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Wizardry(ゲームスタジオ監修版) - (2012/04/25 (水) 13:49:32) の編集履歴(バックアップ)


Wizardry(ゲームスタジオ監修版)

【うぃざーどりぃ げーむすたじおかんしゅうばん】



概要

 コンピュータRPGの祖の1つに数えられるタイトル『ウィザードリィ』*1。AppleIIで当初発売されたこの作品は、その後様々な機種に移植されている。
 この項では、その中でも最もプレイヤーに支持されたであろうバージョンと言える、「FC版#1を始めとした、アスキー&ゲームスタジオが移植を担当した作品群」について述べる。

全般に言える特徴

  • 操作性の変更
    • PC版のコマンド選択はキーボードを駆使した独特な操作法で、各コマンドに相当する頭文字のキーを押すことで成立する。さらに魔法の詠唱は該当する呪文のスペルを打ち込む必要があった。コンシュマーの操作はコントローラーなので同じ方法は取れず変更されたが、それによってレスポンスの良い操作が可能になっている。
  • グラフィック面が大幅にパワーアップした
    • 迷宮のグラフィックはオリジナルではワイヤーフレームであったが、ハードの性能が上がったFC以降はドットによるグラフィックが表示されるようになった。
    • モンスターおよびイメージイラストを末弥純氏が担当。FC版ではイラストの完全再現、とまではいかなかったが、Apple版と比べればその差は歴然。攻略本などに載っていた美麗イラストはプレイヤーを魅了するのに十分であった。
      • マイルフィック、フラック、グレーターデーモンなどは特に好評であったようで、イラストレーターが異なる外伝シリーズにおいても、これらの人気モンスターは末弥デザインに準拠したグラフィックであった。また、アスキー以外のメーカーから発売された和製ウィズにおいてもその影響は大きい。
  • BGM担当に羽田健太郎氏を採用
    • 羽田健太郎氏は『西部警察』や『渡る世間は鬼ばかり』、『超時空要塞マクロス』など、数々のテレビ番組の曲を担当した有名な作曲家兼ピアニスト。しかしゲームについてはあまり詳しくなく、『「ウィザードリィっていうゲームの曲を作ってくれ」→「ウィザードリィ?何かの鳥か?アホウドリみたいな」』というやりとりがあった。
    • 「暗いイメージで、中世ヨーロッパを連想させるクラシック曲でいきたい」という意向があったため、羽田氏に白羽の矢が立った。このあたりのやりとりは『ウィザードリィ リルガミンサーガ 公式ガイド』に詳しい。
  • ちょうどいい程度のアレンジ
    • ただありのままを移植するのではなく、(作品にもよるが)ちょっとしたアレンジを利かせている。これも支持を集めた要因であると言えるが、人によっては「なぜ変えた!」という人も。
  • バグが多い
    • 普通に遊ぶ分には問題がないものから、ゲームバランスに影響を与える深刻なバグまでよりどりみどり。
      ただし全体的にクオリティは高かったため、バグの多さを差し引いても高評価したプレイヤーは多い。
      • 有名なバグ(の一部)
      • FC版#1…味方のACが全く機能していない(攻撃してきた敵のAC値が命中判定に使われる)。
      • FC版#2,3…睡眠状態の敵をハマンの「魔物をテレポートさせる」で吹き飛ばすと、数千万単位の経験値が入る。
      • FC版#3…ターボファイルを使用して特定の操作をすると、アイテムを無限増殖させる事が出来る。
      • NP(SFC)版、GBC版(3作全て)…素早さが20(NP版は15)を越えると、逆に行動が遅くなったり、全く行動しなくなったりする。
      • GBC版#3…一部のアイテムがボルタック商店に陳列できなかったり、陳列後在庫がゼロになってしまう。

ウィザードリィ

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 アスキー
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1987年12月22日
定価 5,800円
Wizardryシリーズリンク
  • シナリオ1『Proving Grounds of the Mad Overlord』の移植。
    若干の調整及び変更(アイテム名の変更、B6~B8の全面改装、ゲームバランスの調整)が行われているが、全体の雰囲気は損なわれていない。ただし、これらの変更を「オリジナルに忠実ではない」とするオールドファンも存在した。
    • アイテム名はD&Dのような「ショートソード+1」といった感じの名前から、「よいたんけん」といった固有名詞になっている。よく勘違いされているのだが、このアイテム名変更はFC版のオリジナルではなく、先に発売されていたMacintosh版#1のアイテム名を訳したものである(アイテム表記を英語にすればMacintosh版と同じ名前になる)。
  • 和訳のクオリティは高く、オプションで英語に切り替えることも可能。が、直訳してしまったがゆえに珍妙になってしまったものも。有名どころはクリティカルのメッセージ「○○ は くびをはねられた!」。訳としては間違ってはいないのだが、「首のないスライムの首をはねる」などのおもしろ現象が発生したためネタと化した。
    • レブル7シーフというモンスター名の誤字も存在する。また、「アーチメイジ」は後作では「アークメイジ」に改名された。*2
  • 町やキャンプ、戦闘等コマンド決定時に若干詰まるようなもっさり感がある。ただし次作以降では改善されている。
  • 当時のアスキーはウィザードリィを大々的にプッシュしており、メディアミックスの一環として小説やアニメ、漫画など様々な展開が行われた。出版社ではJICC出版局(現:宝島社)がウィザードリィに注力し、ベニー松山氏の小説「隣合わせの灰と青春」やファンコーナーを掲載したり、「ドラクエ・FF・Wiz・メガテン」を「日本四大RPG」と認定し盛り上げていった。
  • 上記にあるACバグは20年以上もの間、明らかになっていなかった。「最弱クラスの敵の攻撃が当たりやすい」という指摘は一応あったが、ランダム性が高いゲーム(成功率は最大95%)であること、硬い装備になった頃によく戦う敵はたいてい硬いこと、などから気付かれにくかったものと思われる。

ウィザードリィII リルガミンの遺産

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 アスキー
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1989年2月21日
定価 6,500円
Wizardryシリーズリンク
  • シナリオ3『Legacy of Llylgamyn』の移植。
    FC版では#2と#3の順序が入れ替わっている。これは#2は#1で育てたキャラクターの使用が前提となるバランスであったことが理由。そのため先に#3を移植し、#2はイベントやMAPのアレンジなどのバランス調整を施した上であとから発売した。
    • FCで使用できる外部記憶装置「ターボファイル」はすでに発売されていたため、オリジナルに忠実に移植することもできた。しかし、「『ウィザードリィを遊ぶためだけにターボファイルを買わせる』というのはハードルが高くなりすぎるのではないか?」とメーカー側が判断し、上記の措置が取られた。
  • オリジナルの#3はかなり難易度が高い作品であったため、敵の経験値の引き上げ、入力式の謎解きをキーアイテム所持による通過、オリジナルでは存在していなかった「村正、手裏剣、聖なる鎧」のいわゆる「三種の神器」と呼ばれるアイテムの追加などのアレンジが加えられている。

ウィザードリィIII ダイヤモンドの騎士

ジャンル RPG
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 アスキー
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1990年3月9日
定価 6,500円
Wizardryシリーズリンク
  • シナリオ2『Knight of Diamonds』の移植。
    「リルガミンの遺産」と発売順序が入れ替わっている理由は前述の通り。ゲームバランスが一変し、新規作成キャラクターの使用が前提となるバランスとなった。また特性値の上限が種族それぞれの基本値+10になっていたり、呪文の習得順序が入れ替わっている、#5からの新呪文の追加、#4からいくつかのモンスターの追加など、細かいアレンジが施された。それでいながら、元となる#2の雰囲気が損なわれていないのは凄いという他ない。
    • 特性値の上限変更は、この後外伝シリーズや他社製のWizにも採用され、国産Wizのシステムとして定着した。

ウィザードリィV 災渦の中心

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
発売元 アスキー
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1992年11月20日
定価 9,800円
Wizardryシリーズリンク
  • シナリオ5『Heart of the Maelstrom』の移植。
    ハードがスーパーファミコンに変化したことでスペックが上昇し、グラフィック、BGMのクオリティはさらに高くなった。特性値の上限変更など前移植作同様のオリジナル要素もあるが、これまでと比べるとアレンジ要素は少なく、ほぼ原典通りの移植となっている。
  • サブタイトルはPS版の「災禍」とは違い「災渦(うず)」。原題の「Maelstrom」にかけたネーミングとなっている。

ウィザードリィVI 禁断の魔筆

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン
発売元 アスキー
開発元 ゲームスタジオ
発売日 1995年9月29日
定価 12,800円
Wizardryシリーズリンク
  • シナリオ6『Bane of the Cosmic Forge』の移植。
    末弥純氏のモンスターイラストがアニメーションする(といってもスペック不足のためカクカクだが)のが見どころか。こちらも若干の調整以外はほぼ原典通り。
  • ちなみにサブタイトルは意訳である。「Cosmic Forge」はシナリオ上の最重要アイテムである「世界の理をも捻じ曲げられる力を秘めた魔法の筆」のことを指す。もし直訳したら「全てを溶かす炉」になってしまう(Forge=鍛冶に使う炉のこと)。

ウィザードリィ ストーリーオブリルガミン

ジャンル RPG
対応機種 スーパーファミコン(書き換え専用)
発売元 メディアファクトリー
開発元 ゲームスタジオ(監修)、Gung-Ho!
発売日 1999年6月1日
定価 3,000円
Wizardryシリーズリンク
  • FC版#1~3の移植。プログラミング作業はGung-Ho!*3が行なっている。FC版を元としているためゲームスタジオは監修に回った。
  • FC版にないアレンジ要素として、盗賊・忍者に隠れるコマンドが追加されている(設定で使用のオンオフを切り替え可)。
  • この作品以降の移植作品から、オリジナル開発者の指摘により「ル’ケブレス」が「エル’ケブレス」に修正されている。
  • この作品のみ、発売元がアスキーではなくメディアファクトリーとなっている。
  • おそらく、ウィザードリィの中では最も入手が困難と思われるソフト。ローソンの「Loppi」を利用したニンテンドウパワー*4専用ソフトだが、書き換えサービスはすでに終了し版権問題を抱えているためVCでの配信も絶望的。出回りは皆無に近くオークション出品時には高値で取引されている。

ウィザードリィ GBC版#1~#3

ジャンル RPG
対応機種 ゲームボーイカラー(専用)
発売元 アスキー
開発元 ゲームスタジオ、Gung-Ho!、ローカス
発売日 2001年2月23日(三作全て)
定価 各4,500円
Wizardryシリーズリンク
  • FC版#1~3の移植。こちらはそれぞれ単独発売で、ゲームスタジオが#1を、Gung-Ho!*5が#2を、ローカスが#3を担当した。
    「いろんなバージョンが出回っているからもういいだろう」と判断したのか、大幅なアレンジが施されている。三作全てにおいて新アイテム、新モンスター、新規フロアが追加され、ゲームシステム上の変更点も多数。もはや別物といえる程のアレンジっぷりである。
    • 16*16になったマップ、Wiz5以降のシステムの一部(盗賊・忍者の「隠れる」等)を導入など、旧来のWizardryフリークが見れば驚くかもしれない。
      とはいえ、16*16になったとはいえマップの基本形状やイベント箇所とその内容はほぼ同じ、追加システムも旧来のバランスを壊さず新たな可能性を作り出すなど、決して悪くはないアレンジである。
    • 何より目立つのはクリア後の追加フロアか。
      シナリオ1「元々のマップでは飾りといえなくもない階層を丸々新規マップに入れ替えた上で、ひたすらアイテムコレクターを目指せる」
      シナリオ2「メインシナリオ同様、善と悪のパーティが別々の難関に挑み、最後に協力することで道が開ける」
      シナリオ3「地獄の底まで潜っていき、強力な装備を片手に強力モンスターや大ボスと対決できる」
      といった感じにそれぞれの追加マップが別々の特徴を持つのは面白い。

総評

 当時PCのみで発売されていて「知る人ぞ知る」といった作品であったウィザードリィ。それを家庭用機にレベルの高い移植を行い、知名度の拡大と新規ファンの獲得に成功した功績は計り知れない。
 原典は世界のコンピュータRPG史に残る名作であるが、このゲームスタジオが監修したアレンジ移植群は、日本のRPG史に多大な影響を与えた作品と言えるのではないだろうか。

余談

  • ウィザードリィの生みの親であるロバート・ウッドヘッド氏は、FC版#1発売当時「これが最も出来のいいシナリオ#1だと思っています。グラフィックだけでなく、操作方法や音楽などもApple II版と比べてずっと進化している。ほんとにすごい」と絶賛した。
  • ゲームスタジオの取締役である遠藤雅伸氏はPC版をやりこんでいたことで有名。このゲームが氏に与えた影響は大きい。*6