のユニットによる索敵が中盤以降や対人戦で重要になってくるのだが、ステルス状態の敵ユニットの位置を特定する手段が無く、また排除する手段も非常に使い勝手が悪いため、「相手の索敵を妨害する」という面での駆け引きが非常にやりにくくなっている。
  • 一部のユニットの使い勝手が良すぎる。
    • 前半では「ストライダー」などが挙げられる。強力な代わりに1発しか撃てない「バルムンク」ミサイルを積んでいるのだが、補給ユニットとセットで行動させ、消費したバルムンクを補給しつつ毎ターン撃ちまくる戦法があまりにも強力。
      • あまりにも強力だったので、続編ではCPUの戦術に採用された。プレイヤーだって2~3セットがせいぜいなのに7セット組んで撃ちまくってくる。
    • 後半では「ゲインズ」系列の機体が相当する。前半で使用出来ていた機体の場合、波動砲はチャージに3~4ターン、射程4ヘクスというのが標準なのだが、ゲインズ系列の波動砲は1ターンチャージ・射程6ヘクスという文字通り「桁違い」の設定になっている。そしてチャージ処理は自軍フェイズ開始時に行われるので、事実上毎ターン発射可能。
      • ただし「じゃあ開発したらクリアまで楽勝か」というと決してそうでもないあたりはバランス調整の妙であろう。
      • 続編ではさすがに2ターンチャージに変更された。

賛否両論な点

  • チャージ兵器が右、または左にしか撃てない
    • 原作再現というだけでなく、この発射方向制限によって攻略上のバランスが成立している面もあるのだが。
  • 「無敵の兵器」だったはずのフォースが無敵じゃない
    • フォースの主な攻撃方法は体当たりであり、相手に迎撃された場合も直接ダメージを受けるため使い勝手が悪い。
    • 世界観が変更されたという事情もあるし、そもそもシミュレーションゲームで(射程が短いとはいえ)無敵のユニットなんか出したらバランス調整以前の問題ではある。

総評

「STGとしては」と注釈付きだったとはいえ「一度終わったブランドを無理矢理引っ張り出してきたのか」と思う古参プレイヤーもいたものの、(結果としては少し便利すぎる機体はあるものの)全体的に良質なバランスを持った、SLG初心者でも苦戦しながら楽しめる程度の難易度の良作であった。
R-TYPEシリーズおなじみの設定を踏まえつつ、ジャンル変更にあたって整理されているため「STGの方は知らない」という人でも楽しめる。『R-TYPE FINAL』で設定された機体もそれぞれ特徴を持つユニットとして盛り込まれており、そっちもプレイしていれば「あのへっぽこバリア波動砲機体が」とニヤリと出来ること請け合い。

  • 続編の『II』も製作・発売された。亜空間システムに対するアンチとして機能するシステムや索敵妨害手段といった新要素、FINALですらRの系譜に組み込まれていなかった新機体の参戦、更に衝撃的な展開を見せるストーリーなど、大幅にスケールアップしている。バグが多かったり難易度があまりにも上昇しすぎていたり、ストーリーが衝撃的な展開しすぎた結果宇宙の果てまでぶん投げられていたりと若干残念な点もあるが。
    • 余談だが、『II』発売前に公表されたスクリーンショットに「画面を覆いつくさんばかりの敵軍とどう見てもそれに釣り合わない数の自軍」を写した一枚があり、『どうせ開発中画面だろ』と高を括っていたら本当にそのままの数で攻勢を仕掛けてくる(のんきに戦力を小出ししてくるようなことは一切ない)ステージがあり、前作プレイヤーを乾いた笑いの只中に落とした。
      • 『II』の難易度は今作と比べて格段に上昇しているが、「敵の配置を覚え、戦力を分析し、侵攻ルートを割り出し、自軍の編成を最適化した上で、最善となる戦術を駆使する」ことで突破していけるようにはなっている。初見殺しのオンパレードだが、所謂「無理ゲー」なステージは存在しない。そういう意味では「よりR-TYPEらしい」作品といえるかもしれない。ちなみに、ステージの攻略を失敗した際のペナルティ(ゲームオーバーなど)はなく、何度でもクリア済みステージに挑戦もできるのでハマることはない。

うむっ、緊急連絡だ!