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提督の決断 - (2012/01/13 (金) 01:18:25) の編集履歴(バックアップ)


提督の決断

【ていとくのけつだん】

ジャンル 歴史シミュレーションゲーム
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対応機種 PC-9801、PC-8801、X68000、FM TOWNS、MSX2、スーパーファミコン、メガドライブ
発売・開発元 光栄
発売日 【PC88】1989年11月
【SFC/MD】1992年9月24日
定価 【SFC/MD】14,800円

概要

  • 光栄(現・コーエーテクモゲームス)が製作・発売した歴史シミュレーションゲームで、第二次世界大戦を扱ったWW2シリーズの第一作である。
  • 敵国の艦船をすべて撃沈するかすべての港湾基地を占領することが最終目的だが、それ以外にも作戦目標を達成すれば終了するショートシナリオがある。シナリオは「日米交渉決裂」(昭和16年11月1日開始)から「大和特攻」(昭和20年4月7日)まで。
    • シナリオ9本の内8本がショートシナリオ。作戦目標を達成するとそのまま終了するか、通常シナリオに移行するかを選択できる。
    • ショートシナリオの作戦自体はそれほど難しくない。しかし、ショートシナリオを終えて通常シナリオに移行するとなると話は別。当然、ミッドウェー海戦以降のシナリオ(シナリオ5「ソロモン海戦」以降)では、日本は徐々に難しくなる。特に最終シナリオ「大和特攻」で通常シナリオをクリアするのは至難の業。

特徴

  • 光栄らしく、艦隊戦・航空戦だけでなく、外交や内政といった戦略面にも力が入れられている。
    • プレイ国は日本(ゲーム中では大日本帝国)とアメリカ(ゲーム中では連合国)だけだが、外交相手としてイギリス・フランス・オランダ・ドイツ・イタリア・スイス・スウェーデン・ソビエト・中国・オーストラリア・インド・タイ・ブラジルがある。
    • 本作の外交は他の光栄作品のそれとはかなり趣が異なる。「同盟」は単なる不戦同盟ではなく、日本・連合国との連携関係の構築となる。そのため、同盟が成立すると基地が自勢力のものになる、技術協力などが成功しやすくなるといった特徴がある。
      • 滅多にないが、イギリスやオランダとの同盟が成立すると連合国所属のイギリス・オランダの艦が日本所属になる。
    • これまでの作品は「外交不要論」なる意見まであったが、今作では技術開発などで重要な役割を果たす場合もある。
    • なお、日米間では同盟はもちろん、外交交渉すらできない。
    • 資材や兵力・燃料といった軍事力にかかわるデータだけでなく、工業力・技術などの内政面にかかわるステータスもある。
      • 特に工業力は重要なステータスで、戦没した艦にかわって艦を新造しようとすると工業力を消費する。駆逐艦や潜水艦の消費量は少ないが、主力である戦艦や空母は莫大な工業力を消費するので、工業の育成と戦力の保持という二面をどう両立するかも重要である。
      • 造船には期間を設定できる。短い期間では多くの工業力を消費するが、長く期間を取ると少なくてすむ。そのため、泥縄式の造船ではなく、計画的に造船することが求められる。また、このため、戦術的な大敗は史実同様に取り返しの付かない戦況の悪化を招くこともある。
      • 新兵器の開発ともかかわるため、技術も重要である。特に艦船に関する技術すべてを80(MAXは100)にすると「新型艦船」が建造できる。これはコストが非常に安い上に性能は無茶苦茶強力な艦を作れる。例えば、速度は4~50ノット*1、耐久力と艦船攻撃力は戦艦並みの駆逐艦といった具合である。
      • そこまでしなくとも、技術が向上すると攻撃や防御で補正を受けるため、自国が強くなったことを実感できる。
      • 特に電波探信儀(レーダー)、電波照準儀(射撃用レーダー)、新型戦闘機(ジェット戦闘機)は非常に便利なので、技術開発を怠るとかえって面倒くさい上に痛い目にあう。
  • 陸軍との交渉が肝。
    • 攻撃目標を決めたり、外交を行ったり、内政を行ったりと、いろいろなことを行うためには陸軍と会議を開く必要がある。そして、陸軍が賛成するとその提案は実行される。
      • 海軍(つまりプレイヤー)が功績を挙げると海軍の発言力が強まるが、作戦目標の失敗などが続くと陸軍のほうのそれが強まり、やりたいこと・やるべきことがなかなか可決されず、ますます苦境に陥るという悪循環にはまることも。
    • 陸軍は序盤から攻撃目標にハワイ・ポートモレスビー(連合国なら東京やトラック)などの難所ばかり提示してくる。
      • そのため、「最大の敵は相手国ではなく陸軍」などといわれることもしばしば。
  • テンポがよい。
    • 毎月一日に燃料・予算・資材などが納入される。
    • 航空機は陸軍の承認が必要なものの予算を投入すればすぐに出来上がる。なお、機種は「戦闘機」と「雷爆機」のみ。
    • 艦船の改造(電探の設置、新型戦闘機の離発着可能な空母への改装など)・新造は1ヶ月単位で扱われる。このため1日に改造しても月末に改造しても月が変わると1ヶ月経過の扱いとなる。これを利用すればわずか1日で改造を終わらせることもできる。
    • 輸送も一瞬で完了。ただし、次回の輸送が可能になるまでの間隔という概念がある(例えば、ある基地に一回輸送すると次の輸送は10日経たないとできない)こと、行方不明になる輸送船や航空機もあることから無茶な輸送はできない。また、これは補給線がつながっていないと顕著になる。
      • 史実無視という側面もあるが、ゲームのテンポをよくしているのも事実。
      • 続編に比べるとリアルさには欠けるが、その分、シンプルな楽しさがあった。
  • 一応、通商破壊もできる。非常に効果は小さくあくまで一応レベルだが。
  • 中だるみしにくい。
    • 特に日本では歴史シミュレーションで問題となる中だるみが起こりにくい。というのも昭和17年を過ぎると、史実どおり連合国の新造艦が次々と登場してくる上、攻略すべき基地には史実での要所ポートモレスビー(基地所属の爆撃機はなんと最大480機!)、異様に頑丈なハワイ・サンフランシスコ・ロサンゼルスが待ち受けている。
    • しかも、拠点となる母港は自由に変更できないため、アメリカ本土に行くまでが一苦労。
      • ただ、最終盤は敵艦をほとんど沈没させているため緊張感は欠けがち。また、連合国は序盤がきつく、後半が楽なので、序盤を乗り切れば何とかなる。

欠点

  • 航路設定が非常に面倒。目的地を決めての委任はできず、一定距離ごとに目的地を決め直さなければならない。
  • いきなり無茶な兵器ができる。
    • ゲーム開始時にボーナスポイントを割り振れるのだが、ゲームレベル1だと割り振り次第では1941年の開戦時から長距離爆撃機や新型戦闘機を開発できる。
      • 補足説明すると、史実において、本作の長距離爆撃機に相当する爆撃機B29は1944年に初出撃した。ジェット戦闘機もドイツで1944年に登場して戦果を挙げるが、まともに運用できるものが登場したのは戦後である。
    • はやばやと開発できるせいか長距離爆撃機の威力はショボイ。自動戦闘となるため効率の悪い攻撃をするというのはまだマシで、出撃したものの爆弾がほとんど無いor距離の都合からターン数が少ないため申し訳程度の攻撃しかできないというトホホなことも。
    • ちなみにこのゲームでは戦闘機と雷爆機の役割が決まっているため、長距離爆撃機は基地施設や艦隊は攻撃できても陸兵と敵航空隊は攻撃できない。なのに陸兵からは攻撃され撃墜される。
    • 電気や砲などの技術レベルを大幅に上げると「ロケット弾」なる兵器が開発されるが、艦船への搭載量が少ないため、手間のわりに威力はガッカリ。
  • 艦船の命名と建造に制限がある。
    • 本作では艦船の名前をつけることができず、沈没した船の名前を使うしかない。そのため、戦没した船がなければ新造はできず、沈没した艦がなくても新造したければ自沈処分するしかない。
      • このため、新造も史実の艦船の量に左右される。このため、艦船の絶対量の少ない日本は不利。
      • 「大和」という名の潜水艦、「伊19」という名の弩級戦艦という史実の命名基準から外れた名称となることもしばしば。
  • 将校の能力の効果がわかりにくい。
    • 本作では将校の能力はオマケ程度しかない。実際の戦闘力は艦船の性能や航空機の数によって決まる。
    • 効果を実感できるのは能力「作戦」の高い人物を陸軍との会議に連れて行くと提案が通りやすいことぐらい。
    • 「提督の決断」だが、提督でない人物もいる。具体的には友永丈市。彼は空母「飛龍」の航空隊長で、生前の階級は大尉*2なので二重の意味で提督ではない。
  • 妙に敵が有利になる現象が多い。
    • 敵スパイによる諸工作は成功しやすく、威力もそこそこあるのに対して、こちらの工作は手間がかかる・効果が薄いと、コマンドの無駄使いといってもいい内容。
    • 公式攻略本では機雷に接触してもダメージを受ける・与えられる確率は50%となっているのに、基地に設置された敵の機雷はよく当たる。本当によく当たる。当時の雑誌でネタにされたほどよく当たる。こちらの機雷設置は資源とコマンドの(ry
      • こういった現象は当時の光栄のゲームではよくあることだった。原因は不明。

総評

徹底的にリアル嗜好だったG.A.M制作「太平洋の嵐」の後発として発売された本作品はいろいろと粗いところがあるものの遊び易さからおおむね好評だった。これまでのウォー・シミュレーションゲームはWW2に限らずHEX戦のみのボードゲームスタイル(要するに「大戦略」シリーズのような作品)が主流で、政治・経済・外交・技術開発、さらに陸軍との交渉などにも視野を大きく広げ、史実上の提督たちも登場する本作はこれまでにないものであったことも手伝って、広く受け入れられていった。輸送や航空機生産などでのリアリティのなさや航空機の扱いが少々お粗末ではあるが、「太平洋の嵐」と異なるこれらがかえってシンプルな面白さを引き出していた。

そして、当時の主流機だったPC-98や88だけでなくMSX2、FM TOWNS、X68000やSFC、MDといった当時のほぼすべてのパソコン・コンシューマ機にも移植され、続編も4まで作成されるほどの人気作であった。しかし……。

その後の展開~黒歴史化へ

Windowsマシンが主流となり、『信長の野望 戦国群雄伝』など、光栄の旧作の中でも人気作品がWinへ次々と移植される中、のちに4まで作られた人気シリーズの第一作であった本作が移植されることは無かった。また、2003年に発売された『コーエー25周年記念パック』にも収録されず、事実上の黒歴史化されてしまった。

これには理由がある。実は、本作は政治的にリアルで問題となる内容をはらんでいたのである。それらを挙げると……

  • 新型爆弾の開発
    • 要するに原爆である。長距離爆撃機からこれを投下すれば相手基地を一発で壊滅させられるという、どうみてもかなりヤバイ内容であった。開発には莫大な国力が必要で、光栄の公式攻略本にも掲載されなかったため、「隠し開発品」のような扱いだったとはいえ、雑誌を通じて多くの人に知られるようになった。そのため、後発版ではすでに公然の秘密となってしまっていた。さすがに最後発のSFCではカットされた。
    • その後、似たような超強力破壊兵器が同社「鋼鉄の咆哮」シリーズで登場することになるが、「巡航ミサイル」というぼかした表現になっており「核」や「原子爆弾」といった表現は避けられている。
  • コマンド「慰労」
    • 基地で乗員の疲労を回復させるものなのだが、このときに表示されるグラフィックは水兵が女を連れて歩くというものだった。1990年代に入って、日本で慰安婦問題が噴出するようになると誤解を招くコマンド名・慰労、グラフィック、さらにこのコマンドを実行すると住民の友好度が減少するというご丁寧な仕様によって慰安婦を連想させる(つまり、「水兵が地域の女をかっさらって慰安婦にしたから友好度が減少した」と解釈できる)として批判されてしまった。これもSFCでは「休暇」と変更された。また、MSX2版などでは「上陸」(これも事実上の休暇)というコマンドもあった。最初からそうすれば余計な誤解を招かなかったのに。

こうした問題は、第二次世界大戦という扱いの難しい時代を扱ったゲームゆえの悲劇と言えるだろう。

なお、本作のリアル路線は3まで引き継がれる(さすがに上記の二つは削られた)が、このころになると光栄は中国にも進出していたこともあって、リアル化内容は大問題になってしまった。そこで4ではかなり仮想戦記的な内容とした。ゲームシステムの変更もあって、これが賛否両論な作品になってしまった