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Wizardry - (2013/10/28 (月) 23:37:51) の編集履歴(バックアップ)


Wizardry

【うぃざーどりぃ】

ジャンル RPG
画像はWindows版
対応機種 Apple II、IBM-PC、国産パソコン、Windows
ファミリーコンピュータ他多数
開発元
原語版発売元
Sir-Tech
日本版発売元 アスキー他
発売日 1981年
分類 良作
Wizardryシリーズリンク

概要

ウルティマ』『ローグ』と並び、コンピューターRPGの祖と言える作品の一つ。

  • 『ウルティマ』や、後に発売された『マイトアンドマジック』と合わせて「世界3大RPG」と称された*1

プレイヤーが作ったキャラクター達で、3D視点のダンジョンをひたすら探索し、レベルアップとアイテム収集*2を楽しむRPG。最初期の作品ではあるがシステムの完成度は高く、キャラメイクや個有名を持つ魔法体系など、すでに導入されている。

アスキーが国内PC向けに販売開始したのが1985年。オリジナルのApple II版から実に5年近い月日が経っての移植である。このことから当時どれほどの人気があったかが窺い知れる。

ストーリー

圧倒的な武力をもって周辺諸国を統一し、「狂王」と称されたトレボー。
その強さの裏には、彼の持つ「魔除け」の存在があった。
しかし、ワードナという魔法使いがトレボーから魔除けを盗み出し、さらにトレボーの居城近くに一夜にして地下迷宮を建造。そこに立てこもって魔除けの研究をし始めた。
トレボーは激怒し軍隊を差し向けたが、迷宮のトラップとワードナが召喚した魔物によって軍隊は壊滅。
ワードナを倒さねば腹の虫がおさまらないが、これ以上自軍の精鋭を失うわけにもいかない。
そんなトレボーの前に臣下が一つの提案を出した。

「『ワードナを倒し、奴の持つ魔除けを取り戻した者には、莫大な恩賞金を与えるとともに近衛兵への登用を認める』と街にお触れを出してはいかがでしょう?」

魔除けを取り戻しつつ、さらに優秀な人材の登用も見込める一石二鳥のこの案にトレボーは賛成し、さっそく街にはお触れが出されることとなった。
こうしてトレボーの命の元、街に集まった冒険者達はワードナの潜む大迷宮へと向かうのだった*3

特徴

キャラクターメイキング、ターン制戦闘、職業とクラスチェンジ……今でも多くのRPGで採用されるシステムは、本作で既に基礎が出来上がっている。ただし、それらはゼロから作られたものではない。
当時既に存在していたTRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』*4をベースに作られている。

  • TRPG(テーブルトークRPG)とは、仕切り役(GM:ゲームマスター)のもとで各キャラクターを演じて遊ぶRPGのこと。行動の成否は各種のサイコロを振って決めるが、各自の行動提案やGMの裁量(やりすぎないこと!)によるアドリブも利き、その自由度の高さがコンピューターゲームとは違った魅力と楽しさを生み出している。
    • ただTRPGは一人では出来ず、自分以外に少なくともGM役がいなければ遊べない。これを解消するため、GM役やサイコロ振り、ついでに各種計算もコンピューターに任せようとしたものが、本作のようなコンピューターRPGである。
  • 製作者は学生時代D&Dにドはまりしており、本作のシステムもD&Dを下敷きにしている。例えば以下の要素(わざわざサイコロ換算する点など)はD&D譲りといえる。
    • 命中率は5%単位。これは二十面体サイコロで命中判定をするため。
    • ACの扱いは防具なしの基本値が10で、防具をつけるとACが低くなっていく(0にもマイナスにもなる)。
    • キャラクターの能力値は、基本的に3-18(六面体サイコロ3個分)の範囲内で扱われる。
    • ダメージ値も2-12(六面体サイコロ2個分)だったり3-24(八面体サイコロ3個分)だったり…
  • キャラクターメイキングは種族、属性、職業の3要素からなる。
    • 種族は「人間」「エルフ」「ドワーフ」「ノーム」「ホビット」の五種。種族の違いは初期パラメーターの違い(とそれによる各職業への適性)。選択後、各パラメーターにボーナスポイント(総量はランダム)を分配して職業を決定する。
    • 属性は「善」「中立」「悪」の三種。パーティを組むときの相性や、職業の選択に影響する。
      • 属性が善のキャラと悪のキャラは、基本的に一緒に組むことができない。また一部の職業選択が制限される。
      • 中立は善/悪どちらともうまく付き合えるが、職業選択にかなりの制限を受ける。特に回復魔法を使える僧侶系に就けないのが痛い。
      • なお属性は冒険中にも「友好的なモンスターにどう対処するか」で変わってしまう場合がある。この属性変化により、善の忍者や悪の君主等も(ほぼ強引に)作成できる。一部高級装備は属性が違うと呪われる為、それほど得策でもないが。
    • 職業は「戦士」「魔法使い」「僧侶」「盗賊」「司教」「侍」「君主」「忍者」の8種。それぞれに習得能力や装備品の差異などが存在する。途中で職業を変える(クラスチェンジ)ことも可能。
      • 職業によって必要な特性値が違い、その職業に就くには該当パラメータが必要値に達していなければならない。上級職とされる司教/侍/君主/忍者は就くのに必要な特性値が高いため、他の職業でレベルを上げてから転職することになる。
      • ただし司教と侍はボーナスポイントが高ければ最初から就く事も可能。また、アイテムのSP(スペシャルパワー)でクラスが変わることも。
    • キャラクターには年齢の概念が存在し、宿屋で休んだりクラスチェンジしたりすると時間が経過し歳をとる。老化するとパラメーターの伸びが悪くなり、やがて下がりだす。最後には生命力不足による老衰→キャラクターが「ロスト」してしまう。ロストについては後述する。
  • 独特のネーミングを持つ魔法体系
    • MPは7つのレベルに分かれており、上位のレベルほど呪文も強力になる。
    • 変わっている点としては「どんな魔法でも一度の使用で消費するMPは1だけ。ただしMPは各レベル毎に管理されている」という点。このため、例えば魔法使いレベル1のMPがゼロになったら、他のレベルのMPが余っていても魔法使いレベル1の魔法は使えない。このレベル制魔法システムはD&Dの魔法システムの影響が大きい。
    • そして何といっても目を引くのが呪文のネーミング。例えば炎の呪文「ハリト」は、上位になると「マハリト」、「ラハリト」という様に名称が変わる。このような「接頭辞、接尾辞による効果の変化」を初めて取り入れた作品であり、他のRPGもこぞってこのアイデアを取り入れた。取り入れていないRPGの方が珍しいほどに。
      • なお、呪文には独特の言語を用いているようで非常に凝っている。効果が逆の呪文には頭にバの文字がつく(例:回復呪文「ディオス」の逆の効果を持つ呪文「バディオス」)、炎を用いる呪文には「リト」が付く等。
  • 地下へと向かうダンジョンは、同じサイズのフロア(20×20マス)が10階層連続したもの。
    • どこを見ても似たような風景、目印のようなものもない。さらにゲーム中で確認できる地図もない*5。このままでは当然迷うので、プレイヤーは自分で地図を作る=マッピング作業を行う必要があった。今なら「不親切」と言われるだろうが、当時はそのスタイルが当たり前であり、一つの楽しみ方として定着していた。説明書でも推奨されていた。
  • 戦闘はパーティー制。
    • 最大6人までのパーティーを組める。リストの上3人までは前列、後ろ3人は後列となり、物理攻撃は前列のメンバーのみが可能。敵からの物理攻撃を受けるのも前列のみ。そのため前列には戦士や侍など重装備可能な職業を置き、後衛は魔法使いや僧侶などの肉体面では脆弱なメンバーを置くのがセオリー。ただし状態異常を受けたメンバーは勝手に後ろに回されて他のメンバーは繰り上がってしまうので油断はできない。
    • キャラクターの項で述べた通り、属性が善のキャラと悪のキャラは基本的に一緒に組むことができないが、迷宮内での合流は出来る。これを利用して善と悪の両方がいるパーティを作る事も可能。
      • ただし前述のように、友好的なモンスターに対する態度で属性が変わる可能性があるため、何時の間にやら属性が一方に偏る場合が多い。
    • なお属性変化するかどうかは完全に運(5%)な為、たった一回で変わる場合もあるし、何回やっても変わらない場合もある。属性と職業があってないと強力な装備のプラス効果を得られないことが多い。
    • 敵の攻撃方法は物理攻撃・ブレス・魔法の3種類と少ない。ただし物理攻撃には様々な効果が付加されることがあり、特に「クリティカル」と「エナジードレイン」はなかなかに厳しい。
      • クリティカルは「対象の残りHPに関係なく一撃で仕留める」、エナジードレインは「レベルを恒久的に下げる(取り戻すには再び経験値を貯めてレベルアップするしかない)」。時間をかけて育てたキャラクターが一撃で殺されたり、レベルが下がるのは精神的ダメージが大きい。
  • 戦闘終了後に宝箱が出現する。
    • ここから様々なアイテムが手に入るのだが、たいていの場合罠が仕掛けられている。しかも罠の中には、即死してしまうような効果のものもある。罠を解除できる職業は盗賊と忍者だけ。どちらか片方をパーティに入れる必要がある。
    • アイテムは店でも買えるが、必要最低限のものしか売られていない。そのため強力なアイテムは敵から奪うことになる。店ではこちらがアイテムを売ることでラインナップが増えるようになっているため、アイテムコレクション要素も持っている。
  • 死亡と復活、そして「ロスト」
    • キャラクターの死亡に対しては、あらゆるRPGの中でもかなり重いペナルティを課している。
    • 死亡したキャラクターは寺院や呪文で復活することになるのだが、これは失敗することがある。失敗すると「灰化」状態になる。
    • ここからでもまだ復活は可能なのだが、ここでさらに失敗すると「ロスト」状態になってしまう。ロストは「キャラクターの完全消滅」を意味しており、街でロスト状態になるとそのキャラクターのデータは抹消され、二度と復活しない。
      • パーティが全滅した場合は救助部隊を編成して死体を回収しないと復活さえ出来ない。しかも「死体を怪物に食われた」としてロストしている可能性もある。更には辿り着いた時には、救助部隊のほうが強くなっていて全滅パーティは用済みと言う悲喜劇も。
    • ロストは上記以外にも様々な要因で発生する。
      • 宝箱の「テレポーター」や転送呪文「マロール」で間違えて石の中に飛んで(飛ばされて)しまうとロスト。その際のメッセージ「いしのなかにいる」はよくネタにされる。
      • パラメータの低下で生命力が極端に低下(老衰)したり、エナジードレインでレベルが0以下になってしまった場合でも発生する。
      • 加えて、シナリオによっては「スペシャルパワー解放でロストになってしまうアイテム」も存在する。
  • オートセーブ機能
    • 一般のRPGでは、任意のタイミングでセーブできたり、特定の場所でしかできなかったりするなど、様々な方法がとられている。しかし本作では特定のタイミング(戦闘が終わったあと、宝箱を開いたあと、教会に行ったあとなど)において自動でセーブされる。
    • セーブされるタイミングを知っていれば、リセット後にロードしてやり直すことも可能。「リセット技」と呼ばれる裏技である。ただしこれを解禁するとゲームがただの作業になるため、この技を封印して遊ぶ人も多い。
      • 余談だが、後にアスキーが製作出版したTRPG版ウィズでは、このネタから「リセット」という最強魔法が作られた。時間を巻き戻すことが出来るが、あくまでも正式な魔法であるため、相応のレベルでないと使えないしMPも必要。
  • 終わりの見えないゲーム性
    • ラスボスのワードナを倒し、魔除けを城に持ち帰ることでエンディングを迎える。
    • しかし、その後もゲームを続けることが可能。アイテムコンプリートを目指したり、レベルをひたすら上げる、あるいは新しいキャラクターを作成してもう一度やり直す…プレイヤーのやる気と情熱が冷めない限り、いつまでも楽しむことが可能。そしてウィザードリィの魅力に取りつかれた人は、時々無性にウィザードリィをプレイしたくなる…。
    • ちなみにワードナの魔除けは「城に持ち帰らなければ没収されない」。しかも魔除けの特殊効果は絶大なので、迷宮に居残りするキャラクターに預けておくという手もある。
      • 尤もストーリーは取って付けた様な作品のためか、他の雑魚同様ワードナは何回でも現れて何回でも倒すことが出来る。FC版では一度倒した事のあるキャラの前には二度と現れないと言う制限が付いたが。

難点

  • 呪文の使用方法
    • これを難点といって良いかは微妙なところだが、PC機の場合は後のコンシューマー版と違ってコマンド選択式ではなくキーボードの特性を活かし「コマンド入力式」となっている。要するに呪文を唱えるには正確なスペル(英単語)の入力が必要で、タイプミスすると詠唱に失敗したと判定され正しい効果を発揮しない。と思いきや実は省略可能である。判別可能なところまでは入力する必要はあるが。ただしこれはマニュアルに書いてはいない。
      • TRPG経験者なら実に趣のある嗜好だと思うに違いないだろうが、コマンド選択式のRPGに慣れた人には煩わしいだけかもしれない。
  • 一部のアイテム、職業のバランス
    • 前衛の装備品に関しては明らかに悪の方が強い。「ロングソード+3*6(悪)」、「プレートメイル+3(悪)」、「ヘルム+2(悪)」という様に明らかに一回り上の装備品が装備可能で、中立や善のキャラクターは若干肩身が狭い*7
    • クラスにおいては盗賊、司教、忍者がかなり使いづらい。(通常のクリアレベルにおいて)
      • 盗賊は上記のとおり宝箱を開けるためには必須の職業なのだが、それ以外の能力がほぼ皆無の為に戦闘中はほぼいるだけの存在と化してしまっている。今作は序盤(1F~3F)の宝箱にはほぼ市販品しかないので序盤は魔法使いや僧侶にしておき、ある程度呪文を覚えさせてから転職させるのがベストか。
      • 司教は魔法使いと僧侶の呪文を覚えアイテム鑑定が行えるのだが、呪文を覚える必要レベルが高い上にレベル自体も上げづらい為に両方の呪文を使いたければ魔法使いと僧侶に転職してそれぞれの呪文を覚えさせる方が必要経験値が少ない*8。鑑定に関しても酒場に待機させておき必要な時にパーティに一時加入させて鑑定させれば良いためにメインパーティに入れる価値は皆無*9ゲーム中盤になったら金が余るので商店で鑑定を頼んでもよい。熟練プレイヤーなら売ろうとした時の値段でもアイテムが何か判断できる。
      • 忍者は素手の攻撃力が高く一撃で敵を倒すクリティカルヒットを持ち、防具なしだとLVに応じてACが良くなり宝箱の罠の解除も行える。しかし転職前提の為どうしてもLVが低くなり*10更に上昇させる為の必要経験値が全職業中最高の為にLVに応じて罠解除判定や戦闘判定にボーナスが加算されるWIZでは恩恵よりもデメリットの方が高い。戦闘面でも罠解除においても専門職に差を付けられ、おまけに呪文も覚えないのでますます必要性が無い*11。ACが鎧より良くなるレベルもクリアに必要なレベルよりはるかに高め。低レベルなら鎧装備の方が安全。気長にキャラを育てる人には良いのだが。
  • レベルアップまでの戦闘回数の多さ
  • 一回の戦闘にそれほど時間がかからないことは良いのだが、経験値の高い敵の出やすい場所を選んで稼ぎに励んだとしてもそれなりの戦闘回数を要求される。上級クラスだと特に顕著。
  • 攻略の難易度はかなり高い。
    • マッピングが面倒かつ場所によっては困難。そして嫌がらせのごとく踏むと全員が小ダメージを受ける(HPが低い魔術師にとっては痛い)ピットがいたるところに用意され、さらには同じ階の別の場所に飛ばされるテレポーターや一方通行のドア、向きが強制的に変更されるターンテーブルなどの厄介な存在がマッピング作業の重要度を上げている。大半の階は北端と南端、西端と東端の通路がつながっている(B1からいきなりである)が、マニュアルにも説明がない。これを知らないと座標で混乱する。
      • 東西南北同じ風景が広がる十字路に回転床と落とし穴が設置されているB3、マッピングの難易度が高いB7&B8はかなりしんどい。当時の3Dゲームなので方向転換時に急に画面が変わる印象を受ける。そもそもB5~B8は(移植にもよるが)行く必要がまったくない。B4からはエレベーターでB9までの各階に行けるようになるが、途中階のB5~B8には攻略に必須なイベントも謎解きも無いのである*12。また、B9Fでは、最終階へつながる「シュート」があるが、それが目に見えない。踏むまで分からない。しかも行き止まりにあるわけでもない。当時の攻略本の記事に「そういうものの存在だけは知っていて、何度もプレイしてうろうろして今日も見つからなかったな…」というユーザーの体験談がある。*13
    • 戦闘バランスもかなり厳しいものがある。前述した通り、クリティカルとエナジードレインはかなり凶悪。また、B4からB9に直行すれば当然ながら敵の強さが跳ね上がるため、ここで全滅することも多い。
    • 現在の視点で見ると不親切なダンジョン、やり直しのきかないセーブシステム、厳しすぎるキャラクターの死など、不満が上がるであろう点が多数ある。
      • もっとも、発売当時はコンピューターゲームでは前例がなかったものであったし、そういった要素を面白いと感じられていた。
  • 一部の要素の設定ミス疑惑
    • 「CLEEPING COIN」という敵はブレスを吐いてくるのだが、ダメージ0なので無意味。1グループに9匹いるのでメッセージが大変うっとうしい。 ブレスは魔物の現HPの1/2、小数点切り捨てという仕様なのだがこの敵のHPを1に設定してしまったのはミスではないだろうか。IVではHPが増加されてちゃんとダメージがあるブレスになっている。
    • 魔術師の3レベルの呪文「MOLITO」は1グループを攻撃する火花の呪文で、ダメージ量が「3-18」であるが、同じ3レベルの「MAHALITO」は1グループを攻撃する火炎の呪文でありダメージは「4-24」。劣っている。乱数の偏りが違うとか属性が違うということもないらしい。両方とも覚えた後は使う必要は皆無。本来は「MOLITO」は魔術師の2レベルにあるべき呪文だったのではないだろうか。レベルごとの呪文数のバランスもその説を裏付ける。IVまでその仕様で押し通したあたりミスと認めていないようだが。余談だがMOLITOはPCエンジン版ではレベル2に移動された。

総評

コンピューターRPGの祖にして、その基本的なフォーマットを作り上げた作品。
現代から見ると非常にシンプルであるが、当時は6色のカラーで描かれたモンスター、擬似主観視点、アニメーションするタイトル画面と、当時の技術で可能な限りのビジュアルを詰め込んだ革新的なタイトルでもあった。

その後の展開

この後本作は、様々なシリーズに分岐しながら続いていく。

  • 生みの親であるサーテック社(現在は倒産)はナンバリングタイトルを8作品出した。それらはアスキーやローカスなどによる移植作業が行われ、中でもFC版#1は原作者をして「これは今までで一番良くできたウィザードリィだ」とのお墨付きをもらうほどのクオリティであった。しかしFC版発売当初は「オリジナルを尊重していない」などといった批判的な意見もあった。
  • また日本のメーカーが版権を得て独自に作った「和製ウィズ」と呼ばれる作品も存在する。「ウィザードリィ外伝シリーズ」、「BUSIN&BUSINゼロ」、「ウィザードリィエンパイア&XTHシリーズ」あたりが有名どころ。
  • 現在では「ウィザードリィルネサンス」と題し、各メーカーによって変わってしまった世界観をまとめ、新たなシリーズを各社からPS3・DS・携帯アプリに出している。
    • また、システム面でも見直しが入り、PS3版では難易度を上げる要因だった年齢制やオートセーブを廃止(どこでも手動セーブが可能)、レベルも通常のRPG同様迷宮内で上昇し、さらに余ったお金でレベルを上げられるなど現代っ子に合わせた難易度調整が行われている。

その他

  • セーブシステムのため、せっかくのキャラクターが消滅してしまうことのある本作だが、実は回避する方法がある。セーブされてしまう前に、コンピュータを強制リセットしてしまうのだ。当時のメインの記憶媒体はハードディスクではなくフロッピーディスク*14なので、セーブするまでにわずかな間がある。そのためこれで対処できた。もっとも、リセットが遅れればディスクを壊してしまう危険性はあるが*15
  • 一見硬派ではあるが、実は迷宮内でのテキスト*16に見られるようにかなりおちゃらけたユーモア溢れる内容である。
    • 映画「モンティパイソン・アンド・ホーリーグレイル」や「セサミ・ストリート」、日本の時代劇の影響が強い。D&Dと合わせていずれもアメリカのギーク文化に強い影響を与えた作品であり、本作がそういう文化の延長線上で製作されたことを暗に示している。
    • 国王トレボー(Trebor)とラスボスであるワードナ(Werdna)の名前は、開発者であるロバート(Robert)・ウッドヘッドとアンドリュー(Andrew)・C・グリーンバーグの名前の逆さ読み。
      • 迷宮内の地下8階と9階には、彼らのイニシャルを象った形状のフロアが存在する。……が、移植作品の中には攻略に必須ではない5~8階の構造を独自に構築している作品があり、そこでは「ロバート・ウッドヘッドのフロアが消滅している」ということになる。しかも、「アンドリュー・グリーンバーグのフロア」は続投している。下記のように日本版ではパロディ、ジョークの類はばっさり切り捨てられたが、その象徴的な部分である。
    • 経験値稼ぎに使われる「マーフィーズゴースト」。新米冒険者にボコボコにされる彼のモデルはテストプレイに関わった同級生との説がある。友情とは一体…
      • 別の説ではロバートとアンドリューが大嫌いだった同級生の名とも。
  • 日本では原作のコミカルな面が抑えられ、至って真面目な王道的中世ファンタジー風の世界観で描かれている。
    • たとえば「ボーパルバニー」は映画『モンティパイソン ホーリーグレイル』を、「カシナートの剣」は「フードプロセッサーで有名なカシナート(クイジナート)社」を知らないとジョークとしては理解出来ない。
      • 日本版での「カシナートの剣」は「名匠カシナートが造り上げた剣」ということになっている。これはFC版1が発売されるより前の攻略本から見られ、それも複数の出版社から出た著者が異なる解説本で「名匠カシナートが造りあげた剣」とされており*17特定の団体が歪曲して流布した俗説などではなく、日本上陸にあたって日本人好みに姿を変えたものと言えよう。
    • これらのおバカ要素の集大成とも言える第4作『ワードナの逆襲』がコンシューマー移植されるまでには時間がかかり、日本オリジナルで製作された続編・外伝もの・関連作品にも原作のようなユーモアは見られない。
      • もともとは軽い雰囲気であった事を活かして、ブルマなどの「萌え装備」、日本アニメ作品等のパロディを加えた外部作品もあるが、本流扱いは受けていない。
    • 当時のFC版メディアミックスの一環として登場した小説作品群、アニメ、漫画作品も、ゲーム4コマなどのパロディ作品を除いてはシリアスな世界観を継承している。この世界観は日本のファンに受容され、これらのメディアミックス作品が人気を博した。
    • この作品が他の作品に与えた影響も大きい。漫画『ドラゴンクエストへの道』によると、あの有名な「ドラゴンクエスト」も中村光一と堀井雄二がエニックス(当時)の研修旅行で、アメリカの大手ゲーム博覧会に参加した際にこの作品に触れて感動し、「いつかファミコンでウィザードリィより面白いRPGを作りたい」と触発されて生み出すきっかけとなったとされている*18
    • またナムコ(当時)の「女神転生」シリーズも、ウィザードリィを意識して作った事を製作者が認めている。