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XANADU - (2012/08/08 (水) 20:22:09) の編集履歴(バックアップ)


XANADU

【ざなどぅ】

ジャンル アクションRPG
対応機種 X1
PC-8001mkIISR
PC-8801mkII、同SR以降(両者は個別発売)
PC-9801
FM-7/77
MSX/MSX2
Windows
発売・開発元 日本ファルコム
発売日 【X1】1985年11月03日
定価 【X1】7,800円
ドラゴンスレイヤーシリーズリンク

写真はWindows復刻版


概要

 『ドラゴンスレイヤー』シリーズの第2弾にして、日本ファルコムをスターダムに押し上げた名作RPG。日本のPCゲーム中最大の売り上げ本数記録を保持しており、その記録は2011年現在でもいまだ破られていない。
 「10階層に及ぶダンジョンをめぐりながらキャラクターを成長させ、最終的にキングドラゴン『ガルシス』を倒すのが目的」とストーリー自体は王道なのだが、現在見られる一般的なRPGと違いキングドラゴンを打ち倒すには行動の手順が非常に重要。パズル思考の強い作品となっている。

  • プレイヤーはキーボードのテンキーで8方向に移動、フィールド画面ではスペースキーを押すことにより扉などに入ることができ、戦闘・タワー画面では装備している魔法を使用できる。全モード共通してリターンキー(ENTERキー)を押すことにより装備しているアイテムを使用。Qキーで装備変更できる。
  • 開始当時に国王に名前を名乗った時に幾分かの金を与えられ、0面にあたるトレーニンググラウンドで武器や魔法の攻撃力や命中率、回避や宝箱を開ける速度、買い物時に影響する魅力などをその金で上昇させる。
    • ただしMSXロムカートリッジ版(以下MSX版)のみは例外で、特定のポイントを与えられそれを割り振る形となった。これはMSX版のみトレーニンググラウンドに戻ることが可能となっているためである。
  • アイテムの購入は最初のトレーニンググラウンドのみにある隠しショップでのみ可能。MSX版を除き以後はアイテムの売買は不可能である。アイテムの値段はMSX版以外は割と安価で救済処理的なものである。逆にMSX版は超高価となっているため事実上使えないものとなっている。

特徴

モンスターの数は有限

  • ザナドゥをザナドゥたらしめる最大の特徴。ザコ敵の部隊は一種族につき4回までしか復活しない。ボスモンスターは復活しない。
    モンスターの数が有限という事は得られるリソース(資金・経験値・アイテム)も有限という事である。その上限は「有り余るほど」と言う訳ではなく、基本的にカツカツの状態が続く。さらに後述する独特な成長システムがあるため、得たリソースを上手く配分することが求められる。

キャラクターの成長システムが独特

  • キャラクターのレベルアップは自動ではなく、一定以上の経験値を積んだ後寺院に入ることで行えるのだが、武器で敵を倒すと戦士(Fighter)の、魔法で倒すと魔法使い(Wizard)のレベルに経験値が入る。剣と魔法、どちらかのみで進めるというのは現実的ではないため、どのように経験値を配分するかが問題となる。

武器・防具・魔法は使い込むことで成長する

  • 武器・防具・魔法は戦闘時に使用することで成長していく。手にしたばかりの状態と扱いに熟練した状態を比べると、その性能は雲泥の差。ただし、いくら使い込んでも序盤の武具が終盤まで通用するわけではないため、「いつ武具や魔法を買い替え、成長させるか」という点も考えなくてはならない。
    • そして終盤にはガルシスを倒せる唯一の武器が登場するが、これがガルシス戦以外ではロクに使い物にならず、かといって鍛えなければガルシスには歯が立たないことに留意しておく必要がある。

「時間」の概念がある

  • 本作には時間の概念が存在しており、アイテムの効果や食糧の消費などに影響する。
    特に厄介なのが食料。時間経過で減っていく代わりにその分だけHPが回復するのだが、食料がなくなると今度はHPが減り、やがて餓死する。レベルが上がって最大HPが増えると死ににくくなる代わりに食料の消費が激しくなる。食料は店で買うか敵を倒すことで手に入るのだが、店で買わないととてもじゃないが足りない。そうすると食糧確保のための資金が必要になるのだが、お金は武器や防具、魔法にアイテムといくらあっても足りない。しかもレベルアップするほど鍵の物価が上がっていく…。

このような要素が存在するため、計画的にモンスターを倒していかないと、最終的に手詰まりとなってゲームを最初からやり直すハメになる。これがザナドゥが「パズル的RPG」と言われる最大の理由である。

「垂直の上り下りが基本」という独特なフィールド構成

  • 大半のRPGの場合、舞台となるフィールドは「水平な世界を基本とし、そこにダンジョンが点在する」という構成になっている。地下や天上世界といった高さ&階層の概念が存在する作品もあるが、それにしてもやはり基本は水平世界である。
    しかし、ザナドゥでは垂直に連なる全10階層のフィールドを登ったり降りたりしながら冒険をする。また、各地には「タワー」と呼ばれる建物が点在しており、中にはモンスターやアイテムが多く配置されている。これがダンジョンの役割を果たしている。
    • フィールドとタワーでは操作性が全く変わってくる。フィールドでの操作は2Dアクションゲームに近く、斜めジャンプした直後に空中で反対方向の斜めジャンプを入力するなどの2段ジャンプを駆使したりアイテムを使って道を切り開いたりする必要があるため、目的のタワーに向かうのに工夫が必要。これも「パズル的RPG」と呼ばれる要因の一つ。ただし移動やジャンプはブロック単位で行われるため、アクションゲームのような微調整はできない。
    • 一方、タワー内は初代『ゼルダの伝説』のように、水平で4方向を壁(隣への道や扉は壁の中央にある)で隔てられたフロアを上下左右に歩いて探索する。隠し部屋(アイテム使用で道を切り開いたり、別の場所から入れたりする)や、施錠された扉(開けるには鍵が必要。手に入れるには敵から奪うなり買うなりする)なども存在する。初期の階層から一方通行のフロアが存在したり、特定のアイテムを使用しないと脱出できない罠の部屋も存在した。
    • タワーの構成は一階層につき4×16の64部屋となっていて、右と次の段の左は繋がっている構造となっている。これによりマッピングをすることが可能である。

単純だが頭を使う戦闘

  • モンスターとの遭遇はフィールドではシンボルエンカウントで、敵に触れると戦闘画面に切り替わる。タワー内では各フロアにモンスターが展開しており、画面が切り替わることなくそのまま戦闘に突入する。また、一部のタワーには大型のボスモンスターがいるのだが、この場合のみ垂直フィールドでの戦闘になる。
    • モンスターはランダムに動くもの、こちらに向かってくるもの、逆に逃げていくものというようにアルゴリズムを持っている。さらに武器攻撃や魔法の属性攻撃に耐性が設定されており、非生物には最強の即死魔法は効かない、低レベルでは武器で攻撃するとこちらがやられてしまう敵も特定の魔法には極めて弱いなど個性豊かに設定されている。
    • 戦闘方法は直接ぶつかる事による打撃攻撃と、遠距離からの魔法攻撃。防御の操作はないが、キャラクターの向きで防御力、回避率に修正が入る。正面は防御力、回避率が高く、背後は逆に大きく落ちる。敵によってはどちらを向いているかが分かりにくいのがちと難点か。
    • 魔法は単体への攻撃魔法と全体攻撃魔法しかないが、「ダメージを受けることなく敵を倒せる可能性がある」という利点があるため重要。また、魔法には属性(全9種)が存在し、モンスターによって効果が大きく分かれるので使い分けないといけない。ちなみに回復や補助魔法などは存在しない。その役割はアイテムが担う。
    • なお敵部隊の最後の一匹を武器で倒すと赤い宝箱が出てあらかじめ用意された法則に基づいてアイテムを出す場合がある。しかし魔法で倒した場合は金が入った白い宝箱となってしまうため、魔法一辺倒という訳にもいかない。
    • 前述したとおり、「武具や魔法は使い込むことで成長する」。バランスよく敵を倒さなければならないだろう。
  • また、本作独自の設定として「カルマ」が存在する。
    • これは「一部の善良なモンスターを倒す」または「所持金が無いのにセーブコマンドを実行する*1」と罰として「カルマ(宿罪)」というパラメータが上昇する」というもので、カルマが上昇すると物価が上がったり、寺院に入れずレベルアップができなくなったり、最終階層のダンジョンに入れなくなり、ラスボスを倒せる武器が入手できなくなったりする*2。カルマを下げるアイテムはあるのだが、有限な上にペナルティが存在するため、上げすぎてしまうと詰みになる。
      • そして、詰みになるほど意図せずカルマを上げすぎるのは意外と簡単である。
    • つまり、カルマモンスターの存在自体が罠である。当然ながら配置もいやらしい。

難点

  • 難易度が高く、他のRPGと比べてもとにかく行き詰る要素が多い。
    • 前述のリソース管理に加え、ダンジョンそのものにもパズル要素が含まれるため、頭を使わないと目的地に到達すらできない。
      そのため、どのようにゲームを進めるか計画を練らなければならないのだが、初見では敵の配置がわかるはずもなく、計画の立てようがない。
      したがって、何度もプレイしてダンジョンや迷路の構造、敵の配置を調べ上げてから計画することになるのだが、マッピングをするだけでもかなりの手間がかかる。
    • 「何度も何度も何度も何度も詰まってその度に覚え直す」ことが当たり前のゲームバランスであるため、攻略には相当の根気と仕様を理解できるだけの頭脳が必要になる。当時の雑誌では本作の攻略法が広く取り上げられていたが、それは本作がメジャーな作品だからというだけでなく、「自力じゃ無理だけどどうしても解きたい!」というニーズに答えた結果でもあったのだ。
    • しかしその仕様たる上か、ある程度クリアできる知識を自ずから持つようになり、究極的には最終ボス到達時に最低限どのような状態であればよいかということから逆算し、30分もかからずにクリアするタイムアタックやマニュアルに書いてある「お勧めできないパラメータ振り分け」のような極端な初期設定でもクリアしてしまうなどの「縛りプレイ」を楽しめるようにもなる。

総評

日本のRPG黎明期の代表作にして、日本ファルコムをパソコンRPGのトップメーカーとして位置づけた作品。
ゲームとしての完成度が非常に高いだけではなく、ゲーム性も極めて特異。一方で難易度も非常に高く「RPGとは苦労してクリアするもの」という発売当時の風潮を端的にあらわした作品といえる。そもそも、冒険を始める前からラスボスを倒すまでの緻密な計画を立てねばならないRPGなど他にあるだろうか?
RPGにおける孤高の存在。それが『ザナドゥ』である。

余談

  • 今では考えられないサービスだが、クリアデータの記録されたFDを添えて*3日本ファルコムへ送るとクリア認定証が貰えた。如何にゲームのクリアが困難だったかが窺い知れる。
  • 続編に『ザナドゥ シナリオII』がある。新たに滑る床、重量の概念、そしてその重量に応じダメージを与える逆さツララが追加されアイテムの所持量が制限されるなど難易度はさらに上がっているが、資金を無限に稼げる*4ため終盤のハマリは緩和された。
    ショップも売り買いのみならずゲーム攻略に必要なヒントが書かれている(英語だが)。またFM音源搭載機では各階層・ボスごとにBGMが付き、特に古代祐三氏作曲のエンディングBGMは非常に評価が高い。
  • 本作はT&Eソフトの『ハイドライド』と人気を二分しており、日本ファルコムとT&Eは多くのパソコンゲーマーからライバル関係と見なされるようになっていく。
    RPGのトップに躍り出た本作に対して、『ハイドライド』の続編である『ハイドライドII』は理不尽なほど高すぎる難易度が災いし、本作ほどの人気を得ることが出来なかった。
    このライバル関係が絡んでいるかどうかは不明だが、プラットフォームによってはハイドライドやT&ESOFTと名前をつけることで極端に低いステータスにされることがある。
    これ以外にも他社の名前やゲームにまつわる名前を入れることで色々と面白い(場合によっては不愉快な)ことが起こる。
  • 1980年代前半は、「ゲーム攻略」が本格的に市民権を得るようになった時期でもあり、パソコンゲームを扱う雑誌はこぞって本作の攻略法を載せていた。
    パソコンゲームにおける攻略本の人気シリーズ『チャレンジ!!AVG&RPG』シリーズ(電波新聞社)の第1弾が発刊されたのもこの年であった。
    しかしこの本におけるザナドゥ攻略記事があまりにも攻略そのものを載せてしまっていたため、続刊で「シナリオII」の攻略記事を書くときに了承を得に行ったところ快い返事が貰えず、
    結局「プレイ体験記をなぞった形で主要な部分を削って、かつ実用性も高いマップを記載し「プレイしている人はもちろん、プレイしてない人にも楽しめる」攻略記事となった。
  • 本作はパソコンゲームというジャンルでは日本国内最大である 40万本 を売り上げた。今後もこの売上を超える作品が輩出されることはまずないため、『日本一売れたパソゲー』として語り継がれることになった。
  • 本作品の移植となるはずだった作品に『ファザナドゥ』がある。
    一応日本ファルコムの許諾を得ており、ゲームの出来は悪く無いどころか十分良作といえるのだが、ゲーム内容は完全な別物であった。なまじ「ザナドゥ」の名を冠したせいで過剰に叩かれてしまったきらいがある。
  • 本作やそれに続く『ロマンシア』など、「ドラゴンスレイヤー」シリーズの高すぎる難易度への反省として「今、RPGは優しさの時代へ。」というキャッチコピーで発売されたのが、後に日本ファルコムの看板タイトルとなった『イース』である。